単なる痔じゃないことも!?下血した時に疑うべき病気を徹底解説
トイレで排便をした時に、便に血が混じっているように見えたり、ペーパーで拭くと血がついたりといった経験はありませんか?これは医学的には下血と呼ばれる症状です。
そんな時、おそらく切れ痔やいぼ痔などの痔が原因だろうと考える人が多いと思います。確かにそれもよくあるケースですが、決めつけてしまうのは危険かもしれません。
下血は痔だけではなく、消化器官のどこかで起こっている様々な病気が原因になっていることもあるのです。中には、下血以外に目立つ症状がでないような病気もあります。
下血は決して軽視できない、重要な病気のサインの1つになりうるのです。
そんな下血の仕組みや下血した時に疑われる病気について、ここでは徹底的に解説していきたいと思います。
赤い血じゃなくても下血!?血便とタール便は何が違う?
下血という言葉から、赤い血が便と一緒に出てくることを想像するかと思いますが、実際には、そうとは限りません。
下血、つまり便に血が含まれてしまう主な原因は、消化器官のどこかから何らかの原因で出血していることです。
出血が消化器官の中のどの部位で起こっているかによって、下血の状態は2種類に分けることができます。
- タール便(黒色便)…小腸の上部より上の上部消化管からの出血や、鼻血など血液を大量に飲み込んだときに出る黒みのある便。少なくとも60ml以上の出血が必要
- 血便…小腸の下部や大腸、肛門など下部消化管での出血によって生じる赤っぽい便。大腸の機能が低下している場合には黒っぽくなることもある
下血は主にこの2種類に分けることができます。つまり、下血には赤い便だけでなく、かなりの割合で黒っぽいものも含まれているのです。
このように同じ血液の混じった便でも出血部位などによって色の違いが生じるのは、上部での出血だと排出までの過程である程度、消化・分解がされ変色するからです。出血部位が肛門に近いほど、赤に近い下血になる傾向があります。
また、タール便や血便とは少しタイプの異なる下血として、便に粘液と血液が混ざったようになる粘血便というものもあります。
なお、上部消化管での出血の場合、下血だけではなく吐血という形で出血が発覚するケースも少なからずあるので、必ずしも便だけに異常が現れるとは限りません。
がんや腸炎の可能性も…下血の原因となる主な病気
下血は外側からでは見えない消化管での出血をいちはやく知ることができる重要な症状です。
下血のほかに腹痛や下痢などの症状が出ることもあれば、まったくと言っていいほど自覚症状が感じられない病気もありますが、少なくとも下血している時点で消化器に出血するほどの異常が生じていることは明白になります。
下血の原因、つまり消化管の出血の主な原因となる病気は、大きく4つのタイプに分類することができます。
- 腫瘍性
- 炎症性
- 血管性
- その他
それぞれの分類について、よくある病気や特に注意が必要な病気をピックアップしてご紹介しましょう。
がんが隠れていることも!?腫瘍性の下血とは
まず最初にご紹介するのは腫瘍性の下血を生じる2つの病気です。
- がん
- 大腸ポリープ
このタイプに含まれる病気の中でも最も重要性が高いのは、消化器系のがんです。
がんというのは、身体の一部に腫瘍ができて、それが広がっていく病気であることはほとんどの人がご存知ですよね。
がんの腫瘍が消化器系にできると、出血して下血としてあらわれる場合があります。それと同時に、おなかのハリや便が細くなったり出にくくなるなどの異常を感じることもあります。
ただしいずれの症状も必ず出るというわけではなく、特に初期は無症状のことが多いのです。下血という明らかな症状が出た段階では、がんはかなり進行している可能性が高いとされています。
もう1つ、腫瘍性の病気としてよくあるのが大腸にできるポリープです。
大腸ポリープは簡単に言えば、大腸にできたイボやできもののようなものです。ほぼ無症状ですが、まれに出血を起こし下血につながることがあります。
大腸ポリープの80%はがんではない良性のものです。高齢になると、ほとんどの人にポリープがみられるとも言われています。
