心拍数とペダリング/ケイデンス/パワー

Wednesday, 4月 27, 2011


心拍数とペダリング/ケイデンス/パワー




竹谷賢二 (ポラールHRアドバイザー)



 



前回は「ペダリングのパワーとは?」という概念をご紹介させてもらいました。運動強度、トレーニング負荷としてのパワーを指標として用いるという考え方がご理解頂けたかと思いますが、今回は、「パワーを実際に上げるトレーニングとは?」という観点からアドバイスしていきます。



■「サイクリングのパワー」とは?

一般的にパワーとは動作力と動作速度ですが、サイクリングのパワーではペダリング動作のトルクとケイデンスで表現されます。



スポーツにおいてよくTVなどの解説では、パワーのある選手というと、筋肉隆々で力強い選手というイメージを抱きがちですが、それは正確な表現ではないのです。実際は小柄で華奢でもパワーのある選手もいます。そのため、パワーは「チカラ」という単一要素ではなく、パワーは「動作速度との掛け算」により算出できます。



パワー≠チカラ



パワー=動作力×動作速度



例として下記に3選手(A/B/C)のパワーを比較してみます。





A選手:力が少ないが、動作速度が速い選手の場合



動作力(3)x動作速度(100)=パワー(300)



B選手:力はあるが、動作速度が遅い選手の場合



動作力(5)x動作速度(60)=パワー(300)



C選手:力もある程度あり、動作もある程度速い選手の場合



動作力(4)x動作速度(90)=パワー(360)





この算出から、パワーが一番あるのはC選手となります。



パワーには、前述のエネルギー供給という体力要素を高めれば、それに比例してパワーも向上していきます。これはとても重要ですが、体力に対してパワーを考える際は、動作との兼ね合いである効率や経済性も重視しなければなりません。何故なら、サイクリングでは動作=ペダリング動作のスキルと技術レベルが密接に関わってきます。



一般的に、パワーの内訳は動作力と動作速度ですがサイクリングではペダリング動作のトルクxケイデンスとなります。どれだけ適切にペダルに力(トルク)をかけられ、その時のかける速度が速いのか、またムラや無駄はないのか、という熟練度に相関します。つまり、体力があってもパワーが少ない場合は、動作効率が悪いと言えます。反対に、体力要素が未発達でも、動作を改善し効率を上げることで高いパワーを維持出来るようになります。そのため、まずはパワーを高めるためには、パワーを数値として計測することも重要ですが、まず優先すべきはことは動作効率の向上だと考えます。それにはスムーズな動作やペダリングを身につけることが第一であり、スムーズに動作が行えれば、結果として動作速度が上がります。この際の指標はケイデンスを用います。



■「ケイデンス」とは?

ケイデンス(rpm=revolution per minute)とは英語で「リズム」と表現され、サイクリングにおいては毎分の脚の動作回数となります。例えば、90rmpというと1分間の回転数が90ということになります。



ケイデンスセンサーを使用することによりどれだけ動作を速く行えているかという目安になるため心拍計にケイデンスセンサーを追加してトレーニングを行うことをお勧めします。



ケイデンスを使用する際の最初のステップは、スムーズな動作で力まず高いケイデンスを常時維持できるようにすることが重要です。具体的にはペダリング練習の各種ドリルがありますが、まずは、スムーズな動作を高い回転で持続できるように、軽い負荷と運動強度からトレーニングを始めることをお勧めします。また、その際にはスポーツゾーンを使用することもお勧めします。(下記の図1参照)




図1:ポラールスポーツゾーン


 



スポーツゾーン(上記の図1参照)で言えば、ゾーン2(軽い)の低強度で、ケイデンス90~100rpmを維持し2~4時間といういわゆるLSDと呼ばれるような、エンデュランスライドや基礎的持久走が適切です。このゾーンでは、踏み込みを重視するのではなく、ペダリングの円の軌跡をスムーズにトレースすることとしっかりと脚を上に持ち上げることを意識します。これが出来たら、徐々に踏み込みの力、トルクをかけるようにしていき運動強度も上げていきます。そして、ゾーン3(普通)での持続走で実際にパワーを上げていきます。



十分なスキルを獲得し、トルク増大のトレーニングを行い、パワー向上の為のトレーニング頻度を高く行える段階になったらパワーセンサーを導入するのが良いでしょう。ケイデンスセンサーが動作の速度の目安になるならば、パワーセンサーはトルクとの兼ね合いを含め、動作スキルを数値化して捉える目安にもなります。



ポラールパワーセンサーは、チェーンのテンション(動作力)とチェーンスピードから動作速度を測り、心拍計本体に設定したチェーンの比重を合わせて計算し、パワーを算出します(この仕組みは一般的な体脂肪計に似ていると言えるかもしれません。体重と体内の水分量を測って、年齢、性別、身長などを合わせて計算し、脂肪量を算出します)。このメリットは、廉価であることやクランクやホイールなどのハードウエアに制限を与えないことですが、チェーンのテンションとスピードを計測する為のセンサーユニットとの適切な設置が、正しい計測のために必要になります。そして、次の2つの独自の機能(ペダリングインデックス/L-Rバランス)から、動作スキルの数値化、どのような力のかけ方をしているのかも分かるようになります。



1:ペダリングインデックス(Pedaling Index=PI)

PIは、一回転あたりのチェーンに掛かる力のムラをみていて、ペダリング動作の一回転のなかでの力の掛かり具合を示します。
例えば、10以下だとペダリングのムラが大きくギクシャクとしたペダリング、20以上だとかなりムラが少なく滑らかなペダリングといえます。理想は15前後になり、それ以下だともっとスムーズに力をかけることを意識し、20に近づくように行うと良いです。



2:L-Rバランス

L-Rバランスは左右の脚のパワーの差を示し、均一であれば50−50のように表示されます。
左右の差が激しいと40−60のようになり、理想は45−55程度に収まることが望ましいです。



このように、パワーは、一元的な要素ではなく、トルク(動作力)xケイデンス(動作速度)の結果であり、トルクの為の筋力要素、ケイデンスをブラッシュアップさせるスキル要素、そして動作にエネルギーを与える体力要素、という内訳により構成されます。心拍トレーニングにパワーを追加し、高い運動強度トレーニング時のより高い精度の運動負荷というハードルとして利用することによりより効率的な動作の改善に繋げていけるように活用してください。