いがらしみきお『I【アイ】 2』(小学館)2012年
漫画もいろいろ読んでいるのだが記事にしないことが多い。理由のひとつは、マンガのあらすじというのは文章にするのが難しい。絵の解釈というのは多義的になる面があり、優れた作品になるほど簡単に言葉にできない。もうひとつの理由としては、メモを取るほどの作品でないものも多いということもある。
この本に関しても、難しいので記事にするのはやめようかと思ったが以前1巻を載せてしまったので行きがかり上2巻も載せることにする。
■あらすじ
・第11話 どこでもいい
雅彦とイサオは橋の下で野宿していたが再び連行される。体調の悪いイサオは病院へ送られ、雅彦は取り調べを受ける。イサオは殺人を自白したという。雅彦の中にイサオが入り込み、「かみさまはいねがった」(※1)と壁に文字を書く。雅彦の両親が現れ釈放される。雅彦は寺を訪ね、植物状態に戻った愛が(雅彦の中の)イサオに(心で)礼を言う。雅彦は刑事の紹介で「岡島にんげん農場」という農場に世話になる。そこは独特のカリスマ性を持つ団長が支配し、他人同士が擬似的な家族を作って暮らす一種の宗教団体(※2)のようなところだった。農場の敷地には巨大な穴が掘られていた。案内をした寺田という男によるとゴミを捨てる穴だという。
※1 このシーンには違和感を感じた。話し言葉が東北訛りでも、文字で書くときは「かみさまはいなかった」と書くのではないだろうか?
※2 ヤマギシ会を連想するのはblog主だけではないと思われる。
・第12話 もう何も残ってない
雅彦は擬似家族の父親から毎晩「話の行」を強制される。雅彦は自分が世界について感じていることと、イサオのことを話す。風呂に行くと和樹という子供に「助けで」と言われるが、通りかかった寺田に連れて行かれる。翌日見かけた和樹は頭に包帯をしていた。この村の住民は体のどこかにケガをしていることが多いが、「治しの行」によるものであった。それはわざとケガをさせて治ることのありがたさを感じる行?だった。雅彦も団長に左肩をバットで殴られケガをする。
・第13話 神様かどうかは
農作業のあいまに雅彦は団長と話をする。世界について会話。団長「哲学ってのは終わった学問でな。なんで終わったかっていうと、答え出してしまったのさ。人間はからっぽだって。からっぽだからなにか作りたがんのさ。ありもしねえもの作って信じんだ。」団長は農場の美術館にある「神様」の絵を見せる。それはシミのようなもの以外何も描かれていないように見える絵だった。団長の娘奈菜と雅彦は仲良くなり、SEXする。それを「兄」の孝宏が覗いていたため喧嘩となり、団長に叱られ「繋がれの行」を行う。穴の近くを通ると、穴に和樹が落ちて死んでいるのを見つける。
・第14話 天国なのか地獄なのか
和樹の弔いで食卓に謎の「肉」が出る。雅彦は「治しの行」に疑問を持ち団長と話をする。団長は敷地の穴を見せていう「この穴はな、不幸の穴だ」「この穴があるからみんな不幸に気をつけるのさ」団長は雅彦にこの穴を埋めてみろという。雅彦は穴を一人で埋めはじめる。しかし農場の住民はこれを快く思っていない模様
・第15話 ママゴトのような生活
団長は言う「生きているのはおまえではない。人はみんな頭おかしいだけなの。生きてんのは体のほう。だから体が喜ぶことしてればいいのさ」
以前あった穴を埋めたのは寺田だった。寺田はかつて学生運動をしていたという。「オレはゲバやってわかったんだよ。みんなこの世をよくしたいなんて思っちゃいないのさ。そしてな、よくならなくたって生きて行けるんだよ。」寺田は釘のついたバットで豚を殴って殺す。殺される豚に一瞬イサオの意識が入り、イサオは病院のベッドで頭をかかえる。
