家にある薬で痔をなんとかしたい!
急に痛み出したお尻……何とかしたくて引き出しを探したら出てきた軟膏薬。これって使っていいもの?
こんなシーン、あるあるですよね?
余った処方薬をつかっていいのか、怖い副作用はないのか、それ以前に効果があるのか。そんなことが気になって、なかなか使えないものです。
今回は、皮膚の炎症などによく処方されるリンデロン軟膏がデリケートゾーンの痔に使用できるのか。そして、知ってるようで知らないステロイド剤の謎に迫ってみました。
ステロイドに少しでも不安のある方、必見です!
「リンデロン軟膏」とは
リンデロン軟膏とは炎症を抑える薬として、様々な症状で処方されます。しかし、その種類について正しく理解されている方は少ないのではないでしょうか。
リンデロンは4種類
リンデロンには4種類あり、リンデロン○○というようにアルファベットがついています。
確かに同じ名前がついとるが、それぞれ薬の強さも成分も「全く別物」じゃと認識しておくべきなんじゃ。
【リンデロンDP】
湿疹、あせも、アトピー性皮膚炎、乾癬(かんせん)、虫刺されなど様々な皮膚疾患に処方されます。
リンデロンの中ではステロイドの強さが一番強い部類ですので、子供への使用はできません。また、手足や体幹部は使用できますが、薬を吸収しやすい顔などへの使用は避けてください。
【リンデロンV】
DP同様、湿疹、あせも、アトピー性皮膚炎、乾癬(かんせん)、虫刺されなど様々な皮膚疾患に処方されます。
手足や体幹部だけでなく顔への使用もできますが、使用法は医師の指示に従いましょう。子供の場合も顔には使用できません。
【リンデロンVG】
Vの成分にゲンタマイシンという抗生物質が配合されていますので、抗炎症作用+殺菌作用があります。そのため、様々な皮膚疾患に加え、とびひなどの細菌による感染症を伴うものに大変有効です。
また、
※水泡が破れてじゅくじゅくしたとびひの場合は悪化の可能性もありますので、自己判断せずに必ず医師に相談しましょう。※
【リンデロンA】
他のリンデロンと違い、耳や眼に使用できる特別なステロイド剤です。
目、外耳、鼻のかゆみ、腫れ、赤みなどに効果があるほか、フラジオマイシンという抗生物質が配合されていますので、眼・耳・鼻などの細菌感染を伴う症状に使用されます。
リンデロンDP・V・VGは皮膚疾患の外用薬ですので皮膚科などで、Aは眼科や耳鼻科などで処方されます。
ステロイドと抗生物質を配合
ステロイドの強さは以下のように分けられています。
- I群:Storongest(最も強い)
- II群:Very Strong(非常に強い)
- III群:Strong(強い)
- IV群:Medium(普通)
- V群:Weak(弱い)
強いものほど効果は大きいのですが、副作用の可能性が大きくなりますので、使える部位などが限られてきます。
| リンデロンの分類 | ステロイド成分名 | ステロイドの強さ | 抗生物質名 | 主な使用可能部位 |
|---|---|---|---|---|
| DP | ベタメタゾンジプロピオン酸エステル | II:非常に強い | – | 皮膚 ※手足及び体幹部のみ |
| V | ベタメタゾン吉草酸エステル | III:強い | – | 皮膚 |
| VG | ベタメタゾン吉草酸エステル | III:強い | ゲンタマイシン硫酸塩 | 皮膚 |
| A | ベタメタゾンリン酸エステル | V:弱い | フラジオマイシン硫酸塩 | 眼・耳・鼻など |
このように、
- DPは非常に強いステロイド剤のため使用部位が局限的
- VとVGは顔等にも使えるが慎重さが必要
- VとVGの違いは抗生物質の有無
- Aはステロイドとしては弱いために眼などにも使用できる
という違いがあることが分かります。
リンデロン-VGで痔の症状を緩和
痔にも使えるリンデロンVG。しかし、やはりステロイド剤ですから正しい使い方を把握しておきましょう。
炎症による赤み・はれ・かゆみを緩和
ステロイド剤は、人間の副腎皮質ホルモンの一種である糖質コルチコイドをベースにして作られている薬のことで、非常に強い抗炎症作用と免疫抑制作用を持つことで知られています。
