2007年01月08日

37 ポスナーシュロスマン症候群

Posner‐Schlossman Syndrome,
ポスナーシュロスマン症候群、ポスナーシュロッスマン症候群(管理頁
初回 2006,1.6 加筆 2007,1,8 2007,3,17



本日久方ぶりに片目に虹彩炎(ぶどう膜炎)と眼圧上昇を示すポスナーシュロスマン症候群の中年男性の患者さんが見えました。私の診療所では昨年4月の開院以来の1400人で確か3人目のポスナーシュロスマン症候群ですべてが男です。(この間に網膜剥離が2例いました。そのくらい珍しい病気だといいたいわけです)

そこでこのポスナーシュロスマン症候群を復習してみます。

ポスナーシュロスマン症候群は時々発作的に片方の目に眼圧上昇と虹彩炎とがおこる病気です。ポスナーシュロスマン症候群の症状は普通15程度の眼圧が突然40から60ミリ水銀柱程度まで上がり、そのときに少しかすんだり圧迫感を訴えたりします。数回の同様なポスナーシュロスマン症候群発作の既往歴を以前に持っていることも診断の参考になります。



ポスナーシュロスマン症候群ではわずかな前房細胞を伴う角膜裏面の沈着物や前房隅角の色素沈着などがありますが、ポスナーシュロスマン症候群の隅角には癒着が無いというようなことが眼科医の診断をより確実なものにします。

ポスナーシュロスマン症候群で有っても普段は特に症状も無く、年に数回程度上記の症状が発症します。私が拝見したポスナーシュロスマン症候群の患者さんはほとんどが青年から中年の男性でした。ポスナーシュロスマン症候群の原因は現在不明とされていて、ぶどう膜炎の原因を調べる緒検査はどれも陰性をしめしますが、前房水のプロスタグランディンEが発作中に増加という複数の報告があって、前房水の排出が繊維柱帯の炎症で減少するという説があります。


ポスナーシュロスマン症候群の治療には発作時のみ眼圧降下剤(0.5%チモプトール点眼一日2回)と抗炎症剤(たとえばリンデロン点眼薬一日3回)を使います。眼圧が更に高いときには経口の眼圧降下剤を用いたり、点滴で眼圧を下げたりしますが、ポスナーシュロスマン症候群の高眼圧は普通は数日で落ち着きます。

ポスナーシュロスマン症候群は一種の緑内障ですが、ポスナーシュロスマン症候群では高い眼圧にさらされる時間が短いので、視野が侵されたり視力が落ちる例は少なく、眼底で見られる視神経乳頭の陥凹も大きくはならないことが多いです。

ポスナーシュロスマン症候群に似た症状を示すものとしては、急性の緑内障発作、血管新生緑内障、ヘルペス角膜炎などが鑑別除外すべき疾患です。

ポスナーシュロスマン症候群の経過観察は最初の一週間は数日毎に行い、その後は週に一度で症状が消えるまで行います。ポスナーシュロスマン症候群では両眼が開放隅角緑内障のリスクを背負っていることを忘れないでという注意が付いているところがアメリカの教科書らしい所です。

この文章の参考にした参考書は、私も共著者の一人である眼科診療ガイド(分光堂)と私も研修を受けたフィラデルフィアの眼科病院の救急室マニュアル(眼科診療のための診断治療マニュアル―ウィルズ・アイ・ホスピタル) (3版、lippincott)です。
http://www.secointernational1.com/eposters/play.cfm?Folder=posters2005/posner
にはアメリカの研修医が作ったきれいなポスナーシュロスマン症候群の説明用のスライドが出ています。これを見るとこの疾患にキサラタンがあまり使われない理由やポスナーとシュロスマンが1948年頃の人だったことなどがわかります


また、http://www.emedicine.com/oph/topic137.htmによれば1948年に Posner 博士とSchlossman 博士は共著で「毛様体炎症状を伴う緑内障の反復発作を片眼に来たす症候群」を発表していて、これがポスナーシュロスマン症候群の命名の根拠です。
Posner A, Schlossman A: Syndrome of unilateral recurrent attacks of glaucoma with cyclitic symptoms. Arch Ophthalmol 1948; 39: 517.



追記;この項目は1日3-5ページビューで私のブログ内の隠れた売れ筋です。1年もしたら何か新しいことも加えないと:

杏林アイセンターニューズレター(⇒リンク)にポスナー・シュロスマン症候群(PSS)を考えると題して吉野啓先生が興味ある一文を書いています(http://www.eye-center.org/NL/NL11/NL11.htm)続発緑内障の手術例の多くが慢性の虹彩炎に合併したもので、その様な症例にポスナー・シュロスマン症候群と診断されている例が多いというのです。

本当にPSSポスナーシュロスマン症候群と思われるのはその診断例の大体2割位で、慢性虹彩炎の緑内障がほとんどだそうです。典型的なポスナーシュロスマン症候群PSSは原則的に視野障害を来たすことはありません。ポスナーシュロスマン症候群PSSと他の虹彩炎による続発緑内障は発作時所見だけを比較すると良く似ています。

