クラッチペダルの操作力軽減装置

【課題】付勢方向が反転する操作力軽減用の付勢機構を用いながらも、半クラッチ領域をピーク踏力位置に対し相対的にクラッチペダルの復帰位置側に設定できるクラッチペダルの操作力軽減装置を提供する。
【解決手段】クラッチ機構1の断続を切り替えるクラッチペダル11の踏込み操作量に応じて、ペダル操作開始位置から外れた特定の踏込み操作領域では踏込み操作を助勢する助勢側への付勢力を発生し、特定の踏込み操作領域より操作開始位置側となる初期操作領域ではクラッチペダル11を操作開始位置側に復帰させる復帰側への付勢力を発生する付勢機構60を備えたクラッチペダルの操作力軽減装置において、特定の踏込み操作領域のうちクラッチ機構が半クラッチ状態となる半クラッチ領域でクラッチペダル11の踏込み操作量が増加するほどクラッチペダル11を操作開始位置側に復帰させる方向への補助付勢力を増加させる補助付勢機構70を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチペダルの操作力軽減装置、特にクラッチペダルの踏込み操作量に応じてクラッチペダルの復帰側への付勢力とクラッチペダルの操作を助勢する助勢側への付勢力とを反転させる付勢機構を備えたクラッチペダルの操作力軽減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、手動変速機を備えた自動車等の車両においては、運転者によってクラッチペダルが踏込み操作されるときにエンジンから変速機への動力伝達経路の接続を解除し(切り離し)、クラッチペダルが操作開始位置側に復帰するときにエンジンから変速機への動力伝達経路を接続する摩擦式クラッチが装備され、クラッチペダルの踏込み操作量を解除時より抑えた中間操作領域に保持することで半クラッチ操作ができるようになっている。
【0003】
このような車両用クラッチにおいては、クラッチペダルが誤操作されない程度の操作反力が要求される一方、操作頻度が高いクラッチペダルの操作力(踏力)を適度に軽減し、かつ、クラッチの断続や半クラッチ状態を的確に把握できる良好な操作フィーリングを持たせる必要がある。
【0004】
そこで、従来、クラッチペダルがある操作位置に達するまではペダルを復帰させる方向にばね力が作用し、クラッチペダルがその操作位置を越えるとクラッチペダルの踏込みを助勢する方向にばね力が作用するように、クラッチペダルの操作量に応じてばね(ターンオーバースプリングともいう)による付勢方向が反転する付勢機構を設けて、クラッチペダルの操作力を適度に軽減しつつその切替え操作感を明確にするようにしたクラッチペダルの操作力軽減装置が多用されている。
【0005】
従来のこの種のクラッチペダルの操作力軽減装置としては、例えばクラッチペダルの復帰位置を規定するストッパに弾性部材を用いることで、クラッチペダルの踏込み初期にストッパからの反力をアシスト力として適度に操作反力を軽減させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、アシスト力を増大させつつ踏込み初期の操作反力を抑えるために、クラッチペダルからその支持軸までのレバー長と支持軸からばねまでのレバー長との比をクラッチペダルの操作位置によって変化させ得るクラッチペダル支持構造を採用するものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
さらに、クラッチペダルを復帰方向に付勢するばねとクラッチペダルの間に、クラッチペダルの操作に応じてスライドおよび回動するカム板を介在させて、初期のばね力を大きく設定しながらも半クラッチ状態ではそのばね力を軽減させ、半クラッチ操作に要する踏力を軽減できるようにしたものも知られている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2006-17256号公報
【特許文献2】特開平05-324110号公報
【特許文献3】特開平05-324110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のような従来のクラッチペダルの操作力軽減装置にあっては、クラッチペダルの操作量に応じて付勢方向が反転するターンオーバースプリングが、通常、踏込み初期には操作反力の方向に付勢力を作用させ、半クラッチ領域となるより十分前のペダル操作位置で付勢力を操作アシスト方向に反転させるように設定されることから、クラッチペダルに最大踏力が要求されるピーク踏力位置が半クラッチ領域の近傍ではあるがクラッチペダルの踏込みの浅い手前側にシフトし易く、その結果として、クラッチペダルをピーク踏力位置よりも奥側に踏み込んだときに半クラッチ領域となっていた。
