言わずと知れた「至高の軽オフローダー」ジムニー

クルマに詳しくない人でも、スズキ・ジムニーの名を知っている人は多いのではないでしょうか。経営が傾き自動車事業から撤退したホープ自動車が再起をかけた「ホープスターON型4WD」をその始祖とし、鈴木修常務(現スズキ会長)によって「ジムニー」として生まれ変わりました。

40年近い歴史の中でフルモデルチェンジはわずかに2回。しかも、基本構造はほとんど変わらないまま現在でも生産が続けられ、国や組織、人を問わず世界中で活躍している驚異のオフローダーとして、その名は不動のものとなっています。

そのジムニーに挑むように、かつては三菱のパジェロミニというライバルも存在し、ダイハツもテリオスキッドでジムニーにはない5ドアという特徴を生かして存在感を示したこともありました。しかし、いずれもジムニーより後に生まれ、そして先に消えていきました。

それら軽自動車のライバルがあった時でさえ、ジムニー最大のライバルはレンジローバーやランドクルーザーなどはるかに高級なクロカン4WDであったことを考えれば、ジムニーとは軽自動車としての枠を超え、世代を超えて常に頂点に立ち続ける「至高の軽オフローダー」だと言えるでしょう。

その優れた走破性を支える頑丈さと軽量ボディ

ジムニーが優れたオフローダーである理由は、まさにその「小ささ」にあります。コンパクトサイズなボディによる軽量性を活かしているからこそ、たとえ小排気量のエンジンでも急斜面を駆け上がり、悪路を平然と走りきることができるのです。

しかし、ジムニーが偉大なのはそれだけが理由ではありません。ジムニーよりもっと軽量でパワフルな軽自動車やコンパクトカーはいくらでも存在しますが、ジムニーより堅牢なクルマは見つかりません。強固なラダーフレームと前後リジッドアクスルを備え、打たれ強いどころか、打たれてなお走り続けることができるのです。

皆さんは崖から転げ落ちたジムニーを見たことがあるでしょうか? 普通の車であればそのまま廃車になるところ、ジムニーはなお走り続けることができたそうです。他にも頑丈なオフローダーはありますが、それを可能な限りコンパクトで安価に実現してしまったところがジムニーの強みなのです。

カタログや店頭で見るジムニーはあくまで仮の姿

ジムニーには「走るべき道」がありません。

もちろん普通の車と同じように道路を走ることはできますが、ジムニーが真にその威力を発揮すべき場所は「そこに道がある」のではなく、「ジムニーが走るところ、それこそが道」なのです。

しかし、市販されたままのノーマルのジムニーでは、さすがにそこまでの走破性はありません。

ディーラーのショールームや店頭に飾られ、あるいはカタログに掲載されているジムニーは、マニアでない一般の人が「普通に公道を走れて、ちょっとした悪路も走れる」程度の、いわば「仮の姿」なのです。

その姿のままでは、例えば大きな岩を乗り越えようとしても、タイヤより先にボディが引っかかってしまいます。あるいは、深い溝にタイヤがはまり、ボディの底にあるフレームの腹が引っ掛かり、脱出もままならぬ姿を晒してしまうでしょう。

しかし、悪路走破性を追求した姿では、一般の人がジムニーに乗る際、車高が高すぎて乗り降りが不便であるうえ、重心が高く転倒しやすくなってしまいます。

かつてのジムニーはあまり一般の人が乗るクルマではなかったので、武骨なボディに吹きさらしの姿に幌を被せた姿も当たり前でした。しかし現在では、一般舗装路での快適な走行も考慮されています。そう意味において、新品のジムニーは仮の姿なのです。

険しく、さらにもっと険しく…それがジムニーの走る道

ただ、その真価を発揮しようとする人々が鎖を解き放つ時、ジムニーはその姿を大きく変えます。

ノーマルの外径690mmのタイヤより、はるかに大型な外径760mmのタイヤ、軽自動車としての枠を超えるならば外径780mm以上の大型マッドタイヤを履き、あらゆる悪路を制覇する足がかりとします。

もちろん、そのような大型タイヤではフェンダーやリーフスプリングなどに干渉しますので、ストロークもたっぷり取った長いサスペンションに換装してリフトアップ(最低地上高を上げる)。他にもインセットの違うホイールを履いてタイヤを外に出したり、ボディの余計な部分をカットしたり、補強を加えます。

バンパーも岩などに引っかからないよう小型のものに換装するか撤去、そしてロールバーを装着すれば、立派な「ビッグフット」のできあがりです。

低速での粘り強さを持たせるためのギアの換装やLSDの装着(あるいはデフの直結)など、目に見えない部分のチューニングも、言うまでもありません。

そうして真の姿を現したジムニーは、もはや新品の時のように何かに引っかかることもなく、大型で強力なオフローダーでさえもためらうような悪路を悠々と乗り越えて行くのです。

それは「ジムニーをリフトアップする」のではなく、むしろ「ジムニーの真の姿を取り戻す作業」と言えるでしょう。

街でコンビニなどに買い物に出かけるためのクルマではなく、小さな体にいかなる悪路も乗り越える野望を秘めたタフガイ。それが本当のジムニーなのです。

画像提供:「カーセンサーnet」