さてさて。バイエルンはUEFAスーパーカップを週末に控え、ミッドウィークに行われたこの1戦。相手は昨季5位のフライブルグ。ちと気が抜けない相手だが、ペップは思いっきりターンオーバーを敷いてきた。スーパーカップよりマイスターシャーレの方がよっぽど重要なはずだけど、スーパーカップの今回の対戦相手はモウリーニョ率いるチェルシー。バルサ時代からいろいろ因縁のある相手に「なめられちゃいけない」って気持ちがあったのかも。もちろんシーズンを見据えてターンオーバーを試したいという判断もあったはず。というわけでGKのノイアーは不動として、DFは右からラフィーニャ、ブイテン、ダンチ、コンテント。アンカーはシュバイニーのままで、その前にクロースとゲッツェ。右にミュラー、左にシャキリ。トップにピサロという並び。ラーム、アラバ、リベリ、ロッベン、マンジュキッチと主力級が軒並みベンチ。ラフィーニャ、ブイテン、コンテント、ピサロは今シーズン初先発と、なかなかに大胆な采配だ。フライブルグは相手が強豪だからと引いて守るタイプではなく、前からガンガンプレスをかけてラインも高く敷いてくるタイプ。基本的にバイエルンが得意としたいタイプで、バルサみたいにポンポンパスをつないでプレスをかいくぐりたいけど、さすがのペップでも就任間もないチーム、しかも慣れないメンツでそれをしろ、というには少し酷な話。サイドバックの動きが特に不慣れ。ペップ・バイエルン下ではサイドバックは常に高い位置かつ中央寄りでプレーし、パス回しに参加することが求められる。普通のサイドバックの仕事とはかなり勝手が違うだけに、ラフィーニャはこれまで数試合プレーしているから徐々に馴染んでいったけど、今季初出場のコンテントは苦労している様子。こんなとき個人技で何とかしたいウイングだけど、リベリの代わりに入ったシャキリにはまだ少し荷が重く、ロッベンの代わりに入ったミュラーも一人で打開できるタイプの選手じゃないから、ここからもいい形が作れない。それでもこの2人から点が入るんだからバイエルンはホント良いチームだ。33分、GKのクリアボールをラフィーニャがミュラーに落とし、ミュラーがサイドを突破して丁寧なクロス。ボールはファーで待ち構えていたシャキリにピタリと合い、綺麗にトラップしたシャキリがそのままダイレクトで押し込んでバイエルン先制、1-1。カウンターで相手の意表をついた形の得点だけど、ガッチリ固めた守備を崩せなくても、こうして相手のわずかな隙をつき抜け目なくチャンスをものに出来るのは強さの証。そしてその起点となったミュラー。点が欲しい時に仕事をする曲者度で言えば、ユーべのマルキージオと世界一を争えるレベルにあるんじゃなかろうか。試合は1-0のまま後半へ。リードしたことで無理に前に行くこともなく、落ち着いた感じでゲームを進める。コンテントは相変わらず左に張りっぱなしだけど、ラフィーニャがいい具合に中に入り、ゲッツェも頻繁に降りてきてボールに関与。ゲッツェのスペースにはシャキリが入り、左はコンテントがカバー、とこれはこれでスムーズにボールが回っているからペップ・バイエルンの懐は深い。その中でも特にシャキリは積極的にシュートを放ちゴールを狙っていくが、シュートの質は悪くないんだけどコントロールがイマイチで、ことごとくGKの範囲内に飛んで行き、そして弾かれる。少しでもプレーを見ればそのポテンシャルの高さが伺えるシャキリ。将来スターになる逸材だということに疑いの余地はないけれど、残念ながらバイエルンには既にリベリとロッベンの2人の怪物がいる。ただ、持てる力を発揮すればこの2人のポジションを十分に脅かせると思うだけに、こういう試合でしっかり結果を残してほしいんだけど。事実1ゴール奪ってはいるけど、この日のプレーぶりを見る限りもっとゴールは取れたはず。