ウェブブラウザのJavaScript(ジャバスクリプト)の設定が無効になっています。Javascriptが無効になっていると、サイト内の一部機能がご利用いただけません。 泡とレモネード2011年4月17日 22:24秩序の聖域近くに拠点としてコテージ建ててるとかそんな感じのゆるい設定でよろしくです。ライズとかのシステムもとても適当ですすみません。--------------一体何がどうなってそうなったのか、よく分からない。ただ言えることは、素材集めから何日かぶりにコテージに戻ってきた勇者が、とても汚れていたということだ。留守番として残っていた騎士と少女が、見過ごせないほどに。今回彼はフィールド破壊によってライズする素材を集めに行ったようで、色んなステージをどっかんどっかんと壊しまくったらしい。そのおかげで素材は無事集まったが、その際舞い上がった埃や砂塵によってウォーリアは全身とてつもなく汚れていた。何度か水浴びはしていたというが、それでも防具をコテージの外で脱いで入って来なければならないほどだった。全身を覆う防具の汚れは、丁寧に落として磨いてやればきれいになるだろう。光の戦士は装備の手入れを決して怠らない、セシルとティナが危機感を抱いたのはウォーリア自身――特にその髪に対してだ。埃や塵にまみれ、その都度水で適当に洗われた髪は傷んで艶をなくし、複雑に絡まりあっていた。そんな瀕死の髪を、おそらく彼は何の配慮もなく石鹸で洗ってしまうだろう。ウォーリアは、己の容姿に恐ろしく無頓着なのだ。見目麗しい勇者の痛ましい髪の未来を危惧したセシルとティナは、ふたりでウォーリアの髪を洗うことを決めてしまった。勇者本人が反駁するひまもなく、あれよあれよと風呂場に押し込んでしまう。フリオニールがふたりを見つけた時、彼らは浴室の前で楽しそうに洗髪剤や香油を選んでいた。ウォーリアが体を洗い終わるのを待っているというのだ。男が湯を浴びているところに女性が入るなんて、と、当然フリオニールは彼らを咎めたのだが、何だかんだとうやむやのうちに押し切られてしまった。セシルが傾ける小首の角度と、ティナの一途な上目づかいに、秩序の戦士の誰ひとり勝てやしないのだ。勇者でさえそうなのだから、フリオニールが太刀打ちできるはずもない。そのうちに中から声がかかって、ふたりはいそいそと浴室に入っていく。取り残されたフリオニールはいささか茫然としてしまった。用事もないのに入るわけにもいかない。あのふたりは、普段から自分の髪の手入れに気を使い、知識も扱いも長けているから中にいるのだ。――しかし、気になる。光の戦士に皆とは少々異なった好意を抱いている身としては、特に。[newpage]葛藤の末、フリオニールは盆を手に浴室のドアを叩いた。「フリオニール?どうぞ、入って」柔らかな騎士の声にドアを開けると、中に溢れる光に思わず目が眩んだ。十人が寝泊まりできるコテージの浴室は広い。時には何人かが一度に湯を使うこともあるくらいだ。大きく取られた窓からまぶしいほどの光が差し込んでいて、浴室全体がとても明るい。中央に据え置かれた猫足のバスタブにはたっぷりと湯が張られ、ふわふわとした泡が溢れていた。なるほど、泡風呂にしてその中に入ってしまえば、勇者の体が見えることもないわけだ。椅子を持ち込んで浴槽の傍らに座ったセシルたちは、衣服の裾を捲り上げて楽しそうにウォーリアの髪を触っている。汚れはもうすっかり洗い流され、今は艶出しのための香油を染み込ませているところらしい。ゆるやかな曲線を描くバスタブの縁にタオルを敷き、そこへ頭を持たせかけている勇者は瞳を閉じてじっとしている。穏やかな表情は心地よさそうで、眠っているようにも見えた。押し切られて不快な思いをしているのではないかと危惧していたフリオニールはほっと息を吐く。「フリオニール、何を持ってきたの?」興味津々といった様子のティナに苦笑しつつ、盆に乗ったグラスを示して見せる。「レモネードさ。