2016.01.15 Friday

0

■タブという防具

アーチェリーでストリングを取り掛けてリリースする際に、指先をストリングから守る防具として、タブやグラブがあります。昔は初心者のレッスンでは牛革製のグラブを用いて取り掛けを学びましたが、現在では少し柔らかめの牛革を用いたタブが使われています。

初心者がグラブではなくタブを使うことについての問題は多々あるのですが、今回はそれらの点についての説明は割愛します。

初心者用のタブの表革に牛革が使われるのは、グラブを使う理由と同じです。引きの弱いリムではストリングのテンションが低いために、丈夫でコシの強いコードバンを使うと、指先のストリングインフォメーションがわからなくなるからです。レッスンを続け、上達とともに徐々にポンドアップしていくに従ってストリングのテンションが増し、それに伴ってタブの表革は上級者用の素材を使うようになります。近年は一部で様々な化学合成素材もありますが、アーチェリーでは上級者用のタブ表皮の素材には、コードバンを使います。

アーチェリーのタブ革に使われるコードバンを検索すると、このブログがヒットするようです。先に言っておくと、タブの革なんてよほどの上級者でもない限り素材を気にしても仕方がありません。タブというパーツは指先をストリングから守る防具でしかありません。剣道であれば、初段そこそこの低次元で、防具の小手の掌部分の素材に過剰にこだわるようなものです。こだわることに意味がありませんし、こだわったところで違いもわかりません。わかったような気になっている、単なる自己満足に過ぎません。

18mで550点も出せないうちは、指先が皮革素材で保護できていればイイだけなので、タブ革にどんな性能を求めても、何を使っても得点は変わりません。ただし、正しい取り掛けとリリースをマスターしたレッスン受講生が、指導者の指示で練習量を増やしていくような場合は、コードバンを使うこともあります。リリースの際に指が痛いというのであれば、それはタブの素材が原因ではなく、取り掛けのマズさや、自分のレベルに合わないポンドアップが原因であること、それに深指屈筋の過緊張(腕力で引っぱってる)によってリリースが不正確である事が原因な場合が多いので、タブ革にこだわるよりも先に、リムを弱いものに戻す事や、ドローイングのアプローチを根本的に改善しなければならない人が多いです。

■タブがどうこう言う前に まずは指先のケアから

タブ革のコードバンが何がいいというような相談がやたら多いですが、タブ革の素材にこだわる前に、あなたの指先の皮膚の状態はどうなっているか?と心配になります。1日で何100射もするクセに、多くの人は単に射ちっぱなしで、守らなければならない大切な指先を、一切守ろうとしていません。そんなの単なる乱射に過ぎません。もはや、健康という状態を逸脱しているのではないかと思われるような指先になってしまっている人もいます。それが命をかけて世界で戦うような選手であればまだしも、それほど大した得点でもない中級者だったりします。

アーチェリーとは、身体を痛めつけるスポーツではないのです。アーチェリーの射に関するテクニックは必死になって身につけようと練習に励むのに、指先の状態を放置して実射を繰り返していては、何の意味もありません。コードバンの素材にこだわる前に、自分の指先という大切な素材の状態を、とことんこだわり抜いてください。

指先が痛んだり角質化がひどいという人が多いですが、練習前・練習中・練習後に、ワセリンを使って常に指先をメンテナンスしていれば、そんなヒドイ事にもなりません。ワセリンはハンドクリームのようにベタつきませんし、皮膚にすり込んでいるうちにサラサラになります。保湿効果が高いので、乾燥した冷たい空気に触れる部分の肌に塗っておけば、ひびやあかぎれのような症状を防ぐこともできます。指先に塗って少し余ったぶんは、唇に塗っておけばリップクリーム代わりにもなり、笑顔が苦痛に歪むこともありません(笑)



現役選手だった頃も指先は常にメンテナンスしてきたので、年間10万射以上をこなしていた時代であっても、月に数10射しかしない今でも、指先の状態はほとんど変わることはありません。指先がリリースの繰り返しによる角質化に悩まされるようなこともありません。現役時代には「本当に練習してるのか?」と言われたこともあります。この画像は、ワセリンを塗ってない普段の私の指先の状態です。リリースを行なうデモンストレーションの際には、事前にワセリンを指先にしっかりと摺り込んでおきます。実射数が多くなる場合は、矢取り3回に1回程度のペースで、ワセリンを摺り込みます。ハンドルのグリップの天井部分に当たる、親指の付け根部分も同様にメンテナンスを行ないます。

