『WOC Nursing』2014年6月号<がん患者のW・O・Cケア~躍動する皮膚・排泄ケア>より抜粋。
がん化学療法による皮膚障害について解説します。

 

Point

  • EGFR阻害薬による主な皮膚障害を挙げられる
  • ざ瘡様皮疹,乾燥性皮膚炎,囲炎に対する治療・対策を実践できる
  • 症状出現時あるいは予防としてスキンケア指導ができる
  • 抗がん剤のリスク&ベネフィットバランスを考慮しながら多職種チーム医療で対応できる

清原祥夫
(静岡がんセンター 皮膚科 部長)

〈目次〉

 

はじめに

近年,がん化学療法において種々の分子標的抗がん剤が導入されています。これらは細胞の増殖・分化に関わる特定の分子をターゲットにしているため,従来の殺細胞性の抗がん剤に比べ,特殊な副作用がみられることがわかってきました。

皮膚障害として,手足症候群,ざ瘡様皮疹,爪囲炎などが頻繁にみられるようになりました。そしてこれらの皮膚障害に対して,これまでにない対応が求められています。

すなわち,これらの皮膚症状のうち予後改善の可能性を示唆するものがあり(1)-(4),その対応としてただ原因薬を中止するだけでは不十分であるということです。選択されるそれぞれの薬剤やレジメンの治療効果と副作用の,いわゆるリスク&ベネフィットバランスが考慮されなければなりません。また,QOLや治療が患者の希望に基づいて選択されることはもちろんですが,その場合のリスク&ベネフィットバランスを患者自身が理解して納得していることが重要です。

たとえば皮膚症状については,外見上に影響することや日常の生活に密着した手足の副作用であり,敬遠される場合も少なくありませんが,致死的な副作用ではないことや種々の予防や対策の方法も含めて説明する必要があります。そのうえで,この副作用の発現と治療効果のバランスを患者自身がどのように考えるかについて確認する必要があります。

そしてそのためには各医療者が率先して,抗がん剤処方医師,看護師,薬剤師など他の職種と連携して予防,対策,管理を行うこと(多職種チーム医療の必要性)が強く求められています(5)

WOC Nursingとして多職種チーム医療に参入し,皮膚症状を良好にコントロールし,分子標的抗がん剤のレジメンからドロップアウトしないようにサポートすることが重要であると思われます。

本コラムでは肺がん,大腸がん,乳がん,頭頸部がんなど多くのがん種で臨床導入されている分子標的抗がん剤の代表格であるEGFR阻害薬を中心に,その主な皮膚障害である ざ瘡様皮疹,乾燥性皮膚炎,爪囲炎について,症状とその対策,スキンケアを含めたスキン・マネージメントについて解説します。

 

EGFR阻害薬による主な皮膚障害

最近,肺がん,大腸がん,乳がん,頭頸部がんなど多くのがん種で臨床導入されている分子標的抗がん剤の代表的なひとつであるEGFR阻害薬(イレッサ®,タルセバ®,アービタックス®,ベクティビックス®,タイケルブ®など)による主な皮膚障害として,ざ瘡様皮疹,乾燥性皮膚炎,爪囲炎が挙げられます(5)

これらの皮膚障害は従来知られていた薬剤性皮膚障害の頻度をはるかに上回る高頻度で出現し,そしてその症状は外観上に影響することや日常の生活に密着した手足の副作用であるため,患者QOLが著しく損なわれることがあります。

 

ざ瘡様皮疹

ざ瘡様皮疹は顔面や項部に毛孔一致性の紅色丘疹として現れます(図1)。

図1ざ瘡様皮疹

EGFR阻害薬の投与早期(数日〜1週間)から一見,「ニキビ」様の紅色丘疹や黄白色の膿疱(無菌性膿疱)が顔面だけでなく頭部,頸部,胸部,背部,下腹部に多発,ほとんど(90%以上)の例にみられる

頭部や前胸部,背部,下腹部にも好発することや,個疹が大型で疼痛・灼熱感を伴うことが特徴です。また一部に膿疱や血痂を伴うこともありますが,基本的には無菌性炎症です。この点が尋常性ざ瘡(ふつうのニキビ)と異なる点です。

発症は急激であることが多く,EGFR阻害薬投与初期(数日以内)から出現しはじめ,1~2週間でピークに達することが多いです。また発生頻度は90%以上と非常に高く,ほとんどの患者さんにみられる症状といわれています。

