1.リーダー・システムを考える。(きわめて私的リーダー論)
菊地 敦
そろそろ解禁直後のお祭り騒ぎも収まり、水中での昆虫達もハッチしはじめます。これからがドライ・フライ・フィッシングの本番ですね。このドライ・フライをうまくポイントに運んでくれるのがラインの先に続くテーパーリーダーの役目であることは言うまでもありませんね。
最近は色んな長さ、サイズ、タイプのリーダーが市販されているので買ったまま使っている人が多いと思います。もちろん、それはそれでいいのですが、ちょっとした改造とかを施し、自分の釣り方にマッチしたリーダーにしてみてはいかがでしょう?
という事で、僕の場合はどうしているかを紹介しますね。
巷では、ロング・ティペット・リーダーが流行ってますね。私の場合、リーダーそのものの長さは長いですがティペットはさほど長くありませんし、太さも8Xまでしか使いません。長く細いティペットは確かにドラグ・フリーの手助けをしてくれるかも知れませんが、フライがターンオーバーしないとか、トラぶったら大変・・・などの弊害があります。
フライ・フィッシングはゲームです。だからドラグ・フリーにフライをドリフトさせる為には道具に頼らず己の腕を磨く!というのを、いつも自分に課せています。(もちろん、なかなか克服出来ないのですがネ(-_-;) で、僕のリーダーで最長のものは23フィートです。ブレイデッド・バット・リーダーの18フィート用のもの(12フィート)に4Xティペットを2フィート、5Xを3フィート、6Xを3フィート、7Xを3フィートと繋いでいきます。
この馬鹿長いリーダーはブレイデッドのバット部のおかげで巻き癖もつかず、ターンオーバーもきっちりしてくれます。4番ラインに取り付けたこのリーダー・システムは、アメリカのヘンリーズ・フォーク・リバーや鬼怒川本流などの大河で使います。ロッドは9フィートです。また、6番ラインの場合は湖でのドライ・フライやルースニングに使います。特にルースニングの場合インジケーターとフライの間が2m以上でもリーダーの巻き癖が無い為、当たりが明確に出ます。
通常の渓流の場合ですが、やはり長いです(~o~) 15~18フィート位です。メーカー製の12フィートの場合は4Xを使い5X、6Xティペットを足しています。でも、一番使いやすいのは「改造ウェイトフォワード・リーダー」です。9フィート3~4Xほどのテーパーリーダーのバット部を3フィートほどでカットします。その先に9フィート4Xのリーダーを足して5X、6Xのティペットを繋ぎます。または12フィート5~6Xのリーダーを繋いで出来上がりです。
テーパーが2段になるためターンオーバー力が優れています。このリーダー・システムは3~4番ラインに接続し、8フィートのロッドで使います。源流や藪沢以外はほとんどこの状態で使います。#10のアントから#28のミッジまで(この時は7Xのティペットを足しますが)キャストし、ターンオーバーさせます。
さすがに7フィート前後のロッドに対応するような小渓流になると全長が9フィートの市販品の5Xリーダーとか7フィート半4Xに5Xのティペットを足したものなどになります。 僕の場合、ターンオーバーを重視するのでバット部の太い4Xリーダーを元に手を加えることが多いですね。逆に7フィート半7Xというリーダーはバットが細い為、ターンオーバー力をロスするため、ほとんど使いません。目立つフライラインを少しでも魚の視界の遠くへ置きたいというのが目的なんです。そのためにはきっちりターンオーバーしてくれないことには僕には意味がないのです。
一方、シンキング・ラインのリーダー・システムはイージーです。対象魚のサイズやフライサイズに合わせて6フィート半4X、9フィート0Xなどの市販品をそのまま使います。ただでさえリーダー・トラブルが起き易いヘビーウェイト・フライですから結び目も少なくしたいからです。
各サイズ、各長さのリーダーを持ち歩くのもいいのですが、基礎の部分を共通化させることによりティペットとバットで対処するという方法を覚えているといいですよ。また、自分の好みにチューニングできるということも・・・・・。2.正しいリリースの仕方
菊地 敦
ある雑誌に、リリースしても死んでしまうから意味がないというテーマがあったとか。果たしてリリース後の生存率は分かりませんが気持ちの問題なのかな。これは、とある初心者からの質問でした。
近頃はルアー&フライが浸透して、キャッチ&リリースがかなりの確率で行われています。しかし必ずしも適正なリリースが行われていなくて、単に魚を元の流れに放り込んでいるだけ・・・という光景に出くわしたりします。
