各ビタミンの欠乏症の原因と症状を解説します。


ビタミンAは食品に含まれるビタミンA前駆体のプロビタミンAが、小腸や肝臓などでつくり変えられたものです。

 

プロビタミンAのうち、最もビタミンAの効力が大きいのは、ニンジンやホウレンソウに多く含まれるベータカロチンです。

 

このベータカロチンの摂取量が不足したとき、またビタミンAを全身に運ぶ血液中のタンパク質が、重症のけがややけどで減少した場合に欠乏症状が起こります。

 

ビタミンAは、皮膚や粘膜を保護したり、目の働きを正常に保つほか、発育や生殖にもかかわっています。

 

ビタミンAが不足すると、まず、皮膚が角質化します。角質化はタンパク質の一種であるケラチンが沈着して硬くなるもので、皮膚が荒れたりひび割れたりしてきます。
角質化は上腕や太ももに起こりやすく、進行すると肩や背中、臀部、腹部にも現れます。

 

また、気管支や泌尿器の粘膜が角質化し、細菌やウイルスの感染によって炎症を起こしやすくなったり、消化管の粘膜の角質化により栄養成分の吸収障害などが生じます。
性腺の変性、睾丸の萎縮、子宮粘膜の角質化などが起こり、不妊の原因になるケースもあります。

 

次には視覚、味覚、嗅覚、聴覚などに障害が起こります。

 

目の症状としては夜盲症があります。
夜盲症は暗いところで物が見えるまでに時間がかかるものですが、ほかに涙の分泌量が減り、角膜が乾燥して痛むこともあります。

 

ビタミンB1には炭水化物の代謝を助けたり神経の働きを調節する作用があります。

 

そのため、ビタミンB1の摂取量が不足したときはもちろん、炭水化物のとりすぎやお酒の飲みすぎなどで、代謝のための必要量が増加した場合にも欠乏症状が起こります。
主な欠乏症状は脚気(かっけ)とウェルニッケ脳症の二つです。

 

脚気の症状は、ビタミンB1の摂取不足が3~4か月続いた後に生じます。
初期には全身倦怠感が現れ、進行すると食欲不振になったり、手指や足先がしびれたり、足が重く感じられたりします。

 

椅子に腰かけて膝から下の力を抜いた状態で、膝の骨の下のくぼみをハンマーなどでたたくと、足がひとりでに跳ね上がる膝蓋腱(しつがいけん)反射では、足が上がらなくなります。
手首から先や、足先に力が人らなくなることもあります。

 

また、動悸や息切れ、足や顔にむくみが現れ、まれに突然嘔吐してショック状態に陥るケースもみられます。

 

一方、ウェルニッケ脳症では、両目を同時に動かせなかったり眼球が外側や内側を向いてしまう眼球運動障害や、歩くときによろける失調性歩行、意識障害などが現れます。

 

ビタミンB2欠乏症はビタミンB2の少ない食事を続けたときはもちろん、アルコール依存症や肝機能障害がある場合に起こります。

 

また向精神薬や抗生物質を長く服用し続けたときに生じることもあります。

 

ビタミンB2には粘膜を保護する役割もあるので、欠乏すると粘膜の炎症が起こりやすくなります。

 

口の端の部分がただれて裂ける口角炎や口内炎、舌炎などの口の中の炎症、目に異物感を伴う角結膜炎や、肛門や陰のうの皮膚がふけのように細かくむけて落ちる脂漏性皮膚炎などが現れます。

 

のどの痛み、性欲の減退、まれには貧血、月経の停止などがみられます。

 

ビタミンB6は炭水化物、タンパク質、脂肪の三大栄養素の代謝にかかわっています。

 

欠乏症が起こるのは、食物からの摂取不足が続いたり、抗結核薬や経口避妊薬のうち、ビタミンB6の働きを妨げる作用のある薬剤を服用しているときなどです。

 

欠乏症状としては、食欲不振や嘔吐などの消化器症状、口角炎、口内炎、舌炎、口唇炎、皮膚に触れた物質にかぶれる接触皮膚炎などがあげられます。

 

 

