オーガニックを選ぶ理由、オーガニックを強調しない理由 Swiss Delices
オーガニックを選ぶ理由
サンフランシスコ郊外、都心からは少し離れた地域のCastro Valleyにあるベーカリー&ペストリー Swiss Delices。オーガニックの小麦粉を中心に、季節の野菜や果物など厳選された素材でパンやケーキ、焼き菓子をつくっている。このお店のオーナー、Cheristineはスイスの農家に生まれ育った。大自然と良い食べ物、良い環境に囲まれ、オーガニックライフが当たり前の生活。家の農場で育った作物を使い、自家製の新鮮なミルクやバター、卵などを使って手作りケーキを作ったり、家族に料理をふるまうことが大好きな女の子だったという。そんな幼少時代の体験や育った環境、味覚の記憶が、オーガニックを含む「良い素材」を選択するという考え方や行動の背景となっている。
Cheristineに訊ねてみた。「何故、オーガニックを選ぶのか?」と。
返ってきた答えは「お菓子やパンは特に、出来上がりの味が主となる素材である小麦粉のクオリティに左右されがち。農薬を使用した小麦粉は最悪。お菓子の味を変えてしまうから」と。つまり、オーガニックが「美味しいから」選ぶ。それが一番の理由なのだ。
オーガニックを選ぶことはごく自然なことで、美味しいものを提供したいからという純粋な気持ちから来る選択にハッとさせられる。仮に日本で同じ質問をしたら、まず先に「安心安全」「顔が見える」「持続可能」「高付加価値で他店との差別化」などの言葉が出てきそうな気がするのは、私だけだろうか。
オーガニックを強調しない理由
オーガニック小麦粉をはじめ野菜や果物、そしてよくよく話を聞いてみると、コーヒーもオーガニックでフェアトレードなものを選択しているのに、何故か商品のプライスカードやPOP、店内を見渡しても「ORGANIC」の文字が見つからない。「もったいない、もっとアピールすればいいのに!何故オーガニックをもっと前面に出さないのか?」聞いてみた。
私が予想していた答えは、
1.オーガニックは高いという印象を持つ人、そもそも食べ物にオーガニックを求めていない人も当然たくさんいる。集客のため、あえて敷居の高さを感じさせる「オーガニック」を打ち出さないようにしている。
2.100%オーガニックではないのだから、胸を張ってオーガニックカフェ(オーガニックベーカリー)とは言えないから。100%を求める方に誤解を与えてしまうから。
これは、日本の自然派のカフェやレストランの方からよく聞く答えだ。
ところが、返ってきた答えは、「食べてもらえば、違いはわかる」・・・と、そもそもオーガニックを強調することも、特に必要だとは思っていない様子。「人々はオーガニックについてよくわかっている。だから、オーガニックの材料を使っているのだと、はじめから伝えるようなことをしなくても、食べて、味わってもらえれば、これらがオーガニック(ファインフード)であることは感覚的に伝わると思っている」と。Swiss Delicesは、都心のオーガニックショップのものに比べれば比較的リーズナブルな価格帯だが、一般のパンやお菓子よりはやはり少し高め。それについても、試食してもらえれば皆「普通のものとは違う」「美味しい」というコトバが返ってきて、価格にも納得してもらえているという。
オーガニックの原料を使えば、製造原価も高くなる。日本でも海外でも、一般製品に比べオーガニック製品が高めなのは共通している。特に日本では、高く売るため、付加価値をつけるためにオーガニックを取り入れるということも。そして、その製品が高い理由を理解してもらうために「オーガニック」を連呼して、アピールすることがある。それが余計に消費者に「オーガニックは高い」という印象をつけてしまっているとも言える。「高い理由はオーガニックだから」ではなく「美味しい理由はオーガニックだから」。味や品質の高さを追求していたら、美味しさで消費者から評価され、それが「オーガニック」だったというのが理想的だ。
とはいえ、まだまだ成熟していない日本のオーガニック市場では、残念ながら言葉や文字できちんと示さなければ、消費者にうまく伝わらないのが現実。オーガニックの魅力や背景、美味しさなどを、業界全体で啓蒙していくところからはじめなければ。
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佐藤アキ (Aki Sato)プロフィール
大学時代は社会福祉を専攻。老人福祉を学びボランティア等の経験から「健康」「食」「環境」に強い関心を持つようになる。自身が幼少期から現在に至るまでアレルギー体質であることも、自然・健康産業分野に従事するきっかけのひとつとなった。首都圏を中心にオーガニック専門店を展開する企業で経験と実績を積んだ後、健康関連商品を扱う日本最大級の通販サイトへと活躍の場を移す。リアル店舗の現場からE-コマースの分野へと、当時オーガニック業界とは真逆の文化とも言えるであろう、インターネットという未知の世界に飛び込み、それぞれに黎明期とも言われる時代に経験を積んだユニークな経歴を持つ。それぞれの分野で蓄積された知識と経験を活かし、さらに消費者という情報の受け手側に立った視点も加えたソリューションを提供することを決意。業界先駆けとなるオーガニック専門の情報サイト『TOKYO ORGANIC LIFE (東京オーガニックライフ)』、『ORGANIC PRESS (オーガニックプレス)』を立ち上げた。