年度替わりを前に引っ越しも多い時期。気になるのが普段手を抜きがちな壁紙掃除だ。我が家の台所や居間の壁は黒や茶色の汚れがこびりついている。2人の小学生の子どもの仕業か、ボールペンで書いたような跡まである。積年の汚れ落としに効果的な方法を探った。
汚れが激しいのは食事をするテーブル脇のビニールクロス。壁全体の7割ほどに、黒や茶の汚れが広がっている。汚れを縦に7つに区切り用具・洗剤を7種類用意して、落ち具合を比べることにした。
まず基本的な水拭きをすると、こびりついた汚れはびくともしていない。「軽い汚れなら消しゴムが有効」と知人に聞いたが、これもダメ。スプレータイプのリビング用洗剤(弱アルカリ性)を壁に直接吹きかけ古布で拭うと、汚れは少し薄くなった程度だった。
「こする力が必要だな」。我が家では風呂の細かい掃除に歯ブラシを使う。壁の汚れを毛先でかき出せないか。洗剤を吹きかけ、歯ブラシでこすると、汚れがにじみながら落ちていく。喜んだが洗剤の容器をふと見ると「シミなどの原因になるため直接壁にスプレーしないように」とある。これは気をつけなければ。
歯ブラシは広い範囲を掃除するのには向かない。そこで「ガラスや陶器の水あか、茶渋汚れがスッキリ落ちる」として売っているメラミンスポンジを試す。合成樹脂製で、水を付けてこするだけ。スポンジの微細な硬い網の目で、汚れをかき取る仕組みだ。
ボールペンの跡はクレンザーを使用
湿らせたメラミンスポンジで壁を軽くなぞると汚れが落ち、周りとのコントラストがわかるほどきれいになった。これは便利だ。ただ念のためメーカーに「壁紙掃除に使っていいものか」と確認すると、細かい傷が付く恐れがあるという。拭いた壁を見たところ傷はできていないようだが、用心した方がよさそうだ。
柔らかいごく普通の台所用スポンジはどうか。洗剤をなじませ汚れを軽く何度かこすると、メラミンスポンジほど一気には取れないが、次第に白い壁が姿を現す。歯ブラシのようにこすりすぎる心配もない。
最後にごわごわとして、何でも落とせそうなたわしに洗剤を付けて試した。落ち具合は台所スポンジと大差なし。ただこするたびにざらつく抵抗感が手に伝わる。壁に傷はないが、力を込めると破ってしまいそうな怖さがある。
スポンジ掃除がいいことは確認できたが、どうにも落ちなかった汚れがある。ボールペンの跡とキッチン近くの壁の黄ばみだ。そこで掃除のプロに、強い洗剤を使って落とす方法と壁の傷みを最小限に抑えるための注意点を聞いて、再挑戦した。
「ボールペンのインクは研磨剤が入ったクリームクレンザーを使うといい」と話すのは家事代行大手、ベアーズ(東京都中央区)専務の高橋ゆきさん。なるほど落ち具合はぴかいち。ただ「いきなり汚れを取らず、目立たない場所で試すこと」との助言付きだ。どんな洗剤でも様子を見ながら進めるのがいいという。
「慌てず、焦らず、優しい気持ちでするのが掃除の基本」。高橋さんに従い歯ブラシにクレンザーを付けてゆっくりこすると、1分で跡が消えた。「そういえば歯磨き粉にも研磨剤が入っているな」。クリームクレンザーより時間はかかるが、歯磨き粉でも2~3分できれいになった。
しつこい黄ばみ、重曹を付け分解
次はガスレンジやゴミ箱近くの壁に点々とこびりついた黄ばみだ。「油汚れは壁紙に染み込むと落としづらい」(花王)という。
エコ掃除で話題の重曹はどうか。ナチュラル生活研究家の岩尾明子さんは「重曹に水を加えてペースト状にして、汚れに付ければ落ちますよ」。重曹は弱アルカリ性で汚れを分解するうえ、細かい粒子による研磨効果がある。「しつこい汚れには水の代わりにせっけん水で溶けばいい」
ただ掃除後、塩が浮いたように壁が白っぽくなることがある。「汚れを重曹で取ったら酢を水で2~3倍に薄めて吹きつけ、残ったアルカリ分を拭き取るのを忘れずに」(岩尾さん)
「油性のシミはマニキュア除光液。水性なら洗浄力が強いアルカリ性洗剤を付け、しばしラップで覆っておく」と助言するのはダスキン。ただ壁紙にかける負担が大きいので、どうしてもシミを取りたいときの最終手段という。
マニキュア除光液は油汚れと一緒に壁紙も溶かす可能性がある。「古布に液を付け、シミ部分だけをポンポンとたたくように使ってほしい」(同社)。広範囲に使うのは厳禁だ。
なんとか6年越しの汚れは落ち切ったが「普段から掃除しておけば、強い洗剤を使うことなく落とせるはず」(花王)。汚れは気付いたときに落とすという基本の大切さを痛感した。
記者のつぶやき
破れませんように、変色しませんように……。そう願いながら慎重に掃除したつもりだったが、実験後半でほんの少し壁紙を破いてしまった。「優しい気持ちで掃除すること」という高橋さんの言葉を忘れ、乱暴に拭いてしまったためだろう。壁紙に限らず、掃除は「ゆっくり、優しく」を忘れないようにしたい。
(岩本隆)
[日経プラスワン2012年3月3日付]
本コンテンツの無断転載、配信、共有利用を禁止します。