これでは確かに生存率は落ちますが正しい方法でリリ-スされればかなりの確率で生存します。もしリリ-スしても死んでしまうのなら,放流させる事のないモンタナのマジソン川など魚が枯渇しています、とっくに。
これは正しいリリース法によって、魚体にダメージを与えていないから・・・という理由もあります。完ぺきなリリ-スをめざすなら・・・・ ・
無闇に細いティペットを使って,釣り上げるまでの時間をかけすぎない。
*魚もグロッキーになって息を吹返すまで時間がかかります。
・魚体に触らず,フライだけをうまく摘み(手またはフォ-セップで)外しリリ-ス。
・釣った魚を乾いた岸に置いたり,引きずり上げたりしない。
*皮膚の粘膜を剥がしたりすると病気になりやすくなります。
・当然強い力で手で魚体を掴むなど,もってのほか。ネットの使用のほうがまし。
・体力を使いはたしているようなら,流れの緩い場所にリリ-スするか,下から 腹を支え回復を待つこと。
・大物の場合、記念写真を撮りたくなりますが、なるべく手短に終わらせたいものです。この時も乾いた岸に魚を置いたりするのは厳禁です。濡れた草、できれば浅い水中でが望ましいですね。
このように丁寧に扱われてリリースされた魚は、大きく成長して再び私達の相手をしてくれるでしょう。もし、海外のキャッチ&リリースやノー・キルのレギュレーションのある場所への釣行をお考えなら、是非これらのリリースを身につけて欲しいものです。3.ハイ・シーズンに備えて
菊地 敦
さてさて、待ちに待ったフライのハイ・シーズン突入です。でも、手入れ不足で思ったほどの性能が発揮出来ずに悔しい思いはしませんでしたか?
フライ・フィッシングのタックルはシンプルであるがためにメインテナンスなどとは無縁のような気がしがちですね。実はシンプルであるが為に日常の手入れ一つで見違えるほどの性能を引き出せたりするんです。
また、決して安くないフライラインも手入れの有無で、その寿命には雲泥の差が出るものなんです。休みの度に釣り場に行くものいいのですが、たまにはそんな道具達をいたわってあげてはどうでしょうか?
・ラインの手入れ
フライライン、特にフローティングラインはひび割れたり、先端部の浮力が落ちたりして寿命が来たことを感じたりしますが、日頃のメインテナンスいかんでは倍近く寿命が延びるようになります。また、シューティング特性もぐんと向上し、快適に釣りが楽しめます。
ラインはコアのブレイデッドラインにプラスティックがコーティングされて造られていますが、このプラスティックの柔軟性を出す為に使われている可塑剤が抜けていったり、紫外線などのせいでプラスティックが硬化してしまうことによりひび割れがおきます。
この目に見える大きなひび割れ以外にも微細なひびがライン表面に出来、ざらついたラインになってしまいます。こうなるとロッドのガイドとの摩擦が増え、シューティング時にラインが飛ばなくなったり、ガイドが削れたりします。またひびからライン内部に水が染み込んで浮きが悪くなります。
では、実際のメンテですが・・・・
釣行から帰ったら、使った部分だけでもいいですからリールから引き出し、ぬるま湯に中性洗剤を薄めに溶かしたものに漬け、表面の汚れを落とします。そのあとよくすすぎ、軟らかい布で拭き新聞紙などの上にひろげてしばらく乾燥します。
そして、ラインクリーナーやライン・コンディショナーなど液体状の製品をフエルトなどに少量染み込ませたものでラインを挟んでコーティングしてあげます。念の為、リール側からコーティングをしたら、逆に先端側からもコーティングをすれば完璧でしょう。
次ぎにリールに巻き取り、ライン先端の沈みやすい部分にはペースト状のライン・コンディショナーやライン・フロータントを塗ってあげれば出来あがりです。シンキング・ラインの場合には薄くコンディショナーを塗るか、シンキング・ライン用の製品を使用します。特にインターミディエイトなどの沈みにくいラインの場合にはシンキング・ライン用のものが良いでしょう。
コンディショナー、クリーナーというものにも大きく分けて2種類あって、液体状のものとペースト状のものとがあります。前者はラインの滑りが飛躍的によくなる反面、浮力を良くしたり、持続性があったりという期待は持てません。
一方後者はこれをランニング・ライン部に塗ったりするとラインの滑りが悪くなる上に、ゴミが付着しやすくなります。しかし、浮力を与えたり、持続性では優れたものです。ですからこの2種を「適材適所」で使分けるのがベストです。