ただし、早期のがんが原因で大腸ポリープができている場合もあるので、注意が必要です。また、良性のポリープでもがんに変異する性質を持っていることもあります。
消化器官の炎症も下血の原因に…知っておきたい3つの病気
次にご紹介するのは、炎症からの出血が原因で下血を起こす可能性がある3つの病気です。
- 腸炎(感染性・薬剤性など)
- 潰瘍性大腸炎
- クローン病
何らかの原因で腸に炎症が起きると、腹痛や下痢などの症状とともに下血を起こすことがあります。腸炎の原因としてよくあるのはO-157などの細菌によるものですが、まれに薬の副作用として症状が出ることもあります。原因となる細菌や薬の影響がなくなれば、基本的には治る病気です。
一方、潰瘍性大腸炎とクローン病は、大腸の粘膜に炎症や潰瘍ができて下血を伴う下痢や腹痛などの症状がでるという、共通点の多い病気です。いずれも原因が明確にはわかっておらず、国からの難病指定を受けている病気で、完治は難しいのが現状です。
やっぱり痔!?血管性の下血でよくある病気
血管が切れて出血する血管性の病気に当てはまるのが以下の2つです。
- 痔
- 虚血性大腸炎
下血の原因として最もよく見られるのは、やはり切れ痔やいぼ痔などの痔です。
特に血の色が鮮血に近い場合や、便に血液が混ざるのではなく付着している、あるいは肛門からぽたぽたと垂れるように出血がみられるという場合は、かなりの確率で痔が原因となっています。
切れ痔やいぼ痔の中でも肛門の外側にできているもの(血栓性外痔核)では強い痛みが出ることがありますが、いぼ痔が肛門の中にできているもの(内痔核)の場合は痛みを伴わないこともあります。
出血しているのに痛みがないと、痔じゃない別の病気かも?と不安になってしまうかもしれませんが、必ずしもそうではないことを覚えておいてください。
もう1つ、血管性の下血の原因となりうるのが虚血性大腸炎です。
虚血性大腸炎とは、大腸の血管が動脈硬化などでふさがってしまい。血液がいきわたらなくなることで炎症や潰瘍を起こす病気です。下血とともに下痢や腹痛などの症状が出ます。心臓や血管の疾患がある高齢者に多い病気ですが、若いうちでも発症することがあります。
大腸の外側に袋ができる!?大腸憩室炎とは
下血の原因が腫瘍性・炎症性・血管性のいずれにも当てはまらないこともあります。その中でも知っておいてほしいのが、大腸憩室炎という病気です。
大腸憩室というのは、大腸の壁の一部が外側に飛び出して袋状になっているもので、それ自体は悪いものではなく、何か症状を感じるということも基本的にありません。
しかし、憩室の中に便が溜まって詰まるなどして炎症を起こしてしまうと、そこから出血して下血につながります。腹痛や発熱が同時にあらわれることもあります。
大腸憩室という言葉自体はじめて聞いたという人も多いかもしれませんが、先天性のものだけでなく便秘などが原因で後天的にできてしまうケースもあります。つまり大腸憩室炎は誰にでも起こりうる病気なのです。
よくある痔だけでなく、がんのような命にかかわる病気や、クローン病・潰瘍性大腸炎などの難病が原因の可能性もあるのです。
下血に伴う症状としては下痢や腹痛が多いですが、下血の他に症状がみられないケースもあります。
意外と怖くないかも!?下血の原因を探る検査とは
下血していることに気が付いたとしても、便の状態からどんな病気の可能性があるかを自己判断するのは非常に難しいことです。消化器系の病気では、下血以外の症状も腹痛や下痢など似ているものが少なくありません。
また、どうせ痔だろう…と決めつけてしまうのも非常に危険です。がんや大腸炎などの重い病気が原因だった場合、放置しておくと取り返しのつかないことになるかもしれません。
下血した場合には、できるだけ早めに消化器内科などの専門的な病院を受診することをおすすめします。
とは言え、下血の検査というと、痛かったり恥ずかしい思いをすることがあるのではないかと不安になってしまいますよね。下血の原因を探るためには、いったいどのような検査が行われるのでしょうか?
