今、オーガニックが「ブーム」に

ライター/松嶋まち子

美食の国、そして農業大国でもあるフランスではただ今オーガニックブーム。以前からオーガニック(フランスではBIO・ビオと言います)に関心のある人々はいましたが、ここ数年加速しています。しかし、オーガニックは値段が多少高めなので、家庭で消費するすべての物をオーガニックで揃えるのは、経済的に考えると躊躇してしまうのも事実。でも、自分自身の健康、そして将来を担う子どもたちに安全でおいしいものを食べさせたい、という願いは誰にでもあると思います。

「人工的に手を加えず、自然のまま」

フランスでは、オーガニックの農業生産物はフランス政府が認定する有機特産物認定ラベル(ABラベルagriculture biologique)の表示がされています。そして、2010年からはEU加盟国共通のビオラベル(黄緑色の葉っぱの形のもの)を、梱包に記すことが義務づけられています。最近、フランスで販売されているオーガニック農産物や製品には、この2つのマークが必ずついています。

ヨーロッパ各国によってオーガニックの規定が多少異なるとは思いますが、基本的にオーガニック農産物や製品の定義は、「人工的に手を加えず(農薬や添加物を加えず)、自然のまま」ということです。フランスの消費者のオーガニック認知度は90%近くと言われていて、オーガニックへの関心の高さがうかがえます。

フランスで2008年に公開された「未来の食卓(nos enfants nous accuseront)」というドキュメンタリー映画があります。この映画を観て、驚愕したフランス人がどれほどいたことでしょう?!冒頭のユネスコ会議での健康と環境をテーマにしたシンポジウムでは「現代の子どもたちは近代史上はじめて親の世代と比べて健康が劣るかもしれない…」と、アメリカ人の科学者が衝撃的な発言をしています。

映画の舞台はフランス南部の小さな村・バルジャック村(世界遺産のポン・デュ・ガールがあるガール県にある村)。バルジャック村の村長は、将来を担う子どもたちの健康を危惧して、村のすべての学校給食と高齢者の宅配給食を地元のオーガニックにしよう、と決めました。オーガニックは予算が高いので村の財政で賄えるのかという村民の不安はありました。しかし、学校菜園でオーガニックの野菜を栽培してその野菜を食べている子どもたちが、野菜の自然の味を覚え、オーガニックのほうがおいしい、ということがわかり始めて、村の人々のオーガニックに対する考えが変わってきたのです。
この映画が公開される以前も、オーガニックに関心のあるフランス人は多かったと思いますが、さらに加速したのではないでしょうか?

 

娘の学校の給食も、すべてをオーガニックというわけにはいきませんが、献立表にオーガニックマークの付いたメニューがありました。実際、オーガニックの野菜や果物は味が濃くおいしいですし、栄養価も高いといわれています。小さいころから味に敏感だった娘はその違いがはっきりわかるので、もうオーガニック以外は食べたくないと言っています。 数年前に家族でこの映画を観て、そして学校の授業で環境問題や農薬の危険性なども教わってきたのでなおさらです。
映画の中で農家の人が農作物を作るのに大量の農薬を扱ったために癌に侵されてしまった話や、村のある女性が蚊が嫌いで妊婦の時に殺虫剤を頻繁に使用し、生まれてきた子どもが癌に侵され亡くなってしまった話は、きっと娘には衝撃的だったに違いありません。

パリではオーガニックのお店がたくさんあるようですが、ニースのマルシェにもオーガニックの生産者さんがいますし、小さなオーガニックショップ、カルフールやモノプリといった大手のスーパーが展開するオーガニックコーナーは以前からありました。しかし、ここ2~3年の間にチェーン展開している大型オーガニックスーパーの「NATURALIA(ナチュラリア)」、「biocoop(ビオコープ)」そして「Bio c’Bon(ビオ・セボン)」が次々とOPENしました。

さすが大型チェーン店だけあり、品ぞろえは圧巻です。野菜や果物はもちろん、シリアル、米などの穀類、そしてナッツ類は量り売り、フランス人にとって日常欠かせないチーズ、パンそしてワインなどの種類も豊富です。

さらにドッグフード、ベビーフードそしてコスメチックなどなど。ほぼ毎日お店の近くを通りかかるのですが、いつも賑わっています。

地球の環境問題が深刻になってきていますが、オーガニックは健康にも環境にも良いので、もともとシンプルだけど体に良いおいしいものを食べてきたフランス人には受け入れられやすいのかもしれませんね。

 
ライター/松嶋まち子(まつしま・まちこ)
ニース在住13年、一人娘の母。JAL客室乗務員15年勤務を経て、夫・松嶋啓介氏とレストランを開くために渡仏。 現在ニースに3店舗あるレストランの経理業務をこなしつつ、週3回海岸沿いのランニングに励む日々。