美白の化粧品成分
作者: ミルディス皮フ科院長:村上義之
「新成分○○配合」、「有効成分○○がシミを根本から解決」などのように、最近の化粧品や医薬部外品は俳優やモデルのイメージだけではなく、一部の成分を強調して宣伝されることも多くなったように思います。
今回は、シミが発生する原因、そしていくつかの美白成分についてのお話です。お話の前にまずは下に簡単に「シミができるメカニズム」を図版化しましたので、ご参照ください。
①紫外線を浴びると皮膚内ではメラノサイトが活性化して…
②メラノサイト内ではシミを作る準備が…
①紫外線を浴びると、角下細胞内にSCF(*)が出現。
②SCFがメラノサイトと結合すると、メラノサイトに「エンドセリンレセプタ」ーが増加する。
③紫外線により角化細胞に情報伝達物質「エンドセリン」が作られ、放出される。
④エンドセリンがメラノサイトのエンドセリンレセプターに結合し、「メラニン色素を作れ」の指令が伝達される。
⑤メラノサイトが活性化・増殖。
⑥チロシナーゼが活性化され、チロシンからメラニン色素生成が強まる。
⑦メラニン色素が周囲の角化細胞に渡される。
⑧角化細胞はターンオーバーに伴い、メラニン色素とともに皮膚外へ排出される。
*SCFとは、メラノサイトの増殖に必要不可欠な因子で、紫外線によっても角化細胞に発現が増強されることが報告されている。
30代から出現するシミとして、代表的なものに、①肝斑 ②老人性色素斑 ③炎症後色素沈着 があります。
「肝 斑」は下眼瞼から頬にかけてできる地図状の褐色斑で、妊娠、ピル内服、紫外線、こするなどの刺激に伴って悪化します。皮膚が紫外線などによって炎症が引き 起こされると、一時的に“SCF”やそのほか炎症症状を引き起こす原因因子である“炎症性サイトカイン”などによってメラノサイトのメラニン色素生成が高 まり、しばらく持続します(これが炎症後色素沈着です)。
本来はこれらの状態は時間とともに落ち着いていきますが、度重なる紫外線によるDNA のダメージを次第に修復出来なくなって、局所のメラノサイトが持続的にメラニン色素を作り続けると、“老人性色素斑”あるいは“日光黒子(solar lentigo)”になります。もっとダメージが進行すると、“日光角化症”という前癌状態となります。最近では、紫外線によって表皮に蓄積した“プレ” メラニンが、メラニンへ変化することも報告されています(メラノサイトの外でもメラニン色素が作られるのです)。これらの対策法を考えると、以下などがあ ります。
①ケラチノサイトを刺激してメラニン生成を始めさせるシグナルであるエンドセリンなどを、メラノサイトへ行く手前でブロック。
②メラノサイト内でのメラニン色素生成を阻害(抑制)させる(チロシナーゼを抑える)。
③メラノサイトからケラチノサイトへのメラニン色素の橋渡しを阻害する。
④ケラチノサイト内に蓄えられたメラニン色素の排泄を促進させる(ターンオーバーを早める)。
⑤メラニン色素を還元して黒さを軽減させる。
そして、エンドセリンの作用を抑えるものとして“カミツレエキス”、チロシナーゼを阻害するものとして“ハイドロキノン”(チロシナーゼ自体の生成も一部 抑制するのが“マグノリグナン”)、ターンオーバーを早めるものとして“レチノイン酸”などがあります。その他にビタミンC、トラネキサム酸、ケミカル ピーリング剤(AHA、BHA)、プラセンタ、ルシノール、アルブチンなども有用です。
シミの一種である「炎症後色素沈着」の場合では、炎症が生じたその時点で症状を抑えてしまうことが重要ですが、その後早期に上記のような各美白剤を使用してもらいます。
なお、レーザーによるシミ治療は、シミ患部の狂ってしまったメラノサイトを、周りの皮膚へのダメージを最小限に抑えて“やけど(光による熱発生)”を生じ させることにより、リセットしようというものです。治療後は、遮光とともに各種美白剤をアフターケアとして使用し、炎症後色素沈着を最小限に抑えることが 大切です。
