ウェブブラウザのJavaScript(ジャバスクリプト)の設定が無効になっています。Javascriptが無効になっていると、サイト内の一部機能がご利用いただけません。 壊れた朧2016年7月24日 04:21西に傾き始めた陽の光が薄い障子をすり抜け、王室を柔らかく包む。玉座に座した白夜の姫君ヒノカは、一人の罪人と対峙していた。直属ではないものの、かつては臣下だった罪人を。罪人…オボロは気怠そうに首を傾げると、隈で黒ずみ、濁った瞳をヒノカへと向けた。「はて・・・ 私めのような罪人と貴女様のようなお方をこのように二人きりにするというのはいかがなものでしょうか?」その独特な声、喋り方はオボロそのもの。しかし、彼女の瞳の奥にかつてあった輝きはもはや欠片も見当たらない。ヒノカはその変貌ぶりに対する動揺を抑えつつ、あくまでも静かに罪人に語り掛ける。「お前とこうして腹を割って話をしたい。これは私自身の意向だ。そしに、私は少なくともこの場では私に危害を加えるようなことはしないとお前を信用している。まあ…例えそのつもりがあってもできはしないと思うが」「ええ…でしょうね」オボロはつまらなそうに、肩に止まった蠅でも見るように腕にしっかりと嵌った枷を振り返った。「腹を割って話す、ですか。 一体何をです? 自分自身の罪状は滞りなく把握したつもりです。そしてなぜあの行為に及んだのか、貴女も十分理解しておられるはず」「私がお前をここへ召喚した理由・・・それは、警告を与えるためだ。個人的な警告をな」そこでヒノカは軽くため息をつき、虚ろな瞳で玉座に座った自分を見上げるオボロを睨みつけた。「暗夜の法で裁かれなかったことをお前は感謝するべきだ。それを阻止したのは我々だ。お前が暗殺しようとした男は… 『法律的』には白夜王族の血統なのだからな。だからこそ白夜に対する国家反逆罪としてお前をこの国の法律、この国の裁量で裁けたんだ。もしこれが暗夜側の裁量で裁かれていたならば、間違いなくお前は極刑に処されていたんだぞ」「この上なく嬉しく存じます、女王様」しかしそう言うオボロの顔には敬意などは見受けられず、むしろ軽蔑の視線すら感じられる。「とにかくだ」ヒノカは強い口調で続ける。「アミュージアで起こしたような沙汰は、二度と考えるなよ」「ふん・・・ 恐れ入りますが、確約はできかねません」それでも嘲笑うかのようなオボロの態度に、ヒノカは思わず玉座から腰を上げた。「笑いごとではないんだぞ!自分が何をしたか本当に分かっているのか!?お前はあの時・・・カムイを殺そうとしたんだぞ!」[newpage]ヒノカの脳裏にあの日のアミュージアの式典がフラッシュバックする。暗夜と白夜、両王国戦争の終戦一周年を記念した式典。旅人となり世界を渡り歩いている身のカムイも、久方ぶりにそこへ姿を現し、きょうだい達と旧交を温める・・・そのはずだった。護衛の列から、槍を持ったオボロが飛び出すまでは。「もしあの場に私がいなければどうなっていたことか…!」ヒノカは拳を握りしめると、再び玉座へと腰を下ろし、静かに、しかし力強く言った。「だからこの警告を肝に銘じておけ。もしまたあいつに手を出したならば…この私が直々にお前の元へ行き、私の手で二度とそんな真似ができないようにしてやる…次は外さないからな」「しかと心に刻み付けましょう…ヒノカ女王様 それと…『外した』わけではありませんよ?まだ槍さばきはご健在のご様子で。そこいらの床屋よりもお見事な腕前でした」オボロはおどけるように言った。オボロが暗殺を決行した時、ヒノカがカムイを守るためにとっさに突き出した槍は、オボロの心の臓を外れ、トレードマークだったポニーテルを一刀両断したのだった。ヒノカはオボロの皮肉を無視して告げた。「言いたいことはそれだけか…?ならば良い。下がれ。」護衛へと合図を出しかけたヒノカを、オボロの声が押しとどめた。「…その前に…ひとつ宜しいでしょうか?」「…許可する」「貴女様のお話を聞いて一つ確信しました。あなたと私は、どうやらあまり違わないようですね」「…ん?」「貴女様は[[rb:あの人 > カムイ]]の為ならば何でもする。