カーニー複合
(Carney Complex)
[Familial Myxoma ]
Gene Review著者: Constantine A Stratakis , MD, DSc .
日本語訳者 :櫻井晃洋(信州大学医学部社会予防医学講座遺伝医学分野)
Gene Review 最終更新日: 2005.3.22. 日本語訳最終更新日: 2005.12.15
要約
疾患の特徴
カーニー複合(CNC)は皮膚の色素沈着異常,粘液腫,内分泌腫瘍や機能亢進,神経鞘腫によって特徴付けられる疾患である.淡褐色から黒色の多発性色素斑がCNCの最も特徴的な所見であり,典型例ではこれらは思春期に数を増す.心粘液腫は若年者でも発症し,心臓のいずれの房室にも生じうる.症状としては心内血流の閉塞,肺塞栓症,そして(または)心不全である.他に粘液腫を生じる部位としては,皮膚,乳房,口腔咽頭部,女性生殖路がある.CNCで最も高頻度に見られる内分泌腫瘍は原発性色素沈着性結節性副腎皮質病変(primary pigmented nodular adrenocortical disease: PPNAD)で約25%の患者に発症する.
症状をあらわす場合はクッシング症候群を呈する.大細胞石灰型セルトリ細胞腫(large-cell calcifying Sertoli cell tumors: LCCSCT)は男性患者の1/3に10歳までに発症し,成人男性ではほぼ全例にみられる.最大75%の患者に甲状腺結節を認め,これらの多くは濾胞性腺腫である.成長ホルモン産生腺腫による,臨床的に明らかな先端巨大症は成人患者の約10%に認められる.神経鞘由来のまれな腫瘍である砂腫状黒色神経鞘腫(psammomatous melanotic schwannoma: PMS)は約10%の患者にみられる.診断時平均年齢は20歳である.
診断・検査
カーニー複合の診断は通常臨床診断基準に基づいてなされる.原因遺伝子としてはPRKAR1A (17q23-q24)と2p16に局在する未知の遺伝子の存在が知られている.PRKAR1A遺伝子のコード領域のシークエンス解析は臨床的に利用可能であり,変異検出率は約50%である.
遺伝カウンセリング
カーニー複合は常染色体優性の形をとって遺伝する.CNCと診断された人の70%には罹患した親がおり,約30%は新生突然変異による.CNC患者の子はおのおの50%の確率で変異を受け継ぐ.リスクのある妊娠の際の出生前診断は可能である.
診断
臨床診断
カーニー複合(CNC)の診断は1)以下に列挙する臨床徴候の2つ以上を発症しているか,2)臨床徴候を1つ発症し,かつ補足基準の1つを有していることによってなされる.
臨床徴候
- 皮膚色素沈着性病変
- 顔面の多発性色素斑,口唇・結膜・内外眼角・膣や陰茎粘膜の赤色辺
- 縁青色母斑,類上皮青色母斑(線維化を伴わない,皮下のメラニン豊富な大型多角類上皮メラノサイトからなる)
- 粘液腫
- 皮膚粘液腫(眼瞼の粘膜上皮境界や外耳道,乳頭に多発する)
- 心粘液腫*.心粘液腫は通常有茎性のもろいゼラチン様の腫瘍で心内膜表面から発生する.多くの場合多発性でいずれの,あるいはすべての房室に生じる.再発もしばしばみられる.
- 乳房粘液腫症(組織所見がない場合はMRIの脂肪抑制画像でこれが疑われる場合)
- 内分泌腫瘍 /機能亢進
- 原発性色素沈着性結節性副腎皮質病変(primary pigmented nodular adrenocortical disease: PPNAD)(大結節形成性の副腎過形成)*またはLiddle試験(クッシング症候群診断の検査)によるデキサメサゾン負荷時の尿中グルココルチコイドの奇異性陽性反応.コルチゾール過剰が一過性であったり副腎結節が画像検査で確認できなかったりすることがあるので,そのような場合,PPNADの診断は難しい.
- 成長ホルモン産生下垂体腺腫*または成長ホルモン過剰の証拠か先端巨大症の存在
- 大細胞石灰型セルトリ細胞腫(large-cell calcifying Sertoli cell tumors: LCCSCT) *または精巣の超音波検査で特徴的な微小石灰化や高エコー病変の確認
- 神経鞘腫
- 管内乳頭腫に似ているがまれな乳房腫瘍である,(多発性)乳管腺腫
- 骨の骨軟骨粘液腫*
- 甲状腺の腺腫,がん(乳頭がんもしくは濾胞がん),または甲状腺超音波検査で多発性低エコー性結節
- 一度近親者に罹患者がいる
- PRKAR1A遺伝子変異
* 組織学的に確認
補足基準分子遺伝学的検査
遺伝子 PRKAR1Aは現在CNCとの関連が知られている唯一の遺伝子である.