以上、シミの原因およびシミに有効な美白化粧品の成分について述べてきましたが、シミは濃くなれば医学的治療を要することが多いといえます。このため、本来は子どもの頃から「紫外線防御」を意識し、美白化粧品はシミが発生する初期の段階(つまり、目では確認できないような10代、20代前半)から使用することが効果的だと思います。そして化粧品だけでなく、ビタミンC・E、アスタキサンチン、CoQ10などの抗酸化剤サプリメントの併用も大切です。
【代表的な美白成分】
◆m-トラネキサム酸
従 来より皮膚科においては、肝斑に対する内服薬あるいは院内製剤外用薬として使用してきました。このトラネキサム酸配合商品を皮膚に塗った際の美白効果を確 認し、資生堂が医薬部外品有効成分として新たに開発。 m-トラネキサム酸は炎症性プロテアーゼを抑制する作用があるので、刺激によりメラノサイトが活性化するのを根本から抑え、シミの悪化を防ぐと考えられて います。
◆カモミラET
カミツレの花から抽出。カミツレの花には精油(カマズレン、アズレン、ビサボロール)や発汗作用を 有する成分を含み、保湿剤や血行促進入浴剤としても使用されてきました。メラノサイトの活性化を抑制するだけでなく、メラノサイト増殖を抑える働きや、表 皮細胞からメラノサイトに「色素を作れ」との情報を伝達するエンドセリンが放出されるのを抑制します。
◆ビタミンC誘導体
ビ タミンCは酸化されやすく不安定なことから、“誘導体”とすることで酸化されにくく、皮膚への吸収を高めることができます。「リン酸アスコルビン酸マグネ シウム」「リン酸アスコルビン酸ナトリウム」「テトライソパルミチン酸アスコルビル(脂溶性)」など様々開発されています。いずれもビタミンC誘導体の魅 力は刺激性の少なさ、抗酸化力、コラーゲン産生に寄与するなど多彩であり、臨床でも“刺激の少ない美白剤”“炎症性赤ニキビのあとの赤みを減らす”“皮脂 抑制と抗酸化作用によってニキビを予防する”などの効果が報告されています。
◆ハイドロキノン
世界的にも代表的な美白剤。日本では2001年の規制緩和とともに化粧品にも配合されるようになりました。私たちが行なった試験「化粧品へ求められる9項目」においても充分な安全性が認められました(西日本皮膚68巻2号 p185-194:http://www.jstage.jst.go.jp/article/nishinihonhifu/68/2/185/_pdf/-char/ja/)。 刺激性の観点からは、4~5%程度の濃度での使用であれば特に問題はないかと考えます。最近では、欠点である光や熱に対する不安定さを錯体にすることに よって改善し、酸化に伴う製品の褐変化を低減させた製品も上梓されてきています。この場合、錯体である分だけ高濃度を要します。ハイドロキノン・モノベン ジルエーテル(MBEH)は不可逆性の脱色をもたらしますので、シミ治療には使用されません。
◆アルブチン
コケモモに含ま れることが知られる成分で、メラニン生成に不可欠な酵素であるチロシナーゼの働きを阻害する、つまり、過剰なメラニンの生成を抑えてシミになることを防ぐ 効果があります。ハイドロキノンにブドウ糖を1個結合させたハイドロキノン誘導体であり、最近では従来のβ-アルブチン(資生堂)とはブドウ糖の結合様式 が異なるα-アルブチンが江崎グリコで開発され、よりヒトのチロシナーゼを選択的に、かつ10倍も強力に阻害する成分として注目されています。
◆ルシノール
ポーラが開発したフェノール性水酸基を2個有するレゾルシン誘導体。ルシノールがチロシンの代わりに酸化酵素であるチロシナーゼと結合することにより、本来チロシンがチロシナーゼと結合してメラニンを生成することを抑え、美白効果を発揮します。
◆甘草エキス