【0009】
一方、クラッチ機構は、通常、クラッチディスクをフライホイル側に圧接させるダイヤフラムスプリングの付勢力に抗してレリーズベアリングを操作して解除操作を行なうことから、クラッチペダルが最大踏力を要求されるピーク踏力位置より奥まで踏み込まれるときに切り離され(接続が解除され)、クラッチペダルがピーク踏力位置より手前側に戻るときに接続されることになる。
【0010】
そのため、クラッチの切り離し時の操作フィーリングとしては特に問題ないものの、接続時、特に発進時のクラッチペダル操作において、クラッチペダルを踏込み位置から戻す際に、半クラッチ領域付近で半クラッチ領域を越えるまで操作反力が増加することになり、クラッチペダルのいわゆる戻され感が強くなってしまうことから、クラッチ操作フィーリングが悪化していた。
【0011】
これに対し、クラッチ機構側の反力を調整または変更することで、発進時におけるクラッチペダルの戻され感を抑えることも考えられるが、既存のクラッチ機構に適用できないばかりか、大掛かりな変更となり、コスト高を招いてしまうという問題があった。
【0012】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、クラッチ機構自体を変更することなく、簡素な手段でクラッチペダルの踏込み操作力のピーク位置を調整することで、クラッチ操作フィーリングを向上させることができるクラッチペダルの操作力軽減装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るクラッチペダルの操作力軽減装置は、上記目的達成のため、(1)クラッチ機構の断続を切り替えるクラッチペダルの踏込み操作量に応じて、前記クラッチペダルの操作開始位置から外れた特定の踏込み操作領域では前記踏込み操作を助勢する助勢側への付勢力を発生し、前記特定の踏込み操作領域より前記操作開始位置側では前記クラッチペダルを前記操作開始位置側に復帰させる復帰側への付勢力を発生する付勢機構を備えたクラッチペダルの操作力軽減装置において、前記クラッチペダルが前記操作開始位置から外れた補助付勢力発生位置に達したときに前記クラッチペダルを前記操作開始位置側に復帰させる方向への補助付勢力を発生する補助付勢機構を設けたものである。
【0014】
この構成により、補助付勢機構の補助付勢力発生位置の設定によってクラッチペダルの踏込み操作力のピーク位置(以下、ピーク踏力位置という)を調整することができ、クラッチ操作フィーリングを向上させることができることになる。例えば、付勢機構の付勢力によってピーク踏力位置が半クラッチ領域より操作開始位置側にシフトし易いため、発進時のクラッチペダル操作において半クラッチ領域よりも復帰側までクラッチペダルのいわゆる戻され感が強くなる傾向が生じてしまうところであるが、補助付勢機構は、操作開始位置から外れた補助付勢力発生位置でクラッチペダルを操作開始位置側に復帰させる方向への補助付勢力を発生することから、その補助付勢力発生位置の設定によってクラッチペダルの踏込み操作力のピーク位置を調整することで、発進時のクラッチペダルのいわゆる戻され感が強くなる傾向を抑制でき、クラッチ操作フィーリングを向上させることができることになる。
【0015】
上記(1)に記載のクラッチペダルの操作力軽減装置においては、(2)前記補助付勢機構が、前記特定の踏込み操作領域のうち前記クラッチ機構が半クラッチ状態となる半クラッチ領域で前記クラッチペダルの踏込み操作量が増加するほど前記クラッチペダルを前記操作開始位置側に復帰させる方向への補助付勢力を増加させるのが好ましい。
【0016】
この構成により、補助付勢機構は、半クラッチ領域でクラッチペダルの踏込み操作量が増加するほどクラッチペダルを操作開始位置側に復帰させる方向への補助付勢力を増加させる特性を有するので、発進時にクラッチペダルが半クラッチ領域を通過する際にはクラッチペダルが復帰するほど補助付勢力が小さくなる。その結果、クラッチペダルの操作量に応じて付勢方向が反転する操作力軽減用の付勢機構を用いながらも、半クラッチ領域をピーク踏力位置に対し相対的にクラッチペダルの復帰側に設定することが可能になり、クラッチペダルのいわゆる戻され感が強くなる傾向を抑制することができ、クラッチ操作フィーリングを向上させることができることになる。
【0017】
