唐辛子でもサプリでも!カプサイシンのダイエット効果と危険な副作用
唐辛子の辛み成分であるカプサイシンが持つ効果によって、体脂肪を減らしたり、体重を減らしたりと言うダイエット法があります。唐辛子を食べると、個人差はありますが汗をかくことが多いですね。
このことから脂肪が燃焼して体温が上がり、汗をかいていると考えられたのだと思いますが、さて、本当に減量効果があるのでしょうか。そして、唐辛子のような辛い物の成分を摂って、身体に害はないのでしょうか。
カプサイシンに体重・体脂肪の減量効果は期待できない
いきなり身もふたもない言い方ですが、カプサイシンにせよ唐辛子にせよ、それを摂ったからと言って、体重や体脂肪が減ると言う大規模研究は見当たりません。もちろん、実験室レベルの研究報告では脂肪が減ったという結果が得られているケースはあります。
動物実験では効果が表れている場合もある
ラットやマウスを使った動物実験では、高脂肪食を食べさせた実験動物にカプサイシンを与えると、与えなかった群に比べて体脂肪の増加が抑えられたと言うような研究成果はいくつも上がっています。
ですので、何らかの効果は期待できるのかもしれませんが、人間はもともと太り過ぎによる害を知っているので、極端な高脂肪食を摂ったりしませんから、効果が表れにくいのかもしれませんね。
ですから、もし極端な高脂肪食が大好きで、BMIも40.0kg/m2オーバーの、高度肥満の人を集めてテストしたら、異なった結果が得られるかもしれません。しかし、現段階では残念ながら、カプサイシンによるダイエット効果と言うのは、存在しても限定的だと言わざるを得ません。
カプサイシンはアドレナリンを分泌させる
カプサイシンを食べると全身に分布する感覚神経末端で、細胞膜にあるTRPV1と言う受容体に結合します。この受容体は酸や熱などによって身体が傷付けられたと言う侵害的な刺激、つまり「痛み」を感じ取る受容体です。
すると、細胞膜の内外で一定に保たれていた電位が変化し、内と外で電位が逆転する現象が起こり、その結果、焼け付くような痛みを感じます。そして、その痛みの軽いものが「辛味」なのです。
アドレナリンが多く分泌されると身体は戦闘態勢に入ります。骨格筋や心筋などの血管が拡張して血流が盛んになると同時に、皮膚や粘膜の毛細血管は収縮して血流が減少します。胃腸など消化器の働きは強く抑制され、男性では一時的なEDの状態が発生します。
唐辛子などの香辛料は食欲を増進させるのに、ちょっと意外な感じがしませんか。これは飽くまで摂る量によるのです。つまり、摂り過ぎると食欲が消えると言っても良いかもしれませんね。
カプサイシンの辛味刺激は脳で味覚以外の神経に影響を与える
私たちの舌は、味を感じるとその刺激を神経を介して脳に送り、大脳味覚野でその刺激を受け取って味として感じています。しかし、実は辛味と言うのは、味ではないのです。
味と言うのは5つの基本味、甘味・塩味・苦味・酸味・旨味でできていて、辛味が入り込む余地はありません。辛味と言うのは「痛み・熱さ」として、身体が傷つけられたという刺激として感じ取られている側面があるのです。
そのため、通常味を感じたときに反応するのは大脳島皮質味覚野ですが、辛味を感じ取った時には味覚野の隣にある、自律神経による機能に関連したエリアにまで信号が伝わることが判っています。
発汗作用はあるがメカニズムが不明な点もある
カプサイシンに発汗作用があるのは、唐辛子を食べたことのある人ならだれでも理解できるでしょう。アドレナリンによって交感神経が刺激されると、発汗量が増えることも知られています。
しかし、アドレナリンは直接汗腺を刺激せず、副交感神経を刺激するアセチルコリンによって発汗が促進されるという、ちょっと不思議な働きもあります。