直腸指診から大腸内視鏡へ…下血の主な検査と内視鏡の流れ
下血で病院にかかった場合でも、まずは一般的な問診が行われます。特に便の状態に関しては詳しく聞かれることになるので、しっかり説明できるようにしておきましょう。
そして問診の内容を踏まえて実際に身体を診ていくことになります。この際によく行われるのが直腸指診と呼ばれる検査です。
直腸指診とは、文字通り医師が直接肛門から指を入れて、直腸の状態やそこに付着している便の状態を確認するもので、直腸鏡と呼ばれる直腸を詳しく見るための器具を使うこともあります。
ここで直腸内に明らかな出血や血液の付着が確認できなければ、肛門周辺からの出血、つまり切れ痔の可能性が高いと判断することができます。
そして直腸指診で原因が明らかにわからない場合、大腸内視鏡を行うことになります。
大腸内視鏡検査は、大腸内の異常を調べる最も有効な検査方法で、レントゲンなど他の方法では見つからない病変も発見することができます。
大腸内視鏡は、基本的に以下のような流れで進められていきます。
②検査台に横になり、鎮静剤や腸の緊張を和らげる注射をうつ
③肛門から内視鏡を挿入し、検査を行う
④撮影された画像を見ながら医師の説明を受ける
検査の所要時間は病院や状況にもよりますが、だいたい数十分程度とされています。
知って得する!大腸内視鏡の痛みや苦しみを和らげるコツ
大腸内視鏡はどちらかというと苦痛を伴う検査としてよく知られています。実際、ぐねぐねとカーブしている腸の中に直線的な機械を入れていくわけですから、まったく痛みや苦しみがないとは残念ながら言えません。
また、検査前に大量の下剤を飲み、強制的に便を排出させるのもやはり、楽なことではないでしょう。
残念ながら下剤の服用は検査上必要なものなので、どうしようもないのが現状ですが、大腸内視鏡自体の苦痛については、病院選びや検査の受け方のコツを知っておくことで、少しでも和らげることは可能になります。
- 大腸内視鏡の経験が豊富な医師のいる消化器科専門医を選ぶ
- 身体に力を入れすぎないよう、リラックスして検査を受ける
まず大腸内視鏡検査を楽にするために、最も重要なのは病院選びです。
その点、大腸内視鏡の経験を多く積んだベテランの医師ほど高い技術を持っていると考えられます。したがって、経験豊富な消化器系の専門医がいるというのが、大腸内視鏡検査を受ける病院選びの大前提となります。
また、病院によって大腸内視鏡の検査に使う器具や方法、鎮痛剤や鎮静剤などの薬の使用の有無は少しずつ異なります。病院によっては、鎮静剤によってほとんど眠ったような状態で大腸内視鏡を行うことができるところもあるのです。
病院選びはくれぐれも慎重に行い、できるだけ希望に近い形で大腸内視鏡検査を受けられるようにしましょう。
また、大腸内視鏡検査を実際に受ける際には、できるだけ身体の力を抜いた状態で受けた方が苦痛が少なくて済みます。
身体が緊張状態になると体内で大腸もいっしょに収縮し、壁が狭く、固くなってしまいます。これでは、ただでさえ通りにくい内視鏡がますますスムーズに入らなくなってしまうでしょう。
慣れない体勢や状況に緊張するのは仕方のないことですが、少しでも楽に検査を受けるために、リラックスすることを心がけましょう。
病院で行われる主な検査としては、直腸指診や大腸内視鏡があります。
大腸内視鏡は痛く苦しい検査と思われがちですが、経験豊富な技術の高い専門医を選び、身体の力を抜いてリラックスして受けることで、ある程度は苦痛を緩和することが可能です。
女性のがん死亡率トップ!大腸がんを早期発見する便潜血検査
下血の検査というと、上でご紹介したような直腸指診や大腸内視鏡が主になります。いずれの検査も下半身を避けては通れないものですから、特に女性の方の場合、どうしても抵抗があるという人も多いでしょう。
しかし、もし下血の原因が大腸がんのような放っておいたら死に至る病だとしたら、恥ずかしい、痛いのが嫌だ…などと言う理由で避けるわけにはいきませんよね。
実は、女性のがん死亡率のトップは乳がんや子宮がんなどの女性特有のがんではなく、大腸がんです。
その要因の1つに、女性は排便に関して医師に相談することや、検査を受けることを恥ずかしがって避ける傾向が強く、放置している間にがんが進行してしまうということが挙げられます。
大腸がんは本来、けっして死亡率の高いがんではありません。早期発見・早期治療ができれば、完治も見込めるのです。
そこで女性の方に特におすすめしたいのが、定期的に便潜血検査を受けることです。
もちろんそこで異常が見つかれば、大腸内視鏡検査などの受診が必要になりますが、便潜血検査自体は恥ずかしさや痛みを伴うものではないので、女性の方でも抵抗なく受けやすいのではないでしょうか?
大腸がんを早期発見する方法としては便潜血検査があり、女性でも比較的抵抗なく受けやすいものなので、定期的に行うことをおすすめします。
命にかかわることもある!下血に早めに対処しよう
下血の原因には軽い痔から命に関わりうる大腸がんまで様々なものがありますが、いずれにしても消化器官という目に見えない部分で起こっている異常をいちはやく知るための重要な手がかりになることは間違いありません。
女性の方は特に便に関する話題に抵抗があるという人も多いですが、便が自分自身の健康をはかる大切なバロメーターであることは事実なのです。
下血の中でも赤いものは比較的気が付きやすいですが、黒っぽくなると人によっては血が混じっていることに気が付かないこともあるかもしれません。
下血に確実に気づくためには、日ごろから自分の便をチェックする癖をつけておくことが大切です。ぜひここでご紹介した情報を参考にして、便の異常を見逃さないようにしてください。
出血が小腸より上の上部消化器官からなら黒に近い色のタール便(黒色便)となり、大腸や肛門など下部消化器官で出血していると、ほとんどの場合、赤っぽい血便になります。
上部消化器官からの出血の場合、下血だけでなく吐血が起こることもあります。