ポスナーシュロスマン症候群PSSは悪くならないから、そう診断する事で患者さんも安心できるし、それ以上に医者も安心したいのではないでかと先生は推測しています。注意すべきは寛解期の所見でポスナーシュロスマン症候群PSSは寛解期には全く虹彩炎所見がないというのが一番の鑑別ポイントとの事。

寛解期にもわずかながら角膜裏面沈着物がある、前房中の細胞が少し残る、眼圧が不安定であるなどの所見がある場合、ポスナーシュロスマン症候群PSSは否定的としています。

心すべきポイントです。


今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。

清澤眼科医院通信最新ページへ(リンク)します

トラックバックURL

この記事へのコメント

8. Posted by つぼみ   2010年05月16日 20:10
はじめまして。40歳女性です。
15年ほど前に右目がポスナーシュロスマン症候群と診断され、数年間発作がなかったのですが、10年位前から年数回発作が出るようになり、この春は1~2週間に一度と頻発するようになりました。
ことに先週金曜の発作時は、眼圧35とのことでケナコルト-A眼注とダイアモックス点滴を受け、フルメトロン0.1とニフランを1日4回・ミケランLAを1日1回点眼およびダイアモックス錠250mg1錠とアスパラカリウム錠300mg2錠を朝夕服用(3日間)していますが、
本日夕方よりまた発作の兆候が感じられ、これからどうなるのか不安になってきました。
他の病気を疑ったほうがいいのでしょうか?
お答え:確かにそれだけ頻度が高いならば別の原因でのぶどう膜炎を考えてもよさそうに思います。以前の記事を見て下さったのでしょうか?杏林大学の先生にそのような記載がありましたね。
http://blog.livedoor.jp/kiyosawaganka/archives/50360393.htmlご覧ください。
7. Posted by K,I,   2010年04月15日 17:57
6のK.Iです。

早速にお教えいただきまして、本当にありがとうございました。

聞きなれない珍しい眼の病気なので、マイスリーのことを内科の先生に伺っても分からないのではないかと
困ってました。

PSSと娘が知らせて来たときも、
どういう病気が分からずとても不安な思いでした。
でも検索していて先生のブログに行きつき、詳しく説明をしてくださっていて、本当によく理解出来ました。

娘にもすぐにメールでURLを添付して知らせました。
病気をよく理解したようなので、
これから再発を繰り返しても、きっと
パニックを起こさずに済むと思います。

今目薬のみで治療中ですが、将来的なことも考えて、視神経の写真を撮ったりいろいろと検査をするようです。

又分からないことがあればご相談させていただくかもしれませんが、よろしくお願いいたします。

本当にありがとうございました。

関西在住のため先生の医院に伺えないのが大変残念です。

お答え:質問歓迎、何かのお役に立てたならば、大変ありがたく存じます。今日も一人、昨年ポスなーシュロッスマンと診断した患者さんが再発で来ておりました。その時々できちんと治療しないと視野欠損が残るかも知れませんのでしっかり治療なさって下さいね。




6. Posted by K.I.   2010年04月14日 23:35
はじめまして。
実はアメリカにいる娘が先日PSSと診断されました。

それでお聞きしたいのですが、
マイスリーなどの睡眠導入剤を
服用してはいけない人に、急性狭隅角緑内障とあるのですが、
PSSの場合はそれに当てはまるのでしょうか??

年末に里帰りしたときに、お医者さんに寝付けないときだけということで、マイスリーを処方していただいたので。

毎日飲むというわけではなくて、頓服的にたまに飲む感じですが。

よろしくお願いします。
アドレナリンなどの瞳孔を開く作用のある薬剤を内服すると、隅角の狭い眼では眼圧が上昇して緑内障発作を起こすことがあります。それで、副交感神経遮断作用のある薬剤は緑内障に禁忌とされるのですが、基本的にポスナーシュロスマン症候群は普通は狭い隅角を持ってはいませんから、マイスリー等の薬剤が使えない群には含まれません。しかし眼科医がその目で見て、狭い隅角を偶発的に持っているならばやはり駄目です。





5. Posted by M   2009年07月22日 07:39
 はじめまして
 昔にポスナーシュロスマン症候群と診断された♂です。
1960 生まれ 48歳 中学生の時、右目のみ霧状態にて通院したところ、上記と診断されました。 治療は発作時にチモプトールとリンデロンの点眼を指示されました。発作は年2回位の頻度で発生し、点眼治療を行うと1週間程度で治まりました。病状の悪化を医師に尋ねたところ「一生治りませんが、年齢を重ねるほどに発作の頻度は減りますよ」との回答を頂きました。
 その言葉どおり段々と発作の頻度が減り、ここ5~6年程は発作も全く起こっていません。15年ほど前に視野の検査を行いましたが、多少欠けている程度で生活上の問題は現在のところ発生しておりません。
 当時も医師から珍しい病気で「10万人に1人位かな」と言われておりましたので経過を記載させて頂きました。では、失礼いたします。
お答:ちょっと調べてみましたら1995年にフィンランドの論文があってPosner-Schlossman syndromeの新規発症頻度は10万人あたり 0.4 で有病率は1.9でした。まったく大当たりな数字です。ちなみに最も多い急性前部ぶどう膜炎の発症率は17.1、その有病率は 48.5だそうで、ポスナーはその10分の1程度。ぶどう膜炎の中ではサルコイドーシスやヘルペス性ぶどう膜炎などもほポスナーシュロスマン症候群と同じ位どりの頻度でした。