グリチルリチンやグラブリジンなどを含み、グリチルリチンには抗アレルギー作用や抗炎症作用があります。また、グラブリジンにはメラニン生成抑制作用(美白)があるほか、活性酸素除去・抗酸化作用、ヒアルロン酸活性作用などがあります。
今回は、シミが発生する原因、そしていくつかの美白成分についてのお話です。お話の前にまずは下に簡単に「シミができるメカニズム」を図版化しましたので、ご参照ください。
①紫外線を浴びると皮膚内ではメラノサイトが活性化して…
②メラノサイト内ではシミを作る準備が…
①紫外線を浴びると、角下細胞内にSCF(*)が出現。
②SCFがメラノサイトと結合すると、メラノサイトに「エンドセリンレセプタ」ーが増加する。
③紫外線により角化細胞に情報伝達物質「エンドセリン」が作られ、放出される。
④エンドセリンがメラノサイトのエンドセリンレセプターに結合し、「メラニン色素を作れ」の指令が伝達される。
⑤メラノサイトが活性化・増殖。
⑥チロシナーゼが活性化され、チロシンからメラニン色素生成が強まる。
⑦メラニン色素が周囲の角化細胞に渡される。
⑧角化細胞はターンオーバーに伴い、メラニン色素とともに皮膚外へ排出される。
*SCFとは、メラノサイトの増殖に必要不可欠な因子で、紫外線によっても角化細胞に発現が増強されることが報告されている。
30代から出現するシミとして、代表的なものに、①肝斑 ②老人性色素斑 ③炎症後色素沈着 があります。
「肝 斑」は下眼瞼から頬にかけてできる地図状の褐色斑で、妊娠、ピル内服、紫外線、こするなどの刺激に伴って悪化します。皮膚が紫外線などによって炎症が引き 起こされると、一時的に“SCF”やそのほか炎症症状を引き起こす原因因子である“炎症性サイトカイン”などによってメラノサイトのメラニン色素生成が高 まり、しばらく持続します(これが炎症後色素沈着です)。
本来はこれらの状態は時間とともに落ち着いていきますが、度重なる紫外線によるDNA のダメージを次第に修復出来なくなって、局所のメラノサイトが持続的にメラニン色素を作り続けると、“老人性色素斑”あるいは“日光黒子(solar lentigo)”になります。もっとダメージが進行すると、“日光角化症”という前癌状態となります。最近では、紫外線によって表皮に蓄積した“プレ” メラニンが、メラニンへ変化することも報告されています(メラノサイトの外でもメラニン色素が作られるのです)。これらの対策法を考えると、以下などがあ ります。
①ケラチノサイトを刺激してメラニン生成を始めさせるシグナルであるエンドセリンなどを、メラノサイトへ行く手前でブロック。
②メラノサイト内でのメラニン色素生成を阻害(抑制)させる(チロシナーゼを抑える)。
③メラノサイトからケラチノサイトへのメラニン色素の橋渡しを阻害する。
④ケラチノサイト内に蓄えられたメラニン色素の排泄を促進させる(ターンオーバーを早める)。
⑤メラニン色素を還元して黒さを軽減させる。
そして、エンドセリンの作用を抑えるものとして“カミツレエキス”、チロシナーゼを阻害するものとして“ハイドロキノン”(チロシナーゼ自体の生成も一部 抑制するのが“マグノリグナン”)、ターンオーバーを早めるものとして“レチノイン酸”などがあります。その他にビタミンC、トラネキサム酸、ケミカル ピーリング剤(AHA、BHA)、プラセンタ、ルシノール、アルブチンなども有用です。
シミの一種である「炎症後色素沈着」の場合では、炎症が生じたその時点で症状を抑えてしまうことが重要ですが、その後早期に上記のような各美白剤を使用してもらいます。
なお、レーザーによるシミ治療は、シミ患部の狂ってしまったメラノサイトを、周りの皮膚へのダメージを最小限に抑えて“やけど(光による熱発生)”を生じ させることにより、リセットしようというものです。治療後は、遮光とともに各種美白剤をアフターケアとして使用し、炎症後色素沈着を最小限に抑えることが 大切です。
