さっそくですが、問題です。
このAとBの料理、どちらがダイエットに効果があるでしょうか?

は、ミートボールが乗ったスパゲッティと濃厚なチーズフライ。おまけに、エクレアとオレンジジュース付き。
は、Aの食事を全てミキサーにかけて、フリーズドライにしたものです。当然おいしくありません

 

 

2つの料理は同じものなので、カロリーも同じ。ダイエットに差はないはずです。 

ところが、ダイエットに向いているのは、断然A

食べた時のエネルギー消費量の違いを見てみると…。

出典: Role of palatability on meal-induced thermogenesis in human subjects 

JACQUES LeBLANC AND LAURENT BRONDELより引用

 

Aの方は、食後15分で一気に消費量が高くなっています。Bは食べてもエネルギー消費は増えません。

その差は、およそ5.5kcal
一日1食ではわずかに思えるかもしれませんが、1年にすれば39kmもジョギングしたのと同じ(※52㎏の女性の場合)。大きな差になります。 

2つの違いは、おいしく食べたか、そうでないか。
そう、おいしく食べることはダイエットにつながるんです!

 

食べた栄養を取り込もうと、体がエンジン全開になったのです。
味覚といえば舌のみと思うかもしれませんが、実は、内臓にも“舌”があるのです。

慶應義塾大学の伊藤裕教授によると、食べたものが通過していく内蔵…十二指腸小腸、そして大腸には、舌とまったく同じ味覚センサーがあるそうです。

食べ物がそこを通るときに、味覚センサーをONにしていきます。そして、肝臓すい臓もやっぱり同じようなセンサーを持っています。


おいしいものを食べて内蔵の味覚センサーが喜べば喜ぶほど、代謝が活発になるのです。

 


 


ところが、ここで要注意!
「おいしさ」という味の中には、体にとってキケンな味もあります。

 味の好みと体重の関係を明らかにしたのが、長年、肥満やメタボリック症候群と向き合ってきた、国立国際医療研究センターの松下由実さん。

およそ3万人の中から、20歳のときと比べ、5kg以上太った人たちの味の好みについて分析しました。

松下さんが調べた味の好みは4つ

  • こってり味
  • 甘い味
  • しょっぱい味
  • 酸っぱい味

 

その結果、この4つのうち、最も太りやすい味第1位だったのは、脂の「こってり味」で、2位「甘い味」でした。

特に、「こってり味が好き」と答えた人は、「こってり味が嫌い」と答えた人に比べ、体重が5kg以上増加するリスクがおよそ1.5倍近くも高かったのです。「しょっぱい味」「すっぱい味」は、好きであっても、太りやすさに影響はありませんでした。
「こってり味」「甘い味」はなぜ危険なのか…。

 

その理由を、脳の研究から探ってきたのが、畿央大学の山本隆教授です。

おいしいものを食べると、脳の報酬系(ほうしゅうけい)と呼ばれるシステムが活性化します。その中心となっているのが腹側被蓋野(ふくそくひがいや)です。ドーパミンと呼ばれる快楽物質を作ります。

ドーパミンはやがて他の場所へ運ばれ、「もっと食べたい」という欲求が起こります。

ただし、同じようにおいしいと感じても、その味の違いによって、ドーパミンの分泌量が異なると言います。

山本さんによると、その報酬系をいちばん活動させるのは「糖分」、そして「脂肪」。
これらは報酬系を活性化させ、おいしくてどんどん食べてしまうのです。

 

ドーパミンが出続けるような危険な味を脳に味わわせ続けると、どのようなことが起きるのか。

脳に引き起こされる変化と、肥満の関係を研究してきたのが、琉球大学の益崎裕章教授です。

沖縄はかつて日本一の長寿県として知られていましたが、最近は、全国一の肥満県です。

戦後アメリカからもたらされた、動物性脂肪タップリの食文化に、原因のひとつがあると益崎さんは考えました。そこで、益崎さんは6年前に、ある実験を行いました。

片方のグループのマウスには普通の餌を、もう片方には高脂肪の餌を与え、比較してみたのです。すると、高脂肪の餌を食べ続けたマウスの脳には異変が起こっていたのです。
動物性脂肪を食べると、細胞に負担がかかりすぎて細胞自体が自分の生命を絶つ、つまり細胞の自殺が起こってしまうのです。

実際に、高脂肪の餌を食べ続けたマウスの細胞を見てみると、黒く変色し、死んでしまったことを示しています。
普通の餌を食べたマウスと比べると、その差はハッキリしています。

脳の中で特に細胞死が起こりやすいのは視床下部(ししょうかぶ)という食欲をコントロールする場所です。

食欲のアクセル役が摂食中枢。ここが働けば「もっと食べよう」という行動を起こし、ブレーキ役の満腹中枢が働けば「もう十分」ということで、食べるのをやめます。

ここで細胞死が起こった場合、食欲のブレーキの働きがダメージを受けるためではないかと、益崎さんは考えています。

その理由は、その後もマウスが高脂肪の餌を食べる量が増え続けたからです。

 

実は、別の研究からも、このような事実が明らかになっています。

「高脂肪は栄養世界の麻薬である」

依存性の強いものを四天王というふうにまとめると、

アルコール < タバコ < 高脂肪 < コカイン

という順で依存性が高くなります。
実は、高脂肪の食べ物の依存性は、コカインの次に高いのです。