うつくしい人・ことば・ヒント

自分らしく、リアルに生きるという提案

蜷川実花×Chico SHIGETA エキサイティング対談 (後編)

「すてき探しをするなら、一瞬を切り取る写真がお薦めです」 (1)

フランス発のオーガニックブランド「SHIGETA」を主宰するChico SHIGETAさんが、日本の女性に向けて、自然体の自分らしさを見つけるためのメッセージを発信する対談企画。作品も生き方もそのままリアルな第1回ゲストの蜷川実花さんをまえに、改めて、“そのまま感”の必要性を宣言したChicoさんだったが、ことはそう簡単ではないよう。そこで蜷川さんが、あるアドバイスをくれた……。

文=染谷晴美写真=打越 誠(ラッキースター)

そのストッキング熱くない? なんでいつも爪ベージュなの?

Chico そもそも表情は、そのひとの歴史があらわれてくるところ。欠点もぜんぶひっくるめてのそのひと自身というものが刻まれるから、すごく味があって、年齢を重ねるほどにどんどんよくなっていくのに、それを、シワだシミだと、あら探しをしていてはもったいないですよね。

蜷川 たしかにそのとおり。だけど、こうしてメッセージを発信したところで、果たしてみなさんそれを理解してくれるかどうか……。「自分らしく、そのままでいいんですよ」という言葉だけでは、あまりに抽象的で、じゃあどうしたらいいのというところで止まってしまうんじゃないかな。

よく聞く話として、たとえば、会社にはほんとうはこういうファッションで行きたいのだけれど、そうするとみんなにいろいろ言われるからとか、やっぱりあるみたいなんですよ。丸の内では、なぜかみんな、ストッキングにサンダル履いて歩いているとかね(笑)。

Chico ん~(笑)。自分がよくてそうしているならいいけれど、みんながそうだからじゃあ私も、というのはちょっと残念。

蜷川 ある友達は、サングラスをかけたいのだけれど、かけるとセレブ気取りと思われそうで、はずかしくてかけられないと言います。なんでー? と思いますけど、もしかしたら、きっかけはそんなところにあるのかもしれません。ストッキングを脱ぐとか、サングラスをかけるとか、ほんのちょっとしたところ。最初の一歩はそういうちっちゃいことでいいと思うし、そういうことならできると思うんですよ。小さなことがきっかけとなって、少しずつ自分を解放していける。とりあえず、きっかけづくりのお手伝いとして、会ったひとには、そのストッキング熱くない? とか、なんでいつも爪ベージュなの? とか言ってみようかな(笑)。

Chico 結局は自信なのでしょうね。日本人の気質からすれば、枠にハマっていたほうがラクじゃないですか。要は、まわりを真似すればいいのだから。そこを「別にいいもん、私はこれで」と言い切るにはきっと、勇気がいるのだと思う。

蜷川 勇気といえば、5歳ぐらいのとき、父に新宿の駅前で諭されたことがあるんですよ。そこは道がふたつに分かれているところ。右方向にはひとがいっぱいいて、もういっぽうにはひとがぜんぜんいない。そこで父は「みんなは右に進んでいるけれども、もし君が左に行きたいと思ったら、ひとりでもいいから絶対左に行けるひとになりなさいね」って。そんな育て方をされて、さて、その後の私はどうかといえば、ほんとうはみんながいるから右に行きたいのに、意地で左に行っちゃうような性格になりました(笑)。

Chico ハハハ。いいお話ですね(笑)。

蜷川 とにかく私はそういうふうに育てられたから、簡単に“自分は自分でいいんじゃないの”って言えますけど、ふつうはなかなかそうはいきませんよね。知り合いの女の子たちを見ていても、やっぱりみんな最初の一歩が踏み出せない。

Chico そのままでいいんだよってこと、どうやったら伝わるのかなぁ。

蜷川 ひとつ言えるのは、情報に惑わされないでってこと。たとえばここ数年、30代でも40代でも若くてきれいで、仕事もしていて子どもなんかもいたりして、とにかくきれいなお母さんというのが当たり前みたいに雑誌に出ていますけど、はっきりいってそんなの無理! あり得ないですよ。

ほとんどのひとは、死ぬ気で働いて、マスカラすら重い日々をなにくそとがんばっているのに、“こういうかたちが最高のしあわせ”みたいなことを、あっちこっちで言い過ぎているのが悲しい。そもそも、しあわせのかたちはひとつではありません。仕事にしあわせを感じるひともいれば、子育てが楽しいというひともいるし、逆に、子どもがいないひとは、子どもがいないからこそできることもたくさんあるはず。

Chico そうそう!

蜷川 ときにできないことや諦めなくてはいけないこともありますけど、そんなときこそ、いかにしてハッピーな方向にもっていくか。うれしいことって身のまわりにたくさんあるじゃないですか。そこに気づくことができたなら、毎日がもっと楽しくなりますよ。