| Image:Offical U.S Navy Page ・F-35は仮に敵に探知された場合、ゴルフボールサイズにレーダーに映る。 ・F-35は敵のレーダーをジャミングすることもできるが、まるで空に100個のゴルフボールサイズの標的があるように、敵レーダーに見せかけることもできる。 ・しかし、それとは別にF-35の本当の能力は、史上かつてなかった800万桁のソフトウェア・コードで書かれたその頭脳にある。 ジョーセフ・スティンガー大尉は、実戦経験豊富なベテランパイロットだ。彼は現在、F-35が戦闘で何ができるのかを解明することと、他の何百人もの戦闘機パイロットにそれを教えることを仕事としている。 スティンガーは言う。 『かつての他の戦闘機では、パイロットはレーダーをマニュアルで操作しなければならなかった。こちらを狙ってくる地対空ミサイルを探すために地上にレーダーを向けたり、もしくは敵軍用機を探すために空に向けたりを、手動操作しなければならなかったんだ。パイロットは、友軍機との高速データリンク通信や、地上軍から送られてくる文字データをチェックしなければならない。ターゲットをロックオンして武器を発射する前に、パイロットもしくはパイロットの後ろに座っている兵器操作員がデータを丹念に調べなければいけなかった』 『想像してみて欲しい。それってとても時間がかかるし、膨大な認知処理(cognitive processing)を必要とすると思うだろ』 『単座機のF-35は、多数のセンサーがデータを融合して、戦闘機自身がこれら多くのことを自動的にやってくれる』 『たとえば、F-35の熱感知センサーが敵のミサイルがこちらに飛んで来るのをとらえたとしよう。すると、呼び鈴のようなチャイムの音がなって、さらにコンピューター音声が《左にミサイル、9時の方向》って話すんだ。パイロットのヘルメット・バイザーにグリーンの円が浮かび上がり、ミサイルの位置をピンポイントで知らせる。同時にミサイルのスピードや着弾するまでの時間が付随して表示される。緑の円を見るだけで、パイロットは武器に狙いをつけ、敵に向けて発射することができる。そうしてミサイルを迎撃することができるわけだ。6個の外部カメラが360度の外界の視界をキャプチャーし、パイロットのヘルメット・バイザーにその映像を送りこんでくる。パイロットが下を向けば、コクピットの床を通して地面を見ることができるんだ』 スティンガーは熱心なF-35のパイロットの訓練を助けている。これまでのところF-35で200時間以上飛べば、ここにいる全ての空軍パイロットと同じくらいF-35のことをよく知るようになる。飛行コース訓練を受けていないときは、パイロットたちはブリーフ・ルームでF-35の能力についての戦術マニュアルを読んで1日を過ごす。訓練生はF-35の特性を、まるでベタ惚れの恋人のようにすらすら言えるようになる。 スティンガー大尉はアフガニスタンで330時間もの実戦飛行を経験している。彼は、タリバン戦闘員やその隠れ家を攻撃したり、敵のミサイル発射装置を破壊したり、友軍に火力支援をしたりした。しかし、9年間の空軍の経験の中で一度もドッグファイトをしたこともないし、どんな敵の戦闘機や軍用機とエンカウントさえしたことがない。 もはや、お互いの後ろに回り込んで、敵を照準機の十字に捉え攻撃する時代は終わった。パイロットはiPadのような機器やヘルメットのバイザーのスクリーンから情報を得る。電子センサーやネットワーク交戦、レーダー誘導の空対空ミサイルが敵戦闘機を100マイルの距離から撃墜してしまう。ほとんどの場合、パイロットは敵を視界にとらえることはない。 スティンガー大尉の生徒たちは多くの技術を学ぶが、その中に空対空戦の訓練は依然として含まれている。訓練用に定められた空域で、スティンガーは映画トップ・ガンの中で見たような戦術ドッグファイトのシナリオを練り上げる。スティンガー大尉はF-35に乗った生徒たち二機に、F-16四機と戦わせる。F-16はロシアや中国が所有してる戦闘機と同程度の性能を持った戦闘機であり、F-35と対峙する可能性のある仮想戦闘機として想定できる。 『教えられた戦術を使えば、敵が君を見つけるまえに、敵を撃墜することができる』スティンガーは言う。『有視界戦闘に入るずっと前に撃墜できるんだ』 飛行訓練のコストは驚くほど膨大だ。空軍は1機のF-35Aを一時間飛ばすのに14183ドルを費やしている。これはあくまで平和時のトレーニングでのコストである。一ヶ月あたり13時間の搭乗時間に予算をつけると、たった一人の搭乗員の訓練で一年で220万ドルもかかる。 基地の一角に、そびえ立つアトリウムのついた漆喰の2階建てビルがある。建物は最近建設された。見かけはサウスウエストの高校に似ているが、その建物は4700万ドルのトレーニング・センターである。中には12台の新品で最新型のF-35のフライトシミュレーターが設置されている。シミュレーターは一つあたり、2300万ドルの価格だ。 そこはまるでテーマパークの遊技場のようだ。直径11フィートの白いドームが、部屋の中に設置されてある。ドームは巨大な鉄のフレームと25台の高精細プロジェクターに囲まれている。軌道上にあるF-35のコクピットのレプリカがドームの中へ消えていく。コクピットに座ってみると、ちょうど着座位置の低いイタリアのスポーツカーに似たすわり心地だ。本物のF-35を飛ばす前に、訓練生パイロットたちは最初の一ヶ月をコンピューターモニターを見て、ジョイスティックを握りながらすごさなければならない。訓練生たちはヘルメットをかぶり全部で30時間をシミュレーターで過ごすことになる。 F-35のシミュレーターは地球上でもっとも進んだバーチャリアリティの体験だった。パイロットはレプリカのコクピットに乗り込むと、コクピットが軌道にそってドーム内へと入っていく。中に入ると、プロジェクターが、グーグルアース並のクオリティーで映像を映し出す。30000フィート下で、近郊の雲や影、山脈があっという間に過ぎ去っていく。田舎風の飛行基地があり、敵戦闘機が前方にいる。ミサイルが前へと飛んで行く。 それは音効果つきで没入できる360度の全景だ。実機のF-35がそうであるように、シミュレーターも地上の安全サーバーと接続され、またシミュレーター同士もリンクしている。パイロットたちはそれぞれのシミュレーターに乗り込み、戦術作戦を一緒に訓練する。これらのシミュレーターは、いつの日かはアメリカじゅうの空軍訓練基地にある他のフライトシミュレーターとリンクするようになる。 Kevin Gray『The Last Fighter Pilot』より |
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