ウェブブラウザのJavaScript(ジャバスクリプト)の設定が無効になっています。Javascriptが無効になっていると、サイト内の一部機能がご利用いただけません。 骨の髄まで染み付いたもの ~女王様と呼ばせて!~2013年12月9日 23:28骨髄シリーズの2作目として書いたものでした。一定期間持ち帰りO.K.していたのですがオフ化もありサイトから下げました。今回はコーネリアのお話です。何気にブリタニア皇族が好きだったので・・・まぁ、イロモノ作品ですがお楽しみ頂けたら幸いです。骨の髄まで染み付いたもの ~女王様と呼ばせて!~ アッシュフォード学園高等部生徒会に君臨するのは理事長の孫娘ミレイ・アッシュフォード嬢。 お祭り大好きは血筋なのか彼女は次から次へと度肝を抜くイベントを思いついては直ぐ実行命令を出す。 見かけ通りの行動派の彼女に振り回されるのは生徒会メンバーだけでなく全校生徒もそうなのだが、何故か憎めないのはやはり『祭り』が彼女の為だけでなく生徒の楽しみでもあるからだろう。 けれどやはり弊害というものは発生する。 その被害に一番遭うのはやはりと言うべきか生徒会副会長のルルーシュ・ランペルージ。 中性的な美貌は彼女が打ち出す祭りに華を添え、極力目立たないようにと頑張っている彼の努力を無にしている。 彼が最も嫌がった祭りは小学生の日だが、トラウマを植えつけそうになるほどの騒ぎを巻き起こしたのはやはり男女逆転祭りだろう。 そして本日も天下の生徒会長様は平凡な日々に飽き飽きして生徒会メンバーに一つの提案をした。「二番煎じは良くないってわかってるけどもう一回やらない? 男女逆転祭り。」 びしししぃっ!!! 瞬間、生徒会室の空気が鳴った。 ぴりぴりと張り詰めた空気の原因は言わずもがな、ルルーシュだった。 深いアメジストの瞳が稲光を宿し、全身の毛を逆立てた猫の様に『絶対反対絶対反対断固として反対しろ!』とリヴァル達に威圧する。 彼がそこまで嫌がる理由は分かっている。 分かっているだけにだけにリヴァルは苦笑してミレイに答えた。「同じ祭りやるってのも芸がないでしょ。 それに俺程度じゃボディーガードには力不足だし。」「ボディーガード?」 リヴァルの言葉にスザクが不思議そうに首を捻る。 学生が催す祭りにボディーガードが必要になるなどまず聞いた事がない。 況してやこのアッシュフォード学園は良家の子女はいるものの公的に知られているような有名人はいない。 唯一思い当たるのは身分を隠している皇族の二人だがそれとて極一部の者しか知らない事実でありリヴァル達が知るところではないのだ。 意味がわからないと唸り始めるスザクにシャーリーは苦笑して答えた。「そっか、スザク君は知らなかったんだっけ。 前に男女逆転祭りした時にね。」「シャーリー!」「いいじゃないのよ。女王陛下再びって副題で開催すれば絶対皆喜ぶし~。」 本題を言う前にシャーリーの声を遮るルルーシュ。 だが必死にシャーリーを制しようとするルルーシュをミレイがその豊満な胸で押し潰すように机に押し伏せ愉快で堪らないと言った笑顔で答える。 天然のスザクはそんな二人のやりとりよりもミレイの言葉に引っかかるものを感じて口元に手を当てて更に首を捻り始めた。「女王陛下? ブリタニアは帝国だから女帝じゃないんですか??」「無論それでもオッケー! でもスザク、疑問に思うべきポイントがずれてるわよ。 普通は女王陛下って誰の事って訊かないとv」「当然会長でしょう。普通に考えればそう思いますよ。」「ノンノン☆ 前提として男女逆転祭りという特殊な状況にあるのよ? ならば私は皇帝よ。」《どちらにしろ君臨するんだ・・・。》 高校生とは思えない色っぽい流し目。 流石はアッシュフォード学園の生徒会長・・・いや、影の皇帝陛下。 何とも言えない微妙にぎこちなさが残る笑顔でスザクは言葉を濁したがアッシュフォード学園の生徒会メンバーに気まずさという言葉はなし。 シャーリーとリヴァルが少々興奮気味に話し始めた。「女王はルルの事よ。凄かったのよ~。血迷った男がわんさかと押し寄せて。」「ギリギリで俺が連れて逃げ出したから無事だったけど後少し遅かったら・・・・・・。」「貞操は守れなかったでしょうね~☆ でも大丈夫! 今回は前以って運動部からボディーガードを選出して親衛騎士団を作るから。」