真皮深層にまで強く,長い炎症が及ぶと,ケロイド形成(不可逆性)や色素沈着につながります。致死的な副作用ではないものの,また軽微と思われる場合でも患者心理に対する障害意識は大きく,治療継続を困難にしてしまうこともあります。

 

乾燥性皮膚炎

乾燥性皮膚炎は全身の皮膚が極端な乾燥状態になり,カサカサした鱗屑を伴います。四肢末端ではさざ波状の皮疹がみられ,さらに指趾先端や手掌・足底では乾いて硬くなった角質層に外力が加わりアカギレ様の深い亀裂を生じると,強い疼痛を伴うようになります(図2)。

図2乾燥性皮膚炎

EGFR阻害薬の投与数週間後から全身に極端な皮膚乾燥を生じ,カサカサした鱗屑を伴う(A)。湿疹化して強いかゆみを訴えることもある。指趾先端や手掌・足底では深い亀裂を生じると強い疼痛を伴う(B)

多くの場合,EGFR阻害薬の投与開始数週以内に現れます。掻き壊した部分や亀裂部分から水分蒸散が亢進し,鱗屑が脱落して皮膚が菲薄化し,角質水分保持能がさらに低下します。また冬季ではさらに乾燥状態はひどくなり,湿疹化して強いかゆみを訴えるようになります。ときには痒みで睡眠障害を引き起こすこともあります。

 

爪囲炎

EGFR阻害薬投与1か月後ごろから爪甲の周囲(後爪郭や側爪郭)に浮腫性紅斑や腫脹がみられ,炎症が進むうちに暗紅色調となります。皮膚乾燥に伴い側爪郭に亀裂を生じると強い疼痛を認め,やがて易出血性肉芽腫を形成するようになります。

図3爪囲炎

EGFR阻害薬の投与1か月後ごろから爪甲の周囲(後爪郭や側爪郭)に浮腫性紅斑や腫脹がみられ(左),皮膚乾燥に伴う亀裂を生じると強い疼痛を伴うようになり,やがて易出血性肉芽腫を形成するようになる(右)。荷重部位でない指趾にも生じたり,多発するのが特徴である(多くの場合は無菌状態)

通常の陥入爪と異なり荷重部位でない指趾にも生じたり,時にはひとつの指趾の両側の側爪郭にも生じ,多発するのが特徴です(図3)。また多くの場合は無菌状態で,細菌感染による炎症性血管拡張性肉芽腫とは異なります。進行すると疼痛は著明となり,患者のQOLはきわめて悪化し,靴を履くことや手仕事が困難となることもあります。

 

ざ瘡様皮疹,乾燥性皮膚炎,爪囲炎に対する治療・対策

各症状に対する診断と評価を正しく行うことは,適切な治療・対策を実践するうえでとても大切です。

症状をグレード(Common Terminology Criteria for Adverse Events〔CTCAE〕(6);米国国立がん研究所〔National Cancer Institution〕)別に正しく評価し,それに沿った適切な局所および全身療法を選択します。

そしてスキンケアと生活指導(保清・保湿・保護が基本)(図4(7),さらに老若男女を問わず整容的(外観的)な症状に対する精神的支援が必要です。これらを十分に実践するためには患者・家族を中心とした多職種によるチーム医療が不可欠です。

図4スキンケアのポイント(文献(7)より引用改変)

 

 

ざ瘡様皮疹

ざ瘡様皮疹ではできるだけ速やかに炎症を軽微なものにとどめ,不可逆性のアクネケロイドにしないことが基本です。長引かせると色素沈着の原因にもなります。この急激で強い侵襲に対して,早急で強力な抗炎症治療が必要です。

すなわち比較的強め(ストロングクラス以上)のステロイド外用薬を用いた治療をできるだけ早期(EGFR阻害薬投与数日後~皮疹出現時,あるいはグレード1診断時)に開始し,数週間~1・2か月以内に皮疹をコントロールすることです。その後,弱い(ミディアムクラス)外用薬にランクダウンするステップダウン方式をとることがポイントです(図5(8)

図5皮膚症状の発現時期と長期的対策

 

ただし,グレード1までの軽微な症状のうちは抗菌薬など普通のニキビ対策の治療を試みてもよいと思われますが,急激に変化することがあるので,必ず1週間以内には再評価し,ステロイド外用療法の適応を検討するべきと考えます。

顔面だけでなく項部や頭部,前胸部や上背部,下腹部,大腿部など広範囲に及ぶ,強い症状を示す場合は,内服治療(塩酸ミノマイシン〔MINO:200 mg/日〕やNSAID,重症時にはステロイド〔PSL:10~20 mg/日〕投与)も考慮することがあります。