同時に指先から手のひらまでをマッサージすることで、腱鞘炎などの故障防止にもなるのです。指先のケアについて無頓着の人が多すぎますが、リリースに関する大切なケアなので、決しておろそかにしてはいけません。



ワセリンはこのように、スクワット容器に入れると、携帯に便利です。このような容器は近所のダイソーなどの100円ショップに行けば手に入ります。奥さんや付き合っている彼女に聞けば、余っているのをひとつもらえるかも知れません。この寒い季節はワセリンが固いので大丈夫ですが、酷暑時は容器から漏れ出すことがありますので、ファスナー付きのビニール袋に入れると安心です。プラスチック容器なので煮沸消毒することができません。皮膚に使うものなので、容器に詰め替える前にエタノールで消毒してください。メタノールが含まれている燃料用アルコールや、パーツクリーナーなどの有機溶剤は、絶対に使ってはいけません。



ワセリンを指先に摺り込んだ状態がこれです。しっとりサラサラになります。こうして常にメンテナンスを行い、ストリングの摩擦から指先を守ることで、アーチェリーはさらに楽しいものになります。ハンドクリームを使うと、タブの裏革がネトネトになってしまいますので、基本的にはワセリンを少しずつ使います。

この寒い時季は筋肉の動きが悪いので、スムーズなリリースができなくなる人が多いです。そうなるとリリースの度に冷えた指先が痛むので、マメにメンテナンスをして、同時に指と手のひらと腕をしっかりほぐしておきましょう。ワセリンは薄く塗り伸ばすとベタつかずサラサラになっていきますので、適量を塗ればグリップや取り掛けが滑るようなことにはなりません。しかし量が多すぎると石鹸やハンドソープでは流れ落ちないほどになりますので、少しずつ試してください。

タブという製品は、指先を守るための防具です。なのにその肝心な指先をメンテナンスしないでいるのでは、何のためにタブの革にこだわっているのか、意味がないのです。指先が固く角質化してしまったのでは、どんな上質なコードバンの手触りも、わからなくなってしまうのです。アーチェリーの上達は、むやみに身体に負担を強いることではありません。指先を丁寧にメンテナンスせずに1日200射とか300射とか、どんな自虐行為ですか?こんな基本的なケアすら行なわれてない現場が多いので、一体何を教えているのだろうかと、不思議でたまりません。

■コードバンという素材

コードバンとは、農耕馬の尻の皮をなめして革にして、その革を表側と裏側の両側から削りこみ、皮の内部の芯の固い部分を取り出したものです。それをグレージングといって、コードバンを革から取り出すために削り込んだ表面をガラスを使って研磨して、ピカピカの鏡面仕上げに加工します。

馬から皮を剥ぎ取ったときに生えてた毛の向きを気にする人もいますが、コードバンの表面は、銀面と呼ばれる表皮の層を削り取って加工した、両面が裏革とも言える状態になっています。コードバンとは農耕馬の尻の皮膚を両面から削って内部のコードバンの層を取り出したものなのです。それを鏡面仕上げにしているので、コードバンの表に見える塗装を施した面には、毛穴は見当たりません。多くの人が馬の皮膚の表面だと思い込んでいる皮革の表面は、実は皮革の深層部分なのです。

ごくまれに汗腺の穴が見えるものもありますが、ほとんど気づくことはありません。コードバンはそもそも表皮を失っているのですから、毛の生えてた向きを気にしても仕方がないのです。毛の向きを知るにはコードバンの左右の尻が背面でつながったメガネの状態で購入しなければなりませんが、コードバンの皮革の向きをどちらに装着しても、出せる得点は同じです。皮革には本来繊維の向きがありますが、鏡面仕上げに研磨されてツルツルに加工され、しかも塗装が施されています。ですから皮革の上でのストリングのサービングとの抵抗は、私が仕入れているコードバンであれば、革をどの向きにして使っても変わらぬ性能を発揮します。

現在コードバンを製造しているメーカーは、世界にたった2社しかありません。兵庫県姫路市にある新喜皮革(しんきひかく)と、アメリカのシカゴにあるホーウィンだけです。どちらのコードバンもタブとして使えますが、ホーウィンは新喜皮革のような鏡面仕上げではなく、表面にザラつきを残した状態の仕上げです。馬の質感を残してると言えば美しい言い方になりますが、それでは牛革も変わらないように思えてしまいます(笑)

新喜皮革のコードバンの方が安くて(日本国内で買うことができるので)クオリティが高く、おまけに納期が読める(とは言っても8ヶ月~1年数ヶ月程度かかる)ので安心です。新喜皮革のコードバンは、169,000円の鞄工房山本製の高級ランドセルの素材として使われていたり、高級革靴としての素材としても有名な、世界中のセレブから愛されている高級素材です。芸術品や工芸品に近い物づくりの現場で、熟練のクラフトマンが使う素材なのです。本当はアーチェリーのタブに使うのは、とっても失礼な話なのですよ!



