ウェブブラウザのJavaScript(ジャバスクリプト)の設定が無効になっています。Javascriptが無効になっていると、サイト内の一部機能がご利用いただけません。 ワキガ村2012年9月25日 00:43花村がワキガ。な主花? すごくてきとうに書きました。なんだ、これ…?書いた自分でも、 ??? ああ、やっぱ俺って臭いんだ。 俺は転校してきてすぐにそれを痛感した。 昼飯時になると、みんなが逃げていく。 体育が終わると、みんなが俺に話しかけない。 前の学校と、同じだった。 里中だけは一応そこそこ俺に優しく接してくれたけど、天城はいつも俺を汚物を見る目で避けていて、里中はたいがい天城と一緒にいたから、そんなに俺も里中と親密にできるわけじゃなかった。 俺は結局いつも学校で孤立していた。「はーなちゃん」「小西先輩!」 小西先輩だけは、俺に優しかった。先輩だって俺のこと臭いって絶対思ってるはずなのに、いつもバイト中俺に話しかけてきてくれて。付き合うなんて、無理言えなくても、好きになるのも当然だった。「まったく、まーたひとりで裏方仕事してるの? ほんっとに友達少ないんだから」「ん、まあ、慣れてるし。つか、ひどくない? 友達少ないとか、普通ずけっと言わなくね?」「ふふ。 ね、手伝ったげようか?」「え? いや、いいっすよ。力仕事だし」 こんな、重い物運ぶ仕事なんかして、汗かいたら、俺絶対におっちまうし。 先輩にできるだけ俺のくせぇ臭い嗅がれたくないし。「そんなだから友達できないんだよ、花ちゃんは」 そういって小西先輩は俺のことを勝手に手伝い始めた。 ほんとに、ほんとに、好きだった。 そのことがあったのが、つい2週間前。 信じられない。 何が起こったのか、理解できない。 まさか、まさかその小西先輩が死んでしまって、なのに、いま、目の前で、こうして俺に向かって暴言を吐いている、だなんて。「こにし、せんぱい?」 後ろから、鳴上が俺に向かって何かを言っているのが聞こえる。クマは怯えてどっかに消えちまったみたいで、さっきからずっと姿が見えない。鳴上の声だけが後ろから何度も何度もリフレインして聞こえる。 でも、俺は今そんなことに気をかけてなんかいられない。『私、ずっと、花ちゃんのこと』 小西先輩の亡霊のようなものが俺に向かって話しかける。先輩は微笑んでいる。 俺のことを? 俺のことを、なんだ? もしかして、俺と同じように? 死んじまっても伝えたいことがあって、俺のためにこうして姿を現してくれたのだとしたら? しかし、先輩が続けていった言葉は俺の期待してたものなんかじゃ、なかった。『わたし、花ちゃんのこと、ずっと、くさいって、思ってた』 その言葉に、どさりと俺は膝をつく。 なんだ。 そうか。 やっぱり、俺って、臭いんだ。「花村!!」 後ろから鳴上が俺を呼ぶ声がする。振り返れば、俺を助け起こそうとしているのか、腕を伸ばしている姿が見えた。「なんだよ鳴上。なんだよその目? なんで俺を見てくるんだよ? そんなに俺がおかしいかよ?」「花村、違う、いまはそれどころじゃない、いいから立て、なにかがおかしい」「いいから、いいから離れろよ。頼むから近づかないでくれよ! いやだ、やめろ、俺にかまわないでくれ」 俺が鳴上の腕を跳ねのけて退くと、上の方から声が落ちてきた。なんだか気持ちの悪い声だが、聞き覚えのある声だった。『嘘をつくなよ花村陽介』 声の主は、俺だった。俺の姿をした、もう一人の、俺?『ほんとは、友達が欲しいんだよなぁ? くっせえ自分を受け入れてくれる人が欲しいんだよなあ? でも、怖いんだよなあ? お前は、ワキガだもんな? クラスメイトには避けられてさ? 