1型糖尿病患者さんの糖質制限の成功率は?



スウェーデンでは糖尿病対策として国を挙げての糖質制限を実施しています。

国が大きく舵を切ることになった偶然のきっかけもありますが、国民性が糖質制限に適していたのでしょうね。


まず、スウェーデンの主力の産業は自動車や軍需などの機械系の産業です。



自動車で有名なサーブは戦闘機メーカーです。


さらに、国民の3分の1は公務員もしくは公的仕事についています。

そして、国土の大部分が冷帯であるあの国では、小麦ができるのは国土のごく一部の6.5%だけです。


スウェーデンやノルウェー、フィンランドの3月の衛星写真

したがって、農業人口はわずかに1.5%です。


ということは、先祖代々穀物を作ることを大切な仕事として考えてきた日本などの温帯や亜熱帯の国に比べると、穀物を食べることへの執着は少ないのかなと思います。

そのことが穀物離れ、糖質制限を容易にしているのでしょうか。


さて、そのような糖質制限先進国のスウェーデンで、1型糖尿病の患者さんに糖質制限を指導した場合にどうなったか、4年間の結果が報告されています。

48人の1型糖尿病の患者さんを追跡した結果ですね。

Diabetol Metab Syndr. 2012 May 31;4(1):23. doi: 10.1186/1758-5996-4-23.
Low carbohydrate diet in type 1 diabetes, long-term improvement and adherence: A clinical audit.
Nielsen JV, Gando C, Joensson E, Paulsson C.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22650646

Attending an educational course on dietary carbohydrate reduction and corresponding insulin reduction in type 1 diabetes gave lasting improvement. About half of the individuals adhered to the program after 4 years.

低糖質食導入とインスリン投与量減少の教育コースは継続的な改善効果を示した。4年後にも、参加者の半数はこのプログラムを継続できていた。とのことです。

最初の3か月はほぼ全員がうまくいき、糖質制限の効果も著明に見えていました。

しかし、最終的に4年後に糖質制限を続けることができていた患者さんは2人に1人ということでした。


こう結んでもいます。

The method may be useful in informed and motivated persons with type 1 diabetes.

この方法は情報を与えられて動機付けがなされた1型糖尿病患者の治療に有用である。



・・・う~ん、難しいのかな、と思いますね。

医療機関の指導の下にあって糖質制限に取り組んでも、半数は脱落してしまっているのです。

(論文では、指導のおかげで半数は継続できた、という書き方ですが。)


さらに、半分は継続できたといっても、ほんとうに4年間続いた人は4人に1人、25%です。

残りの25%はときどき糖質制限を続けられなくなって、それでも戻ってきて、なんとか継続しています。

その結果がこのTableです。


Table2


Aは全員のHbA1cの変化、Bは挫折した人の変化、Cはぶれながらもなんとかつづけた人の変化、Dはきっちり続けた(と思われる)人の変化です。

露骨に差が表れていますよね。


「1型糖尿病の患者さんが理屈を理解した上で糖質制限をやってみても4年で半数は脱落している。」

これが望ましい結果なのか、もっと改善されるべきなのか、その判断はもうしばらく待つとして、この事実は事実として虚心坦懐に受け止めるべきでしょう。


これに対して、2型糖尿病や耐糖能異常の方々ではもっとたくさんの人が長期間の糖質制限を喜んで続けているように思えます。

この違いはどこにあるのでしょうか?



最大の違いは、まず、スタートラインですね。

ゴールとなる目に見える効果の出方も違います。


2型糖尿病の患者さんや、その手前の耐糖能異常の方々の多くは、過体重で悩んでいます(悩んでないおっさんも多いけど^^;)。

お腹ポーンと出てます、かっこ悪いです。

そして、高血圧や肝機能異常など、メタボやメタボ予備軍であるケースが非常に多い。





これらの人々が糖質制限すると、内臓脂肪が速やかに減って

1.過体重は大幅減(なおまだBMI25以上だったりするけどそれでも大喜び)

2.肝機能は正常化(酒が飲める酒が飲める酒が飲めるぞ~♪)

3.血圧も正常化(これは命と財布に関わりますからね)

4.もちろん血糖値も、すみやかに改善します。

スーパー糖質制限を続けているとほぼ全員のHbA1cが正常化します。


嬉しいことがてんこ盛りなんですね、すぐに結果も見えてきて、スタートからゴールが速攻なのがうれしいです。

だから、糖質制限が長く続くのです。




さて、それに対して1型糖尿病の人たち。

この方たちは、なかなかゴールが見えてきません。

だから継続が難しいんだろうなと思います。


1型糖尿病の方々では自己抗体による攻撃などで膵臓のランゲルハンス島のβ細胞がやられます。

このために、インスリンの分泌がほぼゼロになります。

基礎分泌さえなくなります。


インスリンの基礎分泌は必須の内分泌機能ですから、それを補うためにインスリンの注射は欠かせません。

糖質制限していてもそれだけは必要な注射ですよね。

おそらく、一生投与し続けなくてはなりません(再生医療の利用など、投与方法の革命は起こるかもしれませんが)。


今現在でも、昔に比べてどんどん工夫されてきているインスリン投与方法ですが、それでも、β細胞が分泌してくれるインスリンのようには機能してくれません。

どうしても体に対して過不足が起こりやすいので、後手後手に回らざるを得ないのです。


すると、一歩遅れて、やや過剰気味のインスリンを打つことが多くなります。

低血糖を防ぐために臨機応変のブドウ糖摂取も避けられません。

実際に体が糖質を欲する感覚には良く襲われるのではないかと思います。


そして、糖質摂取で運悪く血糖が上がり過ぎたら、また一歩遅れて過剰なインスリンを投与することになります。

過剰な糖質はインスリンの力で体脂肪に変換されます。

ですから、糖質制限していても体脂肪がなかなか減ってくれなかったりするわけです。



もともと、比較的上手にコントロールできていた1型糖尿病の人の場合、標準体重近辺にあると思います。

そういう方々は糖質制限しても、2型糖尿病のおっさんが味わうような劇的な体重減少の歓喜を味わうことは少ないかと思います。



Table1

紹介したスウェーデンの論文を読んでみても、1型糖尿病の48人の方々、最初の3か月でやせてはいますが、BMIにしてわずか0.9です。

それに、25.9から25.0ですから、もともと痩せる必要のほとんどない人たちです。


ということで、糖質制限しても、インセンティブが得られにくいのでモチベーションがなかなか続きにくいです。

だから脱落しやすいのかなと思います。


でもね、1型糖尿病の人でも糖質制限をする意義は確実にあるのですよ。