サロンオーナー必見!
人を雇ったら知っておきたい
労務のキホン
スタッフを雇ってサロンを経営していく上で必要な、労務関連の制度や法律の基本知識について解説していきます。
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須多井 リスオ(スタイ リスオ)
アシスタントを2年経験し、スタイリストデビューをしたばかりの23歳。「サロンR」勤務。デビューして意気揚々。オーナーも店も基本大好きで、サロンとともに成長したいとはりきっている。 -
小尾奈 サロヒコ(オオナ サロヒコ)
「サロンR」オーナー。スタイリストとして7年間別のサロンに勤務した後独立。「サロンR」を開業して3年目の33歳。スタッフを大事にしてサロンを成長させたいが、経営の知識はない。 -
赤出 ミーコ(アカデ ミーコ)
「サロンR」に勤務するスタイリスト歴5年の須多井リスオの先輩。27歳。指名が多く、新婚で公私ともに絶好調。同僚からの信頼も厚いが、結婚を機に子どもがほしいと考え始めている。 -
秋田センセイ
社会保険労務士。多数のサロンの労務管理相談を受けている、この企画の監修を担当。美容業界を他業界に負けないくらい、オーナー、スタッフともに働きやすい環境にしたいと考えている。 -
ビューティー
秋田センセイの名アシスタントの猫。先生の言いたいことを伝言するために、ここそこに現れるこの企画の陰のキーマン。サロンオーナーたちがいい経営者になることを心から願っている。
時間外労働には時給の0.25倍以上をプラスして支払わなくてはならない。
Vol.9でお伝えしたように、人を雇った場合は「法定労働時間」または「変形労働時間制」で、労働時間の上限が決められています。その時間を超えて勤務させた場合は、超えた時間分を割増賃金としてスタッフに支払う義務があります。いわゆる残業代のことですが、残業代は通常賃金の時給とさらに通常賃金の時給の「0.25倍以上」をプラスした額を払わなければなりません。
例)通常賃金の時給が1,000円の人が10時間残業した場合の残業代
(1,000円×10時間)+(1,000円×0.25×10時間)=1万2,500円
月給制だけど時給はどう計算する?
月給制の時給は以下のように計算します。
*ここで言う「月給」とは、基本給と毎月必ず支払われる手当(能力給など)のことです。残業代を計算する場合には家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金および1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金を除いて計算します。
1)1年の日数(365日または366日)から年間休日数を引いて、年間労働日数を算出。
2)年間労働日数を12カ月で割って、1カ月の平均労働日数を算出。
3)1カ月の労働日数に、1日の所定労働時間を掛けて1カ月の労働時間を算出。
4)月給を1カ月の労働時間で割る⇒これが時給です。
*歩合給に対する残業代計算はまた別途行います。
例)月給が27万円で、年間休日が104日、所定労働時間が8時間のスタッフの時給(365日の年)
(365日-104日)÷12カ月×8時間=174時間
270,000円÷174時間=1551.7円→1,552円(小数点以下は四捨五入)
*このスタッフが時間外労働した場合は、1時間当たり「1,552円×1時間+1,552円×0.25×1時間=1,940円」の残業代を支払います。
時間外労働をさせる場合は労働基準監督署に届け出が必要。
36協定の届け出を出していないとどうなる?
届け出を出さずにスタッフに時間外労働をさせて、行政の調査を受けた場合、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金になることがあります。スタッフに時間外労働が発生することを伝えた上で、オーナーとスタッフの代表で簡単な書面を作成するだけですから、時間外労働の可能性がある場合は必ず提出しておきましょう。
時間外労働は年間で原則360時間までが限度。
「36協定」を提出して、スタッフに規定の残業代を払っているからといって、いくらでも残業させていいわけではありません。スタッフの健康を守るために、時間外労働はできるだけ減らすことが望ましいからです。そのため、「1年間の時間外労働時間は360時間が限度」、「1カ月では45時間が限度」にしなければならないと決められています。(ただし、1年単位の変形労働時間制の場合を除く)
年間で360時間ということは、1カ月平均に換算すると30時間であるため、1カ月の時間外労働の目安となるでしょう。ただし、「特別な事情がある場合」には36協定で特別条項を締結すれば、一定期間は限度の時間を超えて時間外労働することが可能です。
時間外労働が年間360時間を超えたらどうなる?
特別条項を締結せずに時間外労働が年間360時間を超えた場合には、労働基準監督署長の必要な助言・指導の対象となります。前述のように制度上では決まりがありますが、守られていないケースもあります。しかし、働く人の健康を守るのが経営者の義務です。例えば、1カ月で80時間以上の残業をした従業員が病気にかかった場合などは、業務が原因の労働災害と認定され、従業員から損害賠償を請求されるケースもあります。こうしたことが起こらないように、スタッフの時間外労働を減らす経営努力が求められているのです。
「練習」の扱いをきちんと決める。
スタッフが開店前や閉店後に練習するサロンも多いと思います。その時間を労働時間と見なすか、または、労働外の個人的な自主練の時間と見なすかは法律上の決まりはなくサロンごとの実態で判断されます。
サロンが労働時間と見なしている場合は、練習することによって法定労働時間を超えれば時間外労働として残業代を支払う必要があります。
大事なのは労働時間ではなく自主的な練習と見なす場合は、そのことを個々のスタッフと話し合って納得してもらうことです。具体的には、「サロンがスタッフに対し練習する場所を貸しているに過ぎない」ことをスタッフと書面で確認しておきます。練習時間を業務命令で行わせているにもかかわらず、あいまいなまま進めると、スタッフから「残業だと思っていたのに支払われない」と訴えられるというトラブルが起こるかもしれません。
練習以外の業務外の研修や行事は?
ほかにも、社外での研修や、社員旅行や社内でのレクリエーションなど、強制参加ではないけれどスタッフの参加が望ましい雰囲気のある行事等も練習と同様です。実施する前に、労働時間なのかそうでないのかはきちんとコミュニケーションを取って伝えるようにしましょう。
次号では、休日・休暇について解説する予定です。
監修
特定社会保険労務士
秋田繁樹さん
プロフィール:
社会保険労務士法人 秋田国際人事総研代表。東京都社会保険労務士会所属。国内大手生命保険会社、大手企業のシステムインテグレーターなどを経て、独立開業。人事労務のスペシャリストとして、多店舗展開の美容室の労務管理や就業規則・社内規定などにも詳しく、多数の美容室の指導相談に当たっている。http://www.akita-sr.com/