夏(7月、8月)は、年間を通してとびひになりやすい季節です。
なぜならば、とびひになる原因が多いからです。
- 肌の露出が多くなるため、転んですり傷になり化膿する
- 虫刺されやあせもを掻きむしって、化膿するなど
とびひの正式な病名は「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」といいます。
とびひには、水ぶくれができるタイプ(水疱性膿痂疹:すいほうせいのうかしん)と、かさぶたができるタイプ(痂皮性膿痂疹:かひせいのうかしん)の2種類があります。
子供がなりやすいとびひは、水ぶくれができるタイプの水疱性膿痂疹です。
とびひ薬は、おもに次の3種類です。
- 抗生物質、抗菌剤の塗り薬
- 抗生物質の飲み薬
- かゆみ止めの飲み薬
使用頻度の高い2種類のとびひ薬(塗り薬)を解説します。
- 抗生物質ゲンタシン軟膏
- 抗菌剤アクアチム軟膏
とびひ薬1:ゲンタシン軟膏
ゲンタシン軟膏とは
ゲンタシンは、ゲンタマイシンを有効成分とするアミノグリコシド系抗生物質で、細菌に対して殺菌的に効果があります。
ゲンタシンには軟膏とクリームがありますが、とびひに使われるのは軟膏がほとんどです。
ゲンタシン軟膏の適応細菌
ゲンタマイシンに感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属(肺炎球菌を除く)、大腸菌、クレブシエラ属、エンテロバクター属、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、プロビデンシア属、緑膿菌
ゲンタシン軟膏添付文書(医療者向け薬の説明書)より
子供のとびひの原因菌のほとんどは、黄色ブドウ球菌です。
ゲンタシン軟膏と黄色ブドウ球菌と耐性菌
ゲンタシン軟膏は抗生物質の塗り薬として有名なため、とびひを含むさまざまな皮膚の感染症に使用されます。
しかし、
「ゲンタマイシンに感性(効果がある)のブドウ球菌属、レンサ球菌属…」とあるとおり、ゲンタシン軟膏はゲンタマイシンに効果のない黄色ブドウ球菌には使用できません。
ゲンタシン軟膏は、使っている間に耐性菌ができて効果がなくなる場合があるため、とびひには最初からゲンタシン軟膏を使用しないという医師もいます。
特定の抗生物質に効果を示さない細菌など
診察のときに「3日くらいしたら、もう一度診察に来てください」と言われたことはないでしょうか。
その理由は、ゲンタシン軟膏のとびひへの効果を確認するためです。必ず受診してください。
ゲンタシン軟膏の効果は、とびひに使ってみないとわかりません。
(とびひの診断と、原因菌の特定は別問題)
ゲンタシンの使い方
ゲンタシン軟膏の添付文書には
「1日1~数回患部に塗布するか、あるいはガーゼなどにのばしたものを患部に貼付する」
と記載されています。
実際の現場での使い方は、ゲンタシン軟膏を1日2回~3回、とびひが出ているところに限定して塗ります。
とびひが広がってくるようであれば、広く塗るという方もいますが、耐性菌の問題からおすすめできません。
むしろ、とびひが広がるということは、ゲンタシン軟膏の効果が不十分であるため、ただちに再診するべきです。
ガーゼは医師の指示が無い限り、とびひに使う必要はありません。
ゲンタシンの効果
表在性皮膚感染症に対する効果=82.8%
(「とびひ」に限定した効果のデータはありません)
黄色ブドウ球菌などの細菌が傷などに侵入して炎症を起こす感染症の総称。
<例>
- カミソリ負け(毛瘡:もうそう)
- 化膿性皮膚炎
- とびひ(伝染性膿痂疹)
- 毛のう炎
- 毛包炎
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とびひ薬2:アクアチム軟膏
アクアチム軟膏とは
アクアチムは、ナジフロキサシンを有効成分とする世界初のニューキノロン系抗菌剤の塗り薬です。
アクアチムには軟膏、クリーム、ローションの3種類がありますが、とびひに使うのは主に軟膏です。
アクアチムクリームとローションは、ニキビ(主に赤にきび、黄ニキビ)への使用が多いです。
アクアチムの保険適応の例
| – | ニキビ | とびひ |
|---|---|---|
| アクアチムクリーム | ○ | ○ |
| アクアチムローション | ○ | × |
| アクアチム軟膏 | × | ○ |
アクアチム軟膏の適応細菌
本剤に感性のブドウ球菌属、アクネ菌
アクアチム軟膏添付文書より
アクアチム軟膏は、ゲンタシン軟膏と比較すると適応する細菌が少ないです。
アクネ菌はニキビの原因菌ですので、アクアチム軟膏もニキビに効果があるはずです。
しかし、軟膏という剤形がニキビの治療に適していないため、保険適応がないのでしょう。
アクアチム軟膏と黄色ブドウ球菌と耐性菌MRSA
黄色ブドウ球菌の中には、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)と呼ばれる耐性菌が、ある程度存在しています。
MRSAの厄介なところは、通常効果のあるはずの抗生物質(抗菌剤)が効かないことです。
ゲンタシン軟膏も使用している間に、黄色ブドウ球菌が耐性化して、MRSAが増える可能性があります。
そのようなMRSAに対しても、アクアチム軟膏は抗菌効果が期待できます。
アクアチム軟膏の使い方
アクアチムは、1日2回とびひの場所のみに塗ります。
とびひと関係のないところには塗る必要はありません。
ガーゼも医師の指示が無い限り、とびひには必要はありません。
アクアチム軟膏の効果
アクアチムクリームを1日2回、1週間塗布した一般臨床試験における有効率は次の通りです。
| – | 有効性 |
|---|---|
| 毛包炎 | 93.80% |
| とびひ・尋常性膿瘡 | 100% |
※アクアチム軟膏とクリームは生物学的に効果が同等と証明されています。
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とびひ薬(塗り薬)はいつまで続けるのか
とびひ薬(抗生物質、抗菌薬)は、中途半端に使用すると耐性菌を作る原因になります。
とびひは、小さな水ぶくれができ、次第に大きくなり膿を持った水ぶくれになり、最終的にかさぶたになってはがれていきます。
とびひは、水ぶくれの間は他人や他の皮膚にうつします。
かさぶたになるまではとびひ薬(塗り薬)は続けます。
すべてのとびひがかさぶたになったとき、とびひ薬(塗り薬)は終了です。
フシジンレオ軟膏、テラマイシン軟膏は、昔からある古いタイプの抗生物質塗り薬ですが、今もとびひにはよく使用されます。
とびひ薬3、とびひ薬4
まとめ
- 子供のとびひの原因菌のほとんどは、黄色ブドウ球菌
- 抗生物質(抗菌剤)のとびひに対しての効果は、使ってみないとわからないため、後日受診が必要
- ゲンタシン軟膏は、耐性菌の発現が問題
- アクアチム軟膏はとびひに使い、アクアチムクリームとローションはニキビに使うことが多い
- アクアチム軟膏は耐性化を起こしにくい
- とびひがかさぶたになるまでは、抗生物質(抗菌剤)のとびひ薬を続ける
ゲンタマイシン軟膏、アクアチム軟膏の効果、副作用等のデータ元は添付文書もしくはインタビューフォームです。