私たちの体は、ケガをしたり虫に刺されたり病気になったりすると、その部分が赤くなったり腫れたり熱をもったりします。この状態を炎症と言います。
その炎症がいわゆる
ステロイド剤にはその警報そのものを止める力があります。その結果、炎症も免疫反応も抑えられるのです。
他の抗炎症作用がある薬というのは、炎症の原因に働きかけるというものなので、原因に応じて使える薬の種類が違ってくるのですが、ステロイド剤は原因に関係なく警報そのものを止めてしまうので、ありとあらゆる炎症を抑えてくれるのです。
また、抗生物質を配合してあるので、細菌の繁殖による化膿を抑制する効果も期待できます。
基本の使い方
先にご紹介した通り、ステロイド剤には抗炎症作用・免疫抑制作用があります。
この免疫抑制作用というのは、
基本的には、ステロイド剤の使用法は医師の指示に従ってください。特に、1日の塗る回数や使用する期間は重要です。自分の判断で回数を増やしたり、期間を短くしたり伸ばしたりは厳禁です。
家にあるリンデロンVGを痔に使う場合は、以下のことに気を付けて使用してください。
- 急に腫れて痛み出したいぼ痔になら使用可
- 切れ痔には使用しない
- 塗るのは1日2回まで
- 薬をゴシゴシ擦り込むように塗らない
- 厚く塗らない
- 薄く患部全体を覆うように塗る
- できるだけ早く病院へ行く
また、多くの方はステロイド剤に対して不安が大きいと思われますので、特に気になる点をまとめました。
妊娠中でも使えますか?
塗り薬として使用するには、問題ありません。なぜなら、皮膚から吸収される量は極々微量であり、胎児への影響はほぼ無いと思われます。
内服薬として使用する場合も、だいたい1日20mgまでなら問題ないとされています。
しかし、必ず医師による処方を受け、指示を守って使用しましょう。
赤ちゃんに使ってもいいですか?
赤ちゃんにも使えます。
使うことそのものに抵抗がある方も多いですが、用法・用量を守れば非常に有効な薬です。
赤ちゃんは「掻いちゃダメ」と言ってもそれは無理です。
できるだけ早く湿疹などのかゆみを止めて上げることで、悪化を防ぎましょう。
余ったからと言って、医師の診断を受けないで自己判断で使用することは厳禁です。
これを使ったらいぼ痔はなくなりますか?
無くなりません。
いぼ痔は血液がうっ血して起こる「いぼ状の腫れ」です。
ステロイドは、いぼ痔に起こった炎症やかゆみを抑えることができますが、腫れそのものを無くすことはできないのです。
市販薬はありますか?
リンデロン軟膏は処方薬なので市販されていません。
しかし、似たような効果が期待できる市販薬はあります。それは「ベトネベートN軟膏AS(指定第2類医薬品)」です。
リンデロンVGがベタメタゾン吉草酸エステル+ゲンタマイシンであるのに対し、ベトネベートN軟膏ASはベタメタゾン吉草酸エステル+フラジオマイシンです。
市販薬と言えどステロイド剤ですので、用法・用量をキチンと守りましょう。
使用上の注意点をしっかり確認
日本人には
しかし、使用法を守れば素晴らしい効果を発揮するものでもあります。その効能が発見された時は「奇跡の薬」と大騒ぎになったほどです。その効果をしっかり享受するためにも、守るべきルールを正確に把握しましょう。
使用できない方・禁忌
以下にリンデロンVGにおける禁忌、すなわち使用してはいけない場合を列記します。
リンデロンVGの禁忌事項
- ゲンタマイシン耐性菌又は非感性菌による皮膚感染のある場合【皮膚感染が増悪するおそれがある】
- 真菌・スピロヘータ・ウイルス皮膚感染症及び動物性皮膚疾患(疥癬、けじらみ等)【これらの疾患が増悪するおそれがある】
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- 鼓膜に穿孔のある湿疹性外耳道炎【穿孔部位の治癒の遅延及び感染のおそれがある】
- 潰瘍(ベーチェット病は除く)、第2度深在性以上の熱傷・凍傷【皮膚の再生が抑制され、治癒が遅延するおそれがある】
- ストレプトマイシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、フラジオマイシン等のアミノグリコシド系抗生物質又はバシトラシンに対し過敏症の既往歴のある患者
