銀座と築地、二つの名所の間にあって、しっかりと独自の魅力と個性を放つ街。多くの観光客とオフィスワーカーたちで連日にぎわい、新・歌舞伎座の開場で、さらに注目度が増している東銀座が今回の舞台だ。和食の老舗、名店が軒を連ねるこの界隈には、意外にもカレーの店が多数点在している。その一つ、「ダルマサーガラ」は、「ミールス」とよばれる南インド版の定食が人気のレストラン。それまでインド料理と言えば「カレー&ナン」という、日本人が長年描いてきた常識を変えるきっかけとなった南インド料理店だ。
サンスクリット語で「仏法の大海」を意味する店名の通り、ゆったりと落ち着いた店内の壁には、英語で書かれたブッダの言葉が飾られ、漂う上品なスパイスの香りとあいまって、エキゾチックな雰囲気を醸し出す。壁一面が赤い、フロア奥のテーブルに陣取り、この店の定番メニュー「レギュラーミールス」(1,200円)をオーダーした。
待つことしばし、お馴染みの銀のトレーが運ばれてきた。トレーには五つの小さな器と、ご飯が整然と並べられている。中央には風船のように大きく膨らんだ揚げパン「プーリー」が湯気を放ち、主役を主張する。6種からセレクトしたカレーは、「チキン」と「サンバル(野菜)」、それに「ラッサム」とよばれるスープ、サラダ、野菜の副菜「ポリヤル」、ピクルス「アチャール」と、爽やかな香りが味わえるソース「グリーンチャトニー」が添えられ、目にも楽しい料理がテーブルを彩ってくれた。
まずは、ふくれっ面の「プーリー」をちぎって「ラッサム」をひとすくい。鼻を刺激する強い酸味が食欲をさらにかき立てる。続いて「サンバル」へ。サラッとしたカレーと、ジューシーな揚げパンの相性が抜群。香辛料の芳醇な香りと辛さ、パンのコクが混ざり合った絶妙な味わいが口の中に広がる。油少なめで、スパイシー。南インドの定食は爽やかで、元気になれる料理であった。
DATAダルマサーガラ
中央区銀座4-14-6
ギンザエイトビル2F
03-3545-5588
千駄木の駅を出るとすぐ、この街のメインストリート、不忍通りにぶつかる。南へ歩くこと約3分、汐見小前交差点を右に曲がった先の閑静な住宅街に、ネパール・インド料理「ミルミレ」はある。来日16年というネパール人の夫妻が、本国の調理法でタパス、カレーを出してくれる店だ。
入り口にはネパール国旗、緑のツタに覆われた店先が本国の雰囲気を醸し出す。店内にはネパールのアンティークやガネーシャ、ゾウの小物などが並び、エスニックムード漂う。今回のランチは「ミルミレスペシャルチキンカレーセット」。12種類のスパイス、玉ネギとフレッシュトマトをバランスよく使うことで、オイルを一切使わずに仕上げたヘルシーなカレーだという。
先に運ばれてきたサラダを食べつつ待っていると、食欲を強烈に刺激する香りが漂い始めた。クミン、コリアンダー、ナツメグ、カルダモンなど、さまざまなスパイスが独特の個性をむき出しにしながら、鍋の中で一つになっていく。出来上がるまでの時間も、香りで楽しませてくれるわけだ。見た目は至ってシンプル、ちぎったナンでさらっとしたカレーをひとすくい。口に運べばたちまち程よい辛さと豊かな香りが広がる。軟らかく煮込んだチキン、玉ネギの甘みとコク、トマトの酸味、スパイスの香りと辛さの調和。優しくて、まろやかで、それでいて味わい深いカレーだ。もちろんライスのセレクトも可能。鮮やかなサフランライスは、ネパールのそれに近いということで、中国のおコメを使っているとのこと。パラッとした食感がのど越しのいいカレーにぴたりとはまった。
DATAミルミレ
文京区千駄木2-20-10
03-3824-1418
万年橋を渡り、東劇ビルの裏手の路地を入る。新橋演舞場の程近く。最初は見つけにくいかもしれないが、一度訪れてしまえば、分かりやすい場所である。店の名は「CaliCari」、インド料理レストランだ。
階段を下りると、そこは高さ約6mの吹き抜け空間。キャンドルランプを使ったオリジナルのアンティーク調シャンデリアが、ウッディーな店内を柔らかく照らしている。地下とは思えないほどの開放感、まさに隠れ家と呼ぶにふさわしい。
CaliCari」のランチは、A~Dの4種とバイキングから成る。メインはいずれもインドカレー。連日複数のカレーが用意されるが、中でもおすすめは「大地の息吹きカレー(季節の野菜入り)」。福岡で専業農家を営むオーナーの実家から送られてくる「自家製有機野菜」を前面に打ち出した、飛びっ切りの野菜カレーだ。
驚くほど「すーっ」と、体に入ってくる。まろやかなルーと時間差で、野菜が強烈に主張し始める。ニンジン、ブロッコリー、ピーマン、ナス、トマト、ホウレンソウ。それぞれの甘み、それぞれの食感。すべての野菜が生き生きとしている。そして、いつの間にかさわやかな辛さが訪れていて、汗がじわっと来る。実に見事な、また注文したくなる野菜カレーである。
※「CaliCari」は神楽坂に移転し、「想いの木」という新しい店名で営業中
DATA想いの木
新宿区神楽坂5-22 2F
03-3545-4877
京橋駅から鍛冶橋通りを皇居方面へ。柳通りと交差する一つ目の信号を右に曲がるとすぐの場所に、南インド料理の名店「ダバ インディア」はオフィス街の真ん中にある。
南インドの主食はコメだ。だから数種のカレーとライスの組み合わせが満喫できる、南インド式カレー定食ことミールスは外せない。さっそく定番「ランチミールス」をいただくことにした。本日のカレー3種とサンバル、ラッサム、ライス、バトゥーラ(揚げパン)、パパド(豆の粉で作ったせんべい)。ワンプレートなのに豪華であり、鮮やかである。香りもいい(カレーリーフを使っているからだそうだ)。
この日の「本日のカレー」3種は、辛口=マトンとブラックペッパー、中辛=チキンひき肉、マイルド=2種の豆カレー。なんといっても驚くのは、それぞれのカレーがメインとなる食材の味を際立たせていることだ。
さわやかな辛さとブラックペッパーのアクセントがマトンを引き立て、ホウレンソウソースがチキンに奥行きを与える、といったように。さらに特筆すべきは、ご飯がどんどん進むこと。南インドのみそ汁といわれる「サンバル」や、酸味が効いたトマトのスープ「ラッサム」ともどもご飯とよく合う。よって"南インド式カレー定食"とは、実に腑に落ちる表現なのだ。
DATAダバ インディア
中央区八重洲2-7-9 相模ビル1F
03-3272-7160