それから、良く使われる「ブレイデッド・リーダー・コネクター」が沈みやすい場合、ペースト状のコンディショナー(ミューシリンなど)を塗りこんでやると浮力が増します。
・ロッドの清掃
釣りから帰ったら、毎回洗ってあげればいつまでも綺麗なままでいるのですが、放って置きっぱなしというパターンが多いのでは?ガイドの内側や周辺には、水の汚れやゴミが付着して白くなっていたりします。これではせっかくラインの状態が良くても無駄になりかねません。
ぬるま湯で汚れているあたりを濡らし軟らかいブラシなどで擦ってよごれを落とします。ストリッピング・ガイドの内側も濡れ雑巾などで拭いて綺麗にして下さい。
次ぎにコルク・グリップです。初めにグリップをぬるま湯で濡らし洗濯石鹸をつけたスポンジで擦ってあげると見事に手垢などの黒ずみが落ちていきます。ただし、この時にラッピングなどのコーティング部を擦ると傷がつくので注意してください。
すべてが済んだら陰干しし、フェルール部の弛み止めやがたつき防止、癒着防止の為に、ロウソクなどを少量塗ってあげれば終了です。
・リールのメインテナンス
構造的にはシンプルなのがフライ・リールではあったのですが、最近はディスクドラグ・タイプなどが各種登場し、昔ほどシンプルでは無くなりつつあります。それでも自分で手入は行わないといけません。しかし、手入といってもグリスアップがほとんどです。
はじめに従来からある「クリック・ドラッグ」タイプの場合です。このタイプはスプール裏側についたギアーに本体の爪が当たってブレーキを掛ける構造になっています。大方の製品が、このギアー周りや爪周辺に硬めのグリスが塗ってあります。グリスも経年変化で硬化したりするので、年に一回位のサイクルでグリスの交換を行うと良いでしょう。
まず、古いグリスをティッシュペーパーや綿棒で丁寧に取り除きます。そして新しいグリスを再度塗りますが、この時に多く付け過ぎるとゴミや砂が付着しやすくなり、かえって悪影響が出るのでほどほどにして下さい。
次ぎは、最近主流になりつつあるディスク・ドラグ・タイプです。これらのほとんどにはグリスなどの高粘度のオイルは使われていません。バウアーなどの内部には一部使われていますが、通常手入をする部分は、粘度の低い液状のオイルが向いています。
給脂部分は、まずシャフト。他にはドラグのアジャスタブル・ノブ周辺などです。ただ、これも付け過ぎてディスクに油が回るとブレーキ性能が落ちることもあるので注意して下さい。あとは外観上の汚れなどは濡れティッシュでふき取り、CRC-556などを薄く塗ってあげれば終了です。
メインテナンスによって、今まで以上に道具達に愛着が湧くとともに、使い心地も良くなる事請け合いです。4.ディアヘアーの使い分け
菊地 敦
店頭で置いてあるディアヘアーって、何種類ほどあるか御存知でしょうか?
そして、その使分けは?? 今回はそんな疑問にお答えしましょう。
DEER HAIR
極々一般的に「ディア・ヘアー」と呼んでいるものです。獲った鹿の年齢や、部位により毛足が長く太いものから短く細いものまでバリエーションがあります。
鹿の種類によっても色々なタイプがありますが、毛の一本一本が太いものはタイイングした際にフレアーしやすく、中空構造もしっかりしていて浮力も強いフライが巻けます。逆に#16以下のフライのタイイングには向かず、#10以上のドライ・フライに向いています。
最も適しているのは「バスバグ」や「マドラーミノー」などのヘアーボディやヘッドを作り刈り込んだパターンです。浮力があり、きちっとしたシルエットにするには多少多めかと思われる量のディアヘアーを隙間なく綺麗に平均して巻き込むことです。
カラーが豊富なのもこの素材の特徴ですが、漂白してあるものは強度が若干落ちているのでスレッドで強く絞め過ぎると切れてしまうので注意が必要です。
さて、毛足の短い細めのディアヘアーの場合は、#14を中心としたカディス・パターンに使うことをお薦めします。普通に使われるエルクヘアーより柔軟でフッキングも良好です。
ただ、エルクより強度が落ちます。他にはハンピーのシェルバックやウィングに、モンカゲロウ・パターンなどのウィングにも適しています。ウィングとして使う時には毛先の細い部分がなるべく短い、テーパーのきついものが最適です。まぁ、そのような使い方にぴったりなものが次のコースタルディアーではありますが。
COASTAL DEER HAIR
太さも中間的なものでフレアーもしやすいディアヘア-です。コースタルディアーの独壇場となるのは「ヘアー・ウィング・パターン」です。
