排便時に血便が出た、トイレットペーパーに血のようなものが付いていた……なんてことがあったら、あなたならどうしますか?「もしかして大腸がんではないか?」と不安になる人もいれば、「ただの痔かな」とやり過ごす人もいるかもしれません。
たしかに血便自体は、痔の可能性もありますが、大腸がん、またはそれ以外の大腸の病気の可能性も考えられます。特に痔と大腸がんには、血便のほか便秘、下痢、腹痛といった共通の症状があり、特に慢性的な痔を持っている人に限ってがんの症状を見落としがちです。自己判断に頼らず、最終的には検査を受ける必要はありますが、基本的な血便の見分け方について今回はご紹介します。
便の色や形を毎日チェックして見分ける
大腸がんは、早期に見つかればほぼ100%完治する病気ですが、ひとたび発症して肝臓や肺に転移してしまうと、5年生存率が20%ほどになってしまいます。しかし、早期の大腸がんには自覚症状がほとんどなく、自分でがんに気付くことは困難です。症状が出るまでにかなりの時間がかかるため、症状が出てきた時には手遅れというケースがあります。
それに「排便時の出血」と聞くと、一般的には痔を連想しがちで、実際に出血が見られても痔によるものだと勘違いされることが少なくありません。しかし、大腸がんの代表的な症状の一つに血便があるので、痔だと思い込むのはまだ早いです。
大腸がんによる出血なのか、痔による出血なのかは悩むところですが、毎日のうんちをチェックすることである程度判断することはできます。便の色や形を観察することで病気がわかることがあるのです。
ただし、温水洗浄便座の普及などにより、最近では便を見ないで流してしまう人が増えてきています。ふき取ったトイレットペーパーを見る人も減ってきています。便を見なければ、せっかくの体からのメッセージを見逃してしまうことになるので、今日からでもうんちチェックは欠かさず行いましょう。
鮮血で痛みを伴えば痔の可能性が
真っ赤な鮮血で、トイレットペーパーにつくような水っぽい血の場合は、痔の可能性が高いでしょう。痔にもさまざまな種類があり、「痔核(いぼ痔)」や「裂肛(切れ痔)」、肛門近くに穴が開く「痔ろう(穴痔)」などがありますが、主に出血が見られるのは痔核と裂肛です。
痔核は、長時間立ちっぱなしの仕事をしていたり、逆に座りっぱなしの仕事をしている人に見られる痔の症状。また排便の時に強くいきむと痔核になりやすいようです。痔核の場合、痔核が奥のほうにできる「内痔核」と、肛門近くにできる「外痔核」に分かれます。外痔核は痛みのある場所にできるので、出血以前に痛みで分かる人がほとんどです。
内痔核の場合、濁りのない鮮血が出るのが特徴で、少量の場合は肛門からぽたぽたと垂れる、もしくはトイレットペーパーに付着する程度です。量が多くなると、便器が血で染まるほどの大量出血となることもあります。内痔核は痛みのない部分に発生するため、突然出血してびっくりする人もたくさんいます。
一方、裂肛は肛門が切れた状態、いわばキズです。便秘などで固い便を無理に排出する時に、肛門の粘膜を傷つけると裂肛となります。血の色は痔核と同じく鮮やかな赤で、出血量は少なく、トイレットペーパーにわずかに付着する程度です。しかし、裂肛は痔核と違って、激しい痛みを感じます。
いずれにしても、じわじわと出血したり、便のまわりに血がつくことはありません。痔の多くは自然に治りますが、便秘がちな人では慢性化することもありますので、治りが悪い場合は、念のため受診することをおすすめします。
赤黒い、粘血性がある場合は大腸がんの可能性が
大腸がんの場合、多くは鮮血というよりも、赤黒い血が見られます。また痔と違ってポタポタと垂れるような感じではなく、ネバネバしていることがほとんどです。大腸は、小腸で栄養を吸収された食べ物のカスが運ばれてくるところです。そして水分を吸収しながら、ゆっくりと腸管の中を進ませていき、便の形にして肛門から排泄します。しかし大腸のどこかにがんがあると、そこから出血するため、血の混ざった便ができるのです。
大腸は、小腸側から大きく盲腸、結腸、直腸の3つの部分に分けられ、中でも古い便の溜まりやすい結腸と直腸ががん化しやすい場所です。早期の大腸がんでは出血が少量であるため気付きにくいのですが、少しずつじわじわと出血し続けます。出血量が増えると便のまわりに血がつくようになり、出血の状態はがんの発生場所によって異なります。
小腸に近い結腸にできるがんは、初期の段階では下痢や便秘といった症状はほとんど起こりません。結腸がんでは出血してから排便までに時間が経つので、血が便と混ざりやすく、便の色が黒っぽく変色するのが特徴です。真っ黒に近いタール色の便が出ることもありますが、一見血には見えなくても「黒=古い血」の可能性が高いので注意が必要です。
また、直腸がんの場合は、がんができると下痢をするようになり、いくら排便をしてもすっきりしません。直腸まできた便は水分も少なく、便と血液が混ざることはありません。そのため、便の表面にこびりつくような血の塊を確認できます。大量には出血することがないため、一見すると裂肛のような出血の仕方をします。
裂肛よりも奥で出血しているため、血の色は実際には赤よりも黒に近い色をしています。また、ケチャップのような粘血便になることもあります。排泄間近の箇所で出血すると、痔と同様に鮮血が出ることもありますが、形としてでき上がった便のまわりに付着するので、便の表面に赤い血がまとわりついているように見えるのが、大腸がんの特徴です。
他に考えられる血便の原因とは?
痔や大腸がん以外で血便が出る原因としては、潰瘍性大腸炎があります。30代以下の若い層に多い病気で、大腸に原因不明の潰瘍が発生するものです。ネバネバとした血便が続き、人によっては苺ジャムのように見えることがあり、また下痢を繰り返しやすいのも特徴です。
一方で、高齢層に多い腸の病気に虚血性大腸炎があります。これは腸に血液を送る血管が狭くなることで腸の血流が悪くなった状態です。腸の粘膜に炎症が起きたり潰瘍ができたりする病気で特に糖尿病などにかかっている人に多く見られ、急な血便と右側の腹痛が代表的な症状です。
これら以外にも血便が見られる腸の病気はいろいろとあるので、便の色が気になる場合はぜひ消化器科や内科を受診すると良いでしょう。
自己診断は禁物、検査を受けて
ここまでは、目で見えるレベルでの血便の見分け方についてご紹介しましたが、目で見えないレベルで血が混じっている場合もあります。いわゆる便潜血と呼ばれるものです。肉眼ではわからない少量の血がうんちに潜んでいることを意味します。この便潜血は健康診断がきっかけでわかるものです。健康診断で潜血反応が出ると、精密検査の指示が出ます。精密検査ではどの部分から出血しているかを調べるために、X線検査や内視鏡検査など実施して、潰瘍やポリープ、がんなど血便の原因を見ていきます。
いずれにしても、血便の原因を自己診断するのは禁物です。直腸がんが原因で血便が出ているにもかかわらず、以前の痔の症状と同じと自己判断してしまったために、人工肛門をつけることになったり、命を落とすことになる人もいます。血便の原因は素人判断せずに、医師の診断を仰いでください。また、自分では気づきにくい便潜血をチェックするためにも、健康診断は毎年必ず受けるようにしましょう。