16 / 42
……原作の壊れる音がする。
それと、前回のミスのご指摘ありがとうございました。
フィートをメートルと間違えた挙句、航空機の高度とか持ち出して我が物顔で書く黒歴史ェ……。
『諸君、ゆゆしき事態だ』
神域、天上の世界。
その一角で、彼らは誠実に苦悩している。
唯一神、創造主を前に彼らは一つの真摯な意図をもって、苦悩していた。
『すでに承知の通り、信心深い人間は急速に低下し、文明の発展と信仰の両立は極めて困難である』
より高次の世界へと導く。あるいは最低限無干渉を貫く。
そのどちらにせよ輪廻というシステムを保ち続けるには、多くの限界が見えつつあった。
何せ科学が発展し、人々が幸福になればなるほど信仰が崩壊するのだ。システムにとってこれほどの悪夢はあるまい。
「あ……創造主様。例の検証結果について報告します」
と、一人の天使長が立ち上がる。眼鏡を掛け、天パな髪と、吹き出物の多い顔つきの……有り体に言えば下界において典型的なオタクのような見た目の男であった。
「人間の前で超常現象を引き起こしましたが、駄目でした。それ以上には……」
この男は一応大天使の一人である。内気な性格で、趣味以外を流されやすく、彼はリア充な過激な大天使に命令され、人々の前で超常現象を引き起こすことで、信仰心を蘇らせることをトライさせられたのだが、その結果はとても成功とはおぼつかなかったようだ。
「やはり難航しているのですかー」
「なんでだろうね。昔は、語りかけるだけで、神だと分かってくれましたのにねー」
「時にはあちらから呼びかけすらありましたな。ああ昔は良かった」
一部、棒読みもとい片言に聞こえたがそれは置いといて。
そう。
人々の信仰が
そうすれば、彼らと意思を疎通することができたのである。
それどころかあるものは、自発的にこちらに呼びかけさえしてきた。
だが、今となってはそれも最早、特定の時期のみだ。
多くの人間が救いを求めるのは受験期の合否か、資金全振りしてた株式が急落したときくらいなものである。
どうして、こうなったのだろうか。
と、ここで創造主はダンッ! と机を叩き一つの案を提案した。
『皆の者。これはゆゆしき事態である。早急に解決せねばならん。だがここで我らが何かを決めたところでそれは人類に対する最善手とはならんだろう。それは何故か、我々が人間でないからだ。どうして人間より遥か天上の存在たる我々にあの矮小な奴らが理解できようか。消費者の心理分析ができずして、何故理想的なビジネスモデルが描けるだろうか!』
「……む、創造主様。その知識をどこから仕入れたのですかな?」
勢い込んで叫ぶと、先ほどのオタクっぽい大天使が問いかけてくる。
眼鏡をくいっと持ち上げ、先ほどのオドオドした気持ち悪い顔などどこかにやったように真剣な表情に変わった。
『……パソコンだが? 確か2ちゃんねる……だったか、そこで奴らに問うたのだ。ターニャ・デグレチャフに信仰心を抱かせる方法をな。それが、これだ』
空気が変わったのを肌で感じながら創造主は一枚の紙を持ち出した。
それはつい先ほど2ちゃんねるで決めた、ターニャへと突き付ける選択肢群である。
『ターニャ・デグレチャフを泣かすために!』
選択肢1・神に祈りを捧げる
選択肢2・宝珠使用前に泣きながら『ぐすっ……ごめんなさい。私の負けです……創造主様、どうか私を許してください……』と謝る。
選択肢3・宝珠使うと服装が魔法少女姿に。二度と脱げない。壊れても自動修復するが局部以外壊れやすい。※ただし魔法は尻から出る。
選択肢4・宝珠を使うたびに心も体も幼児退行。
選択肢5・草生える。
それを上から覗き込んだオタク大天使は「……ふんふん」と頷いてまたもや眼鏡をくいっと持ち上げると、なんというか少し言いづらそうに尋ねた。
