保湿のメカニズム
きちんとした保湿ケアを行うためには、保湿のメカニズムを理解しておく必要があります。ここでは保湿のメカニズムについて、出来るだけ分かりやすく紹介したいと思います。
- 水分蒸発を防いでくれる角質層
- 潤いを保つ 3つの保湿メカニズム
水分蒸発を防いでくれる角質層
最近肌に潤いがない。乾燥肌に困っている。保湿力を高めるといっても、どうしたらいいのか分からない。そんな声をよく耳にします。
きちんとした保湿ケアを行うためには、保湿のメカニズムを理解しておく必要があります。ここでは保湿のメカニズムについて、出来るだけ分かりやすく紹介したいと思います。
角質層の役割
人間の肌(皮膚)は、大きく分けて表皮部分と真皮部分に分かれています。表皮と真皮の下は、皮下組織や筋肉へつながっています。
表皮の一番外側で、外部と接っしている部分を角質層といいます。角質層の細胞は角質細胞と呼ばれており、レンガ状に20層ほど積み重なって構成されています(※上の簡略図では3層に省いています)。角質層の主な役割は、以下のものになります。
- 皮膚中から水分が蒸発してしまうのを防ぎ、肌の潤いを保つ(保湿)
- 細菌や化学物質などの侵入を防ぎ、外部からの脅威に対して体を守る
- 足の裏など体重が加わる部位は、角質を厚くして体への衝撃を吸収する役割を担っている
角質層は、内外からの物質移動に対する防波堤の役割を担っていることが分かります。角質層は肌の新陳代謝(ターンオーバー)によって日々新しい細胞が下から押し上げており、古くなった最上部は垢(アカ)となってはがれ落ちます。角質層の厚さは0.02mm程度の非常に薄い層なので、過剰なピーリングや垢すりなど、必要以上に角質層を薄く削いでしまうと、角質層の機能を損なってしまう場合があるので注意が必要です。
保湿に関しては、角質層のバリア機能を高めることで、皮膚中の水分蒸発を防いで肌の潤いを保つことができます。一般に、人間の角質層の30%は水分で構成されているとされ、この十分な水分量によって肌にハリや弾力、潤いが与えられているのです。
潤いを保つ 3つの保湿メカニズム
肌の保湿力を維持するのに欠かせない仕組みが、皮脂膜、天然保湿因子(ケラチン,NMF)、細胞間脂質の3つの保湿メカニズムです。聞きなれない言葉なので、1つずつ分かりやすく説明したいと思います。
3つの保湿メカニズム
- 細胞間脂質(セラミド ほか)
- ケラチンや天然保湿因子(NMF)
- 皮脂膜
細胞間脂質(セラミド ほか)
細胞間脂質とは、角質層を満たしている脂質のことで、角質細胞と角質細胞との隙間を埋めて角質層全体を支える役割を担っています。
20層ほどのレンガ状に積み上げられた角質細胞を埋めて強度を保つ、セメントのような役割と言い換えられるかもしれません。
細胞間脂質の成分は、セラミド(スフィンゴ脂質)、遊離脂肪酸、コレステロールなどで構成されています。特にセラミドは、細胞間脂質の多くを占めている物質です。
細胞間脂質の構造は、その両極が水に馴染みやすい親水基部分と、油に馴染みやすい親油基部分の2つに分かれており、この両極が交互に結びつき合うことで、水分層-油分層-水分層-油分層・・・のようなラメラ構造を形成しています。
セラミドに代表される細胞間脂質の組成によって、角質層内部の水分が十分に保たれ、肌の潤いや保湿が維持されているのです。セラミドなどが不足し、水分を溜め込むラメラ構造の形成が不十分になると、乾燥肌や敏感肌、肌荒れなどの肌トラブルを引き起こしてしまいます。
ケラチンや天然保湿因子(NMF)
ケラチンや天然保湿因子は、角質細胞に内在し、角質細胞そのものの保湿を助けている物質です。天然保湿因子は「Natural Moisturizing Factor」と呼ばれ、一般にNMFと略されています。
NMFはアミノ酸を主成分とし、水分を吸着して捕らえ、細胞内の水分を維持する働きをしています。
皮脂膜
皮膚内部には皮脂腺と呼ばれる皮脂を分泌する場所があり、皮脂が分泌されて肌表面に皮脂膜とよばれる膜を形成します。
皮脂膜は、皮脂、汗、皮膚表面に棲息する皮膚常在菌による働きなどによって形成されています。皮脂膜は、細菌やアレルギー物質、ハウスダストなどの化学物質から私たちの体を守るバリアの役割を果たしてくれます。また、皮脂で肌表面をコーティングすることによって皮膚の水分蒸発を防ぎ、保湿力を維持する働きもあります。
皮脂分泌を促す皮脂腺の数は、体の部位によって異なります。皮脂腺の多い場所はおでこやTゾーン、鼻の頭、頬(ほお)、脇の下などが該当します。
- おでこやTゾーン
- 鼻の頭
- 頬(ほお)
- 脇の下
皮脂分泌にはアンドロゲンと呼ばれる男性ホルモンの分泌が関係していますが、ホルモンバランスの乱れなどによって皮脂分泌のバランスが崩れると、色々な肌トラブルをもたらす原因となります。
多いとニキビや吹き出物の原因になる
皮脂分泌が増えると、毛穴の内部で皮脂を好むアクネ菌などの雑菌が繁殖し、炎症を起こしてニキビや吹き出物といった肌トラブルに繋がる場合があります。思春期に起こる肌トラブルとしては、成長ホルモンの分泌が皮脂腺に作用して起こる思春期ニキビが有名ですね。また女性の場合、生理期における女性ホルモンが引き起こす肌トラブルもあります。排卵後の黄体期に分泌量を増す黄体ホルモンは、皮脂腺に作用するとされます。これが生理期にニキビや吹き出物が出来てしまう原因のひとつといわれています。
少ないと乾燥肌や敏感肌の原因になる
毎日の洗顔によって肌を清潔に保ち、ニキビや肌トラブルを防ぐことはとても大切なことです。しかし、回数の多い洗顔や刺激の強い洗顔料の使用は、皮脂膜形成に必要な皮膚常在菌を死滅させてしまうと共に、皮脂膜そのものを洗い流してしまいます。皮脂膜は肌の保湿力を高めるバリアの役割があるため、皮脂膜が損なわれることで乾燥肌や敏感肌になってしまうリスクが高まります。
皮脂分泌に作用する男性ホルモンのアンドロゲンは、幼少期にはまだそれほど分泌されないため、乾皮症(皮脂欠乏症)と呼ばれる乾燥肌に悩まされるお子様も居るかと思います。また、アンドロゲンは加齢と共に徐々に分泌量が減少するため、それに伴って皮脂分泌も減っていきます。加齢による肌の乾燥は、加齢性乾燥肌(老人性乾燥肌)と呼ばれています。