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 「オーガニックストレージで、企業が直面しているバックアップやデータ移行の問題を解決したい」。富士通研究所ITコア研究所の武 理一郎主管研究員は、このように意気込む。

 富士通研究所が現在開発しているオーガニックストレージは、障害発生時にデータのバックアップを自動的に行う“自律”型の機器。大量のデータを扱う場合でも、バックアップや移行をスムーズできるストレージの実現を目指している。

 情報システムが扱うデータ量は爆発的に増加しており、「すでにペタ(1024テラ)バイト級のデータを抱えている企業もある」(武 主管研究員)。ここで問題になるのは、旧システムから新システムへのデータ移行や、データのバックアップにかかる時間だ。

 現在のRAID型ストレージ・システムでは、100Mバイトのデータを転送するのに約1秒かかる。単純計算すると、1テラバイトのデータを書き込もうとすると3時間近く、100テラバイト級のデータになると、少なくとも10日以上かかることになる。「データのバックアップや移行に時間がかかりすぎて困るという企業が増えている。データベースのバックアップを半ば諦めている、という企業さえある」(武 主管研究員)。

 オーガニックストレージはこうした問題を解決することを狙っている。機器は、30~40個程度のモジュールで構成する(写真)。写真下段がモジュールで、その上にはモジュール間を接続するイーサネットのスイッチが格納されている。

 各モジュールは、サーバー機と同等の機器構成をとる。現時点でのモジュールのスペックは、Pentiumプロセサと20GBのハードディスク、10ギガビット・イーサネットの通信ポートである。モジュールのOSにはLinuxを使っている。イーサネットは、ストレージを利用するクライアント・パソコンやサーバー機との通信、あるいはモジュール間の通信に使用する。「より大容量のハードディスクも搭載できる」(武 主管研究員)。

 オーガニックストレージがユニークなのは、このモジュール間でバックアップ・データを持ち合う状態を常に自動的に保つことだ。例えば次のような形になる。オーガニックストレージがデータ全体をA、B、Cの三つに分割する(実際にはもっと細かい)。それぞれのモジュールが、A、B、Cの三つのどれかを組み合わせて持つ。あるモジュールは「AとB」、別のあるモジュールは「AとC」といった具合だ。どのモジュールにどのデータを割り振るかは、オーガニックストレージが自動的に決定する。

 データのバックアップもオーガニックストレージが自動で行う。例えばAとBのデータを持つモジュールが壊れた場合、オーガニックストレージは、必ずほかのモジュールがAとBを持っている状態を保つように、データのコピーを開始する。この場合では、AのデータやBのデータを持つ別のモジュールが、さらにほかのモジュールにAとBのデータを自動的にコピーしていく。このように、それぞれのモジュールが“セル(細胞)”のように自律的に動作し、互いに通信しながらデータを融通し合うわけである。オーガニック(有機的)という名称はこの仕組みに由来している。

 ユーザーは、オーガニックストレージに対してさまざまな設定が可能だ。例えば「モジュールの平均使用領域を平滑化する」と設定した場合、新たにモジュールを追加すると、ほかのモジュールは自らのデータを一部切り出して、新しいモジュールに移し変える(画面)。

 この画面で、箱の一つひとつはモジュールを表している。右側のウインドウは、データの利用率を示す。白い部分がハードディスクの空白領域を示す。壊れたモジュールは灰色に「X」印で表示される。画面は、壊れた5台のうち4台を新しいモジュールに入れ替え、データを移している最中のもの。オーガニックストレージは、相対的に利用率が低いモジュールを探し出し、他のモジュールからデータを自動的に移動する。中央のウインドウに赤十字マークがいくつか表示されているのは、このモジュールが他のモジュールにデータを移していることを示している。

 オーガニックストレージが実用化すると、「運用管理の手間が激減する」と武 主管研究員はみる。現在は運用担当者が監視し、障害時に逐一モジュールを交換するという形が一般的だ。しかし将来は、「月1回の点検時に、壊れたモジュールを交換する、というようなスタイルになるだろう」(同)。

 また、拠点間でのデータ移行も自動的にオーガニックストレージが行うようになる。オーガニックストレージ同士が通信し、互いにデータを持ち合う状態に自動調節する。武 主管研究員は、「将来はハードディスクだけでなく、読み書き可能なDVDドライブや、メモリーを使ったストレージ機器も混在可能になる」と話す。

 今のところオーガニックストレージを利用できるクライアント側のOSは、Linuxに限られる。これについても現在、Windows用のドライバを開発中だ。すでにオーガニックストレージは富士通社内でクライアント・パソコン用のデータ・バックアップ装置として利用している。製品化の時期についてはまだ未定だが、「そう遠くないうちに実現できる段階には来ている」と武 主管研究員は話す。

高下 義弘=日経コンピュータ

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