マイクロプラスチック
マイクロプラスチック(英: microplastics)は、(生物物理学的)環境中に存在する微小なプラスチック粒子であり、特に海洋環境においてきわめて大きな問題になっている。一部の海洋研究者は1mmよりも小さい顕微鏡サイズのすべてのプラスチック粒子と定義しているが、現場での採取に一般に使用されるニューストンネットのメッシュサイズが333μm (0.333mm) であることを認識していながら、5mmよりも小さい粒子と定義している研究者もいる。しかし、マイクロプラスチックが野生生物と人間の健康に及ぼす影響は、科学的に十分に検証されていない。
マイクロプラスチックの発生源と疑われているものは複数存在する。
- 工業用研磨材、(角質除去タイプの)洗顔料、化粧品またはサンドブラスト用研削材などに直接使用するために生産されるマイクロプラスチック、または多種多様な消費者製品を生産するための前段階の原料(ペレットまたはナードルと呼ばれる)として間接的に使用するために生産されるマイクロプラスチック("一次マイクロプラスチック")。マイクロビーズとも呼ばれる(en:Microbead)
- 特に海洋ゴミなどの大きなプラスチック材料が壊れてだんだん細かい断片になる結果、環境中に形成されたマイクロプラスチック(いわゆる"二次マイクロプラスチック")。この崩壊をもたらす原因は、波などの機械的な力と太陽光、特に紫外線 (UVB) が引き起こす光化学的プロセスである。
- 家庭での衣類の洗濯による布からの合成繊維の脱落。下水道に流れ込む洗濯排水中のマイクロプラスチック粒子と環境中のマイクロプラスチックの組成との比較により、1mm未満の粒径のマイクロプラスチック汚染の大半が脱落した合成繊維から構成される可能性があることが示唆されている。
最近数十年間の世界のプラスチック消費量の増加により、マイクロプラスチックは全世界の海洋に広く分布するようになり、その量は着実に増大している。
2008年9月9日から11日までアメリカ合衆国ワシントン州タコマ市のワシントン大学タコマ校で開催された、マイクロプラスチックの海洋ゴミの存在、影響および環境運命についての最初の国際研究ワークショップに参加した研究者たちは、以下の根拠によりマイクロプラスチックが海洋環境に問題をもたらしていることに合意した。
- マイクロプラスチックが海洋環境中に存在することが確認されている。
- これらの粒子の滞留期間が長い(したがって、今後も集積する可能性が高い)。
- 海洋生物によるマイクロプラスチックの摂取が実証されている。
これまでの研究はもっと大きいプラスチックに重点が置かれてきた。(釣糸や漁網などの)プラスチックに絡まるか、プラスチックを摂食するか、喉に詰まらせて窒息することによって、生物が衰弱して死んでしまうか、陸地に乗り上げて身動きができなくなるといったことに関連する問題は広く認識されている。
これとは対照的に、マイクロプラスチックは5mmよりも小さくて目立たない存在である。この大きさの粒子はきわめて幅広い生物種が利用しうる形態であるが、摂食されることが実証されている例は、沈積物摂食性のゴカイ(タマシキゴカイ (Arenicola marina))と濾過摂食性のイガイ()の2例しか挙げられていない。食物網の下位にいる生物種の摂食の影響がほとんど知られていないことが不安をもたらしている。栄養段階を通じてマイクロプラスチックが移行するかどうかはまだわかっていない。
マイクロプラスチックを摂食した後の海洋生物への影響は次の3つが考えられる。
- 摂食器官または消化管の物理的閉塞または損傷
- 摂食後のプラスチック成分の化学物質の内臓への浸出
- 吸収された化学物質の臓器による摂取と濃縮
小動物は、偽りの満腹感のために食物の摂取が減る危険があり、その結果、飢餓状態に陥るか、それ以外の物理的被害を受ける。しかし、海洋生物に対する長期的な影響は現時点では未知である。
海洋環境中に入り込むプラスチック材料の約半数は水に浮くが、生物の付着によってプラスチックゴミは海底に沈みやすくなる。沈んだプラスチックは底質生物と底質のガス交換プロセスを阻害する可能性があるが、これが重要になるのは大きいプラスチックゴミの場合である。
マイクロプラスチックと残留性有機汚染物質 (POPs)
さらに、プラスチック粒子は、環境と周囲の海水中に普通に存在する合成有機化合物(例えば、残留性有機汚染物質 (POPs) など)をその表面から吸収することによって高度に蓄積して運搬する可能性がある。マイクロプラスチックが、このような経路を通ってPOPsを環境から生物に移行させる媒介者の働きをしているかどうかはまだ不明であるが、マイクロプラスチックが食物網に入る潜在的な入口であることを示唆する証拠がある。さらに、プラスチックの製造中に加えられた添加剤が摂食時に浸出して生物に深刻な害をもたらす可能性も懸念されている。プラスチック添加剤による内分泌かく乱は、人と野生生物の生殖に関する健康に等しく影響を及ぼす恐れがある。
現在のレベルでは、マイクロプラスチックがPCB、ダイオキシン、DDTなどのPOPsの外洋における世界的に重要な地球化学的貯留層になる可能性は低い。しかし、小規模なスケールでマイクロプラスチックが化学的貯留層として大きい役割を果たすかどうかは明確ではない。大都市の港湾や、農業排水と工業廃水が集中する排水路などの汚染された人口密集地域においては貯留層機能があると考えられる。
