肌のコラーゲン代謝を促進する独自成分「ナノビタミンAx(エーエックス)」を新開発
粒子径を世界最小(*1)クラス50nmサイズにナノ乳化(*2)し、化粧水などへの安定配合が可能に
2016年6月20日
富士フイルム株式会社
富士フイルム株式会社(社長 助野健児)は、肌のコラーゲン代謝を促進する独自成分として、ビタミンA(レチノール誘導体)(*3)と抗酸化成分「アスタキサンチン」を組み合わせ、粒子径を世界最小クラス50nmサイズにナノ乳化した独自成分「ナノビタミンAx」の開発に成功しました。
加齢や紫外線によるダメージによって劣化し断片化したコラーゲンが肌内部に蓄積することにより、皮膚のハリや弾力性が低下すると考えられています。ハリや弾力性を維持するには、断片化コラーゲンを分解し、新たなコラーゲンを産生することが必要です。当社は、断片化コラーゲンの代謝に関する研究を進め、下記の成果を得ました。
- 断片化コラーゲンは線維芽細胞(*4)に取り込まれると分解される。線維芽細胞に存在するタンパク質「Endo180」が、断片化コラーゲンを認識し線維芽細胞に取り込む役割を果たしている(【図1】参照)。
- 「Endo180」が減少すると、新たなコラーゲン産生能が低下する。
- 「Endo180」はレチノール(*5)によって増加する。また、レチノールとコラーゲンペプチド※6を組み合わせて添加すると「Endo180」がより増加する。
当社は、上記研究成果を踏まえ、「Endo180」を増加させるビタミンA(レチノール誘導体)と、コラーゲンの劣化を抑制できる抗酸化成分「アスタキサンチン」を組み合わせた独自成分「ナノビタミンAx」を開発しました。
当社は、この成果を、平成28年6月24日から国立大学法人長崎大学で開催される「第48回 日本結合組織学会学術大会」にて発表する予定です。
なお、今秋発売予定のスキンケア化粧品の開発に「ナノビタミンAx」を応用していきます。
研究の背景
年齢とともに、肌のハリが失われるのは、加齢や紫外線の影響によって真皮層に存在するコラーゲンが減少、あるいは劣化することが原因です。これまで、減少したコラーゲンに着目し、コラーゲン産生量を増加させる研究は多く行われてきましたが、劣化したコラーゲンが真皮に与える影響についてはあまり研究が進んでいませんでした。
【断片化コラーゲンが取り込まれるメカニズム】
光老化(*7)によりコラーゲンが減少する過程で、断片化コラーゲンが生じます。断片化コラーゲンとは、紫外線によって誘導されるコラーゲン分解酵素の活性化によりコラーゲン繊維の一部が切断されたものであり、皮膚のハリや弾力性が低下する一因と考えられています。
細胞には、細胞外の物質を取り込むエンドサイトーシス(Endocytosis)と呼ばれる機構があります。断片化コラーゲンもエンドサイトーシスによって線維芽細胞に取り込まれ、やがて分解されます。その取込みの際に、「Endo180」と呼ばれるレセプター(受容体)タンパク質が、断片化コラーゲンを認識すると言われています。(【図1】参照)。近年の研究では、コラーゲンと同様にEndo180も光老化によって減少することが明らかになっています。
【真皮に広く蓄積する断片化コラーゲン】
人から摘出した皮膚を観察したところ、断片化コラーゲンが真皮に広く蓄積していることを確認しました(【図2】)。当社は、この断片化コラーゲンを代謝し、皮膚のコラーゲンを再生させることが重要と考え、Endo180を介したコラーゲンの再生メカニズムについて研究を進めました。
左図は、明視野像(中央図)を模式図にしたもの。
明視野像と蛍光像(右図)を比較すると、断片化コラーゲン(赤色部分)が真皮層に広く蓄積していることが分かる。
研究の成果
1.「Endo180」によって断片化コラーゲンが線維芽細胞に取り込まれることを確認
正常な線維芽細胞と比較して、Endo180が少ない線維芽細胞は、断片化コラーゲンの取り込み量が顕著に少ないことを確認しました(【図3】参照)。一方、断片化コラーゲン以外の4種類のタンパク質にて、同様の実験をしたところ、線維芽細胞へのタンパク質の取り込み量に差は見られませんでした。