ステロイド剤は、正常な免疫反応まで抑制してしまうため、症状によっては治るのが遅くなったり悪化したりする恐れがあります。
また、VGにはゲンタマイシンという抗生物質が配合されていますので、それに耐性がある菌が原因である場合や、抗生物質に対する過敏症がある方も使用できません。
更に、禁忌とは別に
リンデロンVGの注意事項
- 湿疹、皮膚炎群、乾癬、掌蹠(しょうせき)膿疱症、外傷・熱傷及び手術創等に関しては、湿潤、びらん、結痂(けっか)を伴うか、又は二次感染を併発しているものにのみ使用し、これらの症状が改善した場合には、速やかに使用を中止し、抗生物質を含有しない薬剤に切り替えること。
- 感作されるおそれがあるので、観察を十分に行い感作されたことを示す兆候(そう痒、発赤、腫脹、丘疹、小水疱等)があらわれた場合には使用を中止すること。
- 大量又は長期にわたる広範囲の使用により、副腎皮質ホルモンを全身投与した場合と同様な症状が出る場合がある。
- 症状改善後は、できるだけ速やかに使用を中止すること。
- 湿疹や皮膚炎、手術の傷跡等に関しては、傷が湿っていたり、表皮が赤くただれて欠けていたり、かさぶたができていたり、細菌などによる二次感染を併発しているものに対してのみ使用し、症状が改善したら使用の中止・薬の切り替えをすること。
- この薬の使用で、体が抗原に対して過敏な状態になるおそれがあるので、よく観察して、かゆくなる、赤くなる、腫れる、直径1cm以下の小さな発疹ができる、小さな水ぶくれができるなどの症状がおこったら、すぐに使用を中止する。
じゃあ、副腎皮質ホルモンを全身投与した場合の副作用っていうのは、どんなものがあるのかしら?
【副腎皮質ホルモンを全身投与した場合の主な副作用】
- 易感染性:免疫力が落ちるのでインフルエンザ等にかかりやすくなる
- 骨粗しょう症:骨がスカスカになり、骨折しやすくなる
- 糖尿病:ステロイドは肝臓で糖を合成する働きを活性させるため
- 消化管潰瘍:特に胃潰瘍になりやすくなる
- 精神症状(ステロイド精神病):うつ状態、不眠症、多幸症になることがある
- 満月様顔貌(ムーンフェイス):脂質代謝障害が出て、顔や首周りに脂肪がつきやすくなる
- 高脂血症:血中コレステロールや中性脂肪を高める作用があるため
- 高血圧症:血中のナトリウムが増える作用があるため
- 白内障:白内障の進行が早まる
- 緑内障:眼圧が高くなって視野が狭くなる病気
- 副腎不全:ステロイドを内服している間、自分の副腎が休止状態になるため
他にも、皮膚が薄くなったり月経不順になったりします。小さなことでも異常を感じたら、放置せずに医師に相談しましょう。
用法・用量を守る
医師は、その症状に合わせて用法・用量を指示してくれます。
治りが遅いから、あるいは治っているように見えるから、などという理由で自己判断で薬の量を増やしたり減らしたりすることは良くありません。
リンデロン等のステロイド剤を処方され、もし余ったりしたら用法・用量を説明してあるものと一緒に保管しておきましょう。
副作用も知っておこう
先ほど副腎皮質ホルモンを全身投与した場合の副作用を列記しましたが、ここでは外用薬として使用した場合に見られる副作用をご説明します。
外用薬でも1~2週間程度、用量を守って使用して入れば問題はほとんどありませんが、まれに接触皮膚炎(かぶれ)や発疹、発赤、かゆみなどが起こる場合があります。しばらくしても良くならない、または悪化する場合は受診しましょう。
また、長期間使用することで以下のような皮膚症状(ステロイド皮膚症)が見られることがあります。
- 皮膚が白くなる
- 皮膚が委縮して薄くなる
- 皮膚がてかてか光る
- しわ
- 毛細血管拡張
- 乾燥肌
- 酒さ様皮膚炎(赤ら顔)
- 紫斑
- にきび
- 多毛
このような症状は薬を止めれば徐々に回復します。医師に相談しましょう。
更に、大量に長期間使用した場合、および、目の周りへの使用を繰り返した場合には、緑内障や白内障という目に重篤な副作用が出ることがあります。
かすんで見える、まぶしく見える、目が痛い、視力が低下したなどの目の症状や、頭痛、吐き気などが起こった場合はすぐに使用を中止し、医師に相談してください。
よく聞く外用処方薬3つもチェック!