ビタミンB12欠乏症は、胃の切除後や膵臓の病気などで胃腸からの吸収がうまく行われなくなると起こりやすくなります。

 

ビタミンB12は、血液中の酸素運搬役である赤血球の生成にかかわっています。

 

そのため、欠乏状態が続くと、赤血球が不足する巨赤芽球貧血とよばれる貧血になり、全身の倦怠感、動悸や息切れが現れます。

 

また、舌の表面が赤みを帯びたり、つるつるになったり、しびれてきたりするほか、食欲不振や下痢、手足の麻痺などを招くこともあります。

 

ビタミンCにはコラーゲンの生成、毛細血管を丈夫に保つ働きなどがあるので、ビタミンCの不足が続くと血管壁がもろくなり、全身のあちこちから出血する壊血病が起こります。

 

壊血病では、全身の倦怠感や脱力感、食欲不振が現れ、皮膚が乾燥したり角質化します。

 

また、皮下出血による紫色の斑点が生じてきます。
症状が進むと歯茎、粘膜、筋肉、内臓などの毛細血管からも出血するようになり、放置すると貧血につながることもあります。

 

ビタミンCは野菜や果物に多く含まれ、通常の食生活を送っていれば不足することはまずありません。

 

ただ、かぜやストレスが続いたり、タバコの吸いすぎによってもビタミンCの必要量が増えるので、注意が必要です。

 

ビタミンDには、ビタミンD前駆体のプロビタミンDのかたちで摂取され、日光の紫外線にあたると体内でビタミンDに変化するものがあります。

 

また、ビタミンDは、肝臓や腎臓でからだが利用しやすいかたちにつくり変えられ、はじめて効力を発揮します。
このため摂取量の不足はもちろん、外出の機会が減って日光にあたらなかったり、肝臓や腎臓の病気がある場合にも、欠乏症状が起こりやすくなります。

 

ビタミンDは、カルシウムやリンが小腸で吸収されるのを助けたり、骨を丈夫に保つ役割があります。
欠乏状態になると、カルシウムやリンが小腸で吸収されにくくなり、子供ではくる病、成人では骨軟化症が起こります。

 

欠乏症の初期には、いらいらや不安、不眠が現れます。汗をかきやすい、顔色が青白くなる、疲れやすい、筋肉や皮膚の張りがなくなるなどの症状もみられます。
放置すると、子供では歯や骨の発育に支障をきたすだけでなく、骨が変形してX脚や0脚になることがあり、成人の場合は虫歯になったり骨が変形しやすくなります。

 

ビタミンKには血液を凝固させる働きがあります。

 

そのため、欠乏状態になると出血しやすくなり、血尿や鼻血、ときには脳出血の誘因になるケースもあります。

 

また、欠乏状態が続くと貧血を起こしやすくなります。

 

ビタミンKはさまざまな食品に含まれているので、日常生活では摂取不足はほとんどありません。

 

欠乏症状が起こりやすいのは、肝機能障害や腸炎で消化吸収能力が低下しているときです。

 

ニコチン酸はタンパク質の代謝にかかわるビタミンです。

 

タンパク質はからだをつくる大切な栄養素ですから、ニコチン酸が不足すると、からだのあちこちに症状が現れます。

 

このニコチン酸の欠乏症は「ぺラグラ」とよばれ、主に皮膚、消化器、神経に症状が起こります。

 

皮膚症状は、顔や首、手足の甲などの日光のあたりやすい部分が日焼けしたように暗褐色になったり、水疱ができたりした後、皮膚が荒れ、色素が沈着します。

 

消化器に出る症状では食欲不振、腹痛、下痢などがみられます。

 

神経や精神面の症状では、頭痛や耳鳴り、不安や抑うつが現れ、重症になると幻覚や妄想を抱いたり、痴呆を招くことがあります。

 

葉酸は、妊娠中や成長期、がんになると必要量が増え、欠乏症状が現れやすくなります。

 

葉酸は赤血球の生成にかかわっているため、主な欠乏症状は巨赤芽球貧血です。

 

口内炎や舌炎、下痢などが起こることもあります。


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