石油系ポリマー('プラスチック')は、ほとんどすべて生分解性がない。しかし、石油系ポリマーと同様の生分解性材料の生産に使用できる再生可能な天然ポリマーが現在、開発中である。しかし、それらを大々的に使用する前に、環境中の特性を詳細に精査することが要求される。
さらに、プラスチック粒子は、環境および周囲の海水中に一般に存在する合成有機化合物(例えば、持続性有機汚染物質、POP)を吸着によってその表面上に高度に濃縮および輸送することができる。このようにして環境から生物へのPOPの移動のための薬剤としてマイクロプラスチックが作用することができるかどうかは不明のままであるが、証拠はこれが食物網に入る潜在的なポータルであると示唆している。さらに懸念されることに、製造中にプラスチックに添加された添加剤は、摂取時に浸出し、生物に深刻な害を及ぼす可能性があります。プラスチック添加物による内分泌かく乱は、ヒトおよび野生生物の生殖に関する健康に同様に影響する可能性があります。
現在のレベルでは、マイクロプラスティックは、PCBs、ダイオキシン、DDTなどの大気中の地球化学的貯留層であるとは考えにくい。しかし、マイクロスクリルがより小さなスケールで化学リザーバとしてより大きな役割を果たすかどうかは明らかではない。大都市、集中的農業および排水流出地の氾濫など、人口密度が高く汚染された地域では、貯水池機能が考えられる。
プラスチック、鉱物油由来のポリマーは、事実上非生分解性である。しかしながら、再生可能な天然ポリマーは、油性ポリマーのものと同様の生分解性材料の製造に使用することができる開発中である。しかし、環境中のそれらの特性は、それらの広範な使用が伝播される前に詳細な精査が必要である。
| 名 | 主要な健康影響 |
|---|---|
| 染色体損傷、貧血、血液疾患、および白血病 | |
| 癌; 肝臓、腎臓、肺、および中枢神経系損傷 | |
| エチレンジブロマイド (EDB) | がんと雄性不妊 |
| 高濃度では、肝臓および腎臓の損傷、中枢神経系の鬱病、皮膚の問題、および癌および突然変異の疑いがある | |
| 肝臓、腎臓、および肺の損傷; 肺、心血管および胃腸の問題; がんと疑わしい突然変異 |
- 読売新聞 2016年4月2日 33面掲載。
- Browne, Mark A: "Ingested microscopic plastic translocates to the circulatory system of the mussel, Mytilus edulis (L.)", Environmental Science & Technology, 42(13), pp. 5026–5031, 2008
- Moore, C J: "A comparison of plastic and plankton in the North Pacific central gyre", Marine Pollution Bulletin 42(12), pp. 1297–1300, 2001
- ^ a b c Moore, C J: "Synthetic polymers in the marine environment: A rapidly increasing, long-term threat", Environmental Research, 108(2), pp. 131–139, 2008
- European Commission, GREEN PAPER On a European Strategy on Plastic Waste in the Environment, COM(2013)123 final, 7.3.2013, p 6.[1]
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- Derraik, José G: "The pollution of the marine environment by plastic debris: a review", Marine Pollution Bulletin, 44(9), pp. 842–852, 2002; Teuten, E L: "Transport and release of chemicals from plastics to the environment and to wildlife", Philosophical Transactions of the Royal Society B – Biological Sciences, 364(1526), pp. 2027–2045, 2009
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- チャールズ・モア、カッサンドラ・フィリップス著、海輪明秀訳『プラスチックスープの海-北太平洋巨大ごみベルトは警告する』NHK出版、2012年8月25日、ISBN 978-4-14-081560-1 、pp 284-285 (Charles Moor and Cassandra Phillips, “PLASTIC OCEAN”, 2011).
- European Commission, GREEN PAPER On a European Strategy on Plastic Waste in the Environment, COM(2013)123 final, 7.3.2013, p 6, pp 14-16.[2]