上記(2)に記載のクラッチペダルの操作力軽減装置においては、(3)前記クラッチ機構の断続を切り替えるときの前記クラッチペダルの踏込み操作力が、前記半クラッチ領域の近傍でピークをなし、かつ、前記半クラッチ領域のうち前記踏込み操作量が最大となる操作位置で、前記クラッチペダルの踏込み操作力が前記ピークをなすように、前記補助付勢機構の補助付勢力が設定されているのが好ましい。
【0018】
この構成により、半クラッチ領域を確実にピーク踏力位置に対し相対的にクラッチペダルの復帰位置側に設定することができ、クラッチペダルの戻され感が強くなる傾向を無くすことができ、クラッチ操作フィーリングを向上させることができる。
【0019】
上記(2)、(3)に記載のクラッチペダルの操作力軽減装置においては、(4)前記補助付勢機構が、前記クラッチペダルの操作開始位置から前記付勢機構の前記復帰側への付勢力と前記助勢側への付勢力とが切り替わる反転時操作位置までの間は前記補助付勢力を発生せず、前記反転時操作位置より前記半クラッチ領域側で前記補助付勢力を発生し始めるのがよい。
【0020】
この構成により、クラッチペダルの操作反力を必要以上に増加させることなく、ピーク踏力位置を半クラッチ領域の操作量最大位置側に設定でき、さらに半クラッチ領域の近傍においても補助付勢力を調整し、クラッチペダルの戻され感を有効に抑制できる。
【0021】
上記(4)に記載のクラッチペダルの操作力軽減装置においては、(5)前記補助付勢機構が、前記クラッチペダルを踏込み操作可能に支持する支持部材側に設けられ、前記クラッチペダルが前記反転時操作位置より前記半クラッチ領域側に操作されたときに前記クラッチペダルに前記補助付勢力を加える弾性部材を有する。
【0022】
この構成により、弾性部材を必要なペダル操作範囲でのみクラッチペダルに係合させ、簡素な構成で、半クラッチ領域を確実にピーク踏力位置に対し相対的にクラッチペダルの復帰位置側に設定することできる。
【0023】
上記(5)に記載のクラッチペダルの操作力軽減装置においては、(6)前記補助付勢機構が、前記支持部材に揺動可能に支持された支持部材側の嵌合部材と、前記クラッチペダルに揺動可能に支持されるとともに前記支持部材側の嵌合部材に摺動可能に嵌合するペダル側の嵌合部材と、前記支持部材側の嵌合部材と前記ペダル側の嵌合部材との間に設けられ、前記クラッチペダルが前記反転時操作位置より前記半クラッチ領域側に操作されたときに前記クラッチペダルに前記補助付勢力を加えるコイルばねと、を有するものであっても好ましい。
【0024】
この構成により、コイルばねの特性を適宜選定するだけで、仕様の異なるクラッチ機構に確実に対応でき、半クラッチ領域を確実にピーク踏力位置に対し相対的にクラッチペダルの復帰位置側に設定することも容易にできる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、クラッチペダルが操作開始位置から外れた補助付勢力発生位置に達したときにクラッチペダルを操作開始位置側に復帰させる方向への補助付勢力を発生する補助付勢機構を設けているので、クラッチペダルの操作量に応じて付勢方向が反転する操作力軽減用の付勢機構を用いながらも、補助付勢力発生位置の設定によりクラッチペダルの踏込み操作力のピーク位置を調整することで、クラッチ操作フィーリングを向上させることができるクラッチペダルの操作力軽減装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係るクラッチペダルの操作力軽減装置の概略構成図であり、図2は、本発明の一実施形態に係るクラッチペダルの操作力軽減装置における補助付勢機構の断面図であり、図3は、本発明の一実施形態に係る車両用クラッチシステムの概略構成図である。なお、本実施形態は、本発明を車両用の摩擦クラッチの操作系に適用したものである。
【0028】
まず、構成について説明する。
【0029】
図1~図3に示すように、本実施形態における車両用クラッチは、摩擦クラッチである油圧作動式クラッチ1(クラッチ機構;図3参照)の作動を、踏込み操作に応じて可動範囲内で回動変位するクラッチペダル11によって制御する操作系を有している。この車両用クラッチの操作系は、クラッチペダル11と、クラッチペダル11の踏込み操作量に応じた油圧を発生させて油圧作動式クラッチ1に供給するマスターシリンダ12と、そのマスターシリンダ12からの油圧を受けて作動し、油圧作動式クラッチ1のレリーズフォーク2を操作する公知のレリーズシリンダ13と、を備えている。