「無理じゃないかしらミレイちゃん。多分騎士団のメンバーが血迷うと思うわ。」「「同意見でーす。」」 唯一会話に参加していなかったニーナが冷静に突っ込むと間髪入れずに諸手を挙げて同意するシャーリー&リヴァル組。 二人の表情はふざけていない。真剣そのものの表情が事の重大性を物語る。 しばしそんな生徒会メンバーのやりとりを見つめていたスザクはギギィっと錆びたブリキ人形の様に首をぎこちなく捻り、これまた真剣な表情で7年前からの親友に問いかける。「ルルーシュ・・・・・・君の女装姿って。」「言うな。訊くな。思い出させるな。」 スザクの視線から逃れるように明後日の方向を向いて答えるルルーシュ・ランペルージ。 彼の脳裏には恐らくあの日の悪夢が呼び覚まされているのだろう。顔色が悪くこめかみには汗が浮かんでいる。「それなら女の子で構成したらどうかしら?」 ルルーシュの様子にカレンはならばと別の案を提示したがすぐさまミレイ達が首を振る。 あっさりと否定されて何故と問うカレンにミレイは鎮痛の面持ちで答えた。「カレンも前の祭り知らないものねー。 女の子も危険よ。別の意味で。」「別の意味?」「百合の世界になるだけだから。実際呼ばれてたよ『お姉さま』って。 抱きつかれてたり目を潤ませて手を握られたり・・・ちょっと見てて怖いくらいに心酔している子もいたわね。」 楽しそうに話すシャーリーに「だから思い出させるな!」とこれまた青い顔で叫ぶルルーシュ。 そんなクラスメート兼生徒会の仲間にカレンは嘆息した。 改めて見て思うがルルーシュは間違いなく女性的な顔立ちをしている。 はっきり言って腹が立つ位に美形の部類だ。女性に生まれていたらこれまたもてていた事だろう。 けれど実際の性別は男。 自分ならばよほど気が合わない限りは恋人として隣に立ちたくはない。 だが友人ならばまあ良いだろう。(一緒に街を歩けば恋人と見られる可能性はゼロではないが。) 一方、美形の友人を持つ名誉ブリタニア人にして軍人枢木スザクは友人の女装姿を思い浮かべていた。 切れ長の美しいアメジストの瞳にほんのりと桜色に色づいた唇。 漆黒の髪は美しく流れ彼の白い肌を惹き立てる。男性としては華奢な身体は転じてスレンダーな女性にも見え、さぞかしアッシュフォード学園の女生徒用の制服が良く似合うだろう。 この学園の制服はミニスカートだが彼の足の細さをスザクは知っており、元々体毛が薄く無駄毛が殆どないルルーシュならば特に手入れをする必要はないだろうしニーソとミニスカの絶対領域はその辺の女の子よりも魅力的に違いない。 そこまで思い浮かべて尚分からないのは皆がルルーシュの女装姿を「女王」と評すること。 スザクはただ可愛いのだろうなと思うのみ。勿論実際に目にするのと想像するのとでは印象が違うだろうがそれなりにルルーシュのことを知っているつもりだからこそ大きく掛け離れているとは思えない。「益々分からないな。お姉さまやお姫様ならともかく、何でルルーシュが女王様になるんですか。」「「「「鞭の使い方。」」」」「「ナンですか、それ。」」 最初の疑問に立ち返って問うスザクに即座に返ってくるルルーシュを除いた男女逆転祭り経験済みのメンバーの声。 スザクとカレンは思わず素で聞き返してしまう。 素直な二人の反応にミレイは嫣然とした笑みを湛え答えた。「ルルちゃん鞭の扱いは天下一品なのよ~。 最初は血迷った男子生徒を牽制する為に咄嗟に乗馬用の鞭を手にしたんだけどね。」「元々ルルーシュが馬に乗れるのは知ってたけどさ。何ていうか動作が小さい割りに迫力あるって言うか。」「何よりも鞭の構え方からして近づき難いのよね。高貴なオーラがバリバリっと出てて近づいたら見えない何かに押し潰されそうな感じ。」「それでも何とか手を伸ばした身の程知らず・・・じゃなくて勇敢な男子がいたんだけど手が届く直前にルルーシュの鞭が一閃。」「音の効果が凄かったわよね~。手の方は軽く赤くなってただけだけど教室全体に響く鞭の音に皆して身を縮こまらせてちゃったくらいに。」「私が思わずルルーシュ女王陛下って呼んだら皆ノリノリで。」 前の祭りの興奮を思い出したのかメンバーが立て板に水を流す勢いで語り始める。 矢継ぎ早に語られる内容にスザクとカレンが生温い目でルルーシュに視線を送るが当人は一生懸命に『自分は関係ない』と明後日の方向を向いて本を読み耽っている。 