また、緊張した時にアドレナリンの働きで出てくる汗は、足の裏や「手に汗握る」状態です。これは敵と戦ったり獲物を獲ったりするときの、滑り止めとして働くのだと考えられています。
汗をかいても体重は減らない
そもそも、汗をかいて減る体重は水分の重さです。もちろん運動してエネルギーを消費したために体温が上がって汗をかけば体重は減りますが、これは汗をかいて体重が減ったのではなく、体重が減って汗をかいていると言った方がいいでしょう。
また、汗をかくことでデトックスになるから、カプサイシンは健康に良いのだという意見も見ますが、汗でできるデトックスは、排便排尿に比べれば微々たるものです。デトックスしたければ便秘しないように腸を整えると同時に、適切な水分摂取を心掛けて下さい。
一部には、有酸素運動による脂肪代謝効果は運動開始からかなり遅れて始まるのを、カプサイシンによって早くスタートできるのだという主張もあります。しかし、残念ながらこれも研究によるデータを示したものは見当たりませんでした。
汗には2種類あるが体温調整に使われるのは1つ
汗は汗腺から分泌されます。この汗腺には2種類あって、1つは皮膚表面に汗を出すエクリン腺、もう一つは毛穴の中に汗を出すアポクリン腺です。
エクリン腺の汗は体温調節に大きな役目を持っていて、運動した時に上昇した体温を元に戻すために働いています。夏場の熱中症予防の話題の時に、よく塩分を摂りましょうという話題が出ますね。
これは、汗腺が塩分の再吸収を担っているからです。ゆっくり汗をかくと、体温調整に必要な水分だけが出て、塩分は再吸収されます。一方、大量に汗をかくと再吸収が間に合わなくなって、塩分の多い濃い汗になるのです。
そして、カプサイシンを摂った時には顔を中心に汗をたくさんかくことがあります。これがダイエット効果に関係しているのではないかと考えられていました。
しかし、カプサイシンによる発汗は、脂肪燃焼によるエネルギー消費に伴うものよりも、先にお話しした、脳の中での信号の影響が味覚野から自律神経系に影響を及ぼしたことによって起こっている可能性が示唆されています。
つまり熱発生によって汗が出ているのではなく、脳に「汗を出せ」と言う指令を直接出させている可能性が高いのです。このことは、カプサイシンにはダイエット効果が期待できないという意見を後押しするものでもありますね。
脂肪を減らしたという研究では大量の唐辛子を使っている
カプサイシンの効果を人間で検証した研究では、唐辛子を使った料理を食べてもらったり、カプサイシンの錠剤を飲んでもらったりして効果を測っています。それをいろいろ見比べてみると、脂肪燃焼効果は用量依存的に高くなることが示されていました。
用量依存的にと言うのは「たくさん食べれば効果も大きい」と言うことです。しかし、唐辛子をたくさん食べるって、昭和のテレビバラエティの企画みたいで、あんまりやりたくないですよね。
有効であったケースではかなり大量のカプサイシンを摂っている
日本で行われた研究では、被験者に唐辛子を10g食べさせたとあります。唐辛子10gと言うとかなり多いですね。良く見る鷹の爪の場合、1本平均0.4gですから25本と言うことになります。別の研究では唐辛子5g入りのキムチを食べさせたそうです。
被験者の皆さんは無事であったのか心配になってしまいますが、こうした研究に参加される人は実験内容をよく理解してから参加するのがルールですので、激辛に自信のある人たちだったのでしょう。
研究データを見たときは、辛さの弱い品種か、乾燥していない唐辛子なのかなとも思いましたが、データの中に唐辛子1gに3mgのカプサイシンが含まれているというデータがありました。
公的な食品研究所のデータを見ると、乾燥した鷹の爪1本あたりのカプサイシン量は700μg程度が最大です。乾燥した鷹の爪は0.4g程度の重さですので、1g当たりにすると1.75mgと言うことになります。