【0030】
図1に示すように、クラッチペダル11は、車体側の支持部材16に回動可能に支持された支持軸部21と、この支持軸部21を介して一体に連結された第1レバー部22および第2レバー部23とを一体化したレバー体として構成されている。
【0031】
支持軸部21は、その両端側で略コの字形のブラケットである車体側の支持部材16の左右の側板部分(詳細は図示せず)に支持されており、少なくとも第1レバー部22および第2レバー部23に回転方向一体に結合する非円形断面部21a(図1中では六角形断面)を有している。
【0032】
第1レバー部22は、支持軸部21を介して車体側の支持部材16に前後方向に揺動可能に支持されたレバーとなっており、その下端側に運転者によって踏込み操作されるペダル部22aを有している。
【0033】
第2レバー部23は、その基端側で支持軸部21を介して車体側の支持部材16に上下方向および前後方向に揺動可能に支持されたレバーとなっており、その中間部でマスターシリンダ12に連結されるとともに、先端部に略U字形状のスプリング係合部分23aを有している。
【0034】
マスターシリンダ12は、詳細を図示しないが、車体側の支持部材16にピン16bを介して揺動可能に支持された有底筒状のシリンダ31内にピストン32(ロッド部のみ図示している)を収納し、そのピストン32にクラッチペダル11のクラッチ操作角度に応じた変位が生じるように、ピストン32はクラッチペダル11の第2レバー部23の所定回動半径位置23cにピン結合されている。
【0035】
このマスターシリンダ12は、ピストン32がクラッチペダル11によって操作されるとき、シリンダ31とピストン32の間に画された加圧室(図示せず)内の作動油を加圧し、クラッチチューブ33を通してレリーズシリンダ13側に押し出すようになっている。
【0036】
油圧作動式クラッチ1については、特に詳述しないが、図示しない変速機入力軸にスプライン結合したクラッチディスク41は、フライホイル51に対向するとともに、その背面側からクラッチカバー42に覆われている。クラッチカバー42に保持されたダイヤフラムスプリング43は、その外周側でプレッシャプレート44を介しクラッチディスク41を押圧して、クラッチディスク41をフライホイル51側に圧接させるようになっている。プレッシャプレート44はクラッチカバー42に軸方向移動可能に支持されている。また、支持ピン46を介してハウジング48に揺動可能に支持されたレリーズフォーク2は、レリーズシリンダ13からの操作力を受けて図3中の反時計方向に揺動するときに、ダイヤフラムスプリング43の中央部をレリーズベアリング45を介してフライホイル51側に押圧するようになっている。ダイヤフラムスプリング43は、レリーズベアリング45を介したレリーズシリンダ13側からの接続解除操作を受けたとき、その外周部をフライホイル51から離隔する側に変位させるように撓み、これによってプレッシャプレート44によるクラッチディスク41のフライホイル51側への圧接状態が解けるようになっている。また、クラッチ接続時のプレッシャプレート44の加圧と接続解除側への撓みとを両立させるべく、ダイヤフラムスプリング43は、所定半径位置でピボットリング47を介してクラッチカバー42に軸方向に支持されており、ピボットリング47を支点に軸方向に撓みまたは組付け時の形状に復帰するようになっている。
【0037】
マスターシリンダ12側からの油圧が低下すると、レリーズシリンダ13においては、油圧作動式クラッチ1のダイヤフラムスプリング43の初期形状への弾性回復に伴うレリーズベアリング45の移動によって、レリーズフォーク2が図3中の時計方向に揺動することで、ピストン13pが所定の復帰位置まで押し戻されるようになっている。
【0038】
このレリーズシリンダ13のピストン13pを復帰させるダイヤフラムスプリング43からの力は、油圧作動式クラッチ1側からの反力に応じた液圧としてマスターシリンダ12側にも負荷され、クラッチペダル11の操作反力の一部となる。
【0039】
油圧作動式クラッチ1側からの反力に基づきマスターシリンダ12を介してクラッチペダル11に加わる操作反力は、例えば図4(a)に実線で示すように、クラッチペダル11の操作ストロークに応じた踏力Fa(踏込み操作に要する踏力)に対応する。ここで、図4は、クラッチペダルの踏込み操作力とその操作ストロークの関係を簡略に示すグラフであり、同図(a)は油圧作動式クラッチ1側からの反力に応じて必要となる操作力Faとオーバーターン式の付勢機構による付勢力Fb、Fcとの関係を示し、同図(b)は操作力Faと付勢力Fb、Fcとの合成後の操作力Fdを示し、同図(c)は操作力Fdと補助付勢機構70による付勢力Feとの関係を示し、同図(d)は操作力Fdと補助付勢力Feとの合成後の操作力Fgとを示している。
