1.症状
歩かない人ほど、巻き爪になりやすい
爪が内側へ異常に湾曲していく『巻き爪』。爪の両端が皮膚に食い込んだ状態になる『陥入爪』。これらの症状は同時に起こっていることが多いのです。今まで、巻き爪は、爪の形状の遺伝的要素、きつい靴や足の指に大きな負荷がかかるスポーツ、長時間の歩行が原因だと、医学的にも考えられていました。
しかし、寝たきりの高齢者で、靴を履かず歩行もしない方たちに、巻き爪が多く見られることが明らかになってきました。また、杖をついている側の足(力をかけない方の足)の親指だけが巻き爪になっている方も多いというデータも。これは、従来、考えられていた原因とは、大きく異なっている様子。
また、爪の湾曲は、足の親指だけに起こるのではありません。大工さん、事務職の方の手の親指を調べたところ、事務職の方たちのほうが、親指の爪がより強く巻いていたというデータもあるのです.
2.原因
歩行によるメカニカルフォース(物理的な力)が、爪の変形に関与
現在、形成外科のメカノバイオロジー・メカノセラピー研究室が、「巻き爪は歩行によるメカニカルフォース(物理的な力)が爪の変形に関与している」という説を検証中。爪は、放っておけば自然に内側に湾曲する性質があるため、歩行によって常に下から圧力をかけることが、平らな爪を維持する上で重要であるといいます。したがって年齢が若くても、運動をせず、あまり歩かない生活をしていたり、足の指に適度な圧力がかかっていない場合、巻き爪になることも。
親指の爪が巻きやすいのは、土台になる骨より爪のほうが幅広だから
では、なぜ足の親指ばかり巻き爪になるのでしょう? それは、指の末梢骨(指先にある、爪の土台となる骨)が、先細りの形状をしているから。親指は、他の爪より、骨に対して幅が広いので、骨で支えられていない両端が、湾曲しやすくなるのです。
巻いた爪を短く切ってしまうと、さらに皮膚に爪が食い込んで膿むことも
陥入爪とは、深爪が原因で爪が皮膚に食い込み、痛みや腫れを引き起こした状態のこと。悪化すると膿むことさえあります。巻き爪は、先端になるほど湾曲がキツくなる性質があるため、巻いている形をなくそうとして爪を短く切ると、爪が皮膚に食い込んで、陥入爪を引き起こすことがよくあります。
3.放っておくと…
爪が痛くて歩行バランスを崩し、転倒しやすい傾向に
人は加齢するほど、太ももの内側に存在する筋群である“内転筋群”を使わないで歩く傾向にあると言われています。なぜなら、脚の外側に体重をかけて歩いたほうがラクだから。このことも、足の親指にかかる力が減って巻き爪になりやすくなる要因に。
また、高齢の方が巻き爪や陥入爪になると、痛みをかばうために歩行バランスが悪くなり、転びやすくなります。寝たきりになる要因のひとつが、転倒による骨折。ですから、寝たきりを予防するためにも、爪のケアはとても大切なのです。
4.対策
靴底を見て、外側ばかり擦り減っていないかチェック!
爪に圧力をかけ、平らにするためにも、よく歩くようにしましょう。歩くときは、足の親指に力が入るように意識して。また、履いている靴の裏底をチェックしてみてください。外側ばかり擦り減っていたら、親指に力が入っていないかもしれません。
爪が痛いからといって、大きな靴を履く人もいるようですが、これは逆効果。ブカブカだと、親指に荷重をかけて歩けないので、ジャストフィットのサイズを選びましょう。
爪をしなやかに保つため、ボディクリームなどで保湿して
爪に柔軟性があると、歩行でのメカニカルフォースを受けやすくなります。ボディクリームなどを爪にも丁寧に塗り込んで。保湿効果が高まると、爪もしなやかな状態を保てるのではないか、という説もあります。
深爪はせず、形はスクエアカットに
陥入爪を防ぐためにも、深爪をしないように気をつけましょう。また、爪先と皮膚が当たらないように爪の先端が指の先端と同じくらいかやや長く伸ばして。先端はまっすぐに切り、爪の両端は丸くせず、直角になるよう切り、最後に角がひっかからないようになだらかに整えてください。
厚くなった爪の表面を削り、適度な薄さを保とう
加齢すると、足の爪が厚くなりがちです。これは、爪の伸びが遅くなるため。しかし、爪はどんどん生産されているので、厚みが出てしまうのです。爪が厚くなると歩行による下からの圧力を受けにくくなるので、巻き爪の原因になってしまいます。大学病院やクリニックのフットケア外来、またはネイルサロンで爪の表面を削り、適度に薄くしておくのもオススメ。
ワイヤーでの巻き爪矯正後も、再発防止は正しく歩くこと!
巻き爪の治療にはワイヤーやプレートで矯正したり、手術で治す方法もあります。しかし、ワイヤーでの矯正が終わっても、歩行の仕方が変わらないと、また巻き爪になりやすいので、十分に歩行できる体力のある方であれば、上に述べた対策に加え、爪に適度な圧力がかかるような歩き方を心がけて。足の親指に力がかかる歩行を心掛けると、早い人なら1ヵ月ほどで巻き爪症状が緩和した、という症例もあるのです。
この記事の監修
佐野 仁美(さの ひとみ)
日本医科大学 形成外科 講師
形成外科専門医。臓器・組織・生命活動が、物理的環境により制御されている事に着目したメカノバイオロジー研究に従事。創傷治癒や爪変形性疾患を専門としている。