猫ニキビの病態と症状

 猫ニキビとは、主に唇からあごの下にかけて発生する黒いポツポツ(コメド=角栓)のことで、炎症を伴う場合はネコざそうとも呼ばれます。予備知識がないと「ああ、キャットフードの粉がついたんだな」くらいしか思いませんが、実はバクテリアの繁殖した一種のコロニーである可能性があります。 この猫ニキビは年齢、性別、品種を問わず発症するもので、皮膚の乾燥やかぶれなど防ぐ「皮脂」(ひし)を分泌する「脂腺」(しせん)がある部位に多く発現します。皮脂腺のある場所は、猫のまぶた、あご、しっぽの付け根、唇、オス猫の陰嚢や包皮ですが、発見されるものの多くはあごの下です。
 猫ニキビは多くの場合、軽症で命を脅かすことはありませんが、時にマラセチア菌などが繁殖することもあり、悪化すると膿が溜まって膿皮症(のうひしょう)と呼ばれる病態に進行します。また、痛みや違和感から猫が自分の爪で引っかいてしまうと、引っかき傷から出血したり、ばい菌が入って二次感染を引き起こします。
 猫ニキビの症状としては以下のようなものが挙げられます。
猫ニキビの主症状
  • あごの下の黒いポツポツ
  • あごの下の脱毛
  • あごの下の腫れや出血
  • 皮膚が硬くなる
  • あごの下をしきりに掻く
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猫ニキビの原因

 猫ニキビの原因は、実は明確には判明していません。ただ「おそらくこれが原因だろう」と思われる容疑者がいくつか挙がっていますので、以下に列挙してみます。
猫ニキビの主な原因
  • プラスチック容器での食事 プラスチック容器は多孔性(目に見えない小さな穴がたくさん空いている)でバクテリアが繁殖しやすいため、食事の際、あごの下にバクテリアが付着してしまうことがあります。
  • アレルギー反応 食事する際、食器とあごが接触し、プラスチックや金属に対するアレルギー反応が局所的に起こることがあります。あるいは、食べ物そのものに対する食品アレルギーという可能性もあるでしょう。
  • ストレス 人間と同じように、何らかのストレスが猫の免疫力を低下させ、通常であれば抑制できるはずのバクテリアの繁殖を抑えきれなくなることがあります。 
  • 毛づくろい不足 加齢や手の怪我によって「洗顔」不足になると、バクテリアの繁殖を許してしまうことがあります。 
  • 皮脂の過剰分泌 エサに含まれている成分が体質に合わない場合、皮脂が過剰分泌され、それがバクテリアにとってのえさになってしまうことがあります。
  • ホルモンバランスの乱れ 去勢・避妊手術などでホルモンバランスが崩れると、時として免疫力の乱れが生じることがあります。 
  • 不衛生な生活環境 食器を洗わない、水を交換しないなど、飼い主の側の節度のなさがバクテリアの繁殖を助長することがあります。 
  • 投与した薬に対する一時的な体調変化 持病などで何らかの薬剤を投与している場合、内臓の機能やホルモンをつかさどる内分泌系に一時的な不調和が生まれる可能性があります。 
  • ニキビダニ ニキビダニは毛包虫(もうほうちゅう)とも呼ばれ、バクテリアよりもはるかに大きく、顔に寄生しているダニの一種です。このダニによって引き起こされた炎症がにきびの原因である可能性もあります。 
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猫ニキビの治療

 猫ニキビは原因自体が不確かなため、必然的に確実な治療法もありません。以下では自宅でもできる幾つかの対処法を列挙しますが、症状の改善が見られない場合は、獣医さんに相談してみましょう。
 動物病院では、白癬(はくせん)、カンジタ、自己免疫疾患、ある種の肉芽腫など、より深刻な他の皮膚疾患と鑑別診断し、場合によってはムピロシン軟膏や猫用の石鹸、経口薬などを処方してもらいます。なお、人間のニキビと猫ニキビとは同じものではありません。中毒に陥るの危険性があるため、自己判断で人間用のニキビ薬は絶対に塗らないでください。
猫ニキビの主な治療法
  • プラスチック容器を変えてみる  プラスチック表面にあるミクロな穴に生息しているバクテリアが原因の場合、穴の少ないガラスや陶器製、金属製のものに切り替えると、猫ニキビが改善することがあります。
  • 食器を変えてみる  金属性を使用している場合は陶器製を、陶器製を使用している場合は金属製を使うなど、使用している食器の材質を変えてみましょう。一定の物質に対するアレルギー反応が原因の場合、これで猫ニキビが改善することがあります。
  • エサを変えてみる  エサに含まれている何らかの成分が皮脂の分泌を過剰にしている可能性があります。現在使用しているキャットフードの主成分(パッケージの成分表示で先頭に来るもの)が「穀物」や「コーン」となっているようなら、もう少しタンパク含量の高いフードに切り替えて見ましょう。
  • 住環境の見直し  ストレスが原因で免疫力が乱れている場合、ストレスの原因となっているものを取り除くことで、本来の免疫力を取り戻せるかもしれません。部屋の中で大きく模様替えした部分、新しく設置した電子機器、隣家で飼いはじめた犬の鳴き声、長すぎる留守番など、可能性はいろいろです。これを機に猫にとってストレスフリーとなる最善の住空間を今一度検討してみましょう。
  • 水やエサの容器をこまめに洗う 単純に、バクテリアが繁殖する前に洗ってしまえば、あごに移動するバクテリアも少なくなり、猫の免疫力だけで自力撃退できるようになります。 
  • タオルで拭いてあげる タオルを軽くぬらして電子レンジで人肌程度に温め(10秒くらい)、にきび周辺をふき取ります。こうすることでニキビを物理的に除去すると同時に、顔周辺の血行を促進して免疫力を局所的に高めることができます。また怪我や高齢が原因で猫が自分で毛づくろいをできないようなときにも有効です。なお歯ブラシを用いて強引にコメドを取り除こうとすると、多くの場合角質層に傷をつけて膿皮症の原因になってしまいますので要注意です。
  • ダニ予防をしっかりとする  ニキビダニが原因の場合、ダニ予防を徹底することで改善することがあります。市販されているダニよけグッズを使ったり、獣医さんが処方してくれるやや強力なダニよけ薬などを使用してみましょう。ニキビダニは皮膚に常在(じょうざい=健康な猫でも保有していること)しているため完全に駆除することは難しいですが、数を減らすことができるかもしれません。また、猫を放し飼いにしている場合は、これを機にぜひ室内飼いに切り替えてください。
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