【0040】
一方、図1に示すように、クラッチペダル11の第2レバー部23のスプリング係合部分23aには、捩りコイルばねであるターンオーバースプリング17の一端部17aが係合しており、ターンオーバースプリング17の他端部17bは車体側の支持部材16に支持されたピン16aに回動可能に巻き付けられている。このターンオーバースプリング17は、一端部17aおよび他端部17bを相互に接近させた状態で組み付けられており、その組付け状態において一端部17aおよび他端部17bを互いに離隔させる方向に常時付勢している。
【0041】
また、クラッチペダル11の踏込み操作に伴って第2レバー部23のスプリング係合部分23aが図1で実線位置と仮想線位置の間で回動するとき、第2レバー部23のスプリング係合部分23aに係合するターンオーバースプリング17の一端部17aは、支持軸部21と支持部材16に支持されたピン16aとの平行な中心線で規定されるターンオーバー位置平面Nを通過するようになっている。これにより、ターンオーバースプリング17は、クラッチペダル11の踏込み操作量に応じて、クラッチペダル11の操作開始位置(図1中の実線位置)から外れた仮想線位置側の特定の踏込み操作領域(後述する)では、一端部17aをターンオーバー位置平面Nより図1中の下方側に位置させることで、踏込み操作を助勢する助勢側への付勢力を発生する。また、ターンオーバースプリング17は、特定の踏込み操作領域より操作開始位置側となる初期操作領域では、一端部17aをターンオーバー位置平面Nより図1中の上方側に位置させることで、クラッチペダル11を操作開始位置側に復帰させる復帰側への付勢力を発生するようになっている。
【0042】
このターンオーバースプリング17は、車体側の支持部材16に支持されたピン16aおよび第2レバー部23と共に付勢機構60を構成しており、この付勢機構60によってクラッチペダル11に加えられる復帰側への付勢力は、図4(a)中に点線で示す正の踏力Fbに、助勢側への付勢力は、図4(a)中に点線で示す負の踏力(アシスト力)Fcに、それぞれ対応する。
【0043】
この場合、油圧作動式クラッチ1側からの反力に基づく、クラッチペダル11の操作ストロークに応じた踏力Faと、付勢機構60によってクラッチペダル11に加えられる正の踏力Fbまたは負の踏力Fcとが合成されるとき、クラッチペダル11の操作ストロークに応じた踏力Fdは、図4(b)に示されるように、半クラッチ領域Chの近傍であってクラッチペダル11の操作開始位置側に踏力ピーク位置Fpを持つ。
【0044】
ところが、本実施形態においては、付勢機構60によってクラッチペダル11に加えられる付勢力が正の踏力Fbから負の踏力Fcに切り替わる反転時操作位置Po(ターンオーバー位置)に対して操作量(図中では操作ストローク)が増加する側の領域である特定の踏込み操作領域B(図4(a)参照)のうち、油圧作動式クラッチ1が半クラッチ状態となる半クラッチ領域Chで、図4(c)に示すようにクラッチペダル11の踏込み操作量が増加するほどクラッチペダル11を操作開始位置側に復帰させる方向への補助付勢力Feを増加させる補助付勢機構70を設けている。
【0045】
この補助付勢機構70は、クラッチペダル11の操作ストロークに応じた踏力Fdと補助付勢力Feが合成されたときに、図4(d)に示すように、油圧作動式クラッチ1の断続を切り替えるときのクラッチペダル11の踏込み操作力(踏力)Fgが、半クラッチ領域Chの近傍でピークをなし、かつ、半クラッチ領域Chのうち踏込み操作量が最大となる操作位置Pmで、クラッチペダル11の踏込み操作力Fgがピークをなすように、補助付勢力Feが設定されている。
【0046】
具体的には、補助付勢機構70は、クラッチペダル11の操作開始位置から付勢機構60の復帰側への付勢力(正の踏力Fb)と助勢側への付勢力(負の踏力Fc)とが切り替わる反転時操作位置Poまでの間は補助付勢力を発生せず、反転時操作位置Poより半クラッチ領域Ch側の補助付勢力発生位置Pa、すなわちクラッチペダル11の操作ストロークの途中位置で補助付勢力Feを発生し始めるようになっている(図4(a)、図4(c)参照)。
【0047】