そういう腹積もりなのでしょう?結局のところ、貴女はまだカムイ様に恋をしている。違いますか?」「何だと…!?」まさか、とヒノカは青ざめた。「ふふふ…知っていますよ。 あの手紙のことを。 そして貴女が彼をどう見ていたかも…」オボロは嘲るように、にやりと笑みを浮かべた。[newpage]「自らの兄と弟の死のきっかけを作った異父弟に恋焦がれる女王…なんと可憐で…見下げたことでしょうかねえ?」「き…貴様…!」「なぜあんな卑劣な裏切り者など好くことができるんですか?私の理解を超えています」「黙れ!!」思わずヒノカは声を荒げた。無論、白夜女王である自分への侮辱への憤りもある。だが、それ以上に、カムイに対する侮辱がヒノカの神経を逆撫でした。しかし、オボロはそんなヒノカに臆することなく、低い声で続ける。「ええ…彼がその手でタクミ様を手に掛けたわけではないことくらいわかっています。あの人はそういう人です。あんな男の手にかかるくらいなら、自ら死を選ぶ。できることなら私だってそうしたかった…とにかく、あの時軍を率いていたのはあの男です。あの男が暗夜の軍を率いて…私の親友を二人も私から奪っていった…! わざわざ私だけを生かしておきながらあの二人を…!」不意に、オボロが顔を上げて真っ直ぐにヒノカを見据える。その濁った瞳の中にどす黒く燻ぶる憎悪に、思わずヒノカはたじろいだ。「一体それは誰のせいです? 司令官の所存ではないのですか? 誰かが報いを受けなければならない… そしてその誰かはあの男…カムイであるべきです。 こう思うことはそんなにも間違っていますか?」「…どうやら、お前の神経は深刻に衰弱しているようだな」「想像してみてください…あなたにとって最も大事な人を目の前で喪うのを。どう思いますか?そしてその人を喪う原因を作った人間が目の前にいると。…どうです、彼の目を抉り出したくなるような衝動に駆られはしませんか? 報いを受けさせたいと思いませんか?」オボロは急にうやうやしく跪くと、忠実な家臣宜しく首を垂れた。「女王様…是非ともこの私めに その役割を努めさせて頂きたいのです私の悲願を達成した暁には…私は喜んで怒りと憎悪に満ちたあなたの手にかかるでしょうそれこそ…目を抉り出されるような責め苦であろうとも」そう語るオボロの声は、本当にそれを望んでいるかのように弾んでいる。ヒノカは狂気じみたオボロの言動に気圧されないように呼吸を整えると、きっぱりと告げた。「いいや…絶対にそんなことはさせない。 もう二度とお前をカムイに近づけさせはしないからな」その言葉を聞いたオボロは見るからに失望の念を浮かべながら頭を上げた。「何故です…? 私がカムイを殺し、そして貴女は個人的に私を私刑に処す。 公平じゃあありませんか? しかるべき報いを受ける…。 同じことです… あいつは貴女の弟君を… 私のタクミ様を…っ!」そこまで言うと、オボロの瞳から一筋の涙が零れ落ちる。ヒノカは、もはや痛々しいそんなオボロの姿を直視できなかった。そこにいるのは恐るべき罪人でも、堅い決意を持った復讐者でもない。ただ途方に暮れ、自棄になった救いようのない少女でしかなかった。「…もはやお前は、私の知っているオボロではなくなってしまったのだな…もう良い… 出て行け 二度と相見えることがないように祈ろう」「ふん…」オボロはそんなヒノカの言葉を鼻で笑い飛ばした。「それでは、さようなら…ヒノカ女王様」ヒノカが合図で入室した衛兵が手枷のついたオボロの腕を取る。オボロは抵抗の素振りを一切見せず、ただ俯いたまま立ち上がった。「…オボロ…」衛兵に連れられ王室を退出させられるオボロの背中に投げかけたヒノカの最後の呼びかけは、もはや罪人には届かない。これが、ヒノカが見るオボロの最期の姿だった。[newpage]Plot & character dialogue by [[jumpuri:Custom FE:Fates Support Convos > https://www.youtube.com/channel/UCeyXSULgAH93rfeoi5nYUHA]]Translated & decorated by me