コンパラ・ダン、スパークルダン、X-カディス・・・・これらノーハックル・パターンは#14以下が中心であるとか、あまりボリュームが出せないなどの制約があるので普通のディアヘアーでウィングを作るとボディとのバランスがとれません。
ところがコースタルディアの場合毛先の短い良質のものであれば#22のコンパラダンさえタイイングできます。また、毛先の多少長いものはX-カディスや#10くらいの大型パターンのウィングに丁度良いボリュームです。私が最も多用し、尚且つ選択するときに厳しくチェックしているマテリアルです。
COMPARADUN DEERというのはコースタルディアのセレクト品の名称です。毛先が短く使いやすいです。
TEXAS WHITETAIL DEER HAIR
中空構造が乏しく、また細い毛が特徴です。中空が乏しいということはそのままフレアーしにくいことを意味します。浮力も若干落ちます。しかし、#18というような小型のカディス・パターンに使われます。またウルフ・パターンなどのテール材に使ったりもします。
このようにディアヘアーといってもそれぞれ個性があります。その個性というか癖をうまく引き出してあげればタイイングも一段と楽しくなりますよ。購入の際には使い道によって現物をチェックしましょう。5.管理釣り場症候群に注意!
菊地 敦
さて、フライはシーズン真っ盛りです。今年こそ管理釣り場から、本物の渓流のFFにチャレンジしてみようと思っている人も多いでしょう。時期的に、気温も快適ですし、ハッチも比較的単調なトビケラ(カディス)がメインになるのでフライ・セレクトも楽です。まぁ魚は大分釣り上げられてしまってそんなに残っていない川もありますが・・・・。
キャスティングもそこそこ出来るようになったし、管理釣り場では周りを尻目に爆釣することだってある。そこで「師匠」とか「先輩」に連れられて「秘密の川」へ行き、華々しく渓流デヴューを果たしたとします。
師匠は自分も釣りたいのと、弟子も一人で釣れるだろうということで場所割をします。もちろん、いい場所を弟子に譲る位の親心は持っていますが。で、数時間後待ち合わせの場所で昼飯を摂りながらの会話です・・・・
師匠:「どうだった?いいのが釣れたでしょう?」
弟子:「いえ・・・・ぜんぜん駄目で・・・・モゴモゴ・・・」
師匠:「あそこは絶対魚いるんだけどなぁ。」
弟子:「居ませんでしたよ。でも、何匹かは足元から泳ぎ去ったのが見えたけど」
で、師匠は午後は弟子の釣りを見てみることにしました。
そこで師匠は気がつきました。魚は居ないのではなく、弟子はポイントの魚に警戒心を与えてしまっているので釣れないということを。
それは管理釣り場の、人馴れしてしまった魚を釣ることに長けていても、自然に戻りつつある魚には通用しないことが沢山あります。
・魚が見えない(確認できない)からといって無闇にポイントに近づき過ぎない。
元々渓魚は保護色のため見えにくいものです。しかも鱒釣り場のように一箇所に何匹も群れているなんてことは稀です。で、流れ出し付近に魚が見えないからといって、つい近づいてしまい、実は流れ出し辺りで餌を摂ろうと定位していた魚に気づかれて魚を上流側の落ち込みの中に追いやってしまいます。
そうすると、下手をするとそのポイント中の魚に警戒心を与えてしまいます。階段状の流れの連続するポイントでは、少なくとも1段下から、人の多く入る川では2段下に立って狙うことが必要です。
・魚は上流を向いていても、水面上のものは背面のものまで視界に入ります。
ポイントに近づき過ぎ無いというのは、このことも理由です。また、太陽を背に受けてポイントに立つと、影が水面に落ちることもあります。ちょっと離れているからと安心して仁王立ちでキャスティングしたりするのもよくありません。どれもこちらの存在を魚に教えているようなものです。それと、よくあることなのですが、ポイントの真上でフォルスキャストを繰り返すというのも厳禁です。なるべく少ないフォルスキャストで、またはポイントとずれた角度でフォルスキャストをする・・・という工夫が必要です。
・あまりにアトラクター色の強いフライは魚が嫌う。
例えば自然界には黄色とかピンクのマラブーのような餌は存在しません。また、その大きさも問題となります。最初は関心を示すかも知れませんが、驚いて逃げてしまう可能性のほうが大きいですね。
・追い食いをよくするので、意外なところでフライにライズする。
ポイントと思われるところからフライが流れ去ってしまったのでピックアップしようとした瞬間にフライへ出るなんていうのはよくあることです。流れ出し寸前なんかも油断できません。いつフライへ出てもいいように気を抜かないことです。
・バックキャストの時の障害物に注意!