そこんところがもったいないし、もどかしい。点差を広げられないまま、63分にはゲッツェに代わってラームが入る。ポジションは当然そのまま。ペップ・バイエルンではもはやおなじみの光景だ。78分にはシュバイニーが負傷交代。代わりに入るのはリベリ。つまり左サイドのシャキリが中に入り、ラームがアンカーのポジションだ。本職はサイドバック。でもトップ下もこなせりゃ当然アンカーも高いレベルでこなせる。とんだポリバレントなプレーヤーだ。今までにこんな選手いたかな、いや、いた気もするな、と考えていたら思い出した。フィリップ・コクーだ。ラームの才能を的確に見出し、マルチなポジションで積極的に使っていくペップがそのコクーの元チームメイトという事実はただの偶然じゃないだろう。怪我したシュバイニーと代わって入ることになったリベリだけど、当然ペップもそろそろこのタイミングで投入するつもりではいたはず。80分過ぎて点差はまだ1。気を抜ける状況ではない。時間がなくなり、より前がかりになるフライブルク相手に、後ろはどっしり、前はリベリを入れて鋭さを増そうと試合をまとめにかかったペップだけど、昨季ブンデス5位の実力はそんなに甘くなかった。85分、カウンターで左から右に振られ、その間に守備陣形は整えられたものの、速い攻撃の中でみんながボールに目を奪われていた。そんな中、するするっとエリア内に侵入するヘフラー。誰もマークにつけていない。そんな絶好のターゲットをフライブルクが見逃すわけもなく、正確に放られたクロスにへフラーが飛び込んで押し込んで1-1。バイエルン、まさかの同点。やはりこのチームはまだまだ下がりながらディフェンスすることに慣れてない。下がり切っても集中力がまだ散漫だからこんな失点が生まれてしまう。ペップ・バイエルンが今後克服すべき最も大きな課題だ。ペップは慌ててピサロに代えてマンジュキッチを投入。ピサロも悪くはなかったけど、マンジュキッチと比べれば貢献度はぶっちゃけ大きく落ちる。ポストプレーが上手く、出場機会が少ない割には連携も良くてチームプレーの質は高いんだけど、本来の9番のようにクロスの絶対的なターゲットにはなり得ないし、ゴールへの意識もセンスも劣る。だからこそ、ターンオーバーをするにせよリベリやロッベンと上手く組み合わせれば使い道もあるんだろうけど、よりによってこの日はバイエルンの絶対的なトリデンテを3人ともベンチに下げてしまっていた。この日のペップ采配の最も大きなミスはここだろう。ということで。さすがのマンジュキッチも残り10分もない状況では何もできず、1-1のまま試合は終了。バイエルンの無敗記録は29に伸びたものの、開幕からの連勝は3でストップ。ライバルのドルトムントが順調に連勝を伸ばしているだけに痛い敗戦となってしまった。ターンオーバーで勝てる試合を落としてしまった分、余計に痛い。ペップは意外と落とすところでは大胆に戦力を落として、普通に勝ち点も落とすということがバルサ時代からも何度かあっただけに、監督としてそこのところの手腕も注意して見ていった方がいいかもしれない。ドルトムントの出来も相当で、ゲッツェ不在の影響は感じさせずむしろチーム力は増している気がするだけになおさらだ。リーグでは強者に勝ったチームではなく、取りこぼしが少ないチームが優勝する。メッシ相手に頼りなく失点を繰り返すチームばかりだったリーガ・エスパニョーラとはかなり気色の変わるブンデス・リーガで、ペップがどれだけそのことを真に理解しているかはバイエルンの将来を大きく左右するだろう。
「ターンオーバーの手腕」 ブンデスリーガ13-14 フライブルクvsバイエルン・ミュンヘン
投稿者:myrowka 投稿日時:2013年09月05日 00:52
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