他の遺伝子座
- 約30%のCNC家系では2p16領域で連鎖が認められる.
- 第3の,まだ同定されていない原因遺伝子座が存在する可能性がある.
検査の適応
- 確定診断
- 診断予測
- 出生前診断
検査法
○ シークエンス解析 PRKAR1A遺伝子のコード領域のシークエンス分析は臨床ベースで行われている.PRKAR1A遺伝子変異はCNC34家系中15家系(44%),および散発例20例中7例(35%)で認められ,全体での変異検出率は50%であった.
分子遺伝学的検査:臨床的方法
○ 連鎖解析 PRKAR1A変異を認めない家系では研究ベースで連鎖解析が利用可能かもしれない.
表1 カーニー複合で用いられる分子遺伝学的検査
| 検査法 | 検出される変異 | 変異検出率 | 検査可能機関 |
| シークエンス解析 | PRKAR1A変異 | ~50% |
検査結果の解釈 略
遺伝学的に関連する疾患
PRKAR1A遺伝子変異が原因となるほかの疾患としては,非遺伝性のNAPADや低文化甲状腺乳頭がん,副腎腫瘍がある.臨床像
粘液腫
カーニー複合の皮膚色素沈着異常,粘液腫,内分泌腫瘍や機能亢進,神経鞘腫は生下時に出現していることもあるが,診断時の平均年齢は20歳である.
皮膚色素沈着異常 淡褐色から黒色の色素斑がカーニー複合で最もよく見られる所見であり,これは出生時にすでに出現していることもある.典型例では思春期ごろに顔面や口唇,粘膜を含む全身に発生し,その数を増す.これら色素斑は30歳台以降には消失する傾向があるが,70歳台でもまだ残っている場合もある.年齢とともに出現してくるその他の色素沈着異常には類上皮母斑,混合型母斑,カフェ・オレ斑や色素脱失斑がある.
粘液腫
- 心粘液腫は若年で発症し,どの心房・心室にも発生しうる.心粘液腫は心内血流の閉塞,塞栓症,そして(または)心不全による症状を引き起こす.弁開口部を完全に閉塞すれば突然死を招くこともある.
- 皮膚粘液腫は多くの場合表面平滑な白色,肌色,乳白色,あるいは桃色の丘疹もしくは皮下結節である.出生時から30歳台の間に出現する.多くの患者では多発性である.粘液腫は手足以外のすべての部位に発症するが,典型例では眼瞼,外耳道,乳頭に生じる.
- 乳房粘液腫はしばしば両側性で,思春期以降の女性に生じる.乳頭粘液腫は男女とも年齢を問わず発生する.
- 他に粘液腫を生じる部位としては口腔咽頭(舌,硬口蓋,咽頭)や女性生殖路(子宮,頚管,膣)がある.
- 骨軟骨粘液腫は非常にまれな骨に生じる粘液腫様の腫瘍で,鼻腔や長管骨を侵す.
内分泌腫瘍
○原発性色素沈着性結節性副腎皮質病変 (primary pigmented nodular adrenocortical disease: PPNAD) はACTH非依存性のコルチゾール過剰産生を伴う.PPNADはCNCでみられる最も高頻度の内分泌腫瘍性病変で,約25%の患者に発症する.組織学的なPPNADの所見は剖検を行ったほぼすべての患者に認められる.症状をあらわす場合はクッシング症候群を呈する.PPNADのコルチゾール過剰の発症時期は明瞭でない.小児では,コルチゾール過剰は最初に体重増加と成長の停止として現れる.成人では,長期にわたるコルチゾール過剰により中心性肥満,満月様顔貌,多毛,皮膚線条,高血圧,バファローハンプ型の脂肪分布,筋力低下,皮下出血,精神障害などをきたす.患者の一部ではPPNADを2-3歳までに発症するが,大部分の発症は10-20歳台である.