が、そのこめかみに浮かぶ汗から聞こえていないわけではないと察しスザクは深い溜息を吐いた。 すると丁度思い出した様にリヴァルがシャーリーとニーナに問う。「あんとき、『女王陛下、私を鞭で打って下さい!』って跪いた奴いたよな?」「うんうん『蔑んで下さい!』とか。」「『罵って下さい。』と『犬と御呼び下さい!』もあったね。」「そしたらルルちゃん、『寄るな下郎が!』って机を鞭で叩いて威嚇したものだから次の瞬間には。」「「「女王陛下万歳コール!」」」 声を揃えて答える三人に更にスザクとカレンは痛々しい目でルルーシュを見るがそれでも一生懸命無関係を装おうとしていた。 だが、そんなルルーシュの無駄な努力を余所に皆会話をヒートアップさせていく。「そんでもってその出来事を知った下級生の女の子を中心に『お姉さまv』って擦り寄ってくる集団が現れて・・・。」「「「百合の園の出来上がり。」」」「最後には血迷った馬鹿が包囲網を展開し始めて・・・・・・。」「「「俺(リヴァル)が慌ててルルーシュ(ルル)連れて逃げ出したってわけ。」」」 そこまで聞いてスザクとカレンは羊水並みに生ぬるい目で再びルルーシュを見やる。 対するルルーシュは耳を塞ぎ明後日の方向を見ながら鞭の扱いを教えてくれた異母姉を思い出していた。 * * * ルルーシュには異母姉が二人いる。 第一皇女と第二皇女。だが彼にとって姉と呼べたのは第二皇女のコーネリア・リ・ブリタニアだけであった。 ユーフェミアと同じ母を持つ彼女は母方の権勢により皇位継承位第三位とかなりの高位にありながらナイトメアフレームのパイロットとして名を馳せたマリアンヌに憧れ、彼女の子供であるルルーシュ達に目を掛けていた。 憧れの女性の息子であり自身の弟でもあるルルーシュならばさぞかし身体能力に優れているだろうと彼女はよくルルーシュを遠乗りに誘ったり基礎体力作りのプログラムを組んではルルーシュに毎日やらせていた。 が・・・・・・・。「嘆かわしい。お前はマリアンヌ皇妃の長子であると言うのに・・・・・・。」「・・・・・・ぼ・・・僕は普通・・・ですよ・・・・・・。 実際・・・ブリタニア国民の同年代・・・の平均とほぼ同じ・・・でしょう。」「言い訳するな!」 パイロットを目指しながらも皇女としても流麗さは健在。緩くカーブを描く髪を掻きあげ嘆くは第二皇女コーネリア。彼女の目の前には膝を着いて息を切らしているルルーシュがいた。 普段の皇族服とは違い運動に適したジャージ姿のルルーシュは黒い髪を乱し息も絶え絶えながら必死に抗弁するがコーネリアは一括して彼の言葉を遮った。 だがルルーシュは並より少々劣る程度で体力がないわけではない。 鍛えればそこそこ程度にはなるだろう。 だがコーネリアの基準は平均ではなく『自分』と『マリアンヌ』だった。 半分とはいえ自分と同じ父を持ち敬愛する皇妃の息子という事実がコーネリアに多大な期待を抱かせた。 しかし現実は違っていた。ルルーシュは肉体派ではなく頭脳派。 どちらもないのでは困るが頭脳が不足した力を補っているのだからそれで由として良いだろうと周囲は思っていてもコーネリアは納得しなかった。 何故ならばルルーシュの後ろ盾はアッシュフォード伯爵家のみ。宮廷内ではその力はあまり強いとは言えなかった。 特に当代皇帝の子は多い。皇妃の数は年を追うごとに増えており第二皇子シュナイゼルの読みでは百を超えるだろうとの事。ならばこれから先も弟や妹が数多く生まれると予測される。 ただでさえ権力争いが激しい宮廷内において皇族の数が多い事はあまり好ましくない。 何故ならば皇族の数だけ勢力が生まれる。例え自分達が立てる皇子や皇女が皇帝位には届かなくとも重臣に就ければ権勢が増すからだ。 権力に飢えた貴族が多い宮廷内において第五后妃マリアンヌは弱者だった。 元々彼女は貴族出身ではない。その事が身分制度が徹底されているブリタニア宮廷内において彼女と彼女の子供達の立場を弱くする。《ならば皇位継承権を認められているルルーシュに頑張ってもらうしかない。》 それがコーネリアの結論だった。 下手に自分が助けすれば逆に彼らを追い詰める。 だからこそコーネリアはこうしてルルーシュを鍛えているのだ。 しかし成果はあまり出ていない・・・・・・とはコーネリアの評価である。 