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カルデアにて。セイバーと

「誰が概念礼装なぞ出て良いと言った!!」

 半裸のギルガメッシュが召喚システムに、怒号と王の財宝から取り出した聖晶石をぶつける。その聖晶石の捧げ方や、ドラムのポップコーンをそのままゴミ箱へ投入するかの如き雑さである。しかしその結果は、植木鉢だのアイスティーの入ったガラスコップなどの、最早礼装でも何でもない日用品の数々が排出されるばかり。ひどいなと率直に感じたのは、一定の割合で投入した聖晶石と排出されるものの比率が合わないのだ。ざっと観察したところで二割くらいであろう。

「ギ、ギルガメッシュ。そろそろ止めた方が」
「ええい(オレ)に歯向かうなよ雑種! 馬鹿野郎お前、(オレ)は勝つぞお前!」
「駄目です先輩。全く聞いてません」

 ギルガメッシュがいつになくヒートアップしているのには訳があった。そう、始まりは確か……ロマンの一言だったか。




『召喚システムの修復を頑張ってみたんだけど。今の召喚システムなら、アルトリア・ペンドラゴンが召喚出来るかもしれない』

 何の確証もない、であろうとオレは勝手に思っているが。ともかくロマンが晴れ晴れとした笑顔で口走ったその一言が、ギルガメッシュの蒐集家の心に火をつけた。その結果が目の前の暴走だ。事の元凶であるドクターは部屋の隅っこで呆然としている。

 10分くらいそうしていると、召喚システムに変化があった。召喚前にシステム周辺を回転する光球が金色を帯びたのだ。かつてギルガメッシュを召喚した際も発したこの光。さしもの英雄王の表情も晴れる。



「よくぞ余を選んだ! 違いの分かるマスター……うむ?」

 召喚に応じたお目当ての人物に瓜二つの少女は、自分の真正面にいたギルガメッシュ(はんらのおとこ)を見て、顔を引きつらせる。

「あ、マスターはこっちだよ」
「ネロさん。この人がマスターです」
「お、おぉそうかそうか! いやぁ良かった!」

 嬉しそうにこちらへ駆け寄ってくる様は可愛らしい。だがその薔薇の様な笑みと反比例するように、ギルガメッシュの表情は静かに怒り、目を血走らせていた。普段から激昂しっぱなしの彼であるが、あれだけ身の危険を感じる怒り方は見た事が無い。無機質に投入されていく石のぶつかり合う音のみが、部屋の中に反響していた。

「……ネロ。他のサーヴァントの所に挨拶巡りに行くのはどう? マシュ、連れて行って」
「う、うむ。そうだな。何というか、すぐに去った方が良いような気がする」
「え……でもそれじゃ先輩、とドクターが」
「いざとなったら令呪使うから。早く」

 マシュとネロは避難させる。万が一を考えて。そして注意深くギルガメッシュの動向を見守る。いざとなったら男性殺戮兵器(ピンキー)を用いてロマンごとギルガメッシュを謀殺する事も視野に入れねばならないだろう。そうならないなら、それに越したことはないが。

 再び召喚システムを囲うように、金の環が顕現する。今度こそ、今度こそアルトリアが来てくれなければ、この金ぴかニートが何をやらかすか分かったものではない。端に山積みとなっている礼装の数々が、これまでの道のりを表していた。

「……?」

 ギルガメッシュがらしくもなく眉をひそめる。現れた女性は確かに青いドレスに白銀の甲冑を纏ってこそいるが、はっきり言うと似ても似つかない女性だ。彼女は一目見てわかる通り日本人で、髪は染めているだけで、瞳も茶色。何より年齢が絶対的に違う。一種のコスプレの様にすら映った。オレはこの女性を知っている――恐らく、聖杯から真夏の夜の淫夢の知識を得ているギルガメッシュも。

「あなたは?」
「……NRKです。その、世界が大変なことになっているらしいですね。出来る限りお手伝いします」

 NRK姉貴。COATのホモビによく出演していた女優の一人だ。一躍有名になったのは多分、BABYLONシリーズのSTAGE42少年犯罪に収録されている、汚濁の御子という作品に出演したことだろう。『真夏の夜の淫夢』がSTAGE34、誘惑のラビリンスがSTAGE27であるから、それらの後輩作という事になる。汚濁の御子というホモビがこれまた難儀で、厨二な言い回しやそれすらも噛み噛みになっていたり、展開が哲学的であったりとネタにするにはもってこいの内容だった。そしてそれの出演者の一人が、Fate/stay nightのキャラに似ているという弄りから始まり、NRK姉貴はセイバー姉貴と呼ばれるようになって――