○精巣腫瘍 大細胞石灰型セルトリ細胞腫(large-cell calcifying Sertoli cell tumors: LCCSCT)時の男性患者の約1/3に認められ,しばしば10歳以前にも発症する.大部分の男性CNC患者はLCCSCTの所見を有する.腫瘍はしばしば多発性で両側性である.LCCSCTはほとんど常に良性で,悪性化の報告は62歳男性の1例しかない.LCCSCTはホルモンを産生する場合もあり,P-450アロマターゼ発現により思春期前や思春期前後の男性に女性化乳房を起こす場合がある.LCCSCTを有する患者で見られる他の精巣腫瘍にはLeidig細胞腫瘍や副腎皮質遺残腫瘍がある.
○成長ホルモン産生腺腫 臨床的に明らかな先端巨大症はCNCで比較的よく見られる臨床所見で,診断時に約10%の患者に認められる.思春期以前に成長ホルモン産生過剰をきたす巨人症はまれである.しかし,患者の75%では無症候性の成長ホルモンやIGF-1の過剰分泌,軽度の高プロラクチン血症が認められる.成長ホルモン産生腺腫の前段階であるsomatomammotroph過形成が存在することがCNC患者における先端巨大症の発症時期が不明確で診断に時間がかかる理由かもしれない.
○甲状腺腺腫・がん CNC患者の最大75%に多発性甲状腺結節を認める.大部分は濾胞腺腫であり,機能亢進を呈することはまれである.甲状腺がんは乳頭がんの場合も濾胞がんの場合もあり,長期にわたる多発性甲状腺腺腫の既往を持つ患者に発症する.
神経鞘腫
砂腫状黒色神経鞘腫(psammomatous melanotic schwannoma: PMS) この神経鞘由来のまれな腫瘍はCNC患者の約10%に発症する.約10%では悪性変化をきたす.PMSは中枢神経,末梢神経のどの部位にも生じうるが,消化管(食道と胃)や傍脊髄交感神経鎖(28%)に生じやすい.疼痛と根症状を伴う脊髄腫瘍も成人(平均32歳)に生じる.その他
○乳管腺腫 乳管腺腫は乳管の良性腫瘍である.
発症年齢 カーニー複合はいずれの年齢でも発症するが,10歳代から青年期の発症がもっとも多い.
寿命 ほとんどの患者は通常の寿命を生きるが,一部の患者が若年で死亡するため平均死亡時年齢は50歳である.死因は心粘液腫による障害(塞栓症,心筋症,不整脈,外科手術),転移性あるいは頭蓋内PMS,甲状腺がん,転移性の膵腫瘍や精巣腫瘍である.
妊孕性 LCCSCTは精管の置換や閉塞,小精巣,乏精子症,ホルモンやアロマターゼの不適切分泌をおこす.
遺伝子型と臨床型の関連
PRKAR1A遺伝子変異を有する患者や他の遺伝子座に連鎖している患者の間で,あるいは散発例と家族例との間で臨床型の違いは認められていない.病名
カーニー複合は他の病名でもよばれていた.
- NAME: Nevi(母斑), Atrial Myxomas(心房粘液腫),Ephelides (雀斑)
- LAMB: Lentigines (色素斑), Atrial Myxomas (心房粘液腫), Blue nevi (青色母斑)
「カーニー3徴」は胃平滑筋肉腫,肺軟骨腫,副腎外傍神経節腫からなる全く別の病態である.
鑑別診断
皮膚 多発性色素斑をきたす疾患としては良性家族性色素斑症,Peutz-Jeghers症候群,LEOPARD症候群,色素斑を伴うNoonan症候群,Bannayan-Riley-Ruvalcaba症候群がある.Bannayan-Riley-Ruvalcaba症候群はPTEN過誤腫症候群の一病型である.カーニー複合のカフェ・オレ斑はMcCune-Albright症候群,神経線維腫症1型,神経線維腫症2型,Watson症候群のそれに似ることがある.類上皮青色母斑はカーニー複合を示唆する所見がない患者に単発性の病変として生じることがある.
心粘液腫 心粘液腫は成人の心臓腫瘍のうち最も頻度の高いものであり,小児でも心臓腫瘍の約30%を占める.遺伝学的研究ではカーニー複合と散発性粘液腫との明らかな関連性は認められていない.
ミオシン蛋白のひとつに変異があり,家族性粘液腫,CNC,心筋症を呈する家系が知られている.これはCNCとは別のものであり,別個の疾患か,もしくは2つの疾患が同時に家系内に発症したものと考えられる.
内分泌腫瘍 甲状腺腫瘍はPTEN過誤腫症候群の臨床型のひとつであるCowden症候群でもみられる.まれに散発性甲状腺腫瘍にPRKAR1A遺伝子変異を認めることがある.
