オーガニックの万屋。一生もんSHOP 緑々 あおあお
小倉駅から徒歩7分の北九州市小倉北区京町に雑貨屋『一生もんshop緑々』はあります。
置いてあるものは、途上国の問題解決に繋がるフェアトレードされた衣類や手で編まれた小物、無添加石鹸やシャンプー、
オーガニック食材を用いたお菓子や調味料など、生活用品に関わる天然素材を使用した商品が並んでいます。
「作り手の人を知る喜びとか、その国々の文化を知ることが本当に楽しくて」と店主である宮下緑さん。
宮下さんが一つずつ丁寧に選ばれたものには、作り手の顔が見え、時間をかけて長く愛用していきたいものが並んでいます。
店内のブックカフェで、ゆったりと本を読みながらお茶や珈琲を楽しむことも。
オーガニックやエコが浸透していない時代の中で、どうしていちはやく取り組んだのか。
そんな開店までのいきさつとフェアトレードの出会いについて宮下さんにお聞きしました。
どうしたら楽しく伝えれるか
− フェアトレードの概念に出会ったのはいつ頃なのですか?
宮下 : 北九州市内の大学を卒業後は事務の仕事をしていたので、環境問題に取り組む活動については何も知りませんでしたし、勉強もしていませんでした。2003年秋にたまたま転職した先が、北九州市の環境啓発施設の企画運営という仕事でした。環境に優しい消費者を育てる目的で、環境に対する意識のハードルを低くした近寄りやすい雰囲気の啓発施設で、市民向けに色々なエコ商品を置いて紹介したり、リユースの洋服を置いたり、ゴミを減らすために捨ててしまうものを再利用するワークショップなどを行っていました。その活動に取り組んでいる中で、フェアトレードに出会いました。
− 北九州市内にはフェアトレードのお店はあったのですか?
宮下 : 北九州市内ではないのですが、当時は田川郡赤村の『クリキンディ』(2012年12月閉店)というお店しかなかったですね。『クリキンディ』ができたのも啓発施設の仕事を始めて何年か後で、実際に訪れて、一緒にフェアトレードのイベントをしませんかと持ちかけたりしましたね。そのイベントを通じていろんな人と知り合うようになりました。その当時はフェアトレードのお店に行きたければ、赤村まで行かないといけないので、ネットでフェアトレードのものを取り寄せてたりしていました。フェアトレードについて取り組んでいくことが楽しかったですね。
作り手が見えることにより愛着が湧く
入り口には、廃材を用いた大きな窓ガラスに、観葉植物とガーデニング用品が迎える。
− 楽しかったというのは、色々な文化を知れるから楽しかったのですか?
宮下 : そうですね。問題解決に繋がっている喜びもありました。物を得る楽しみと同時に、これは誰かがずっと繋がって繋がってきたモノで、これにお金を支払うことにより生活をしている人がいるんだなという安心感といいますか。どこかの人と全然繋がらない世の中になってきている中で、どっちを選ぶのか。
たとえば、大量生産で安く作られたもの10個と、作り手がわかり、材料を吟味して時間をかけて丁寧に作られたもの1個が同じ値段だった場合、どっちを選ぶか。それなりのお値段で、ちゃんと選んで買った物だと捨てたらもったいないと思うじゃないですか。そういうお金の使い方をしたいと思っています。その当時そこまで意識していたかはどうかとして、そういう思いは前々からありましたね。
− フェアトレードに興味を持つ前と後では消費の仕方が変わりましたか?
宮下 : 変わりましたね。家族や周りの人がみんな驚きましたね。洋服なども天然素材でできているもの着ています。バッグやアクセサリーなど選ぶものも変わったので、10年ぶりに会った人が気づかないぐらいですね。
オーガニックの万屋
雑貨類だけではなく、調味料や飲み物も置いてある。
− それはフェアトレードというものを知ったから変わったのですか?
宮下 : いえ、そっちの方が身に着けたりするのが楽しくなるからですね。フェアトレードのものを選ぶことが、問題解決に繋がっていき、消費の仕方も変わり、ライフスタイルも変わっていくというのを伝えたいし、心地よく暮らしていきたい。そんなことは難しいのかもしれませんけど、そういうふうに変わっていけたら、より楽しい世の中になるのではないのかと思っています。
− だんだんフェアトレードのものを紹介したいという気持ちが強くなって、この場所にお店を開いたのですか?
宮下 : そうですね。だから、働いていた施設でフェアトレードという言葉に出会えたことに感謝しています。環境に優しい消費者が集まる場所にしたかったというのは同じ気持ちですね。ただ、”環境に優しいお店あおあお”と掲げますと、入り口のハードルをあげてしまう気がしますので、オーガニックショップとかエコショップとか、そういう言葉を使わなかったですね。子供の駄菓子やお豆腐から、蚊取線香まで売っている昔ながらの万(よろず)屋さん。そのフェアトレードのオーガニック版というのが一番近いイメージです。生活のすべてものがまかなえたらといいなと。
インタビュー中の宮下さん。置いてある本は『暮らしの手帖』や『雲のうえ』のバックナンバーなど。
−お店を開店して何年ぐらいになるのですか?
宮下 : 6年ぐらいになります。
−場所はもともと小倉で探していたのですか?
宮下 : 同じ小倉北区でも、私が以前勤めていた場所や住んでいる場所だったら、この町はこんな町でというのが、歩き回っていますのでわかるのですけど、ちょっと離れるとよくわからないんですよね。そういう範囲で探していましたね。
フェアトレードの魅力は、暮らしを見直すことになる。
天井に描かれている可愛らしい絵と文字。
− 来るお客さんはフェアトレードという言葉にひっかかってこられるのですか?
宮下 : いえ、フェアトレードと知って来られる方ばかりではありません。むしろ少ないかな。ただフェアトレードの洋服や小物などには、しっかりとタグにメッセージが書いてありますので、タグを確認する際にこれはフェアトレードのものと思われるのではないのかと。
− 最後に一言お願いします。
宮下 : 人の手が加わったもの、ものの背景を知る、一つのものでいいから、そういうことを知ってもらえたらと思います。
時間をかけてその国々の文化や、作り手の人を知る喜びとか作る喜びとかを知ることが本当に楽しくて。
科学を否定しているわけではないのですが、私たちが忘れてしまったものが、フェアトレードの品々にあるのではないかなと思います。フェアトレードというと経済の仕組みのことと捉われますが、実はそれが食べることや、生きることにも繋がっていく。大量生産、大量消費という社会を見直して、豊かさの背景にある、貧困や環境破壊などの差別や犠牲という搾取の歴史も知っていくことになる。それが生きていくことなんだとか、色々なことを考えさせてくれますね。使われている材料、たとえばコーヒーやコットンの歴史とか、私もいまだに知らないことだらけです。
フェアトレードの魅力というのは、問題解決だけではなく、自分達のことについて知ることになり、暮らしを見つめ直すことになる。なぜお店に来てくれるのかなと考えたら、みなさんフェアトレードそのものに興味があるということではなく、時間のかかった風合いとか、手で作られた温もりとか、時間軸に人は感動するんだろうと思います。問題意識の高いところとかより、この商品かわいいな、温かみがあるなとか、好きな国とか、そういった自発的な興味ではいってもらいたいですね。
(聞き手・文/小野 義明 写真/松本 大聖)