〈アンチエイジング〉

皮膚の老化は加齢による一般老化と太陽紫外線による皮膚損傷のために生じる光老化に大別できます。加齢による皮膚老化では遺伝子要因に加え、生命維持に必要なエネルギーを作り出す時に生じる活性酸素や食生活により生じる代謝産物、運動に伴う活性酸素なども要因となっています。

一方、紫外線が大きな要因となる光老化は顔や手背などの小児期より太陽紫外線を浴び続けている皮膚に生じる異質な老化です。

◆皮膚の老化
細胞の分裂回数に限りがあることを考えると、出生時から既に老化は開始されていることになりますし、老化を機能の減退と考えれば、老化は成長ホルモンや性ホルモンの生成・分泌がピークを迎える20歳以降に始まるとも考えられます。
《表皮の老化》:表皮が萎縮。ターンオーバーが遅くなり、角質層は厚くなる。表皮細胞の分裂頻度は半減する。

◎乾燥と萎縮
65歳を過ぎると80%の人で皮膚の乾燥が現れます。その原因として以下が挙げられます。
①皮脂分泌減少に伴って、皮膚からの水分蒸散量が増加します。皮脂は皮膚の表面に皮脂膜と呼ばれるバリアを作ります。
②表皮の保湿に重要な表皮細胞間脂質であるセラミドが減少します(合成酵素が減少、分解酵素が増加)。
③角質細胞内のアミノ酸などを主体とした天然保湿因子(NMF)の減少などが関係します。→ヒアルロン酸、NMF類似アミノ酸、セラミドなどを含む保湿剤を。

◎シミ(白斑)
老化に伴って色素細胞は減少し、機能も低下するため老人性白斑が生じます。紫外線を浴びる頻度の少ない体幹ではシミは少ないといえます。また、くすみは表皮のターンオーバー(皮膚の生まれかわり)が遅くなっていることと関係します。
→くすみに対しては、ビタミンC、カミカルピーリング、レチノイン酸など。

◎シワ
いわゆる乾燥ジワ(ちりめんジワ)。乾燥して角質層に異常が生じて剥離が正常に働かず、ムラになります。角質層のターンオーバーの調整と保湿にて改善します。
→ビタミンC、カミカルピーリング、レチノイン酸+保湿剤など。

◎真皮の老化(シワとたるみ)
細胞の分裂回数が限られているために、加齢とともにコラーゲンやエラスチンを産生する線維芽細胞自体も減少します。さらに活性酸素やフリーラジカルは真皮のコラーゲン量を減少させるだけではなく、コラーゲン線維同士の結びつき(架橋形成)をおかしくするので真皮の柔軟性や伸縮性が低下します。また、活性酸素を介した遺伝子の活性化でコラーゲンなどの線維を切断・分解する酵素の産生や活性が増えてシワが促進されます。

本来、コラーゲン線維は網目状に配置されていますが、これらの構造をバネのように一定の強度と伸縮性をもってつなぎとめて固定しているのがエラスチン(弾性線維)です。このエラスチンも減少・変性してシワやたるみの発生に関与します。さらに加齢や損傷の修復のために新たに作られた線維成分は、既存の構造を避けてネットワークが再構築されるため、形態的にも屈曲しており充分な本来の機能が発揮されなくなってしまいます。家屋の増改築に伴って、総合的に見ると機能性が損なわれてしまうのに似ています。

真皮は線維芽細胞やコラーゲン・エラスチンなどの線維成分以外にこれらの隙間を埋めるようにムコ多糖類という物質からなっています。ムコ多糖類の主成分であるヒアルロン酸も乳児の1/4程度に減少するといわれています。ご存知のように、ヒアルロン酸は真皮の水分保持に重要な働きをしています。

→ビタミンCイオン導入、レチノイン酸外用、non-ablativelaser、TCAピーリング、ヒアルロン酸などの注射など。

◆一般老化を促進する因子
ストレス、タバコ、大量飲酒を避けましょう。タバコによって毛細血管拡張症とシワが有意に促進されると報告されています。

◆光老化
表皮細胞は酸素をエネルギーとして利用するため、あるいは紫外線暴露によって生じる活性酸素により遺伝子や細胞膜が直接あるいは間接的に障害されるため、細胞増殖や機能の安定性が損なわれてしまいます。20歳を過ぎると次第に顔面、手背、背中などの露出部位に光老化に伴う小さな色素斑(老人性色素斑、単純性黒子など)が出始めますし、40歳を過ぎると同じく露出部位に良性腫瘍も出始めます。同時に、シワも増加してきます。

◎シミのメカニズム
紫外線刺激によってメラニン合成に関与する遺伝子が障害された色素細胞では、メラニン合成が増加するだけでなく、細胞数も増加します。また、作られたメラニンを周囲の角化細胞に転送しやすいように、突起が延長するなど形態的にも変化します。
また、表皮細胞が紫外線刺激によって変性を受けてMSH(チロシナーゼ酵素活性↑)、エンドセリン1(遺伝子の転写活性↑)などのサイトカインを多量に分泌して、色素細胞が刺激されてメラニン合成が亢進されます。さらに活性酸素自体も色素細胞のチロシナーゼ酵素活性を高めてメラニン生成を高めると言われています。

◎シワのメカニズム
紫外線によってコラーゲンなどの線維成分を切断するMMP-1・2などの酵素活性が亢進することが知られています。若い間は線維が切断されても新しいコラーゲンの産生が盛んなので線維成分の総量が変わりませんが、老化に伴ってコラーゲン合成能が低下して、コラーゲン分解が勝るためにシワが出来やすくなると考えられています。さらに紫外線によって活性酸素が生成され、それによって線維成分の異常な結合(架橋形成)が進むために、皮膚の柔軟性や伸縮性が損なわれてシワの発生を助長することも関与します。屋外作業に従事した高齢者の顔や首のシワは大きくて深いですね。

◆光老化の予防と治療
一般老化・光老化の進行を遅らせる効果を期待して、様々な健康食品以外にも抗酸化物質の摂取や外用・注入が盛んに行われていますが、動物・細胞実験レベルや小規模・短期間での研究にとどまり、人への長期での臨床効果として判断できる資料は非常に乏しい状況です。

現時点での光老化の予防策としては、①無駄な日焼けを避ける、②活性酸素を早く除去する、あるいは生じにくい皮膚環境を整えることに集約されます。

現実的には適切なサンスクリーン剤(日焼け止め)の使用と、ビタミンC・E、コエンザイムQ10、ハイチオールなど各種の抗酸化物質の内服や外用にて活性酸素を抑制することです。

治療として考えると、シミに対してはレーザー、光治療、レチノイン酸やハイドロキノンあるいはビタミンCなどの美白剤の外用です。シワに対してもレーザー、ビタミンCイオン導入、レチノイン酸外用、TCAピーリング、ヒアルロン酸などの注射によって真皮成分を増加・構築再編させることです。

レチノイン酸には紫外線にて誘発される線維蛋白を切断する酵素の活性化を抑え、真皮での若いコラーゲンを増加させることが知られており、米国では20年近く前から光老化皮膚のファーストチョイスとして使用されています。