自然渓流は当然の事ながら、釣りやすいようになっていません。逆にこういう釣り難いポイントこそ大物が潜んでいる可能性が高いものです。キャストするラインが空中でどこを通るのか考えながら立ち位置を決めます。また必要なら「ハイバック・キャスト」や「ロール・キャスト」などで対応します。
・人の多く入る川では、大場所は魚がいない。
初期にはいても、ほとんど釣り切られるというのが普通です。たとえいても昼間には岩の下などに隠れていて出てきません。イブニングになると隠れていたのが出てきたり、ほかの場所から魚が移動してきて最高のポイントになる可能性はあるので時間次第です。
逆に猫の額ほどのポイントでもある程度の水深があり隠れることの出来る岩などがあるような所なら意外な大物が潜んでいる可能性が高いです。しかし、管理釣り場とは違っていくら良いポイントといっても何匹もの魚が一箇所で釣れる事は無いので見切りも大事です。自然に戻った渓魚は縄張りのようなものを持つようになるというのも覚えていて下さい。
・魚がいることが確認できたポイントでも、しつこく粘っても無駄。
一度警戒されてしまったら時間を空けて再度狙うのが常套手段です。ただし、こちらの存在に気づかれていないようだったら、フライ・パターンを替えてみるといいですね。ドライからニンフまで試すと釣ることが出来ることもあります。
・ミスキャスト一発でポイントが駄目になる。
これはもう、説明は要らないでしょう。打ち付けるようなキャスト、大きな音がするようなピックアップは魚を驚かすだけです。
・ライズしているのならドライでしょ?!
よく見かける光景です。目の前で渓魚がライズしているのに何故か大きなインジケーターをつけてモヤモヤしたニンフもどきを投げつづける人を・・・・。しかも全然違うポイントに。ライズの主が何だか分っていないのかどうなのか??理解に苦しみますが、そういう時こそドライフライの出番なんですけどねぇ・・・。
以上のように、同じ魚をフライで釣るのに、管理釣り場と自然渓流ではまるで違う物です。また、適正な生息密度の川というのは、管理釣り場の足元にも及びつかないほどの魚の数です。釣果は数ではありません。どれだけ自分なりに納得できる釣りが出来たか?です。一匹一匹との出会いを大切に釣りたいですね。それでは!6.目指せ中級
菊地 敦
管理釣り場症候群からは逃れられたでしょうか?
渓流初心者から、何度か川に足を運び、やがて一人でもなんとか魚が釣れるようになり初級者へと進んでいきます。
しかし、何故か段々釣れなくなってくる日がきます。同行者は釣っているのに自分だけが釣れない・・・・。または思惑が全て裏目に出て魚に相手にされないとか・・・・・。
ここで、「ああ、フライってやっぱり釣れないんだぁ」と考えて挫折してしまう人も少なくありません。ちょっと待ってください。それを克服すれば中級者です。
今まで以上に釣れるようになるのです。
何故釣れないのか?ですが・・・・おおよそ魚の着き場が分ったような気がして、絵に描いたような一級ポイントのみ狙っている。
釣人の多さ、先行者の有無、魚のスレた度合いなどにより、ポイントは流動的になります。小さくても水深のあるポイントなどもこまめに狙ってください。また、季節により平瀬のほうがいい場合もあります。
・フライ・セレクトは正しいか。
本来、フライ・フィッシングとは、その時魚が捕食しているものに合わせてフライをセレクトするものです。ところが、自分に見やすいからとか、これが良いと雑誌にかいてあったからとか、前回はこれが効いたから・・・・などと、自分本位になっていないでしょうか?カディスしかハッチしていない所へメイフライ・パターンのスパークルダンを投げても駄目です。もちろん極小ユスリカばかり食べているヤマメにカディスを投げても無駄です。その時何がハッチしているのか?または何が流れているのか?フライをティペットに結ぶ前に川をよく観察しましょう。
・釣りにきているのか、キャスティングにきているのか?