皮膚科で処方される薬の中でもよく耳にするものも、痔に効くのでしょうか。その成分や禁忌、副作用などもチェックしておきましょう。
ゲンタシン
抗生物質ゲンタマイシン硫酸塩を含有する薬です。皮膚感染症の原因となる菌を殺菌して炎症を抑えます。
主に切れ痔、痔ろうに使用できますが、あくまで傷口の殺菌をして化膿するのを防ぐためですので、痔を治すことはできません。応急処置だと思いましょう。
| 禁忌 | 副作用 | ステロイドの有無 |
|---|---|---|
| 本剤並びに他のアミノグリコシド系抗生物質及びバシトラシンに対し過敏症の既往歴のある患者 | ≪主な副作用≫
≪重い副作用≫
| 無 |
高齢者や新生児、腎障害、肝障害などの持病のある方は使用には注意が必要です。必ず医師の診断を受けたうえで、使用してください。
ロコイド
ロコイド軟膏はヒドロコルチゾン酪酸エステルが主成分のステロイド剤です。その強さは
抗生物質は入っていないので、切れ痔などの化膿止めは期待できませんが、いぼ痔の炎症には有効です。
| 禁忌 | 副作用 | ステロイドの有無 |
|---|---|---|
| ≪主な副作用≫
≪重い副作用≫
| 有 |
禁忌や副作用等に関してはリンデロンのそれと同様ですが、ステロイドが弱い塗布薬のため影響は稀です。
アンテベート
こちらはベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステルが主成分のステロイド剤で、強さは
背中や足の裏など、皮膚の厚い部分には効果的です。痔は粘膜及び粘膜に近い皮膚にできますので、アンテベートは使わない方が良いでしょう。
| 禁忌 | 副作用 | ステロイドの有無 |
|---|---|---|
| ≪主な副作用≫
≪重い副作用≫
| 有 |
どうしても心配ならステロイドフリー
分かってはいるけれどやっぱり副作用が心配……という方はステロイドが配合されていないものを選びましょう。
市販薬でも効果が期待できるお薬があります。ステロイド配合は長期間使えませんが、ステロイドフリーのものは
「痔に~は♪」でおなじみボラギノールM
CMで流れているフレーズが印象的なシオノギ製薬のボラギノール。ステロイド配合の「ボラギノールA」シリーズが人気ですが、ステロイドフリーのラインもあります。それが「ボラギノールM」です。
痛みやかゆみを抑えるリドカイン、抗炎症作用のグリチルレチン酸、傷の治りを助けるアラントイン、そして血液の循環を良くするビタミンE酢酸エステルという4つの成分がいぼ痔はもちろん、切れ痔にも高い効果を発揮します。
【禁忌】
15歳未満及び本剤によるアレルギー症状を起こしたことがある人
【副作用】
- 坐剤(坐薬)には漫然と長期使用するとまれに顔や手足がむくんだり、血圧が高くなる等の症状(偽アルドステロン症)を引き起こすことがある。
- 発疹、発赤、かゆみ、腫れ、刺激感などの皮膚症状がみられたら、速やかに使用を中止して医師又は薬剤師に相談する。
す~っと爽快感!プリザクールジェル
ひんやりクールな爽快感をという方は、大正製薬のプリザクールジェルがおすすめです。
リドカインを始め、かゆみを鎮めるクロルフェニラミンマレイン酸塩、腫れを抑える塩酸テトラヒドロゾリン、殺菌効果のベンザルコニウム塩化物、そしてスーッとするメントールが配合されています。
【禁忌】
医師の治療を受けている人及び本剤によるアレルギー症状を起こしたことがある人は事前に医師に相談。
【副作用】
発疹、発赤、かゆみ、腫れ、刺激感などの皮膚症状がみられたら、速やかに使用を中止して医師又は薬剤師に相談する。
花岡青洲考案の紫雲膏(しうんこう)
ステロイドだけじゃなくて化学物質全般が心配という方には、漢方薬がおすすめです。
ツムラやクラシエから出ている紫雲膏は、なんと
【禁忌】
他の薬を使用中の人、妊娠中または授乳中、薬によるアレルギー症状を起こしたことがある人は事前に医師に相談。
【副作用】
発疹、かゆみなどの皮膚症状がみられたら、速やかに使用を中止して医師又は薬剤師に相談する。
セルフケアはできるだけ慎重に
リンデロンは病院での処方薬ですから、とても高い効果が期待できます。ですので、痔が痛くてたまらない時に引き出しからリンデロン軟膏が出てきたら……思わずすぐにでも塗りたくなってしまうでしょう。
ですが、ステロイド配合薬には守るべきルールというものがあります。
その効果を最大限享受するために、そして後々副作用に悩まされることがないように、できるだけ慎重になっておく必要があるのです。