雅彦は奈菜と結婚したいと団長に話す。団長は二人が電気もガスもない小屋で山から食べ物を自力で調達し一ヶ月暮らせれば結婚を許すという。二人は小屋での生活をはじめる。
「神様」の絵にうっすらと何かの像が浮かぶ。
奈菜は耐乏生活の中で不安に苛まれ、崖から飛び降りて死ぬ。
・第16話 失ってからわかった
奈菜を失った雅彦は自制を失う。
雅彦「オレ生きてる資格ないです。ここから出させて下さい。ここにいるとつらくてつらくて─」
団長「だめだ。ここにいろ。つらいうちはどこにも行かせない。それがおまえへの罰だ」
「おまえ神様さがしてるんじゃなかったのか。」
雅彦「神様なんかいません。いたら奈菜ちゃんを死なせるわけがない。」
「この世界がなんなのか知りたいんじゃなかったのか。」
「もうわかりました。この世界に意味なんかない。だから人間が勝手に意味を作り出して幸せになったり不幸になったりしているだけです。」
「意味なんかどうでもいい。この世界はなんなのかなんだ。」
神様の絵はさらにはっきりしはじめる。何かが笑っている。穴でまた死体が見つかる。
警察に言われ、団長は穴を埋める。今度は精肉所で死体が見つかる。寺田は犯人は雅彦だと決めつける。
孝広の死体を雅彦が引きずっているのが見つかる。
第17話 空ばかり見ていた
団長は雅彦を山小屋に隠す。殺人事件になったら農場が危機に陥るため。寺田は雅彦を殺そうと山に入る。神様の絵からイサオが出てくる(かのような描写)。寺田の後ろ?からイサオの声「誰も見でねぇおめえのうしろは真っ暗だど。」雅彦のいる小屋にイサオが現れる。団長は寺田が山に入ったらしいと聞いて銃を持って山へ向かう。団長は死んでいる寺田をイノシシが食っている所を見つける。雅彦はイサオと話しているうちに、農場内で自分が行った殺人や奈菜の死はイサオが(憑依して?)行ったものだったことに気づき、怒ってイサオを追い出す。
第18話 どっか行ってしまったの
団長が小屋へ来て寺田を殺したのは雅彦かと尋ねる。雅彦はイサオについて話す。則夫(雅彦の「父」役になっていた団員)たちは寺田が死んだと聞いて雅彦を探し始める。子供が神様の絵のある美術品室で人影を見たという。団長たちが中に入ると、神様の絵にトモイがはっきり写っている。団長はいたずらだと言って絵を破る。団員たちはイサオを追うが、全員死んだ模様(イサオに殺された?)。団長は農場の全員を集め、イサオを探させる。
第19話 たとえ自分の手を見ても
団長は美術室でイサオと対決し、イサオを銃で撃つ。イサオは足に怪我をするが、姿を消す。農場内で爆発が起き、火事になる。
第20話 幽霊か?それとも神様か?
団長は森の中に隠れたイサオを見つけ出す。「おまえいったい何者だよ?幽霊か?神様か?」「オレは神様さ。手ぇ出してみろ」「なぜ」「神様の証拠見せっから。おめの中にはおめえしかいねがったべ。他人は全部自分の外さしかいねがったべ。ずーっと一人で生ぎて来たんだべ。ほんとは一人ではねえのさ。」
団長は自分の中に誰かがいて、上から自分を見ているのを感じる。団長は(イサオに憑依されて?)自分の胸を撃ちぬいて死ぬ。かけつけた雅彦にイサオは言う「こんなどごで生ぎて行ぐつもりが?一人で生ぎろ。んでねえど神様は見えねぐなってすまう。」イサオは雅彦にトモイの説明をする。トモイはイサオの母親が叔父?に頼んで買って来てもらったおもちゃの人形だった。「イサオ。神様なんていねぇべ」「いるさ」「どごさ」「今さ」
イサオの手が雅彦を目隠しし、気づくとイサオは消えていた。
■メモ
p164
人は失ってはじめてわかる。なにを失ったのかをわかるのだ。
以上