この頃になると、そこそこのキャストができるようになります。そうすると、必要以上に遠いポイントを狙いすぎ、最も大切なナチュラルドリフトのほうはいい加減・・・なんてことに陥るのもこの頃です。キャストする距離は、魚にこちらの気配が察知され警戒さえされなければ近いほど有利です。流れに乗ったラインの操作もしやすく思った通りにフライを流し易いですね。
・ワンパターンになっていないか。
フライもそうですし、ポイントも然りです。そして狙い方も・・です。日本の渓流では「アップストリーム・キャスト」で狙うことが圧倒的に多いのは事実ですが、時には「クロス&ダウン」で狙うことが必要な場合もあります。どうしてもフライ先行で流れてこないとライズしてくれない場合があるのです。また、ライズがあるからといって単純にドライ・フライを投げていませんか?水面下2cm位を流れて来る物を捕食する時にも、ちょっと見はライズに見えます。そのような時にはウェットやイマージャー・パターンが効果的なことも多々あります。
・マスコミの情報に振り回されすぎていないか。
こんなことがありました。初級者君と釣りに行ったのですが、私が「あそこの石の陰、絶対(魚が)出るから狙ってごらん」ところが何度キャストしても、そのピンポイントにフライが入りません。4m先のそのポイントにキャストできる腕はあるのにです。で、私は彼のタックルを借りてやってみました。やはり入りません。フライが肝心なところでターン・オーバーしないのです。聞いて見ると・・・9ft6Xのリーダーに6Xのティペットを1m足しているとのこと・・・・。いわゆるロング・ティペット・リーダーでした。キャスティングの腕もさることながら、使い方を誤れば無用の長物です。その時の私はと言えば9ft4Xに5Xを40cmというシステムでした。仕事柄(フライショップ勤務)よくこんな会話があります。「この間○×川へ行ってきたのだけど、人ばかりで魚なんていないんだよ」 その川は色々な雑誌に紹介されていて、しかも先程きたお客さんも、昨日来たお客さんも同じようなことを言っていた川だったりします。雑誌に紹介された川は色々な意味で避けたほうが無難である、ということの例です。
釣りが面白くって仕方がないという、この頃は雑誌や本などを読み漁ります。そこで注意してください。何が自分に合っているのか。または、自分なりに消化することが大事であるということを忘れないで下さい。
とにかく場数を踏んで、様々な状況に遭遇してみてください。例えその時には釣れなくても、データの貯金には役立ててくださいね。そうすれば、次回にはきっと!7.フライ・フィッシングは推理ゲーム
菊地 敦
いい釣りは出来ていますか?
有名河川へ行ったのだけど、人ばかりで魚の姿は結局見れず・・・とか、ライズはガンガンしているのに全く何を捕食しているのかも判らずお手上げだったとか、テレストリアルが良いって言うのでアントを投げたのに全く反応が無かったりと悔しい思いはしませんでしたか?
最近、私は初心者の方と釣行することが多いのですが、入渓する際に「多分、今日は落ち込みより、瀬に魚は出ていて○×カゲロウ・パターンがいいはずだよ。で、○時頃カゲロウのハッチがあるはず」とか「ここは陸棲昆虫が少ないだろうからカディス・オンリーでいいかもね」などとアドバイスをしています。すると、言ったとおりのことになるので、初心者クンはびっくりします。「菊地さんは魚の気持ちが判るんですか?」
過去の例から判ることも当然多いですが、全く初めて入る渓流でもそれなりに予測があたることもよくあります。その為には膨大な量のデータの蓄積が必要なのですが、それに不可欠なのは川と魚しか目が行かないような状態は避けることです。川の周辺の植生はどうでしょうか?河原の発達状態は?増水の痕は?底の状態は?棲息する水棲昆虫はどんなものが?堰堤や護岸などの状態は?・・・・・・
例えば、人工林の杉や檜の中を流れる川では、周辺に陸生昆虫があまり棲息していませんから、真夏といえどもアントなどはマッチしません。逆に、広葉樹の中を流れる階段状の渓流で、しかも、増水するとかなり暴れるような川の場合、メイフライのシーズンなのに陸生昆虫のほうがよかったりします。どういうフライが有効なのかを知る為には、どういう昆虫(=餌)が居るのかを推理します。
堰堤が多く、河原が葦で覆われた渓流があったとしますね。どうでしょう?非常に釣りにくそうです。そういう川は葦の根元のエグレなどに魚が隠れ易く、古い堰堤などの基部も崩れその中にも魚が隠れています。そういう推理も成り立ちます。これは多くの事例から推察するのですが・・・。
