硬度とは
硬度 (こうど) は水に含まれるカルシウム (Ca) やマグネシウム (Mg)の量を表す数値のことで、総硬度、カルシウム硬度、マグネシウム硬度、炭酸塩硬度(一時硬度)、非炭酸塩硬度(永久硬度)の5種類があります。一般的に硬度と言えばカルシウム硬度とマグネシウム硬度を合わせた総硬度を指します。炭酸塩硬度(一時硬度)、非炭酸塩硬度(永久硬度)の違いは以下の通りです。
炭酸塩硬度(一時硬度)
硬度成分(カルシウム・マグネシウム)が炭酸水素塩の形で水に溶けているタイプ(炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム)。この類の水を煮沸すると、硬度成分は熱分解して炭酸ガスを放出し、残った成分は不溶性の炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムとなって水中に折出するので、水の硬度が下がる。ヨーロッパの水は一時硬度による硬水が多く、煮沸で軟水化した水を利用できるドラム式洗濯機での洗濯が主流。
Ca(HCO3)2 → CaCO3↓ + CO2 + H2O
炭酸水素カルシウム → 炭酸カルシウム(沈殿)+ 二酸化炭素 + 水
非炭酸塩硬度(永久硬度)
硬度成分が塩化物や硫酸塩の形で水中に溶けているタイプ(塩化カルシウム、塩化マグネシウム/硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム)。これらを含む水を煮沸しても硬度成分は析出せず、水の硬度が下がることはない。日本の水はこちらであることが多い。
アメリカや日本ではカルシウムとマグネシウムの量を炭酸カルシウム(CaCO3)量に換算してmg/Lやppmの単位で表します。一方日本で戦前まで広く用いられたドイツ硬度はカルシウムやマグネシウムの量を全て酸化カルシウム(CaO)量に換算して表します。これらの他にはフランス硬度、イギリス硬度(クラーク硬度)などがあります。
簡単な硬度の計算方法
硬度[mg/L]=(カルシウム量[mg/L]×2.5)+(マグネシウム量[mg/L]×4.1)
軟水器の宣伝では、日本の水道水について以下のような表現がなされることもしばしばあります。
日本の水道水の大半が硬水に分類される事をご存知でしょうか???
「気になるけど、自然現象だからしかたがないワ」とあきらめていた日常生活の不快な現象。実はそのほとんどが、水道水に含まれるカルシウムイオンやマグネシウムイオンといった硬度分が原因で起こっています。いくら硬度が低いといっても家庭の水道水は硬水。
日本の水は平均硬度61ppmと低く、軟水だといわれていますが、硬度分ゼロというわけではありません。
三浦工業株式会社(以下、三浦工業)「軟水BOOK」
そこで径書房では、実際にお風呂に入って軟水じゃないと体感できるぎりぎり、硬度10ppmまでを軟水と呼ぶことにします
日本の生活水は様々な金属成分が溶け込んでいる「硬水」です。
全国平均61ppmとは、1トンの水の中に61gもの石灰(チョークの粉をイメージして下さい)が含まれているという事です。(略)チョークの粉は手に付くとすぐに手を洗いたくなる衝動にかられませんか。目にはほとんど見えませんが、実はチョークまじりの肌などに悪い水を浴びて生活しているのです。
しかし、WHO水質ガイドラインに照らし合わせると日本における硬水地域は全体の数%に過ぎませんので、これらの宣伝文句は明らかに誤りだと言えます。
以下に日本の水と硬度に対する学術的な見解をいくつか挙げておきます。
硬度(hardness)とは、もともと石鹸の泡立ち具合が水により異なることから、石鹸の中和能力を表現しようとしたものである。わが国では水中に存在するCa2+、Mg2+のイオン量を当量計算し、それをCaCO3換算当量とし、mg/lで表現する。
宗宮功・津野洋共著「環境水質学」コロナ社
カルシウムやマグネシウムは普通のpH(pH7付近)では、イオンとなって溶けていますが、石けんと化合して泡だちを阻害します。このような成分を硬度成分といいます。日本の水は幸いも硬度の低い軟水ですので、鉱泉などの特殊な場合を除けば、石けんが溶けにくいといったことはありません。カルシウムやマグネシウムの多い水は、ボイラーや湯わかし器の壁にスケール(湯あか)を生じて熱の伝導を悪くし、障害になります。硬度の高い地下水を用いることの多い欧米の水道では、どうしてもこれら硬度成分を除去する必要があります。このための処理を硬水軟化処理といいます。
―中略―
日本の水はほとんど軟水ですから、硬水軟化処理を行う必要がなく、浄水処理は水を清澄にする除濁、除色に重点がおかれています。
丹保憲仁・小笠原紘一共著「浄水の技術」技報堂出版
「水の硬度は、水源の種類に大きく影響され、一般的に地下水の方が河川水などに比べ、高くなる傾向があります。
欧米のように石灰質の地域を長い時間かけて通ってくる水の硬度は高く、日本のように地中での滞留時間や河川延長が短い場合、硬度は低めになります。」
「日本水道水質基準」は1993年、35年ぶりに大幅に改正され、同年12月1日から施行されました。以下は水質基準の「カルシウム、マグネシウム等(硬度)」の項目からの一部抜粋です。
この基準は、人への健康影響に基づいて基準値を設定した項目(健康に関する項目)29項目と、水道水の利用に支障のない水準として値を設定した項目(水道水が有すべき性状に関する項目)17項目とから成っている。
性状に関する項目7 カルシウム、マグネシウム等(硬度)
1.概要
石けんの泡立ちがよい水を、軟らかい水または軟水といい、反対に泡立ちの悪い水を硬い水または硬水といっている。水の硬度とは、この硬さの程度、いいかえると石けんの使いやすさの程度を数値をもって示したものである。硬度(総硬度)は、化学的には、水中のカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンの量を、これに対応する炭酸カルシウム(CaCO3)のmg/に換算して表したものである。
2.健康影響
硬度(主にマグネシウム)が高過ぎると胃腸を害して下痢を起こす場合がある。
硬度がかなり高い水(300~500mg/l)を飲用すると尿石症になりやすいという報告がある。しかし、一般的には飲用に供し得る程度の硬水は、衛生上の障害はない。
カルシウム、マグネシウムは生体必須元素で、カルシウムは成人平均0.7g/日必要。
3.基準値設定の根拠
石けんの泡立ち等への影響を防止する観点から、従来通り300mg/l以下とした。
1984年のWHOのガイドライン値の500mg/lは、味覚および家庭の水使用を考慮して設定された。
4.参考
工業用水で硬度が高いと、ボイラーにスケールを生じさせ、熱の伝導を阻害し、爆発などの危険を生じさせる。適度な硬度の場合には、配管類の防食に役立つ。
資料:日本環境管理学会編「改訂第2版水道水質基準ガイドブック」丸善株式会社
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