ツベルクリン反応とは。陰性だった?陽性だったら?

      2017/01/27

概要

ツベルクリン液を皮内注射すると、そこの発赤・腫脹などの反応がみられます。

このツベルクリン液の注射に対応した反応の事をツベルクリン反応といいます。

もともとはこの発赤・腫脹などの反応の事をツベルクリン反応といっていましたが、現在では転じて結核に対する免疫の有無を調べる検査法の名称となっています。

検査方法としてはツベルクリン(結核菌の培養ろ液から得られるタンパク質)を皮下に注射して、48時間後にそこに発赤・腫脹等の反応があるかを確認します。

その部位に直径10mm以上の発赤・腫脹があった場合には陽性と判断されます。

仮にツベルクリン反応の検査で陰性だった場合にはBCG接種を受ける事になります。BCGとはウシ型結核菌を用いて毒性を弱めて作ったワクチンです。

このワクチンを接種することにより結核菌への免疫をつけて結核を予防します。

免疫の効果は15年程度までは有効であるとされています。

症状

結核菌が肺に入って増殖を始めると、肺には軽い炎症が発生します。

同時に肺のリンパ節が腫れるようになりますが、こちらの症状は軽いのでたいていは気づく事はありません。

しかし、そのうち人間の体に結核菌に対しての免疫が育って、結核菌への抵抗力が出来上がります。それにより結核菌の活動を抑え込みます。そして、結核により生じた病巣も回復します。

結核菌が肺に侵入してから2~3か月までの期間にはこのようなことがおこります。
しかし、抑え込まれた結核菌はそのまま体内に存在しています。結核菌は冬眠状態に陥っているだけなのです。

そして、人間の免疫力が低下した時にまた結核菌が活動を始めます。

この時点で初めて結核の発病となります。結核が発症した場合、初期の症状は風邪に大変似ています。
せきが出る、たんが出る、微熱だが発熱するといった症状が長く続くのがポイントです。また、体重が減る、食欲が出なくなる、寝汗をかく等といった症状が加えて現れる場合もあります。

結核の症状が進んでいくと、だるさを感じたり、息切れを感じたり、血の混じった痰が出るようになります。
さらに症状が悪化すると、血を吐いたり、呼吸困難に陥って死に至る事もあります。

原因

結核は結核菌が体内に取り込まれることによって発生します。

結核菌への感染は結核を患った患者の咳によって感染するケースが多くみられます。

我々が普通に会話している場合でも、肺の奥から見えないしぶきが吐き出されています。しかしひとたび「ゴホン!」と咳をすると、普通に会話している時の5分間分にあたる大量のしぶきが放出されます。

その咳をした人が肺に結核の病巣を持つ結核患者であれば、このしぶきの中には大量の結核菌が含まれている事になります。
そして、

この結核菌を近くの人が吸い込むことによって感染します。

ちなみに、結核菌は大変生命力が弱く、すぐに日光の中の紫外線で死滅してしまうため、近くで生活している人にしか移りません。
食器などのものを介して結核菌が移るという事はありません。

しかし、結核の症状のところでも述べたように結核菌を吸い込んだからといって、すぐに結核の症状が現れるわけではありません。2~3か月の初期症状の発症の後、結核菌は休眠状態に入ります。

その後、結核が発症するのは人間の免疫力の低下が引き金になります。

免疫が低下した事によりはじめて結核菌は自由に動けるようになり、様々な症状を引き起こすようになります。

ここに至って結核が発症したという事になります。

診断

結核に対しての抗体があるかという事についての検査・診断は本文の主題である「ツベルクリン反応」の検査を用いる事によって行います。
また、ツベルクリン反応は実際に結核菌があるかについての検査を行う場合にも同様に用いる事ができます。

ただ、ツベルクリン反応のみでは結核菌に感染したか、類似の非結核菌に感染したかの判断が難しい場合があります。
このため、より精度の高い検査として「クオンティフェロンTB-G(QFT)検査」というものがり、こちらの検査も用いることになっています。