LCCSCTはPeutz-Jeghers症候群でも見られ,ホルモン産生性のこともある.Peutz-Jeghers症候群で見られるような卵巣腫瘍はカーニー複合では見られない.
カーニー複合は両側性小結節性副腎過形成の80%を占める.CNCではない散発性PPNADもPRKAR1A遺伝子変異によって生じる.
副腎皮質腫瘍はBeckwith-Wiedemann症候群,Li-Fraumeni症候群,多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1),21水酸化酵素欠損症による先天性副腎過形成,McCune-Albright症候群でも見られる.
成長ホルモン産生下垂体腫瘍はMEN1,家族性成長ホルモン産生腫瘍症で認められ,これらの原因遺伝子はそれぞれ11q13.1-q13.3と2p16に局在している.CNCやMEN1によらない成長ホルモン産生腫瘍はあまりPRKAR1A遺伝子変異と関係していない.
神経鞘腫 カーニー複合は神経線維腫症1型,2型,家族性神経鞘腫症を除けば唯一の神経鞘腫を生じる遺伝的病態である.臨床的マネジメント
診断の確定と疾患の進展の評価
- 診断を目的とした内分泌腫瘍の画像検査と生化学スクリーニング
- 甲状腺超音波検査.甲状腺の超音波検査はCNCを有する小児や若年成人における甲状腺病変の評価法として安価でかつ有用な方法である.しかし年配の患者に対しての有用性は疑問が残る.男性に対する初回評価時には精巣の超音波検査も行うべきである.女性に対しては経腹的超音波検査を初回に行うべきであるが,卵巣悪性腫瘍のリスクは低いので,初回に異常がなければその後検査を反復する必要はない.
経過観察
以下が小児に対して勧められる:
- 生後6か月までに心臓超音波検査,その後は1年ごとに行う.心粘液腫の手術後はより綿密なフォローアップが必要かもしれない.
- LCCSCT(あるいは精巣エコーでの微小石灰化)を有する小児では成長や二次性徴発来の注意深いモニタリング.患者によっては骨年齢の評価や,エストロジェンレベルの上昇を招くようなアロマターゼ過剰の可能性を評価するための追加の検査が必要になるかもしれない.
以下はCNCの診断が確定した思春期以後の患者(男女とも)に勧められる:
- 年1回の心臓超音波検査
- 年1回の尿中フリーコルチゾール測定(日中の血清コルチゾール測定でも代用可)または1 mgデキサメサゾン負荷試験
- 年1回の血漿IGF-1測定
- 甲状腺の超音波検査は必要に応じて反復する.
- 精巣の微小石灰化(おそらくLCCSCTの所見である)は年1回経過観察する.
- 乳管腺腫の臨床的経過観察.
副腎疾患や下垂体疾患を疑わせる所見のない患者のPPNADや成長ホルモン産生下垂体腺腫を見つけるためにはより念入りな臨床検査や画像検査が必要になる.
- PPNADについては副腎のCT撮影に加えてデキサメサゾン刺激(抑制)試験が推奨される.日中の血漿(血清)コルチゾール濃度も測定する.
- 成長ホルモン産生下垂体腺腫については,血漿IGF-1測定や下垂体MRI撮影のほかに経口糖負荷試験とTRH試験を行う.
PMSを疑わせる臨床症状がある場合は,脳,脊髄,胸腹部(特に後腹膜),骨盤腔の画像検査が必要となる.
病変に対する治療
通常以下の治療が行われる.
- 心粘液腫 開胸心臓手術
- 皮膚および乳房粘液腫 外科的切除
- クッシング症候群 両側副腎摘除術
- 下垂体腺腫 経蝶形骨洞手術
- 甲状腺腺腫 がん化する場合は手術
- LCCSCT LCCSCTと女性化乳房を示す男児に対しては,早期骨端閉鎖と中枢性思春期早発を防ぐために通常精巣摘出術が必要となる.
- PMS 原発巣と転移巣の外科的切除
リスクのある親族の検査
診断の確定した患者が分子遺伝学的検査を行ってPRKAR1A遺伝子変異を有することが判明した場合は,親族に同様の変異があるかどうかを検査することができる.
研究中の治療法
遺伝カウンセリング
「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」
遺伝形式
カーニー複合は常染色体優性遺伝形式で遺伝する.
患者家族のリスク
発端者の両親
- カーニー複合と診断された患者の約70%には罹患した親がいる.