ウォーリア、いつも風呂出るの早いし、のぼせたらいけないと思って」これくらいしか俺の使える口実はないからな、との自嘲は決して口には出さないが。しかし普段勇者が早風呂なのは事実で、あまりゆっくり湯に浸かる方ではないと知っている。「あれ、でも、これ……」湯加減を確かめるために片手をバスタブに差し込むと、ほとんどぬるま湯に近い温度だった。セシルが笑顔で頷く。「うん、温度を下げておいたんだ。この方が長い時間浸かっていられるし、ゆっくり筋肉をほぐせるだろうと思ってね」ウォーリアはぬるいぬるいって文句言ってたけど、と悪戯っぽく微笑むセシルがいるのだから、いらぬ心配だったようだ。不満げだったはずの勇者は今やすっかりリラックスして、昼寝をする猫のように大人しい。その時ようやくウォーリアの瞼が開いて、どこかぼうっとした瞳がフリオニールを見つめた。「フリオニールか」「ウォーリア。レモネード作ってきたけど、飲むか?」「ああ、いただこう」ほんの少し頭を起こしたウォーリアに、泡がつかないようグラスを持ったままストローを咥えさせてやる。白皙の頬をほんのりと染め、こくこくと無防備に嚥下する様に見惚れているうちに、レモネードはあっという間に飲み干されてしまった。「……うまいな」「足りなかったか?」「いや。だが、上がった後にもう一杯もらえるだろうか?」「もちろん」「いいなー。フリオニール、僕にも作っておくれよ」「私も……飲みたいな」羨ましそうに同じものをねだるセシルとティナは、年上だけどまるで弟妹のようだ。愛らしいそれにも甘やかす笑顔で頷いて、バスタブの縁に軽く体を預ける。ウォーリアの銀糸は騎士と少女の手によって随分と艶を取り戻していた。香油も泡風呂のオイルも、花のような香りがしたが、どちらかというと控えめで、人工的な匂いが苦手なフリオニールにとっても好感の持てるものだった。きつすぎない香りと、微かな水音と、明るい浴室と、宝物のように勇者の髪を扱うセシルとティナ、気持ち良さそうに目を閉じる光の戦士、すべてが穏やかで、平和だった。信じられないほど。[newpage]「ひとに髪を洗ってもらうのは初めてだったが、気持ちの良いものだな」風呂から上がっても髪が乾くまで解放してもらえなかったウォーリアは、しかし満更でもなさそうに二杯目のレモネードを口にした。素材集めに出かける前よりもつやつやさらさらになった髪に触れてみたいと思いながら、フリオニールはこたえる。「そうなのか。俺も今度、セシルに頼んでみようかなぁ」フリオニールも己の容姿にこだわる方ではないので、髪のケアそのものに興味があるわけではなかったが、確かに気持ち良さそうだった。おそらくセシルなら喜んで引き受けてくれるだろうし、頼んでみるのもありかと思う。もっとも、気恥ずかしいのでティナの同席はできれば勘弁願いたいものだが。そんなことを考えていると、勇者の手がつと伸びてきて自分の後ろ髪を掬い上げた。驚いて見上げると、まっすぐな瞳が何か不思議な光を帯びて見つめてくる。「その時は」とウォーリアは言った。「その時は私がきみの髪を洗ってもいいだろうか」「え?」何を言われているのかうまく認識できなかった。顔に血が上ってくるのが分かる。触れられている、それだけのことに天にも舞うような気持ちになるのだ。髪に肌のような感覚がないのを心底残念に思う。「……あ、ああ。俺なんかの髪で良ければ」何とか言葉を返すと、了承を得た勇者はひとつ頷いて、手にしていたフリオニールの髪をひと房くるりと指に絡めた。そのままぱらぱらと彼の手を離れていく少し濁った銀糸が、自分のものだと信じがたい気持ちで眺める。微かに引っ張られて頭皮をくすぐる感触があまりにも甘くて、一層赤面した。「楽しみだ」そうして席を立ったウォーリアから、柔らかな花の香りがふわりと立ち上る。普段からは考えられないほど優しい気配を残していく背中を見つめながら、フリオニールは今夜は眠れそうにないなとため息を吐くのだった。-------------メモ帳とワードで下書きを2つ作ってたんですが、ファイル名がそれぞれ「WOLを洗う」「WOL洗い」でした。色々とひどい。