「……あのー、もしや創造主殿。あなた、萌え文化を理解されたのでしょうか?」
『は?』
は? だった。意味不明だった。
萌え? こいつは何を言っている? 懐疑心のある視線をくれてやると彼は「やっぱり!」と叫んで説明する。
「なんだ、創造主殿も現世を謳歌されてたのですな! 実は拙者も夏と冬にはコミケに参戦したり、暇な日にはやる夫スレでAA作ったり、2ちゃんねるで一日を過ごしているのです! いやー、そうなんだったら言ってくだされば良かったのに。私含めて、皆様がたも変に昔ながらのことを言って悩むそぶりなど見せなくても良かったではないですか。正直内心では懐古厨乙wwwとか思ってましたよ」
『か、かいこちゅう……? 現世を謳歌?』
「お、おい少し黙れ! オタク大天使」
「いいえ、黙らんでござる! 実は拙者、ターニャたんの容姿を見たときから創造主様は萌え文化を理解しているのでは、と愚考しておりましたが、まさか本当だとは。まさに現実は小説より奇なりですな。それにしてもターニャたんは素晴らしい。実は拙者、全力で彼女とその周りのターニャ教、世界の人々にターニャたんを広めやすくする加護などの力を与えているのでござるが、彼女の容姿を設定するにあたっていったい何を参考にされたのか是非、拙者の今後の創作のためにもお聞かせください! あと今度共にコミケに参りませんか? あそこは素晴らしいですよ。きっと創造主様のお眼鏡に叶うR18本があるはずでごフォカヌポウッ!?」
「いい加減にしろこの阿呆が!」
そのときだった。大天使の一人が思いっきりオタク大天使を殴りつけ、オタク大天使は数メートル吹き飛んで地面を転がり、気絶する。
その後、ぶん殴った大天使が地面に転がったオタク大天使を引きずって「気にしないでください、創造主様。ええ気にしないでくださいねー」と言って退室していった。
……シンと静まり返る神域。どうしようもなく何とも言い難い微妙な空気に大天使達は戦慄する。
だが、やがて、冷や汗タラタラで一人の大天使が発言した。
「だ、だだ……だれか、打開策に提案はありますか?」
「そ、そうですねぇ……!」
『いや、汝ら。変に昔ながらのことを言って悩むふりをしていたとはどういうことか説明せんか』
「ヒェッ!? あっ、あー! 皆さん良い案はありませんか!?」
思いっきり遮った上に無理やりすぎる誤魔化しである。誰もが創造主の顔色を窺っていた。
何とか、何とかこの場を何とか誤魔化さなくては! そんな保身にも似た空気が場を支配している。
と、ここで智天使と呼ばれる大天使が挙手した。
「皆様がた、落ち着いてください。ともかく話を戻しますが信仰心を戻すためには概ね創造主様の案に賛成でも良いと私は考えます。聞けばドクトルという男が作るエレニウム九五式は神の領域に至る一歩手前……まぁ、あと1000年もすればそこに至る研究をしています。それに奇跡を与え、今一度現世に神の御心を照覧させる。素晴らしいではありませんか! でしょう!?」
「お、おう! その通りだ! 素晴らしい、万歳!」
「良い案だ! 是非ともそれでいこう!」
全会一致であった!
万雷の拍手が鳴り響く! 最早誰の声すら聞こえない。
反論しようとした創造主の言論を封じるつもりらしい。部下に馬鹿にされている気分の創造主は、ムッとした気持ちで『……聞こえておるだろう。今、貴様らの頭の中に直接語りかけておる』とテレパシーを飛ばすが部下達は完全に無視した挙句、「では早速やりましょう!」と神域を後にしてしまった。
ポツンと独り、取り残された創造主は唖然とする。
そして一言。
『……まったく、どうしようもない奴らだ』
そんな言葉を呟いて、いよいよ彼はターニャ・デグレチャフとの接触を図るのだった。