大好きな先輩にくさいって言われてふられてさ? これで鳴上にまで臭いって言われて避けられんのが、嫌なんだよなぁ?』「ちがう、ちがう、やめろ、俺は……俺はそんな……」「花村、落ち着け」「違う! 俺は、俺はワキガなんかじゃない!! 確かに汗くせぇかもしれねえけど、ワキガなんて、ワキガなんて、そんなん、そんなんじゃねえよ!!」「花村!」 鳴上がでかい声を出しながら後ろから俺を抱きしめてきた。俺はびくりとした。もう一人の俺は無表情なまま俺達を見下ろしている。「お前は臭くなんかない。仮に少しにおいがあったとしても、それもお前の一部だ。勇気を持て。男なんて、みんな汗をかいたら、似たようなものだ」「鳴上……」「怯えるな、花村」 そういって鳴上は俺の腕をぐいと引き上げ、俺の脇に鼻を差し込んだ。いやだ。いやだ。絶対臭いに決まってる。ほんとはわかってんだよ、俺がワキガだってことくらい。「やめろ鳴上……っ」 俺の制止も聞かず、鳴上は俺の脇でスースーと音を立てて鼻で深呼吸をしている。俺は泣きそうになった。なんだか無性にみじめになって消えてしまいたくなった。「やめろよ……やめろ、俺、くせぇんだから……」「それが花村なら、それでいいだろ」「え……」「俺は嫌いじゃない、この臭い」「鳴上……」 俺は自分の臭いをここまで言って受け入れてくれた奴と初めて出会った。 ぶっちゃけ、涙がほんとにでてきて、とまらなかった。「ぅ……っ、なるかみ、なるかみぃ……っ、俺」「なんだ花村、泣いているのか」「俺、俺、マジで、自分でわかるぐれえ、自分が臭くて」「うん」「お前みたいに言ってくれる奴、マジで初めてで」「そうか」「……っ、鳴上、」 鳴上の胸の中でびーびー声をあげて泣きじゃくりながら、俺は勇気を出してこう言った。「俺、こんな臭いだけど、俺と、友達になってくれるか」 顔を上げると、鳴上はふわりと優しく微笑んで答えた。「もうすでに友達だと思ってた」 俺はしばらく鳴上に抱きつき続けた。臭くない? と繰り返し尋ねる俺に鳴上は何度も臭くない、と言葉をかけてくれた。 男同士で、こんな変な空間で、何してんだろって思ったけど、だって俺は、こんなふうに誰かが触れてくれているなんて、子供の時母親にされた以来だったから、あまりにも心地が良くて。「いつまでこうしてるんだ?」 と鳴上がクスリと笑ったので、俺は恥ずかしくなって身体を離した。「わ、わりぃ」「別にして欲しかったらいつでもしてやるさ。友達、だからな」 そう言われて俺は思わず赤面した。恥ずかしくてたまらない。 友達。 友達か。 友達、って、ああいうことするんだったっけ、か?「そういや、さっきのあの変なのは?」 俺は話題を変えたくなってあたりを見回した。小西先輩の亡霊も、もう一人の俺も消えていた。「消えているな。クマを探すか。あいつがいないと帰れないし」「そうだな」 鳴上は俺より先に立ちあがって俺に手を差し出した。「立てるか?」「あ……」 手を出されたもんだから、つい反射的に俺はその手に自分の手を重ねてしまった。指先が触れて、俺はすごくドキドキしてしまった。俺は、自分の身体がこんなだから、誰かとの接触に全然慣れてなくて。でも、そのせいっていうだけには、あまりにも俺はドキドキしすぎていて。「外に出たら、連絡先を交換させてくれ」 鳴上は立ちあがった俺から手を離してそう言った。一瞬だけ繋いだ手のぬくもりがまだ右手に絡みついて離れない。胸が高鳴るまま、俺は俯いて答えた。そして思った。 小西先輩、ごめんなさい。 俺、ふられても仕方ないや。 俺、結局、自分を受け入れてくれる人なら、先輩じゃなくても別に良かったのかもしんない。