ウェブブラウザのJavaScript(ジャバスクリプト)の設定が無効になっています。Javascriptが無効になっていると、サイト内の一部機能がご利用いただけません。 ノヤッさんと潔子さんの体重の話。2014年6月21日 07:18それは大会に選手登録をするための身体測定のときだった。「ノヤっさんちっせー!!!」龍の大笑いする声が保健室に響きわたる。「うるせーぞ龍!!!」俺は怒る。というか、このオレに身長の話をすることが失礼だとおもう。俺はこの烏野高校バレー部のリベロだ。守備専門で高さが必要な訳ではなく、逆にこの小柄な所を長所として生かしている。なのに身長はいつ計っても笑われる。どうにかできないものだろうか。「4月と同じ、159.3㎝です」潔子さんの美しい声が俺の身長を言う。なんと美しいんだ…といつもなら思うところだが、今はそうはいかない。恥ずかしい。俺は何も言えなかった。俺の憧れの潔子さんは身長166.2㎝。俺より断然、デカイ。「くっ…」「確かに西谷は小さいが、それはそれでいいと思うよ。」「さすが旭さん!!やさしーっすね!!」「えっ…いや、優しいとかそういうのじゃ…」そうだ。そういうのじゃない。旭さんは俺の身長を笑わない。笑わない人は他にもいる。けど、ダメだ。しょせんこの小さい背じゃダメなんだ。これでは…そう思っていると、メガネのデカイ皮肉屋な後輩、月島がニヤニヤしながら言った。「確かにそれでいいんじゃないですか?清水先輩が彼氏みたいで…」がーん。これはキツい。いつもなら「生意気な後輩め!」と言ってからかうところだが、今はそんな精神状態ではない。いや、旭さんみたいになるな。もっと男らしくしろ!!!心まで小さくなってどうする!俺は自分に言い聞かせる。俺は自分の頬を叩き「俺はまだ成長期だからまだいける!!諦めたらそれまでだ!!!」と体重計に乗り、仁王立ちした。翔陽が「カッ…!!カッケー!!」と俺をおだてた。そのとき、潔子さんの目が丸くなった。そして直ぐ様表情が暗くなり、俺から目を背けた。「潔子さん…?」部員の皆の視線が潔子さんに行く。潔子さんはハッとして、皆に表情を悟られぬよう、後ろを向いた。どうしたのだろう?すると、龍が俺の乗ってる体重計を見て爆笑した。「の…!!!ノヤっさん体重51.1㎏しかねーぞ!!!女子より軽いんじゃねーの!?」龍の言葉に、潔子さんの空気がさらに重くなったのがわかった。もしかして潔子さんは俺より、身長も体重も大きい…!?俺はまた恥ずかしくなったが、潔子さんを見ていると、そっちが心配になって仕方ない。俺のせいで潔子さんが恥ずかしい思いをしている。「わぁ!西谷くん軽いんですね!」武ちゃんが声を出した。武ちゃんなら、この重い空気をどうにかしてくれるかもしれない…!!!俺は武ちゃんに全てを託していた。「大丈夫ですよ清水さん!清水さんも軽いじゃないですか!西谷くんより0.3kg重いだけじゃないですか!」「………………」武ちゃん、それは言ってはいけないことだろうよ…!!!潔子さんが顔を真っ赤にしている。これはもう引き返せない。部員の皆がどうやってフォローしようか迷っているのがわかる。いたたまれなかった俺は誰より早く声をあげた。「ほ…!!!ほら潔子さん!!俺は身長が潔子さんにすでに負けてるし、身長体重の比率だけなら潔子さんのほうがいいっていうか…!!というか女子としてもいいほうじゃないですか!な、龍!!!」俺と同じ、潔子さん憧れている龍に同意を求める。龍はいきなり話をふられて驚いたが、すぐに話を合わせてくれた。「そっすよ!潔子さんは長身でスレンダーなのにこれ以上体重に気遣う必要ないっすよ!並の女子でも51㎏台は少ないんじゃないすか?」ナイス龍!!!潔子さんも少し表情が明るくなった気がする。「そうだね…」おおっ!部員全員で喜んだ。「ダイエットやればいい。」「………ん?」ダイエット?潔子さんが?「いいんじゃないの?清水がキレイになったら俺たちも嬉しいし。」菅さんが潔子さんをあおった。確かに、潔子さんがもっとキレイになるのなら嬉しい。それに菅さんは空気を読んだんだ。潔子さんのやる気が上がったのがわかった。菅さんはチームメートの雰囲気を丸くするのが上手い。菅さんがいてくれてよかった。「もしそうなったら嬉しいよな皆!」『はい!!!』皆が空気を読んだ。しかし次の日の土曜日の練習で事件が起こった。「潔子さん、昼飯それだけっすか?」いつもより潔子さんの弁当の量が少ない。しかも野菜中心でヘルシーそうだ。「うん。ダイエット中だから。」「それで足りるんですか?」「ちゃんと3食たべてるし。」「そ、そっすか…」 皆が潔子さんの弁当を気にしているのがわかる。