ライズ・フォームから何を捕食しているのか推理するのは一番楽しいことです。魚が水面直下に定位し、ほとんど動かずに自分の目の前にだけ「ポクン」という小さい波紋を残すようなライズだったり、中層に位置していた魚が急浮上し、「ピシッ!」というライズだったり、「ガボッ!」というかなり激しいライズだったり・・・
それぞれに捕食対象が異なります。あるものは産卵の終ったメイフライのスピナーだったり、羽化浮上するカディス・ピューパだったり。そういうものを推理するのに必要なのは流下するものを掬い取るネットです。まぁ、いろんな物が流れてきていて余計混乱するかも知れませんが、それはそれで悩んでみてください。
ゲーム・フィッシングの「ゲーム」の意味あいには、こんなところもあるのでは無いでしょうか。8.ロッドを理解しよう
菊地 敦
渓流は極々一部を除いて禁漁になりましたね。これからは繁殖の季節なのですが果たしてどれ位の個体が残っていて繁殖行動に入れるのか気に掛かります。
さて、今シーズン、アクシデントでロッドを破損したり、または、物欲の虜になってしまって新たにロッドが欲しくなったり・・・・ショップでついついロッドに手が伸びてしまう季節でもありますね。
店頭で各種ロッドが並んでいると、まず値段、次に仕上げ、そして手にとって振ってみると思います。
そして自分の好みに合うか確認してみる訳ですが、ちょっと待ってください。本当に素振りでそのロッドのアクションが分るのでしょうか?
その前に、ロッドの素材についてお話しましょう。現在では、大きく分けて3種類の素材がフライロッドのブランクに使われています。バンブー(竹)、グラスファイバー、そして最も一般的なカーボングラファイトです。
それぞれ反発力というか弾性を有していますが、それはバンブー<グラスファイバー<カーボングラファイトの順に強くなっていきます。これは、同じ反発力(つまり同じ番手)を得ようとすると反発力が強いものほど、より少ない素材で足りる、つまりブランクが細く、中空の場合は壁が薄く出来るということになります。これはロッド全体の重量が軽くなるということでもあります。
キャスティングの際ロッドは曲がりますが、これはラインの負荷、および「ロッド自体の慣性質量」によるものです。慣性質量の大きい(つまり反発力の弱い素材)ロッドほどラインの負荷が無くてもよく曲がります。これは同じ素材を使っていても、ブランクをスローテーパーにし、ロッド先端部の重量を多めに設計した場合も同じような結果になります。
逆に慣性質量の小さいロッドやファーストテーパーに設計したブランクは、自重での曲がりが少なく、またティップの返りも早くなります。これらの違いがライン負荷が無い状態で素振りした時に「軟らかいロッド」「硬いロッド」という印象に繋がります。
特に、最新のカーボングラファイト素材のグラファイトVとかT-40とかIMXと呼ばれるハイモデュラス・カーボンを使用したロッドの場合など顕著で、まるで棒でも振っているような硬さを感じたりもします。
最近の風潮としては、小さい魚でも大きく曲がる(なんだか悲しいですね)とか、ロングティペット対応とかで妙にへなへなしたロッドが受けています。それからすると、素振りでは棒のようなロッドは好まれません。(ラインを乗せると全く別のアクションになるのにです)
ところが、ライン負荷が無い状態でも軟らかい(軟らか過ぎる)ロッドはいざラインを乗せてみると10m以上のキャストになると過負荷状態になってラインが失速してしまいそれ以上のキャスティングが困難になるものもあります。
フライラインの場合はライン番手にしっかりとした規格がありますが、ロッドにはそれがありません。メーカーがこれは#4と言ってしまえば例え#2でなければ20yds以上キャストできないものでも#4なのです。
つまりロッドの番手はメーカーやデザイナーのコンセプトや好みによって決められていると言っても過言ではありません。特に、国産ロッドと輸入ロッドのコンセプトはまるで別の物です。
輸入ロッド(主にアメリカ製)は#2であろうとショートロッドであろうと、とにかくフルライン近くまでのキャスタビリティを有しています。また対象魚も30cm以上のものを考えていますからバットのパワーがあります。
一方、国産ロッドの場合前述のようにライトライン・ロッドは木っ端サイズの魚でも良く曲がるという妙な風潮が流行っている為、肝心要のキャスタビリティが犠牲になっているものも少なくありません。まぁ、近距離のみであればさほど問題視されないでしょうけど。