コーネリアの騎士達は「今はこれで十分です。大丈夫ですから。」と影でこっそりとルルーシュにフォローを入れている。が、彼らの言葉は嘘ではないだろう。 あくまでコーネリアの評価は彼女自身が指標になっているからだ。 けれども彼女にその事を告げられないのは主君たる皇女の気持ちを最優先に思う故。 コーネリアはそんな騎士達の思いに気付かないまま形の良い眉を寄せて考え続ける。「これでは方向性を変えるしかないな・・・・・・よし!」「何がよし何ですか姉上。 そろそろ午後の授業があるので戻らないといけないのですが?」「こちらが優先だ授業はキャンセルしろ。」「勝手に決めないで下さい。」「お前は確か乗馬技術はそこそこ良い線をいっていたな。」「無視して話進めないで下さい。」「ではお前には効果的な鞭の使い方を教えよう。」「・・・・・・・・・・・は?」《何言ってるのコノヒト。》 弟を無視して言い放つコーネリア。その内容にルルーシュの目が点になる。 やはり姉弟と言うべきか。以前にマントの着こなし伝授に来たクロヴィスの姿が重なって見えた。《いや違う・・・・・・これはまさか、人の話を聞かないのはブリタニア皇族特有なのか。》 ルルーシュがそんな事を考えている間にもコーネリアの暴走は続く。「お前は皇族としての気品がある。それに磨きを掛ける為にも良いだろう。」「あの、姉上?」「良いかルルーシュ、私が今から言う言葉を復唱しろ。 差別が国是というのは実に都合が良い。」「自分だけ納得してないで説明して下さい!」「・・・世の中ハッタリという言葉がある。 実を伴わなくともこれは効果的でな。例えお前を害そうとする者がいてもその皇族として威厳とハッタリである程度の敵を退ける事が出来る。」「いや・・・ですから具体的に教えて下さい。」「お前は女帝となるのだ。」「・・・・・・お忘れですか。僕は男です。」「今のは言葉の綾だ。気位の高い第一皇女、姉上の態度にお前らしくアレンジを加えて鞭の扱いと威厳ある女帝の振る舞いをマスターしろ。 それが出来れば敵はお前の一喝で下僕と化す! 最初は言葉からだ。『下がれ下郎!』さあ言ってみろルルーシュ!」「だから僕は男ですってば―――っ!!!」 * * * 脳内に『思い出のアルバム』がリフレインする。 思い出に耽っていたルルーシュを他所に皆楽しげに話を続けていた。「切っ掛けは鞭ですか。」「そーゆう事。あ、でも下手に親衛隊を編成するよりもスザクにガードを頼んだ方が良いかしら。」「それ良い! 騎士服作りますか?」「でも予算的余裕が無いよ。」「軍服で代用は?」「あの軍規違反なのでそれは・・・。」「駄目許で上官にお願いしてみてよ。ささやかながらお礼はするからさv」「ルールは守らなければいけません!」「もースザクってば固いこと言うなよなー。」 盛り上がり続ける友人達の言葉にカレンはハァッと溜息を吐く。 皆気付いていないのだろうか。 彼らの会話が『男女逆転祭りを開く』前提で成り立っている事を。 結局、カレンがその事を指摘し副会長たるルルーシュの猛烈な反対を食らって企画は一時保留となった。 がしかし、『一時保留』である。 皆が帰った後の生徒会室でルルーシュとスザクは夕暮れに染まりながら黙り込む。 その内にぽつりとルルーシュは呟く様に言った。「何が悪かったんだろうな・・・・・・。」「そうだね。鞭の扱いが上手いとかそんなのはたいした問題じゃないと思うよ。」「じゃあ一体何が原因なんだ!」 淡々とした表情で答える親友に掴みかからんばかりの勢いで問うルルーシュ。 スザクは悲壮な表情を浮かべて肩に手を置くルルーシュの腕をぽんぽんと叩き宥めながらそれでもはっきりと言った。「素で『下郎』なんて言葉が出る辺り、君は間違いなく骨の髄まで皇族って事だよ。」 その夜、ルルーシュは一生懸命に対コーネリア戦に備えて戦略を練った。 多彩な状況に合わせて練られた作戦の数々に黒の騎士団のメンバーは感嘆の声を上げたが彼らは知らない。 ゼロ・・・ルルーシュがそこまでコーネリア戦に執着する理由を、原動力を。《おのれコーネリア! 人になんつー教育してくれたんだぁああ!!!》 皇族嫌いの第11皇子ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア殿下。 骨の髄まで染み付いた皇族教育に反逆中なり。 END