この結果は、Endo180が断片化コラーゲンを特異的に認識し、細胞内に取り込む重要な役割を担っていることを示す重要なデータです。
2.Endo180が減少すると、新たなコラーゲンの産生能が低下することを確認
Endo180の機能についてさらに詳しく調べるため、線維芽細胞内のEndo180の量とコラーゲン産生量の関係性を調べました。その結果、Endo180を減少させた線維芽細胞では、肌の主な構成要素となる複数種のコラーゲン(I型、III型、VII型)の産生能が低下することが分かりました(【図4】参照)。この結果から、Endo180は、断片化コラーゲンの取り込みだけでなく、コラーゲンを産生する上でも、重要な役割を担っていることが明らかになりました。
この結果は、光老化などにより減少したEndo180を正常な量まで回復させることが、コラーゲンの再生に重要であることを示唆しています。
3.レチノールによってEndo180が増加することを確認。また、レチノールとコラーゲンペプチドを合わせて添加すると、Endo180がより増加することを見出す。
コラーゲンの再生を促進するため、光老化によって減少したEndo180を正常な量まで回復させる成分の探索を進めました。この結果、レチノールがEndo180の増加効果を有することを見出しました(【図5】参照)。さらに、成分探索の結果、化粧品の素材として知られているコラーゲンペプチドをレチノールと同時に添加することで、Endo180が約2倍増加することを見出しました(【図6】参照)。
今回開発した独自成分「ナノビタミンAx」について
レチノール誘導体とアスタキサンチンを組み合わせて、独自成分「ナノビタミンAx」の開発に成功
レチノールの効果を最大限発揮させるため、肌内部へ浸透した後にビタミンAに変換されて効果を発揮するレチノール誘導体(パルミチン酸レチノール)に着目。さらに、抗酸化作用によって光老化によるコラーゲンの劣化を抑制できる成分「アスタキサンチン」と組み合わせることを検討しました。レチノール誘導体とアスタキサンチンは、それぞれ水に溶けにくく、化粧水などの水系製剤に安定的に配合させることが難しい成分ですが、独自のナノ乳化技術で世界最小クラス(*1)50nmサイズの「ナノビタミンAx」を開発しました(【図7】参照)。
*1 平成28年5月16日現在。当社調べ。パルミチン酸レチノールとアスタキサンチンの共乳化物として。
*2 レチノール誘導体とアスタキサンチンが溶解したオイルを、複数の成分を機能的に組み合わせた膜で包み、水溶液中に分散すること。
*3 パルミチン酸レチノール。ビタミンAにパルミチン酸が結合した物質のこと。肌の新陳代謝を活発にして、ターンオーバーを正常に保ち、コラーゲンの生成を促進する働きがある。
*4 肌のハリや弾力のもととなるコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸を作り出す皮膚の真皮層に存在する細胞。
*5 体内において、細胞分化や皮膚と粘膜の維持など体が正常に機能するよう、さまざまな部分で活用されるビタミンAの一種。
*6 コラーゲンを加水分解して、低分子化し、皮膚に浸透しやすくしたペプチドのこと。
*7 長期間、紫外線に当たることによって徐々に蓄積されて起こるシミやしわなどの肌の変化をいう。コラーゲンやエラスチンなどが減少、劣化することが原因である。
*8 細胞に二本鎖RNAを導入、それと同じ配列を持つ遺伝子の発現(タンパク質の合成)を抑制する技術。
*9 メッセンジャーRNA。タンパク質の合成に必要なDNAの塩基配列をコピーしたRNAのこと。
本件に関するお問い合わせは、下記にお願いいたします。
- 報道関係
- 富士フイルム株式会社 コーポレートコミュニケーション部
- TEL 03-6271-2000
- 今回の研究に関するお問い合わせ
- 株式会社富士フイルム ヘルスケア ラボラトリー ブランドマネージメント部
- TEL 0120-186-833
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