より具体的には、補助付勢機構70は、図1および図2に示すように、車体側の支持部材16に揺動可能に支持された支持部材側の嵌合部材71と、クラッチペダル11に揺動可能に支持されるとともに支持部材側の嵌合部材71に摺動可能に嵌合するペダル側の嵌合部材72と、支持部材側の嵌合部材71とペダル側の嵌合部材72との間に設けられ、クラッチペダル11が反転時操作位置Poより半クラッチ領域Ch側に操作されたときにペダル側の嵌合部材72を介してクラッチペダル11に補助付勢力を加える圧縮コイルばね73(弾性部材)とを有している。
【0048】
また、支持部材側の嵌合部材71は、車体側の支持部材16にピン16cを介して揺動可能に結合された支持端部71aと、この支持端部71aと一体に形成されたばね受け部71bと、円柱状のガイドピン部71cとを有しており、例えば金属からなる。
【0049】
ペダル側の嵌合部材72は、クラッチペダル11の長手方向の中間位置にピン22bを介して揺動可能に結合された支持端部72aと、この支持端部72aと一体に形成された拡径部72bと、円柱状のガイドピン部71cを摺動自在に収納する円筒状のガイド部72cと、このガイド部72cと一体化されたばね受け部72dとを有しており、例えば金属からなる。
【0050】
圧縮コイルばね73は、比較的ばね定数の小さいものであり、補助付勢機構70が車体側の支持部材16と操作開始位置(復帰位置)のクラッチペダル11との間に介在する状態で、圧縮コイルばね73は自由長まで伸びた状態となる。その圧縮コイルばね73の自由長は、クラッチペダル11が操作開始位置(復帰位置)にあるときの支持部材側の嵌合部材71のばね受け部71bとペダル側の嵌合部材72のばね受け部72dとの間の離間距離より短くなっており、クラッチペダル11が半クラッチ領域Ch近傍のある操作位置に達すまでは圧縮コイルばね73は圧縮されず、クラッチペダル11の踏込み操作の初期段階で補助付勢力Feが発生しないようになっている。
【0051】
次に、動作について説明する。
【0052】
上述のように構成された本実施形態のクラッチ制御装置では、ターンオーバースプリング17を有する付勢機構60がクラッチペダル11の踏込み初期には復帰側、すなわち操作反力方向の付勢力(図4(a)中の踏力Fb)を作用させ、半クラッチ領域Chとなる前にあるペダル操作位置Poにおいて助勢側の付勢力(図4(a)中の踏力Fc)を生じるように付勢方向を反転させる。
【0053】
これに対し、油圧作動式クラッチ1は、クラッチペダル11が最大踏力を要求されるピーク踏力位置Fpより奥まで踏み込まれるときに動力伝達経路が切り離され、クラッチペダル11がピーク踏力位置Fpより操作開始位置(図4(a)中の「踏力0」のときの操作ストローク)側に戻るときに接続される。したがって、発進時のクラッチペダル11の操作においては、半クラッチ領域Chよりも復帰側までクラッチペダル11のいわゆる戻され感が強くなる傾向が生じるところであるが、図4(c)に示すように、補助付勢機構70は、半クラッチ領域Chでクラッチペダル11の踏込み操作量が増加するほどクラッチペダル11を操作開始位置側に復帰させる方向への補助付勢力Feを増加させる特性を有するので、発進時にクラッチペダル11が半クラッチ領域Chを通過する際にはクラッチペダル11が復帰するほど補助付勢力Feが小さくなる。その結果、クラッチペダル11の操作量に応じて付勢方向が反転する操作力軽減用の付勢機構60を用いながらも、半クラッチ領域Chをピーク踏力位置に対し相対的にクラッチペダル11の復帰位置側に設定することが可能になり、クラッチペダル11のいわゆる戻され感が強くなる傾向を抑制することができる。よって、クラッチ操作フィーリングを向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態では、油圧作動式クラッチ1の断続を切り替えるときのクラッチペダル11の踏込み操作力が、半クラッチ領域Chの近傍でピークをなし、かつ、半クラッチ領域Chのうち踏込み操作量が最大となる操作位置で、クラッチペダル11の踏込み操作力がピークをなすように、補助付勢機構70の補助付勢力発生位置Paや圧縮コイルばね73のばね特性が設定されているので、半クラッチ領域Chを確実にピーク踏力位置に対し相対的にクラッチペダル11の復帰位置側に設定することができ、クラッチペダル11の戻され感が強くなる傾向を無くすことができ、クラッチ操作フィーリングをより向上させることができる。
【0055】
