ウェブブラウザのJavaScript(ジャバスクリプト)の設定が無効になっています。Javascriptが無効になっていると、サイト内の一部機能がご利用いただけません。 6話2017年1月27日 08:31「い、一色。お前バイトリーダーなのか?」「はい。そうですけど?」 なんてこった。あの一色が…あの一色がバイトリーダー何て。それこそ驚天動地、天変地異の前触れじゃないのかしら?「むぅ、何か失礼なこと考えてません?」「そんな事はない」「本当に?」「本当に」「神に誓えますか?」「おう。ついさっき救いを求めたばかりだ」 一色の言葉を適当にあしらう。失礼なこと考えてません?と聞かれたときは内心焦ったが、そこは得意のポーカーフェイスで表には出さなかったぜ。 ふと、前方からというか、一色の隣から異様なまでの殺気を感じる。一色も気付いたのか、先程までの表情から一転、青ざめた顔して隣を見る。「随分と…仲が良さそうですね。お二人は…付き合ってらっしゃるんですか?」 いつもの笑顔と変わらない、変わらないのだが、どす黒いオーラを感じる。ゴゴゴゴゴっていう効果音付けてもいいくらいの雰囲気だ。「い、いえそんな事あるわけないじゃないですか!」「ですです!まだ付き合ってません」「まだ?」「ひゃぁ!」 水本さんは怒りの矛先を一色へと向けた! 何で矛先が向かったかわからんが、これで俺は一安心。後は持ち前の影の薄さで存在を消そうではないか。 ミラージュコロイドシステム展開!ふっ、1度言ってみたかったんだよ。「一色さん。仕事終わる前に私の所に来てくださいね?こなかったら………「い、イエス!マム!」よろしい」 呼び出しをくらうとは、一色哀れ。俺も家でお前の無事を祈ってるよ。帰る頃には忘れてそうだけど。「比企谷さん」「は、はい!」 ミラージュコロイドを展開した俺を見つけるとは、水本さん中々やるな?…嘘ですちょっと調子に乗りました。だから、ジッと俺を見るのやめてください。恥ずかしいから。 おいおい。怒りの矛先を向けたらその相手攻撃しまくるんじゃないの?少なくともドラクエ9ではそうだったぞ。 怒られると思いつつも、先程の水本さんのインパクトが強すぎて目を離せない。目離した瞬間に何されるか分からないし。蛇に睨まれた蛙ってこんな状況何だなと他人事のように感じてしまう。 そんな俺の考えとは裏腹に、水本さんは満面の笑顔でその口を開く。「頑張ってくださいね」 今度は別の意味で目が離せない。人は美しい物を見ると、つい魅入ってしまうことがあるらしいがまさにこれがそうなのだろう。今ならモナ・リザとかにとんでもない値段を付ける人達の気持ちがよく分かる。これが「美」ですか。「では、後ほど」 身を翻し、颯爽とこの場を去っていく水本さん。少し耳の辺りが赤い気がするが、この部屋が暑すぎるのだろう。「先輩」 目の前から聞こえる絶対零度の声音が、温かい空気で満ちていた部屋を急激に冷え込ませていく。いや、訂正しよう。部屋が寒くなったのではない。俺の冷や汗が止まらないのだ。 恐る恐る声の発生源へと顔を向ける。 そこには、不自然なくらいに満面の笑みを浮かべた一色にいた。そして、俺にとっての死刑宣告を容赦なく行う。「ビシバシいきますからね♪……覚悟しとけよ」「イ、イエス!マム!」 俺が一色に逆らうのを諦めた瞬間であり、女は怒らせたら怖いというのを再認識した瞬間だった。ふえぇ一色さん怖いよぉ。✕ ✕ ✕ 一色に連れてこられた部屋で、待つこと十分。当の一色は、お花摘みとか言って俺をここに置いて部屋を出てった。 これからどうなるんだろう。俺的には柔らか〜く教えてもらいたいのだが、その可能性はないな。