今日はタブ革の材料の、新喜皮革のコードバンが入荷しました。タブのサイズや形状にもよりますが、これでタブ革を75枚程度切り取ることができます。この画像だと3枚とも同じ素材に見えますが、右からコードバン黒芯通しオイルグレージング、コードバン黒芯通し、コードバン黒の順に並べてあります。3枚で58ds(デシ)分、送料合わせて36,116円です。全然高くありません。

■コードバンは品薄なんかじゃない

コードバンの皮革シートは数年前に比べて少し値上がりしてますが、仕入れ原価レベルでの微増なのと、他のアーチェリー用品類が異常に高額なものが多いので、とりたて騒ぐようなものでもありません。高級皮革製品としての世界中からの需要の高まりで、半年程度だった納期が8ヶ月になり1年になり、と伸びつつあるものの、入荷が不安定だと言うのは発注する側の発注のタイミングのマズさにしか理由は見当たりません。それにアーチェリーのタブはバッグや靴とはちがって、単に革を切り取るだけの大して時間も手間もかからない単純な部材です。

そもそもアーチェリー用品として売られているコードバンを、元々どうしてそこまで高い販売価格に設定しているのか意味不明です。私も所有しているFITタブの交換用のコードバンは、カット穴なしのフリーカットタイプのもので、税込価格は2,160円もします。ネットショップでも1,728円で販売されています。しかしこれでも良心的な価格設定な方かも知れませんね。他には交換用の革だけで3,000円するものや、4,000円するものがありますね。いやいや、金銭感覚が狂ってしまいます(笑) 私が同じものをネットショップと同じ金額で販売したとすれば、驚異的な利益率を獲得することができます。コードバンのタブ革販売は暴利です。呆れてものが言えません。利益率は何100%ですか?アーチェリー愛好家をバカにしすぎていると思います。

しかも、上質なコードバンを入手するのが難しいと書かれていたりしますが、コードバンは発注すれば大体、あらかじめ知らされている納期通りに入荷してきます。メーカーに直接問い合わせたら、半年とか8ヶ月などと、その都度教えてもらえます。皮革を扱っている問屋さんに尋ねると、そこから少し余裕を持たせた納期を教えてもらえます。大体その通りに入荷してきます。発注枚数が1枚でも10枚でも同じです。どれだけコードバンのタブ革が売れたとしても、在庫量の減少に応じてコードバンの皮革シートを常時発注すれば、在庫を切らしてしまうようなことにもならないでしょう。いつでも注文できるのです。

コードバンのカラーが変わる可能性があるというのも変な話です。通常はカラーと、芯通しにするかどうか、オイルグレージングするかしないかを決めて発注するからです。生体が原料の皮革なので細かいサイズの指定はできませんが、必ず発注通りの製品が入荷してきます。部分的にキズがあったり穴があいたりした皮革のシートはB品として少し安く手に入れることもできます。中央部分に拳大の穴が開いてるものもありますが、タブとしては小さく切り分けて使うのでキズや穴を避けてカットしますので、こうしたB品でもA品と完全に同じ皮革としてタブに使うことができます。これまで何度もB品を入手したことがあります。いつ出てくるとも知れぬB品を狙っているのでなければ、カラーが変わるような変則的なことにはならないと思いますが、まぁ、そこはいろんな事情があるのかも知れません。高級ランドセルのように、全面にわたって美観が必要になる用途ではありませんので、私はいつもB品ねらいです(笑)



世界最高の新喜皮革のコードバンには、このようにシートの裏面にステッカーが貼り付けてあります。シールの数字はコードバンの面積を表す数字です。皮革の面積は10cm×10cm単位の表記です。この16デシのコードバンで、9,920円です。1デシ620円ですが、1デシ単位に切り分けてしまうとタブとして切り分けたときに捨ててしまう部分が出てしまうので、できるだけムダのないように慎重にタブ革に形状を合わせて切りぬきます。B品は皮革によってはB品の見分けがつかない場合もあるので、裏に赤い印のステッカーが貼られています。撮影のために赤い印のステッカーをはがしています。これらのうち、2枚はB品です(笑)