さらに、補助付勢機構70が、クラッチペダル11の操作開始位置から付勢機構60の復帰側への付勢力(Fb)と助勢側への付勢力(Fc)とが切り替わる反転時操作位置Poまでの間は補助付勢力Feを発生せず、反転時操作位置Poより半クラッチ領域Ch側の補助付勢力発生位置Paで補助付勢力Feを発生し始めることから、クラッチペダル11の操作反力Fgを必要以上に増加させることなく、ピーク踏力位置Fpを半クラッチ領域Chの操作量最大位置Pm側に設定することができる。さらに、半クラッチ領域Chの近傍においても補助付勢力Feを調整して、クラッチペダル11の戻され感を有効に抑制することができる。
【0056】
加えて、補助付勢機構70は、クラッチペダル11を踏込み操作可能に支持する車体側の支持部材16の側に設けられ、クラッチペダル11が反転時操作位置Poより半クラッチ領域Ch側に操作されたときにクラッチペダル11に補助付勢力を加える圧縮コイルばね73を有しているので、圧縮コイルばね73を必要なペダル操作範囲でのみクラッチペダル11に係合させ、簡素な構成で、半クラッチ領域Chを確実にピーク踏力位置Fpに対し相対的にクラッチペダル11の復帰位置側に設定することができる。しかも、圧縮コイルばね73の特性を適宜選定するだけで、仕様の異なる油圧作動式クラッチ1に確実に対応でき、半クラッチ領域Chをピーク踏力位置Fpよりも相対的にクラッチペダル11の復帰位置側に設定することも容易にできる。
【0057】
このように、本実施形態のクラッチペダルの操作力軽減装置においては、クラッチペダル11の操作ストロークの途中位置でペダル復帰方向への補助付勢力を発生する補助付勢機構70を設けることにより、その補助付勢力発生位置の設定によりクラッチペダル11のピーク踏力位置を調整することができ、発進時のクラッチペダル11の操作において、補助付勢機構70が半クラッチ領域Chでクラッチペダル11の踏込み操作量の増加につれてクラッチペダル11を復帰させる方向への補助付勢力Feを増加させることで、発進時にクラッチペダル11が半クラッチ領域Chを通過する際にクラッチペダル11が復帰するほど補助付勢力Feを小さくすることができ、クラッチペダル11の操作量に応じて付勢方向が反転する操作力軽減用の付勢機構60を用いながらも、半クラッチ領域Chをピーク踏力位置に対し相対的にクラッチペダル11の復帰位置側に設定することができる。その結果、発進時にクラッチペダル11のいわゆる戻され感が強くなる傾向を抑制して、クラッチ操作フィーリングを向上させることができるクラッチペダル11の操作力軽減装置を提供することができるものである。
【0058】
なお、上述の実施の形態においては、付勢機構のターンオーバースプリング17をねじりコイルばねとしたが、圧縮コイルばねや引張りコイルばねを用いたトグル式の反転付勢機構を用いることもできるし、補助付勢機構を例えば薄い板ばねや弱い捩りコイルばねで構成することも考えられる。また、上述の実施の形態においては、補助付勢機構70の補助付勢力発生位置Paを反転時操作位置Poより半クラッチ領域Ch側としたが、付勢機構の特性や補助付勢機構の補助付勢力の立上り特性(発生開始時の補助付勢力の大きさやペダル操作ストロークに応じた補助付勢力の増加率)に応じてクラッチペダル11の操作ストロークの途中の別の位置に補助付勢力の発生開始位置を設定することも考えられる。
【0059】
以上説明したように、本発明に係るクラッチペダルの操作力軽減装置は、クラッチペダルが操作開始位置から外れた補助付勢力発生位置に達したときにクラッチペダルを操作開始位置側に復帰させる方向への補助付勢力を発生する補助付勢機構を設けているので、クラッチペダルの操作量に応じて付勢方向が反転する操作力軽減用の付勢機構を用いながらも、補助付勢力発生位置の設定によりクラッチペダルの踏込み操作力のピーク位置を調整することでクラッチ操作フィーリングを向上させることができるクラッチペダルの操作力軽減装置を提供することができるという効果を奏するものであり、クラッチペダルの操作力軽減装置、特にクラッチペダルの踏込み操作量に応じてクラッチペダルの復帰側への付勢力とクラッチペダルの操作を助勢する助勢側への付勢力とを反転させる付勢機構を備えたクラッチペダルの操作力軽減装置全般に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態に係るクラッチペダルの操作力軽減装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るクラッチペダルの操作力軽減装置における補助付勢機構の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