4. Posted by 船xxx一   2007年06月06日 18:06
60歳男子です。
20年ほど前PSS(御茶ノ水の眼科)で診断されその後2-3ヶ月に1回発作、現在も継続しています。
 オドメール(抗炎症剤)の点滴で対応して1-2日で収束します。
※眼圧低下薬で眼圧は一次的には低下するが直らない、返って症状が悪化する。
質問①:PSS患者のブログに投稿しています、女性もいますので性別は関係ないのでは?
お答え:女性も居ますが、実際に女性には男性よりも少ないように感じます。それをあえて言うのは、この疾患の原因に男性ホルモンや女性ホルモンなどが関連してないか?と考える医師が居るからかも知れません。
②:何故、ポスナーシュロスマン症候群は一種の緑内障なのですか?
・・症候群という理由は?緑内障という病名で診断書をかいてもらえるのですか?
お答え:”症候群というのは虹彩炎と眼圧上昇を示すものの総称だからであり、複数の異なった原因でおきた症例が混ざっているかもしれないよ。しかし世の中のお医者の皆さん、この組み合わせは偶然にしてはちょっと珍しいでしょ?何か因果関係でも隠れているんじゃないでしょうか?”というニュアンスです。
眼圧が上昇しているという点では緑内障に分類されますが、”広義の原発性開放隅角緑内障”には含まれません。私なら、患者さんが希望すれば職場に出す診断書や生命保険の請求の診断書にはわかりやすく緑内障と診断名を書くかんも知れません。

※誤診もあるのでは?
いずれにしても、虹彩炎と診断した医者はいなくなるし、20年のPSSとお付き合い、多くの眼科医、国内、海外文献(素人ですが)、PSSブログでの情報収集をしてきました。症状と対処も違うし、よくわからないことが多い病名です。
お答え:PSSという診断で本当に視野欠損が進んだ症例では、実は本当のPSSではなく慢性の虹彩炎(ぶどう膜炎の前方型)で眼圧があがった症例であったという誤診例が少なくはないというのは残念ながら事実でしょう。

そのうちお邪魔させて頂くかも知れません、そのときは宜しくお願いします
お答え:お待ちいたします。
  
3. Posted by なんこう   2007年03月23日 15:28
昨日も当院に数日前からの片眼霧視の若い男性の患者さんがいらっしゃいました。特に既往はなかったのですが、ポスナーかも知れないなぁと思ったしだいです。本日文献を調べていたら、またこちらに行きつきました^^;。英語論文非常に参考になります。今後も、勉強させてください。いつもありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。
2. Posted by マーゴ   2006年09月01日 12:43
つづき
左目だけ炎症細胞が出たり入ったりしていて現在左目リンデロン1回、右目フルメトロン2回点眼しています。
ポスナーシュロスマンにはキサラタンは禁避のようですね。過ぎたことで、今さらという気がしますがどんな理由があるのでしょうか?視野はさほど犯されてはいません。
視神経乳頭部がかなり陥没しているようです。最初にポスナーシュロスマンと診断した
ドクターはアナタの眼は緑内障と診断され手術したくなる眼をしているからポスナーシュロスマンだと言って絶対手術したらいけませんよとのことでしたが、30数年前と
現在では眼科医療の状況も激変で、私ももっと早くにインターネットで調べておけばよかったと後悔しきりです。

お答え:キサラタンはプロスタグランジン系の薬であって、発作にもそれが関連しているからということのようですね。ポスナーに似た慢性ぶどう膜炎による高眼圧というのが曲者のようです。清澤
1. Posted by マーゴ   2006年09月01日 12:39
はじめまして。
私は♀ですが、30数年前に左目をポスナーシュロスマンと診断されました。
その後1年ごとに3回程発作が起きその後は全然発作は起きなかったので、
放置していたのですが、眼科受診したら正常眼圧緑内障と診断されました。
ポスナーシュロスマンだと主張しても受け入れられませんでした。
で、キサラタンとトリソプトを両眼処方されました。
その後3年程継続経過して、発作が起きました。頻繁に繰返すようになりました。
リンデロンとチモプトールで押さえます。一方で、白内障の進行が猛烈はやく、白内障の手術しました。手術後はキサラタンとトリソプトの点眼は中止しました。

コメントする

名前
URL