着物お手入れコンシェルジュ@栗田裕史です。
お着物を楽しまれている方は、
「着物を着用する時は、シミを付けないように気をつけている」
という方がほとんどだと思います。
(中には全く気にしないというツワモノもいらっしゃいますが・・(^_^;))
でも、どんなに気をつけていても、付いてしまうシミというか汚れがあります。
それは、着用時の衿の汚れですね。
衿の汚れは、大きく分けると、2種類になります。
一つは、お化粧のファンデーションなどが付着した汚れ。
もう一つは、汗や皮脂などの汚れ。
この衿汚れは、着用時にはほぼ必ず付いてしまうものですから、
頻繁に着用される方は、ご自分で汚れを落とすという方も多いようです。
薬局で衿汚れ用のシミ抜き剤やベンジンなんかも売ってますし。
でも、ちょっと待って欲しいのです。
プロの目から見ると、衿汚れの自家処理は、危険が伴います。
まず、着物の染色や加工によっては、
色のにじみや柄の消失などのリスクがあります。
着物は基本的に洗濯することを前提にしていないので、
多彩な色目や柄を表現するために、色んな染料で染めたり、
色んな加工を施してあります。
それらの中には、ベンジンなどでこすった場合、
染料が溶け出したり、柄が消えてしまったりするものがあります。
我々プロは日々の勉強と経験で大半の事故を未然に防ぐことが出来ますが、
一般の方がそれを見分けることはやはり困難だと思います。
そして、もしそうなった場合、悲しいことですが、
元には戻せないことが多いのです。
次に、ベンジンなどで汚れを落としても、汗は残るという事実があります。
ファンデーションなどのお化粧汚れは、ほとんどが油性のものですので、
ベンジンなどでも落とすことが出来ます。
しかし、汗の汚れは水性なので、水を使わないと落とすことが出来ません。
そして、先ほど書いたように、着物は洗濯を前提に作っておりませんので、
水を使った汚れ落としは、プロとしての経験が必要となります。
そして最後に、ベンジンなどの溶剤は、かなり引火性が高いということです。
ベンジンって、どういうものかご存知ですか?
ウィキペディアによりますと、
「ベンジン (benzine) は、原油から分留精製した揮発性の高い可燃性の液体であり、主として炭素数5~10のアルカン(飽和炭化水素)からなる混合物である。揮発油(きはつゆ)、ナフサ(naphtha)、ガソリン(gasoline)、石油エーテル(せきゆ—、petroleum ether)、リグロイン(ligroin)などとも呼ばれるが、用語の使い分けは地域や文脈によって著しく異なっている。日本では概ね、分留で得られる半製品をナフサ、内燃機関用に調製された製品をガソリン、溶剤などそれ以外の用途に用いられる製品をベンジンと呼ぶ慣行がある。一般に「ベンジン」と呼ばれているのは、JIS K 2201:1991に規定されている工業ガソリン1号である。 」
とあります。
なんと、分類的にはガソリンと同じものなんだそうです。
我々プロは、事故が起こらないように細心の注意を払って扱っておりますし、
揮発した溶剤が室内にこもらないように、常に換気を行なっております。
また、組合などで取り扱いの講習なども受けています。
でも、一般の方でベンジンの危険性を認識して使っておられる方が、
どれだけいらっしゃるでしょうか?
長々と書き連ねましたが、衿汚れをご自分で処理される方は、
上記のようなリスクを充分に理解されてから、
作業を行なっていただきたいと思います。