数年前の話。
オレはバイク乗りで、当時大学院の1年か2年だったと思う。
オレは、写真も趣味で、バイクに乗っては近隣ではあるが
綺麗な景色を眺めたり、写真に撮ったり、
星を眺めたりするのが好きだった。ってか、
今でも好きなわけだが。

数年前、オレはバイク仲間(Aとする)と、
K県某市の峠の側道?状になっているところに、
人が全然いなくて、天気によっては星と月、夜景、富士山が見えるというすばらしいロケーションがあって、そこに行こうという話になった。

その場所に行くのは初めてではなく、
何度もいったことがある場所。
うまく説明できないのだが、
県道が峠になっていて、そこから支道に分かれ、
山の中ではあっても少し開けた場所になっているんだ。

ここが登山道の入り口?になっているらしくて、
ここまでなら人は普通に上がってくるし、
天体ショーなんかがあるときはここに車が
十数台程度なら集まるような場所だ。
ただ、谷上になっていて、左右にさらに山があり、
空全体が開けているわけではない。

それで、俺たちの目的地は、
その開けた場所(便宜上駐車場としよう)ではなく、
その駐車場の左右の山のうち、片方は登山道、
もう片方が目的地だ。
そちらに、階段上になっていて、
さらに山に登ることができる。ここからはもちろん徒歩だ。

そんで、5分ぐらいちょっとした傾斜の場所
(階段も整備されている)を登ると、
その先に木製のベンチとかがあって休めるようになっていて、
そこをもう少し山の稜線に沿って進むと、
そこが目的の場所。

空が全体的に開けており、地面が板状に整備されていて、
しかも山の斜面側は全部木が伐採されている関係で、
眼前に夜景と富士山が広がるんだ。
めちゃめちゃ贅沢な景色だと思う。

時間は深夜2時ごろだったと思う。
季節は夏で、駐車場の段階で天の川が見えるぐらい、
晴れ渡った星を眺めるには絶好の日だった。

そんで、頂上について、Aは写真ではなく双眼鏡をもってきていたので街や星を見ている傍ら、オレは三脚を用いて星や夜景をカメラに収めまくっていた。
何度見ても感動するようなきれいな場所でさ、
小一時間はしゃぎまくってたんだ。

あとから聞くと、パラグライダーの離陸点になっているらしく、
斜面に向けてまっさかさまに走り下りるように板張りの台が形成されているが、頂上付近も広くて水平なので、危険な場所ではない。
しかも、そこによる人がいることを見たことが無い。

そこに、問題の日以外にも何度も来て、
星の写真を撮ったり、カセットコンロを持ち込んで
紅茶やコーヒーを飲んだりするのが好きだったわけだ。

あ、当然山の中だから、駐車場も目的地も
一切該当はなく、自分たちで明かりをもっていかないと真っ暗な場所だ。

問題の日もAと待ち合わせして、
バイクで現地に向かったんだ。

駐車場につくと、
エスティマと商用のバンっぽいのが止まってて、
エスティマについてはエンジンがかかっている状態だった。

そのエスティマは、
目的地に上っていく小道のすぐ脇に泊まってた。

まぁ、場所が場所だけに、イチャイチャしたいカップルがいてもおかしくないので、俺たちはお邪魔にならないようそそくさとその脇を抜けて、星が見える場所までのぼっていったわけだ。

深夜3時を回っていたと思う。
「そろそろ帰るか?」って話になって、
ぼちぼち駐車場に下って行ったんだ。

重複になるが、明かりは一切ないので、自分たちが持ってるLEDライトが唯一の光源。足元を照らしながら、夜露でぬれた草で滑らないよう慎重に下っていく。

間もなく駐車場に着く、となった時のことだ。

まだエスティマがいる。
今度はエンジンが止まっていた。
エスティマは、山から下りてきた俺たちに
背面を向ける形で止まっていた。

1時間以上ここで、まぁ随分と盛んなんだろうなんて下世話なことを思っていた。
Aが先行して下りていたわけなんだが、Aもエスティマに興味をもったのか、盛んにライトを照らしていたが、そのまま抜けてバイクの方に以降としていた。

俺も不審に思いつつも、エスティマを照らしながら背後に近づいた時、見てしまった…

真っ暗な山の中、自分のライトが照らし出した光景はあまりにも不気味で、血の気が引くとはこのことか、と生まれて初めて思った。

ただ、思考停止になるわけではなく、むしろ恐怖に興奮?しながらも、俺の脳はフル回転で自体の把握と対処を考えていたようだった。

そして、一瞬で異常に気付いてオレはAに叫んだ。
「A、まずい、これ自殺だ!」

実は、Aもライトで照らしているときにすでに気づいていたようだった。
そのうえで、そそくさと逃げようとバイクに向かっていたらしい。
俺が気づかないことを祈りながら。
気づいたら、絶対に放置するような性格ではないことを知っていたからだ。

しかし、やはり俺も気づいてしまった。
そして、俺の叫ぶ声を聞いて振り返ったAの顔も、
心なしか真っ青に見えた。ってか、実際真っ青だったとは思う。
そして、Aは行った。
「さっさと逃げないか…?」

決してそんな状況になって、逃げたくなるのは責められない。
というより、もしかしたら俺らと同じ体験をした場合、
逃げる人の方が多数派じゃないか?

しかし、俺はそれを是とはしなかった。
俺「何言ってるんだ、消防を呼ばないと。」
 「中の人助からないかもしれないぞ!」

A「別に赤の他人なのに、首突っ込む必要もなくね?」
 「ってか、絶対面倒なことになるから逃げようよ。」
 「今なら遅くないって。何も見なかった。それだけじゃないか。」