コードバンをタブ革として切り分けているアーチェリーのパーツのメーカーは、自分たちが新喜皮革を扱っているのか、ホーウィンを扱っているのか、必ず知っています。一度でも新喜皮革を仕入れて切り分ける作業をしたことがあれば、製品としてタブに装着して販売されているコードバンが、どちらが製造したコードバンであるかを見分けることができるようになると思います。ホーウィンのコードバンはメガネ(左右の尻が背面でつながった形状)の状態で、近くのホームセンターのクラフト用品コーナーの皮革素材売場に行けば置いてありますが、新喜皮革の方がどう見てもどう触っても明らかに質感が高い上に安いので、新喜皮革のコードバンを定期的に仕入れて、レッスン受講生の皆さんの上達に合わせて使っていただいています。

■ダイヤモンドの価値

コードバンは「皮革のダイヤモンド」とか、「キング・オブ・レザー」と呼ばれてます。皮革の中で、まさに最高の素材だと思います。その製法や製造にかかる年月を考えても、他の皮革とは同一に捉えることができません。



ですからコードバンをタブとして使うのであれば、このダイヤモンドと称される素材を、アーチェリーのタブとして消費するだけの価値がある、ダイヤモンドのような輝ける完璧な射をマスターして下さい。もろくはかない射であれば、ここまで素晴らしい素材は必要ないのです。何度も書いきているが、私たちは生命から奪った命を消費してスポーツをしているのです。1枚あたりの命の重みが重すぎるコードバンの輝きが、本当に自分に相応しいかを考えて使わなければ、上達どころではないのです。

コードバンは耐久性が高いと言っても、取り扱いと管理には注意が必要です。タブは人間の汗腺の多い指先で扱うことと、湿潤な日本においては常に乾燥状態に管理しておくことは不可能だからです。タブ革が吸湿と乾燥を常に繰り返すという使用状況に置かれるからです。特に指が触れるタブの裏革をマメに交換しない場合は、表革のコードバンに裏革の湿気が移って変質することもあります。

多くの選手は練習で使ったタブを持ち帰って形を整えてテーブルの上で乾燥させることもなく、使ったらケースにそのまま収納させるという、皮革にとって劣悪な状況に放置しているのです。ですから永遠に使い続けようなどとは考えずに、皮革の状態がそれほど悪くならないうちに交換してください。特に裏側はマメに交換してください。自分が使っているタブが原因で食中毒になったり、ケースの中でバイキンを繁殖させるようなことだけは、くれぐれも避けなければならないのです。

コードバンのタブは正しい取り掛けと正しいリリースができていれば、かなり長くもの年数にわたって使い続けることができます。オイルグレージングで多脂処理をしているオイルコードバンであれば、皮革に油脂を補充しなくても10年以上も使い続けることもできます。定期的にオイルを含ませて手入れを行なっていれば20年でも使えますが、長持ちをさせるのが目的の素材ではありませんので、そのような使い方はオススメできません。なぜなら、汗を拭き取ったタオルを洗わずに毎日使い続けるようなものなので、はっきり言ってキタナイです。本来は上級者が取り掛けやリリースを修正する際に新しい皮革に交換して、柔らかいコードバンの表面に残ったストリングの軌跡を1射ごとに確認しながら、更なる上達を目指すものなのです。

世界最高のコードバンを使うだけの価値があると本当に思っているのなら、新喜皮革のコードバンを購入してみるといいのです。皮革素材専門の販売サイトにも在庫を持っているところがあるので、誰でも買うことができます。仲間同士で切り分けて使っても、アーチェリーのタブとして売られている交換用コードバンを1セット買う金額もあれば、自分ひとりが一生かかっても使いきれないほどの量になります。クラブで1枚買っておいてもイイでしょう。100円ショップで売っている穴あけポンチと、金づちと、カッターナイフがあれば、誰でもタブ革を切ることができるのです。アーチェリーを精密に発射させようとしている人なら、そのくらいは簡単な作業なのです。いちどコードバンをシートで買えば、アーチェリー用品として売られている交換用のコードバンを買うのが、どれほどバカらしいかに気づきます。

ただし、誰にでもコードバンを勧めているワケではありません。本当にコードバンを使うだけの価値があるのかを問うているのです。技術が未熟であれば、どんな高級なコードバンを使っても「練習」と称して、コードバンをゴミにするための作業を続けるだけにしかならないからです。安い牛革のタブ革で当たらないのであれば、世界最高のコードバンに交換しても高得点が出ることなどありません。

勘違いしてはいけないのです。弓具を扱ってすべての矢をゴールドにグルーピングさせるために、自分の身体に備えておかなければならない能力を有する事の方が大事なのです。弓具が勝手に高得点を出すのではありません。タブ革の素材の良し悪しを語る前に、あなたの射の良し悪しを見極める事の方が大切なのです♪