つまり、最近のロッドはティップを天井につけて曲げてみたり、素振りしたりしても、本当のところは全く分らないということです。あまりそういう店はありませんが、ラインを乗せて振らせてもらうとか、友人の持っているロッドを振らせてもらうなど、是非ご自分で体感されるのが一番です。
それが無理なら、自分がどういう好みで、どのような状況でそのロッドを使いたいかを店の人に伝え、助言を得ることです。またロッドの指定番手も自分の好みに合わせて、違う番手のものを使ってみるとより自分の好みに近づけられるかも知れません。
全てに万能のロッドは存在しません。どんなに高価なロッドでも使い方を間違えれば「ただの棒」になりかねませんから、使う側もしっかりとしたコンセプトを持ちたいですね。9.日溜りの雑魚フィッシング
菊地 敦
小春日和の午後、管理釣り場に行くにしては遅すぎるし、でも何となくロッドを振りたい・・。
そんな時にはシーズン中はヤマメを追いかけて徘徊した渓流のもっと下流部で、ウグイ(ハヤ)、オイカワ(ヤマベ)などの小魚を相手にしてみるのはいかがですか?場所によってはハスも居たりして引きも楽しめますね。
タックルは、思いっきりライトな物のほうが楽しめます。#2がベストマッチですね。でも#4でも問題無く楽しめますよ。ただ、魚の引きが犠牲にはなりますが・・・・。リーダーは9FT7Xで十分です。あまり長いリーダーやティペットだと、電光石火のヤマベのライズに合わせが間に合わないことが多くなりますから。フライは#18以下のクロノミド・パターンです。確実にフッキングさせるのなら#22以下が必要です。別に凝ったパターンでなくても結構です。ハックルとボディだけでも十分アタックがあるはずです。ただ、カラー・パターンは明暗の2パターンあったほうが確実です。
この時期、ヤマベが捕食しているのはユスリカです。それにマッチさせたフライ・・・と言うことです。極小サイズときてますからフライをキャストしても自分のフライがどこにあるのか分からなくなりそうですが、ヤマベの場合はフライが着水すると同時に出ることが圧倒的に多ので、タイミングで合わせる方法もあります。
まぁ、逆に長く流してもあまり反応は期待出来ないので、こまめにキャストを繰り返すのがヒットにつながります。ただ、水温や時間によってはコカゲロウのハッチがあり、それを偏食しているときのヤマベは気難しい上にフックサイズも大きくなるのでなかなか掛けるのは難しくて、結構熱くなれますよ。
ドライだと合わせが魚のライズに間に合わなかったりしてそれなりに難しいのですが、極小ウェットやクロノミド・ピューパなんかのパターンで水面下を流すと、意図的にテンションを与えて流すと「向こう合わせ」で釣れることが多くなります。丁度、昔からある「蚊針の流し釣り」のフライ版ってところですね。
さて、ポイントですがヤマベは流れの緩い浅場で、水温の上昇によって始まるユスリカのハッチに合わせてライズしはじめます。集団で行動することが多いので魚を驚かさなければ数釣りは簡単ですが、コイ科の魚は音に敏感ですからミスキャストや不用意なウェーディングで群れを散らさないことが大切です。一方浅いトロ場の流れ込み周辺も良いポイントですが、メンディングなどのトリックキャストを駆使しないとヤマベと言えども釣れないこともありますが、物音には比較的寛大です。
ハヤの場合、トロ場でも水深の結構深い場所とかトロ瀬の真中とかで小規模な群れでライズし始めます。特に大型の個体ほど深場を好みますから、ウェーディングやロング・キャストが必要になります。しかもフライの選り好みもヤマベより激しいですね。ただ、尺物もいるので引きならハヤでしょう。
関東では、あまり一般的では無いハスは口の大きなヤマベという感じの魚ですが、小魚も食べる肉食魚です。サイズも20cm前後のものが狙えます。深瀬などでライズしますが、群れで行動というよりは単独で回遊しているほうが多いように思います。
たかが雑魚、されど雑魚・・・・今度の休みにでも出かけてみてはいかがでしょう。
蛇足ですが・・・
ミッジ=ユスリカ・フライと思っている人が多いですが、正確にはミッジ・フライ=midgetflyが語源で「小さいフライ」のことです。ですから、単にミッジ・パターンというと、クロノミド(ユスリカ)、ナット(アブ)、メイフライ(カゲロウ)、カディス(トビケラ)の#18以下あたりを意味するということです。この辺結構いい加減にしているんだなぁ・・雑誌もライターも。
Written by Atsushi `Chef` Kikuchi
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