少食の月島でさえも大丈夫か、という顔をしている。大地さんが潔子さんに声をかけた。「清水、平気か?これから夏だしバテるぞ。」「まだ涼しいから平気。」潔子さんは皆の心配をはねのける。潔子さんは意思が強い。自分で決めたことはしっかり守る。それもまた潔子さんの魅力だが、過度になりすぎないだろうか。不安になってきた。龍が俺にこそっと声をかけてきた。「ノヤっさん、わかってるよな?」「おうよ。」俺たちはアイコンタクトで合致した。潔子さんの体調がもし少しでも悪そうになったら、俺たちで潔子さんをとめる。我らは清水潔子親衛隊だ。そして昼飯明けの練習が始まる。昼飯後の俺たちは午前中とは動きが違う。より過敏に、かつ元気に動く。午後練は暑さとの戦いでもある。大胆に動いた後は冷たいドリンクが必用不可欠。「10分休憩!!」鳥養コーチが叫んだ。潔子さんのドリンクが飲める!休憩の度に俺がいつも考えていることだ。潔子さんのほうを見ると、珍しくぼーっとされている。「潔子さん…?」潔子さんはハッと皆の方を見た。「ごめん!ドリンクだよね」そう言って潔子さんはドリンクを持ってきてくれたが、ドアの溝に足をつまずかせ、スクイズボトルの入っている箱を落とした。「大丈夫っすか潔子さん!?」俺と龍が潔子さんに声をかける。「ごめん…今、拾うから…」潔子さんにはそう言ってボトルを拾い始めた。翔陽が手伝っている。俺と龍はわかっていた。潔子さんの今の不調は、ダイエットからきているのだと。俺は声をあげる。「何やってんすか潔子さん!!」潔子さんはびっくりしていた。部員も戸惑った顔をしている。「皆、ちょっとそこで待っててください!!」俺はダッシュで体育館を出て、部室に戻り、帰りに食べる予定だったおにぎりを持ってきた。「これ食べてください!!!」「???」潔子さん含め、皆戸惑っている。しかし龍は全てを察し、俺に続けた。「そっすよ!潔子さんが体調悪いのはここにいる全員にバレバレっす!」「ダイエットのせいでしょ!それで潔子さんが具合悪くなってどうするんですか!食べてください!!!」周りの皆もそう思ってる。潔子さんはおにぎりを受け取り、食べた。「…美味しい。」おおっ!っと、俺たちは盛り上がった。「それなら、よかったっす!!!」よし、これでいつもの潔子さんに戻ってくれる。誰もがそう思っていた。しかし、次の日の日曜練習、潔子さんはまたもや具合が悪そうにしていた。ダイエットはもうしていないだろうし、単に体調がわるいのだろうか?俺と龍は目を光らせていた。潔子さんはボール出しの仕事をしていたが、いつもよりボールを鳥養コーチに渡すスピードが遅い。そして、一日の中で一番気温が高くなる2時にさしかった頃、潔子さんがふらついた。俺はローリングサンダーの勢いで潔子さんをキャッチした。「潔子さん!?」「ん…」俺の腕の中には潔子さん。俺を見ている。俺のテンションはMAXだった。その潔子さんの美しいことが…しかし、潔子さんは汗だくだったのがわかった。これはまずい。「い、今、学校の保健室開けてきます!!」武ちゃんが焦って校舎へ向かった。俺は潔子さんをお姫様だっこで保健室まで連れていった。下心があった訳じゃなく、その時の体制的にそのほうが楽だったからだ。決して下心があった訳じゃない。「マネージャーどうしたんだよ!?俺今日マネ使いすぎたか!?」鳥養コーチが焦って体育館に残った龍に尋ねる。「わかんねーっす。ただ、今日潔子さんずっと調子悪くて。」すると、大地さんが驚いて言った。「よくわかったな田中。俺たちは全然…」「今日の潔子さんは、俺たちが話しかけても無視じゃなくて気付かないし、声もいつもより小さいし、ボール出しも少し動きが遅かったんです」スラスラと今日の潔子さんのことを言うと、皆が少し引いていた。潔子さんのこと見すぎ…と。しかし、潔子さんのピンチに気づかない龍ではない。「俺、様子見てきます!」龍が保健室に入ってきた。「龍。来たのかよ?」「当然だノヤッさん!!潔子さんのことが心配で練習なんかできねえよ」「だな。」おそらくチームメート全員がそう思っているはずだ。龍とそんな会話をした時、潔子さんが目を覚ました。「あ…私…」「潔子さん!!!」「大丈夫っすか!?」「うん、大丈夫…」大丈夫、じゃないでしょ?俺は言おうとしたが、それよりまずは聞きたいことがあった。「また、ダイエットっすか?」潔子さんは、図星だという顔をしている。「何でまたしたんですか?」「ダ…、ダイエットした後に体重量ってみたら、逆に重くなってて、それで…」リバウンドか。ダイエットにはつきものだ。しかし、悔しかった。この前、俺たちは潔子さんダイエットしてほしくないって言ったのに、またするなんて。