また、結核の感染だけではなく実際に結核を発症しているかどうかを調べる検査は「胸部X線検査」により行います。

X線検査では白黒が反転して写真がとれます。

普通であれば肺は空気が多いため、黒く写る事になります。

しかし、この肺の中に白く写る部分があれば何らかの異常があると判断されます。

ただ、この時点では白く写る部分が結核であるとは言い切れません。

結核の疑いが濃厚と判断された場合には「喀痰(たん)検査」を行う事になります。

痰を採取してスライドグラスに塗りつけて、結核菌だけを締め出して、顕微鏡で確認します。痰を顕微鏡で見て細菌を調べたり、菌の一部を培養して菌の種類を見極めます。

結果が出るまで8週間の時間を要しますが、もっとも結核診断の中では正確性の高い検査であるという事が出来ます。

治療方法

結核は長年人類にとって不治の病とされていました。戦前の日本では結核が死因の1位だったほどです。

しかし、この結核が薬で治せるようになるという人類の夢が叶う日がきます。

それが1944年にワックスマンがカビから作り出したストレプトマイシンという薬の発明でした。

このストレプトマイシンは驚異的な効果で「魔法の弾丸」と言われるようになります。

現代においてはリファンピシン、ヒドラジドという2種類の薬を軸にして、初期段階では4錠を摂取し、症状が落ち着いてきたら2~3錠に減らしていくという方向で抗生物質の投与が行われています。

しかし、結核の薬物療法でもっとも注意しなければいけない点は結核菌がかなりしぶとい菌であるため、しっかりと薬を飲んで死滅させなければいけないという事です。

ある程度の期間症状が落ち着いても薬を飲み続けていないと結核菌は蘇ります。
しかも、蘇った結核菌は今まで投与していた薬への耐性を手に入れており、投与した薬が効かなくなってしまいます。

そのため、結核治療ではある程度の期間薬を飲み続ける事が必要になります。また、1種類の薬に対しての耐性が出来ても大丈夫なように2種類以上の薬を合わせて投与するのが結核治療のポイントになっています。

結核を薬で治すことは人類の長い間の夢でした。

1944年、ワックスマンがカビから作り出したストレプトマイシンはその劇的な効果で、まさに「魔法の弾丸」と呼ばれるにふさわしいものでした。続いてパス、ヒドラジドなどが登場し、「結核の治療は化学療法で」することが確立しました。その後も次々と結核の治療薬開発され、現在「抗結核薬」として広く認められているものは10種類を越えます。

結核菌はしぶとい菌なので、ある程度の期間、薬で叩かないとぶり返します。またその間に薬に慣れて抵抗性になる(「耐性」)ので、2種類以上の薬を一緒に使うのが鉄則です。

対応策

結核に感染する前の事前の対応策にはこの文章の主題であるツベルクリン反応とBCG接種の2本柱での対応が挙げられます。

まず、ツベルクリン(結核菌の培養ろ液から得られるタンパク質)を注射します。

この場合に反応は2つのパターンがありはます。

1つは体内に結核に対する抗体(抵抗する力)がある場合です。このような人は、ツベルクリンを注射されると抗体がツベルクリンに対しての攻撃を始めます。そして、そのツベルクリンへの攻撃が一番強くなる時間がおよそ注射から48時間後になります。

そのため、48時間後にツベルクリンを注射した部分を確認すると抗体のツベルクリンへの攻撃の結果で皮膚が赤くなっています。
皮膚が赤くなっている場合は陽性で問題ありません。体の中に結核菌を攻撃する細胞が存在する事を意味しているからです。

しかし、逆に全く皮膚に変化が起きていない場合があります。
この場合は陰性です。

結核菌を攻撃する細胞が体内にない事を意味しています。

この場合はBCG接種を行います。

BCGにより結核菌の毒性を弱めたウイルスを注射する事で、結核菌への抗体を体内で作成させ、結核菌への対応力を身に着けられるようにします。

また、実際に結核菌に感染してしまったが、まだ発症していない患者に対して発症を防ぐための薬を投与する事も結核への対応として行われています。
実際に抗体の有無を確認するツベルクリン反応検査をメインとして、上記のような方法で結核への対応策は取られています。