長期的対策としてステロイド外用薬のランクダウンを図りはじめたころから,アダパレン(ディフェリンゲル®;保険適応外)の外用治療を併用し,3~4週間後,皮疹コントロール後の早いうちにステロイド外用薬の離脱を図る(ステロイド皮膚炎の予防・回避)ようにします。

皮疹再燃時はステロイド外用薬とMINO内服を適宜併用します。MINOも減量(100~150 mg/日)または間歇投与,他のマクロライド系抗菌薬に変更することを試みてもよいでしょう(図5(8)

紫外線曝露は症状を悪化させるので,日焼け止めクリームや帽子,長袖上着,手袋,陽傘などで遮光することも大切です(保護)。

 

乾燥性皮膚炎

乾燥性皮膚炎では保湿剤の全身外用療法が基本です。

へパリン様物質含有軟膏(ヒルドイドソフト軟膏®)や尿素軟膏(ケラチナミンコーワクリーム®,ウレパールクリーム®),ワセリン(プロペト®)を瀕回に外用し,皮膚の乾燥を防ぎます。入浴直後に保湿剤を外用すると効果的です。角質層の厚い手足では乾燥により亀裂を生じやすいので,より頻繁に丁寧に外用する必要があります。亀裂を生じた場合はステロイドテープ剤(ドレニゾンテープ®)や創傷被覆材(デュオアクティブ®)などを用います。

皮膚乾燥はとくに冬場に顕著です。放置すると湿疹化して蔓延し,睡眠障害を引き起こすほどの痒み(掻破性皮膚炎や痒疹)に繋がります。保湿剤の上からステロイド軟膏の追加や抗ヒスタミン剤や安定剤の内服投与を試みます。

さらに皮膚乾燥の予防策としての居室の湿度管理(とくに冬場の加湿器の併用)と外的刺激(摩擦と荷重)からの保護に努めます。

 

爪囲炎

爪囲炎では紅斑・浮腫にはステロイド外用薬,亀裂や肉芽形成時には抗菌薬や同含有ステロイド外用薬と塩酸ミノサイクリン内服を基本とし,とくに肉芽形成が顕著な場合には液体窒素による凍結療法,テーピング(スパイラルテープ法など),部分抜爪,点滴チューブを用いるガーター法,つけ爪など,さまざまな皮膚科的処置が必要となります。

よって,早くからの皮膚科受診を推奨します。また,ステロイド外用薬の離脱にアダパレンが有用であることが示唆されています。ざ瘡様皮疹の場合と同様に成因は無菌的と思われますが,二次感染を予防することも肝心なことです。石鹸と流水で洗浄を徹底することがその対策として有用です(保清)。

 

症状出現時あるいは予防としてのスキンケア指導

EGFR阻害薬の皮膚障害に対する薬物治療や皮膚科的処置が十分に確立していないため,スキンケアが重要な副作用対策としての役割を果たすことになります。

保清,保湿,保護(三保)の対策が重要であり,基本です。

まず保清とは皮膚を清潔に保つことで,保湿は皮膚に潤いを与えることです。そして保護とは紫外線の刺激を避け,外力により皮膚に傷を作らないなど,皮膚に負担をかけないようにするという意味です。

紫外線曝露,虫刺され,摩擦,喫煙,暖房による乾燥,硫黄成分の入った入浴剤,ジョギングや長時間の歩行なども症状悪化因子となります。極力避けるように具体的に指導します。

入浴やシャワーでは熱いお湯(40℃以上)を避け,指先や爪の隙間は手足ともに一本一本,ゆっくりと丁寧にたっぷりの泡で洗浄するように指導します。また,石鹸洗浄後は十分に流水ですすぎます。

その後は皮膚がしっとりしているうち(10分以内)に保湿剤をまんべんなく,十分に外用することが大切です。

 

抗がん剤のリスク&ベネフィットバランスを考慮して行う多職種チームでの対応

抗がん剤の効果を最大限に引き出し,副作用のリスクを最小限に抑えることが化学療法の極意と考えます。

つまりリスク&ベネフィットバランスを十分に考慮し,正しいスキンケアの実施を指導し,ドロップアウトしないように患者を励ましつづけるのには,担当医師のみならず皮膚科医や薬剤師,看護師などとの診療科横断的な多職種によるチーム医療が不可欠です(6)

