今年の天候は、
暑い暑いと思っていたら急に寒くなったり、冷たい雨がたたきつけるように急に降ってきたりと、非常に不安定ですね!

種・家庭菜園・園芸・野菜 市川種苗店

結論を言うと全ての原因はこの気温の変動の大きさが原因です。
古来より黒あざ症と呼ばれている生理障害です。万願寺とうがらしだけではなく、甘長とうがらし、甘とう美人、ししとうなどにも当てはまりますのでご参考になれば幸です。

まずは写真をご覧下さい。

佐世保のH様。
当店で苗を購入、露地で栽培され、ボチボチ出荷が始まったそうですが、このような黒く変色した果実がかなりの比率で発生しており出荷できない!と持ち込まれたものです。




①病気なの?
②原因は何?
③どうしたら発生を防げるの?
③今後の対策は?
切迫した表情でのお尋ねでした。

私も真剣に答えねばと、改めて、文献を調べ、T種苗技術部と相談したりいたしました。ネットでは、石灰欠乏症などと書いてある記事やブログも散見されます。ほんとに石灰欠乏症でしょうか?

しかし、石灰(カルシウム)欠乏症は、とうがらし類を含め、ナスやトマトやピーマンなどなす科植物の場合、梅雨明けの急激な乾燥期に多発する現象です。雨が多く、圃場に湿気が多い5月下旬~梅雨時に発生することはきわめて希です。カルシウムは水に溶けにくいので植物体内での移動がたいへん緩やかです。

わかりやすく??解説してみます(^_^)ね。
水が豊富な梅雨時に甘えた根が、梅雨明けと共に始まる乾燥期について行けなくなり十分な給水ができなくなります。すると、その水に乗って体中に分配されるべきカルシウム分が不足します。最終的には細胞分裂が最も盛んな成長点付近など、必須養分であるカルシウムが欠乏し、細胞が死んでしまいます。これが石灰欠乏症の全体像です。

石灰(カルシウム)が不足しているのではなく、水分の循環が滞るため、水に溶けて運搬される石灰(カルシウム)分が欠乏するのが直接の原因です。だから症状は根から最も遠い葉先や果実の先端に現れます。
石灰欠乏症などの生理障害は梅雨明けなどの気候の変動を予見し、キレート系のカルシウムの葉面の予防散布を行ない、過剰な乾燥期には早め多めの灌水を行なうことで予防が可能だとされています。

今回の万願寺とうがらしの黒化症状は水が多いときに発生していますのであきらかに違います。
上記の石灰欠乏症のメカニズムから考えても矛盾があります。



左端の一本にかすかに石灰欠乏症らしき腐敗の症状が出ていました。(もしかしたら石灰欠乏症ではないかもしれませんが、石灰欠乏症であればこのような腐敗症状を呈します。でも問題はこの腐れではなく圧倒的に目立つ別の部分の黒あざです)
果実に多発しているようであれば石灰欠乏症も考えられますが、茎葉に病斑があれば、多雨による疫病の可能性もあります。今一度圃場の茎葉に異常がないか確かめて頂くようにお願いしておきました。

さて、結論は既に申し上げておりますとおり、黒あざ症という生理障害です。

とうがらし、ピーマン、パプリカに昔は一般に広く見られた生理障害だったそうです。
収穫が終盤にさしかかかる秋~初冬の気温が下がる時期によく見られる現象でした。
しかし、ピーマン類は生産消費が拡大するにつれ品種改良がものすごく進み、ほとんど黒あざ症状は見られなくなった!というのが実情のようです。昔ながらのピーマンの品種を栽培していると同じような現象はよく見られるとのことですが、現在日本のほとんどのピーマンが改良されたF1種なのでほとんど目にしなくなっただけなのです。

ところが、シシトウ、万願寺とうがらし、伏見甘長とうがらし、甘とう美人などの伝統野菜は全国的に大量生産されることがなく、ほとんど昔ながらの品種が使われており、黒あざ症(=遺伝的に劣性)に対処できていないのが現状のようです。ピーマンの黒あざ症に強い遺伝子をとうがらしに導入すれば良さそうに思えるのですが、育種のプロにいわせるとそこがなかなか難しいとのことでした。


途中経緯が長くなって申しわけございません。処方箋に映りましょう。

①→病気ではありません。
黒くなったのはアントシアニンという色素が強く発色しただけです。
パプリカがグリーンのピーマンから変身して赤や黄色やオレンジに変色するのと同じように、濃い紫色=黒色に変色しただけと思われてけっこうです。
食べて害があるどころか、このアントシアニンという色素は最近話題になっている体に良い役目をする機能性栄養素なのです。
逆手をとって「完熟万願寺とうがらし」などと銘打って販売しても良いのではと思っています(^_^)。

②③④→アントシアニンが沈着するメカニズムを理解すれば少しは軽減できるかも?しれません。
つまり、冒頭に述べたように、寒さが原因です。キャベツやブロッコリーも真冬になって気温が下がってくると頭の部分(太陽光線が強く当たる部分)が紫色になります。アントシアニン沈着といって嫌われますが、とうがらし類の今回の黒あざ症も全く同じメカニズムで起こっているようです。黒あざといっても紫が濃くなって黒く見えるだけです。

つぎに、
寒さと同時に重要な要因が紫外線です。
寒さ=強いストレスに耐えようと特殊な栄養分が分泌されます。冷気が強く当たったその部分に、さらに光、その中でも紫外線が降り注ぐと、この部分=頭部に、栄養分が変化してアントシアニンが生成され紫色に変化するのです。

今回のとうがらしの写真は、収穫してとうがらし本体の木から分離したものを撮影しているので、ランダムに黒くなっているように見えます。しかし、よく観察すると片側半分だけが強く黒化していることに気づきませんか?
そうです。太陽に当たって紫外線を浴びた片側だけが集中的に黒くなったと想像できます。もし冷気にさらされたのが主因ならば、木に付いているとうがらしは実全体が黒くなるはずです。しかし、実際は、太陽方向を向いている片側だけが強い紫外線にさらされたので果実の縦半分だけが黒ずんでしまったと考えられます。

以上のことから、急な低温、そして強い紫外線を何らかの方法で防ぐ手立てがあれば予防できるという結論になりそうです。とうがらしなので、露地栽培が一般的だろうと思われますが、温度を確保できるハウスなら軽減できるでしょう。紫外線を吸収しやすいフィルムならなおさら効果的でしょう。
また、低温+紫外線が原因だと考えられるので、急な寒さが予知できる場合は露地栽培でも不織布などの一時的な被覆等でも軽減できるのではないでしょうか。


根本的な解決は品種改良しかなさそうですが、T種苗などにお聞きしても近々には間に合わぬのが実情です。食べても実害は全くないどころか、機能性栄養素を豊富に含んでいる点を強調した方がよいのかもしれないと言うのが、私の結論です。 なお、T種苗のM様大変お世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。

追伸
最近、ブログの題材を思いつくと過去ログに既出のことばかりでなかなか筆が進みません。
ご質問等があればHPから簡単にメールが送れるようになっております。皆様に公開できるような内容でしたらどしどしブログに取り上げていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。





 
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