以上、シミの原因およびシミに有効な美白化粧品の成分について述べてきましたが、シミは濃くなれば医学的治療を要することが多いといえます。このため、本来は子どもの頃から「紫外線防御」を意識し、美白化粧品はシミが発生する初期の段階(つまり、目では確認できないような10代、20代前半)から使用することが効果的だと思います。そして化粧品だけでなく、ビタミンC・E、アスタキサンチン、CoQ10などの抗酸化剤サプリメントの併用も大切です。
【代表的な美白成分】
◆m-トラネキサム酸
従 来より皮膚科においては、肝斑に対する内服薬あるいは院内製剤外用薬として使用してきました。このトラネキサム酸配合商品を皮膚に塗った際の美白効果を確 認し、資生堂が医薬部外品有効成分として新たに開発。 m-トラネキサム酸は炎症性プロテアーゼを抑制する作用があるので、刺激によりメラノサイトが活性化するのを根本から抑え、シミの悪化を防ぐと考えられて います。
◆カモミラET
カミツレの花から抽出。カミツレの花には精油(カマズレン、アズレン、ビサボロール)や発汗作用を 有する成分を含み、保湿剤や血行促進入浴剤としても使用されてきました。メラノサイトの活性化を抑制するだけでなく、メラノサイト増殖を抑える働きや、表 皮細胞からメラノサイトに「色素を作れ」との情報を伝達するエンドセリンが放出されるのを抑制します。
◆ビタミンC誘導体
ビ タミンCは酸化されやすく不安定なことから、“誘導体”とすることで酸化されにくく、皮膚への吸収を高めることができます。「リン酸アスコルビン酸マグネ シウム」「リン酸アスコルビン酸ナトリウム」「テトライソパルミチン酸アスコルビル(脂溶性)」など様々開発されています。いずれもビタミンC誘導体の魅 力は刺激性の少なさ、抗酸化力、コラーゲン産生に寄与するなど多彩であり、臨床でも“刺激の少ない美白剤”“炎症性赤ニキビのあとの赤みを減らす”“皮脂 抑制と抗酸化作用によってニキビを予防する”などの効果が報告されています。
◆ハイドロキノン
世界的にも代表的な美白剤。日本では2001年の規制緩和とともに化粧品にも配合されるようになりました。私たちが行なった試験「化粧品へ求められる9項目」においても充分な安全性が認められました(西日本皮膚68巻2号 p185-194:http://www.jstage.jst.go.jp/article/nishinihonhifu/68/2/185/_pdf/-char/ja/)。 刺激性の観点からは、4~5%程度の濃度での使用であれば特に問題はないかと考えます。最近では、欠点である光や熱に対する不安定さを錯体にすることに よって改善し、酸化に伴う製品の褐変化を低減させた製品も上梓されてきています。この場合、錯体である分だけ高濃度を要します。ハイドロキノン・モノベン ジルエーテル(MBEH)は不可逆性の脱色をもたらしますので、シミ治療には使用されません。
◆アルブチン
コケモモに含ま れることが知られる成分で、メラニン生成に不可欠な酵素であるチロシナーゼの働きを阻害する、つまり、過剰なメラニンの生成を抑えてシミになることを防ぐ 効果があります。ハイドロキノンにブドウ糖を1個結合させたハイドロキノン誘導体であり、最近では従来のβ-アルブチン(資生堂)とはブドウ糖の結合様式 が異なるα-アルブチンが江崎グリコで開発され、よりヒトのチロシナーゼを選択的に、かつ10倍も強力に阻害する成分として注目されています。
◆ルシノール
ポーラが開発したフェノール性水酸基を2個有するレゾルシン誘導体。ルシノールがチロシンの代わりに酸化酵素であるチロシナーゼと結合することにより、本来チロシンがチロシナーゼと結合してメラニンを生成することを抑え、美白効果を発揮します。
◆甘草エキス
グリチルリチンやグラブリジンなどを含み、グリチルリチンには抗アレルギー作用や抗炎症作用があります。また、グラブリジンにはメラニン生成抑制作用(美白)があるほか、活性酸素除去・抗酸化作用、ヒアルロン酸活性作用などがあります。