- 約30%の患者は新生突然変異による.
- 明らかに新生突然変異と思われる発端者の両親に対する検索としては,適切な家族歴聴取,皮膚色素沈着性あるいは結節性病変,内分泌疾患の徴候などに注意した身体診察,画像検査や生化学スクリーニングが推奨される.もし発端者でPRKAR1A遺伝子変異が同定された場合は,両親の分子遺伝学的検査も考慮すべきである.
注:カーニー複合と診断された患者の大部分には罹患した親がいるが,家族の罹患が認識されていなかったり親が発症前に死亡したりしているために,家族歴が陰性となることもある.
発端者の同胞
- 発端者の同胞のリスクは発端者の両親の遺伝的状況に依存する.
- もし発端者の親が罹患しているならば,同胞のリスクは50%である.
- 明らかな家族歴がない場合には発端者の同胞のリスクは約1%である.
- もし発端者で病因となる遺伝子変異が同定され,その変異が両親のいずれにも存在しない場合は,親の胚細胞モザイクの可能性がある.ただし,カーニー複合でそのような例はまだ知られていない.
発端者の子
- カーニー複合患者の子はおのおの50%の確率で変異を受け継ぐ.
- 罹患男性では妊孕性が低下している可能性がある.
- PRKAR1Aの機能喪失型変異を受け継いだ妊娠がより自然流産をきたしやすい可能性もある.
他の家族
- 他の家族のリスクは発端者の両親の状況による.
- もし親が罹患しているならば,彼(彼女)の家族にもリスクがある.
関連した遺伝カウンセリング上の問題
無症状の成人,小児の検査 臨床的マネジメントのためにDNA検査を考慮するのが適切である.
臨床的に診断された親族が分子遺伝学的検査を受けてPRKAR1A遺伝子に変異が認められた場合,リスクのある親族に対して遺伝子検査を行うことができる.
臨床的に診断された親族の分子遺伝学的検査が行えない場合,リスクのある親族に対する遺伝子検査は問題があり,検査結果の解釈には注意を要する.
- 親族でPRKAR1A遺伝子変異が確認された場合は同様の分子遺伝学的検査を他のリスクのある親族の遺伝子検査に用いることができる.
- リスクのある親族で変異が確認できなかった場合でもPRKAR1A遺伝子変異の存在を否定できるわけではないので,この場合はリスクのある家族に対して推奨される臨床的経過観察を行う必要がある.
明らかに新生突然変異と考えられる家系に対する考え方 患者の両親がいずれも病因となる遺伝子変異や臨床的な徴候を有していない場合は,発端者は新生突然変異によるものと考えられる.しかし,父親が違う場合や公表されていない養子縁組など,非医学的な理由も確認する必要がある.
家族計画 遺伝学的リスク評価や出生前検査の可否などについての議論は妊娠前に行うのが望ましい.同様に,リスクのある無症状の家族に対する遺伝学的検索も妊娠前に行うべきである.
DNAバンク DNAバンクは主に白血球から調製したDNAを将来利用することを想定して保存しておくものである.検査技術や遺伝子,変異,あるいは疾患に対するわれわれの理解が将来さらに進歩すると考えられるので,DNA保存が考慮される.DNAバンクは特に分子遺伝学的検査の感度が100%でないような状況においてはことに重要である.
出生前診断
リスクのある妊娠について出生前診断は可能である.DNAは胎生16-18週に採取した羊水中細胞や10-12週*に採取した絨毛から調製する.成人発症型疾患の出生前診断の希望に対しては注意深い遺伝カウンセリングを必要とする.出生前診断を行う以前に,罹患している家族において病因となる遺伝子変異が同定されている必要がある.
注:日本では本症に対する出生前診断は行われていない.
リスクのある胎児の出生前超音波検査で心臓腫瘍が見つかれば,これは罹患していることを示唆する.しかし,腫瘍が認められないことが診断を除外することにはならない.
*胎生週数は最終月経の開始日あるいは超音波検査による測定に基づいて計算される.- 初稿 日本語訳者 :櫻井晃洋(信州大学医学部社会予防医学講座遺伝医学分野)
Gene Review 最終更新日: 2003.2.5. 日本語訳最終更新日: 2003.9.2. - 更新 日本語訳者 :櫻井晃洋(信州大学医学部社会予防医学講座遺伝医学分野)
Gene Review 最終更新日: 2005.3.22. 日本語訳最終更新日: 2005.12.15 (in present)