つまり、この研究では普通の鷹の爪より1.7倍くらい辛い唐辛子を、25本食べたと言うことになります。品種の差によるものかもしれませんね。
この研究では、脂肪代謝が亢進されたのは、高脂肪食を摂っていた人であったと報告されています。先に紹介した動物実験の結果と一致していますね。また、脂肪代謝が亢進されていたのは30分程度だったということです。
キムチを使った研究では、個人差が大きかったものの、15%~40%ほど酸素消費量が増えたという結果が得られています。キムチに使われている唐辛子は、カプサイシンの含有量にばらつきがあり、1gあたり10mg~100mgだそうです。
上の研究よりもさらに辛い唐辛子が使われていたようです、
効果がなかったという研究はカプサイシン量が少なかった
カプサイシンを錠剤で摂るということで効果を調べた研究がありますが、この研究では呼吸に関する効果が見られたものの、上で紹介したような大きな効果は見られませんでした。
0.24mgと言うことは、先のデータに照らすと鷹の爪1/3本くらいですね。この程度でも、料理に使うならスパイスとして充分辛味が出せますが、ダイエット効果はほとんどないようです。
これらのデータから見ると、少なくとも0.24mgのカプサイシンではほとんどダイエット効果が見られず、30mg以上になると高脂肪食を摂っていたときに限り効果が期待でき、キムチの例から引くと50mg~500mgで酸素消費量が上がるようです。
カプサイシンには危険性があるので摂り方には注意が必要
カプサイシンや唐辛子について、摂りすぎは危険だから摂取上限量を規定しようという動きは、日本でも外国でも存在していました。しかし、現在までそうした規定は見送られています。
それは「辛いものだから食べれば判るだろう」と言う、極めて常識的な判断からなのですが、それが通用しないのがダイエットの怖いところなのです。
ダイエット目的がとんでもないことになった事例
日本で、ダイエットしたくて唐辛子と酢・塩で作られた複数の唐辛子ソースをたくさん飲んだことで、2日後に激痛と嘔吐が起こったと言う事故がありました。原因は食道粘膜下血腫だったそうです。
食道粘膜下血腫はそれほど頻度の高い病気ではありませんが、ひどい嘔吐によっても起こることが知られていますから、唐辛子ソースを飲んで嘔吐したのが原因かもしれません。
また、そうした無茶ではなく、サプリを飲んで起こった事例も外国から報告されています。41歳の男性がカプサイシンサプリを3か月間飲んで、心筋梗塞を発症してしまったという事例です。
このケースでは、規定量を守って飲んでいたのかどうかの情報がありませんから、あまり参考にはなりませんが、こうした危険性もあると言うことは知っておいた方が良いですね。
普通の食べ物として取る分には唐辛子は安全なもの
イボ痔・切れ痔の手術を受けた人たちや、切れ痔になったばかりの人たち合計100人ほどに、唐辛子の粉3gを一週間投与したそうです。予想通り、痔が再発したり悪化したりしました。
国立健康・栄養研究所によると、唐辛子・カプサイシンの安全性については次のようであると指摘しています。
- 通常の食事に含まれる量の摂取、外用での適切な使用は、おそらく安全である。
- 過剰摂取すると胃腸炎を起こしたり、高用量または長期にわたる摂取は肝毒性または腎毒性を招くおそれがある。
- 妊娠中の通常の食事に含まれる量の摂取または外用での適切な使用は、おそらく安全である。
- 授乳中の摂取は、母乳で育つ幼児に皮膚炎を起こす場合があり、危険性が示唆されている。
- 2歳以下の子供に外用で用いるのは、危険性が示唆されている。
- 摂取により、胃腸の炎症、発汗やほてり、催涙、鼻水を引き起こすことがある。また、吸引すると、咳や呼吸困難、鼻づまり、目の炎症、アレルギー性歯槽骨炎を起こす可能性がある。特に目や粘膜を刺激する。