「なにやってんすか。」俺は静かに声を出す。「俺たちの話は聞いてくれなかったんすか?」潔子さんは焦っていた。「け、けど…」潔子さんが珍しくモゴモゴとしゃべっている。「そんなの、潔子さんじゃねーすよ!いつも潔く、しっかりハッキリしてたじゃないすか!それとも、潔子さんは体重ごときで体調管理もしなくなるような人だったんすか!?」龍が焦って俺を止める。「の、ノヤっさん…」「うるせぇ、龍!」俺は龍に怒鳴る。「俺、潔子さんがさらにキレイになるのは嬉しいすけど体調崩すのはスゲー嫌です。体調崩すくらいなら、ブクブクに太ってくれたほうがマシです。太っても痩せても、潔子さんは潔子さんでしょ。」「…西谷…。」潔子さんが俺の名前を呼んでくれてる。嬉しくて舞い上がりそうだ。けど、枕の上の潔子さんには、ゆっくり休んでもらいたい。「今日は休んで下さい。練習もあと少しで終ります。帰り、俺たちで送ります。」「そ、そこまでしなくても…」「また倒れられるの、嫌っすから。」「…」「そうだな、ノヤっさん。また帰り道潔子さんが倒れても、またお姫様だっこして連れていくもんな。」おい!!場違いな台詞吐くなよ龍!!!「そ、それは関係ねーだろ!!!」「え、西谷が、私をお姫様だっこ?」潔子さんが聞いてきた。龍が続けた。「そうっすよ!最初は潔子さんよりちっさいノヤっさんのお姫様だっこでどうなることかと思ったけど、俺達が変わる必用ないくらい安定感で!」「龍!!!」俺は恥ずかしいさがMAXになって、顔を真っ赤にした。やっぱりお姫様だっこなんてするんじゃなかった。けど、おんぶは体の密着度が高いし、腕を肩にかけるのは潔子さんに意識がなかったからダメだし…「ぷっ。」枕の上で潔子さんが笑った。「き、潔子さん!?」爆笑の龍と赤面の俺はそれをぴたりとやめて潔子さんの笑顔を凝視した。「西谷でも私、かつげるんだね。」かつぐ。あっ。かつげばよかった。いや、しかし、それは潔子さんのお身体を雑に扱っているようで…って、ん?俺でも潔子さんをかつげる、とは?意味が分かると、俺は怒った。「そっすよ!!!俺は男なんですから!!!」潔子さんはさらに笑った。龍も、俺の言った意味がわかって爆笑した。「ノヤっさん、潔子さんに女子も持てないと思われてたんだな!!!」「うるせーぞ龍!!!」「ふふふ。」潔子さんはさらに笑った。そして潔子さんを保健室に残し、俺達は練習に戻った。皆に潔子さんの無事を報告すると皆ほっとしていた。練習後、俺たちは潔子さんを送ると言ったから、一緒に帰った。そう。俺達は――――――「清水の家、高校の近くでよかったな。」「合宿のとき、清水だけ家に帰ってたもんな」「あの時のショックはでかかったろ?田中、西谷。」「菅さんいじわるっすよ…」「……………」潔子さんの後ろには、烏野高校バレー部の集団のボディーガードができていた。「み、皆、目立つんじゃない?」旭さんがこの集団の異様さを指摘する。「じゃあ旭さん、一人で帰ればいいじゃないですか!」「そ、そんな西谷…!」この時潔子さんの気持ちを察した唯一の人物はオロオロしている。ついてきなさそうな月島、山口さえもここにいる。旭さんだけ帰るはずがない。潔子さんは俺たちとは他人のような表情で歩いている。鳥養コーチの坂之下商店が見えると、俺はあることを思いつき、「皆、ここで待っててください」といって、坂之下商店にはいった。そこで大量に肉まんを買った。「俺、思ったんですえど、潔子さんが軽くなる前に、俺が筋肉つければいいんだと思うんですよ。脂肪より筋肉のほうが重いし、筋肉足りないし!」俺はそういって肉まんを頬張った。「確かに、それはいい考えだな。」大地さんが俺の意見に賛同してくれた。すると翔陽と影山も話に食い込んできた。「ノヤっさん!俺も!!!俺も筋肉つけます!!!」「俺もつけます。」「俺、もっともっとつけます!!!」「俺は、もっともっともっとつけます!!!」二人が言い合っていると、月島が嘲笑う。「君達、食べるだけ食べても筋肉つかないからね?倍動かないと。」「俺とツッキーもヒョロヒョロしてるってよく言われるから頑張らないとね、ツッキー!」「山口、うるさい。」そんな会話をしていると、潔子さんがふっきれたような清々しい表情をされていたのに気付いた。ああ、それでこそ潔子さん!!!俺と龍は笑顔の潔子さんに話かける。『潔子さん!!!』これでこそ、烏野高校バーボール部。おまけ日向は身体測定のときから思っていた。(俺も、清水先輩より背、低い。そして清水先輩より0.5㎏しか重くない!!!)しかしすでに空気が悪い中、その事を言葉にすることができなかったのである。