『「むちゃ食い障害(BED)」は摂食障害なのか』や
『むちゃ食い症候群』で紹介した「むちゃ食い障害」は
単一の病態ではなくいくつかのサブタイプがあるようです。
そもそも、診断基準にある「むちゃ食い障害(中核群)」は、
18歳以上の男女比が1:2(男性0.8%:女性1.6%)で
拒食症や過食症に比べて男性の割合が多く、
思春期や成人期早期に多く発症し、
治療を受ける年齢が高いと言われています。
「むちゃ食い障害」は過食症と異なり、
非機能的なダイエットの既往がないことが多く、
「拒食症」や「過食症」と病型の変移をすることはまれであり、
他の精神疾患、とくにことが知られています。
「むちゃ食い障害」はむちゃ食いのみの症状があり、
自己誘発嘔吐などの不適切な代償行為がなく、
摂食障害の中心病理である
「やせ願望(よい自分という理想追求へのとらわれ)」や
「肥満恐怖(自己評価が体重や体型の影響を強く受ける)」を
ともなわないことが特徴で、比較的治りやすいタイプとされています。
しかし「むちゃ食い障害」の中には
「過食症・非排出型」ほど顕著ではないにしろ
若干の「やせ願望」「肥満恐怖」を認める
「低い自己評価群(過食症類似群)」もあります。
このタイプは「(自他に対する)怒り≒罪悪感・自責感」と
「羞恥心(評価への過敏性)」をあわせ持つため
「気分変調性障害(慢性うつ病)を有する過食症」と診断するケースもかなりあり、
このタイプでは、炭水化物過食、甘いもの過食が特徴です。
その他のサブタイプでは、
『「むちゃ食い症候群」と感情不耐性』や
『対人関係療法では気分不耐をどう治療していくか』でふれたような、
特定の感情状態に対する耐性が低く
「…ねばならない」という「べき思考」は強いものの
行動抑制が機能しにくく(ガマンが出来ない、待てない)
衝動的行動が多い「感情不耐-衝動群(多衝動型群)」も多くみられます。
このサブタイプは「多衝動型過食症」に似て
むちゃ食い(過食)の他にもアルコールへの耽溺や、
あるいは自己誘発嘔吐をともなうこともあり、
愛着の問題があることもよく見かけます。
多くの場合、パーソナリティ障害(とくに境界型)や
双極性障害と誤診されていることがほとんどです。
それに似たサブタイプで他の強迫行為や衝動行為をともなう
「感情不耐-強迫スペクトラム群」もあります。
このタイプは背景に発達課題の問題を抱えていることが多く、
全体に自発性に乏しく受身的です。
しかし、安易に摂食障害や過食症と診断され
食事指導や食事日記(過食日誌)を受けると悪化することが多いようです。
(『衝動性と強迫性~摂食障害との関係』参照)
上記の「感情不耐-衝動群(多衝動型群)」「感情不耐-強迫スペクトラム群」は
「何もすることがない」退屈に対する気分不耐により
むちゃ食いが誘発されることが多いようです。
つまり「むちゃ食い障害(BED)」は
○中核群
むちゃ食いのみで「やせ願望」「肥満恐怖」をともなわず、比較的治りやすい
○低い自己評価群(過食症類似群)
「罪悪感・自責感」と「羞恥心(評価への過敏性)」をあわせもち、炭水化物過食が中心
○感情不耐-衝動群(多衝動型群)
○感情不耐-強迫スペクトラム群
強迫観念や強迫行為、抜毛や皮膚引っ掻きなど他の強迫症状もともなう
という4タイプに分けられそうです。
もちろん、明確に分類できるものではなく
オーバーラップしていることもよくみられます。
三田こころの健康クリニックでは摂食障害の治療は専門ですが、
摂食障害はよくわからないという医療機関がほとんどですから
過食症と診断されて不適切な対応を行われていることが多いようです。
「むちゃ食い障害」の治療では三田こころの健康クリニックで行っている対人関係療法のように、
患者さんへの適合性に応じてエビデンスに基づく精神療法を選ぶという
「」の観点が必ず必要になります。
同じ「むちゃ食い障害」という診断であっても
各サブタイプによって必要な対応が異なりますし、
表面に見える症状だけでの診断は役に立ちません。
たとえば、「過食症」や「むちゃ食い障害」の背景に
アタッチメント(愛着)の問題や「気分変調性障害」がある場合は
それらの治療が優先になるため、
その人の病前性格や生活歴を考慮されていない症候診断は
治療にすら結びついていないということになりますよね。
最近よく見かけるのは、「過食症」や「むちゃ食い障害」で
症状の後の自責感をうつ病と誤診され抗うつ薬を投与されて
過食やむちゃ食いが抗うつ薬で悪化していたり、
摂食障害をよく知らない精神科医の心ない一言で傷つき
むちゃ食い障害だったのが、「むちゃ食い/排出型」に移行したりと
本来、治りやすいはずの「むちゃ食い障害(中核群)」が
いい加減な医療によってこじれたケースが多いことです。
ということで。
『対人関係療法では気分不耐をどう治療していくか』で
アレキシサイミアと気分不耐の関係に触れたので
この点をもう少し掘り下げてみていきましょう。