「……Fate/stay night? TYPE-MOON?」
「ぐだ男。無駄な思索は止めよ」
「あ、あぁ。ごめん」

「でも確かに霊基は、弱いけどアルトリア・ペンドラゴンのそれだし……わ、分かったぞ! デミサーヴァントだ!」

 ロマンが一人合点している。とまれ、NRK姉貴はセイバー姉貴と同一視されることがままあった。この結果はつまりそういう事なのだろう。ギルガメッシュが納得するかは別にして。

「……雑種。(オレ)を誑かした貴様は後で殺す」
「ゆ、許してください! なんでもしますから!」
「ん? 今何でもすると言ったな。ならばそこで自慰に興じよ。あくせよ」
「へぇえっ!? ホ、ホナニーですか!?」

 駄目だこいつら。一秒たりともシリアスが持たない。

「あそこの馬鹿はほっといていいかな。それよりNRK。一つ聞いておきたいんだけど、君の中に本当にアルトリアはいる?」
「はい。えっと……出ては来れないそうですけど、確かに」

 ……出ては来れない、か。アルトリアがカルデアに加わってくれればこの上ない即戦力なのだが。やはりビーストに汚染された召喚システムのせいであろうか。マテリアルに目を通してみると幾つか、気になる記述があった。

【真名】アルトリア・ペンドラゴン
【クラス】セイバー
【属性】秩序・善
【ステータス】
筋力B 耐久力C
敏捷C 魔力B
幸運E 宝具A+++

 まずステータスがかなり低い。完全な推測だがNRK姉貴という肉体に大きく引きずられた可能性がある。だが特筆すべきはこれだけに留まらない。もう一つ重大な案件があった。

「……真名解放ってのは、出来る?」
「……その、アルトリアさんが言うには出来ないらしいです。仮に出来ても、私の体ではまず耐えられないと」
「そっか」

 それは残念だ。というのも――

【宝具】
『風王結界』
『約束された勝利の剣』
『全て遠き理想郷』


「えぇ!? アヴァロン持ち!?」
「誰が喋ってよいといった!」

 下半身を露出させながらガチビンタを受け、弾き飛ばされるロマン。マシュ達を避難させて本当に良かったと心から思う。そんな些細な事はともかく、真名解放が出来ないとはいえ『全て遠き理想郷』を保有しているというのはアルトリアという英霊と比べると凄まじい相違点であろう。詳しい経緯は省くがアルトリアは英霊として召喚される際、『全て遠き理想郷』を持ちえない。NRKが持ち込めたのは、恐らく彼女が『セイバーという要素を後天的にぶち込まれた存在』であるからだろう。セイバークラスとしての現界なので、ロンゴミニアドは持ち込めなかったようだが。

「……ともかくだ。(オレ)はアレが気に食わん。どうにかしろ、ロマン」
「と、と言われましても……」
「何ィ? 何と言った貴様」

 二人は今にも殺しかねない、というよりむしろあのギルガメッシュが手を出していない事が不思議なほど、緊迫した状況に突入している。

「……まぁよい」

 ギルガメッシュが静かにこちらへと振り返り、王の財宝(ゲートオブバビロン)を展開する。幾つもの原初の宝具が顔を覗かせ、俺の隣にいるNRK姉貴を睨む。

「退くが良いぐだ男。かくなる上はこの(オレ)手ずから消し去ろう」
「!!」

 考え得る限り最悪の展開だった。こちらも最悪の手札(ピンキー)を切るか、一瞬思索を巡らせた、その時。



『――精神の新陳代謝』

 そのたどたどしい詠唱は概念礼装(ガラクタ)の山から聞こえて来た。ギルガメッシュが眉をひそめる。

『性欲とは神に与えられし大罪』
「ま、まさか……この詠唱」

 淫夢に精通していると思われるロマンが勘付いた。あぁそうだ、この詠唱はあの、衛宮士郎に似ていると言われた――

『逃れられぬカルマ。排泄行為に過ぎない――!!』

 詠唱の終わりと共にそれは、カルデアの風景を塗り潰した。



このAUO好感度たけぇのか低いのか、これもうわかんねぇな。