うん、絶対ない。 まぁこれも一種の社会体験だと思えばいいではないか。自分より年齢が低いやつの下で働くなんてこともよくあることだろうし、その時の練習だと思えばいい。変にポジティブ過ぎるのもいけないが、適度なポジティブ思考も大事だよね。特に俺みたいな現実逃避大好き人間には。 ガチャっとドアを開ける音が聞こえる。どうやら一色が戻ってきたようだ。 そうだ、ここは本当に一色を上司だと思って接してみよう。あまり敬語使った事ないから所々おかしい所もあるかもだけど。 何事も形からだ。「遅くないですか?バイトリーダー。早く俺の、僕の仕事教えてくださいよ。バイトリーダー」「え?あ?せ、先輩?」「やめてくださいバイトリーダー。部下に先輩とか敬語を使わなくてもいいじゃないですか」「いや、えっと、先輩は先輩なわけでして…」「先輩じゃなくても構いません。比企谷でも八幡でもおいとかお前とかでもいいですよ?」「え?は?え?な、なら。は、八ま、八、ぅぅぅ」 頬を赤く染め、羞恥から顔を俯ける一色。 な、なんだこの可愛さは。これが素の一色だというのか! てか、結構変な事言ってるよな俺。何だよ比企谷とか八幡とかでも構いませんって。おいとかお前とか固有名詞でも無かったぞ。そのせいで一色にも迷惑かけてるし、ここで謝っとかんと取り返しつかなくなるよな?「すまん一色。ちょっと悪ふz「八幡!」え?「八幡!」は、はい!」「敬語はやめませんけど、先輩の事は八幡って呼びます!後、私の言う事ちゃんと聞いてくださいね!」「えぇー「えぇーじゃない!はい!」…はい「声が小さい!」はい!」「よろしい」 ドヤ顔で無さそうで少しありそうな胸を張る一色。 やったね八幡!一色に名前で呼ばれるようになったよ!大出世じゃないか! ……何て言えたらどんなに楽か。 あぁ、数秒前の自分をグーで思いっ切りぶん殴りたい。調子に乗ると命取りになるぞと言いたい。取り返しがつかなくなるぞと言いたい。 タイムマシンがあったらと切に願った。[newpage]おまけ 「一色いろは、トイレにて」「先輩のやつ、いつの間に店長も射程圏内に入れちゃってるの?ただでさえレベルの高い人ばかりが先輩狙ってるっていうのに、店長まで加わったらどうしようもないじゃん」 彼女、もとい一色いろはは、先程までの光景を思い出しつつ、トイレの個室にて他人に話しかけるかのように愚痴っていた。「こんなに可愛い後輩が目の前にいるのに…」 彼女は確かに可愛い。異性から見ても、同性から見ても「美少女」という枠に入るだろう。だがそれが、中身まで可愛かったらの話である。「こうなったら…」 服のポケットから携帯を取り出す。ロックを解除し、電話帳を開く。「あった」 目的の人物を見つけ、その項目をタップし、受話器のマークを押す。 数秒間の間があって、鳴り響いていた着信音が止む。『ひゃっはろ〜。どうしたの?一色ちゃん』「ひゃっはろ〜です。はるさん先輩。急に電話して申し訳ないですけど、総武高校前のサイゼリヤに今すぐ来れますか?出来れば雪ノ下先輩も一緒に」『別にいいけど、何かあるの?』「詳しくはこっちに来てから話します。強いて言うなら」『強いて言うなら?』「先輩のバイト姿が見れます」『先輩って隼人?』「いいえ、比企谷先輩です」『……本当に?』「はい」『マジで?』「マジです」『そっかー。それは見に行かないとね。昼頃になると思うけど大丈夫だよね?』「はい!ありがとうございます!」 ライバルの中でも、最も頼もしい人を味方に付けれたことに嬉しさが湧く。 雪乃が味方に付いたら更にいいのだが、あまり期待はしていないようだ。「先輩。覚悟してくださいね♪」 こうして、彼女達の戦いが幕を開けた。