当院では,EGFR阻害薬のレジメン開始数か月前から医療サポートを想定し,多職種によるサポートチームを立ち上げ,機能分担と連携(=チームワーク)を確立しています(図6)。

図6静岡がんセンターの多職種チーム医療

 

治療当初から皮膚科医がスキンチェックと対策を立て,薬剤師が指導箋を用いて主な皮膚症状と発現部位,重症度別にセルフケアとして使用すべき薬剤について説明します。またスキンケアの直接指導や皮膚障害のアセスメント,あるいはスキンケア対策におけるコンプライアンスの向上を図るために,がん看護専門看護師(CNS)やがん化学療法看護認定看護師(CEN),その他(WOC,病棟リンクナースなど)の看護師が皮膚科医とともに実働しています。

皮膚科の常勤医のいない施設では,地域の病院・診療所との連携を構築するなど,治療チームに近隣の皮膚科医が参加してもらえるように工夫し,皮膚障害対策をともに実施していくことが望まれます。

さらに,皮膚障害のみならず,そのほかの副作用対策も含めて一貫したがん治療を推し進めていくためには,リスク&ベネフィットバランスを考慮した多職種によるチーム医療が不可欠です(5)

最も強力な協力者である家族の積極的なチーム参加も必須です。

 

おわりに

EGFR阻害薬の皮膚障害は身体的苦痛だけでなく,外観の変化に心理的負荷も加わり,重症化した場合だけでなく,軽微と思われるような場合でも治療継続が敬遠され,がん化学療法の一時休止や減量・中止を余儀なくされることが少なからず見受けられます。治療レジメンの導入前に多職種によるチーム医療の運用体制を整えておくことが望ましいと考えます。

そして私たち医療者は患者・家族を中心に,多職種チーム医療によりさまざまな対応策を講じながら皮膚症状を良好にコントロールし,治療レジメンから患者さんがドロップアウトしないようにサポートしていきましょう。

 

 

 

 


[引用・参考文献]

  • (1)Dudek AZ, Kmak KL, Koopmeiners J, et al.: Skin rash and bronchoalveolar histology correlates with clinical benefit in patients treated with gefitinib as a therapy for previously treated advanced or metastatic non-small cell lung cancer. Lung Cancer, 51: 89-96, 2006.
  • (2)Perez-Soler R: Rash as a surrogate marker for efficacy of epidermal growth factor receptor inhibitors in lung cancer. Clin Lung Cancer, 8(Suppl 1): S7-S14, 2006.
  • (3)Jonker DJ, O'Callaghan CJ, Karapetis CS, et al.: Cetuximab for the treatment of colorectal cancer. N Engl J Med, 357: 2040-2048, 2007.
  • (4)Michaelson MD, Cohen DP, Li S, et al.: Hand-foot syndrome (HFS) as a potential biomarker of efficacy in patients (pts) with metastatic renal cell carcinoma (mRCC) treated with sunitinib (SU). J Clin Oncol, 29(Suppl 7; abstr 320), 2011.
  • (5)清原祥夫:大腸癌―最新の研究動向― Ⅷ. 大腸癌の治療戦略治療に伴う有害反応対策 抗EGFR阻害薬による皮膚症状とその対策.日本臨床,69(増刊号3):526-531,2011.
  • (6)米国国立がん研究所(National Cancer Institution):CTCAE(Common Terminology Criteria for Adverse Events)v 4.0 -JCOG,2013.
  • (7)金児玉青:化学療法による皮膚障害―新規抗悪性腫瘍剤を中心に.〔シリーズ〕がんの化学療法と看護(増刊号),ブリストル・マイヤーズ,2009.
  • (8)清原祥夫:皮膚科専門医から診た抗EGFR抗体の皮膚症状.Oncology Pharmacist,No.14:2-7,2011.

[Profile]
清原祥夫(きよはら よしお)
静岡がんセンター 皮膚科 部長

1955年 徳島のいなかで生まれる。1982年 埼玉医科大学 卒業,同大学 皮膚科教室 入局。1986年 国立がんセンター レジデント。1988年 埼玉医科大学 助手。1996年 同 講師。2002年 静岡がんセンター 皮膚科 部長(現職)。2003年より浜松医科大学 皮膚科 非常勤講師。2004年より埼玉医科大学 皮膚科 非常勤講師。2012年より鳥取大学 医学部 皮膚科 非常勤講師。

*略歴は掲載時のものです。


P.11~「がん化学療法による皮膚障害~分子標的抗がん剤(EGFR阻害薬)を中心に~」