- 外用すると、刺激性があり、まれに蕁麻疹や、生の果実に触れると接触性皮膚炎を起こすことがある。
ここに書かれている通り、「通常の食事に含まれている量」であれば全く問題はありません。ただ、「通常の食事」と言われても色々ですよね。
これは四川料理では非常にポピュラーな水煮肉片(シュイジュゥローピェン)です。四川料理にありがちなルックスですが、実際には唐辛子も油もよく切って食べますから、それほど辛くはありません。
警告されている要素を忘れないようにしよう
まず、過剰摂取すると胃腸炎を起こすということです。この場合は一回であっても極端な量を摂ると胃腸炎を起こしてしまうということです。ですから、サプリであっても、胃の中で溶けて唐辛子と同じ効果が出るわけですから含有量には注意が必要です。
さらに高用量または長期にわたる摂取と言うのも注意すべきところですね。高用量と言うのはお薬で使う言葉ですからサプリを意識しているのでしょう。
長期と言うことについては、どの程度の量を意識しているのかはわかりませんが、通常の食事では摂らない量と言うことと考えて良いと思います。仮に鷹の爪100本とした場合、カプサイシンで50mg~67mg以上くらいでしょうか。
それを1か月以上食べたりすると、肝臓や腎臓を壊す恐れがあるということですね。そして、発汗についても悪い影響と考えられているようです。
さらに、授乳中のお母さんは、唐辛子を食べることそのものを控えた方が良いと言うことです。どの程度なら大丈夫なのかは産婦人科の先生と相談して下さい。多分うどんの七味ぐらいは大丈夫じゃないかと思います。
カプサイシンやその仲間はまだ研究段階の成分
カプサイシンについては、有効性と危険性についてまだまだ充分研究されているとは言えません。例えばカプサイシンをたくさん摂ろうと思うと辛すぎて摂れませんね。そこで、カプサイシンの仲間で何か有効なものはないだろうかと言う研究も行われています。
唐辛子とがんリスクの関係
唐辛子と言えば韓国のキムチを連想する人も少なくないでしょう。その韓国の研究者が唐辛子とがんについての研究発表を行っています。
それによると、唐辛子のカプサイシン自体には発がん性がないが、別の発がん性物質によるがん発生を促進する恐れがあるから、食品などからの適量摂取量を超えて摂らないようにした方が良いと警告しています。
この研究は動物実験で、皮膚がんに関して行われたものですので、唐辛子の外用が中心になっています。しかし、調理と言う言葉が使われていることから内服についても関連性を主張しているのだと思われます。
もともとカプサイシンにはがんの発生を抑制する作用が研究されていましたので、こうした二面性についても、今後研究が進むでしょう。
カプサイシンは食欲増進物質である
一方、辛すぎるものを食べると、胸やけして食欲が落ちます。これは胃粘膜が荒れてしまうということにもよりますし、胃で分泌される食欲増進ホルモンを脳に伝える神経路が遮断されるためでもあります。
やはり、カプサイシンは刺激が強すぎてトラブルを起こす可能性が否定できないということです。
唐辛子・カプサイシンでダイエットは考えない方が無難
唐辛子の辛味成分であるカプサイシンやその近縁物質には脂肪の代謝を促進するなどの働きで、ダイエットに寄与する部分がないわけではありません。しかし、その効果は限定的ですし、大量のカプサイシン摂取が必要になります。
一方で、食べ物から普通に摂れる量を超えてのカプサイシン摂取は、胃を悪くしたり、痔を悪化させたり、最悪の場合心筋梗塞につながる可能性もあります。
さらに、長期間摂り続けることによって、肝臓や腎臓を壊す可能性も示唆されていますから、ダイエット目的でカプサイシンを摂るのは、少なくともその害を相殺する方法が見つかるまではは避けておいた方が良いと言えるのです。
唐辛子は料理をおいしくするスパイスとして利用してください。