る車両用クラッチシステムの概略構成図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る車両用クラッチシステムにおけるクラッチペダルの踏込み操作力とその操作ストロークの関係を簡略に示すグラフであり、同図(a)は油圧作動式クラッチ側からの反力に応じて必要となる操作力Faとオーバーターン式の付勢機構による付勢力Fb、Fcとの関係を示し、同図(b)は操作力Faと付勢力Fb、Fcとの合成後の操作力Fdを示し、同図(c)は操作力Fdと補助付勢機構による付勢力Feとの関係を示し、同図(d)は操作力Fdと補助付勢力Feとの合成後の操作力Fgとを示している。
【符号の説明】
【0061】
1 油圧作動式クラッチ(クラッチ機構)
11 クラッチペダル
12 マスターシリンダ
13 レリーズシリンダ
16 車体側の支持部材
17 ターンオーバースプリング
21 支持軸部
22 第1レバー部
22a ペダル部
23 第2レバー部
23a スプリング係合部分
31 シリンダ
32 ピストン
41 クラッチディスク
42 クラッチカバー
43 ダイヤフラムスプリング
44 プレッシャプレート
45 レリーズベアリング
60 付勢機構
70 補助付勢機構
71 支持部材側の嵌合部材
71b ばね受け部
71c ガイドピン部
72 ペダル側の嵌合部材
72c ガイド部
B 特定の踏込み操作領域
Pa 補助付勢力発生位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッチ機構の断続を切り替えるクラッチペダルの踏込み操作量に応じて、前記クラッチペダルの操作開始位置から外れた特定の踏込み操作領域では前記踏込み操作を助勢する助勢側への付勢力を発生し、前記特定の踏込み操作領域より前記操作開始位置側では前記クラッチペダルを前記操作開始位置側に復帰させる復帰側への付勢力を発生する付勢機構を備えたクラッチペダルの操作力軽減装置において、
前記クラッチペダルが前記操作開始位置から外れた補助付勢力発生位置に達したときに前記クラッチペダルを前記操作開始位置側に復帰させる方向への補助付勢力を発生する補助付勢機構を設けたことを特徴とするクラッチペダルの操作力軽減装置。
【請求項2】
前記補助付勢機構が、前記特定の踏込み操作領域のうち前記クラッチ機構が半クラッチ状態となる半クラッチ領域で前記クラッチペダルの踏込み操作量が増加するほど前記クラッチペダルを前記操作開始位置側に復帰させる方向への補助付勢力を増加させることを特徴とするクラッチペダルの操作力軽減装置。
【請求項3】
前記クラッチ機構の断続を切り替えるときの前記クラッチペダルの踏込み操作力が、前記半クラッチ領域の近傍でピークをなし、かつ、
前記半クラッチ領域のうち前記踏込み操作量が最大となる操作位置で、前記クラッチペダルの踏込み操作力が前記ピークをなすように、前記補助付勢機構の補助付勢力が設定されていることを特徴とする請求項2に記載のクラッチペダルの操作力軽減装置。
【請求項4】
前記補助付勢機構が、前記クラッチペダルの操作開始位置から前記付勢機構の前記復帰側への付勢力と前記助勢側への付勢力とが切り替わる反転時操作位置までの間は前記補助付勢力を発生せず、前記反転時操作位置より前記半クラッチ領域側で前記補助付勢力を発生し始めることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のクラッチペダルの操作力軽減装置。
【請求項5】
前記補助付勢機構が、前記クラッチペダルを踏込み操作可能に支持する支持部材側に設けられ、前記クラッチペダルが前記反転時操作位置より前記半クラッチ領域側に操作されたときに前記クラッチペダルに前記補助付勢力を加える弾性部材を有することを特徴とする請求項4に記載のクラッチペダルの操作力軽減装置。
【請求項6】
前記補助付勢機構が、前記支持部材に揺動可能に支持された支持部材側の嵌合部材と、
前記クラッチペダルに揺動可能に支持されるとともに前記支持部材側の嵌合部材に摺動可能に嵌合するペダル側の嵌合部材と、前記支持部材側の嵌合部材と前記ペダル側の嵌合部材との間に設けられ、前記クラッチペダルが前記反転時操作位置より前記半クラッチ領域側に操作されたときに前記クラッチペダルに前記補助付勢力を加えるコイルばねと、を有することを特徴とする請求項5に記載のクラッチペダルの操作力軽減装置。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】