脳や全身におこる悪性リンパ腫!血液の癌の症状は湿疹やリンパの腫れ
厚生労働省の調査では日本人の死亡原因は上位から「悪性新生物」「心疾患」「肺炎」「脳血管疾患」の順になっています。第一位になった悪性新生物とはいわゆる「がん」であり、1980年代からはずっとトップの位置にいるのです。
1980年代とは比較にならないくらい医学が進歩した現代においても、がんを撲滅することは難しく更なる研究が行われています。なぜがんを撲滅することは難しいのでしょうか?
その原因の一つが「種類の多さ」と言われています。がんと言っても種類は多く、様々な臓器や場所に発症します。さらに体中を回っている体液にまでがんが発症してしまうのです。
今回は”血液のがん”と言われる悪性リンパ腫についてお話しましょう。肝臓や皮膚にも発生する悪性リンパ腫は全身に発生し、脳にできれば脳リンパ腫と呼ばれます。
皮膚のかゆみや湿疹、首付近などのリンパ節の腫れが起こったらそれは悪性リンパ腫かもしれません。その症状と治療法、相談方法をご紹介します。
様々ながんの種類の中で”血液のがん”と呼ばれる悪性リンパ腫
多くの人ががんと聞くと臓器のがんを想像してしまいます。
- 胃がん
- 大腸がん
- 膵臓がん
- 肝臓がん
などが有名ですが、中には「皮膚がん」など臓器以外に発症するがんもあります。
確かに一般的な悪性腫瘍は臓器や皮膚などに発症することが多いのですが、中には身体の中を流れる体液に発症するがんもあるのです。
リンパ球ががん化してしまう血液のがん
最近、有名な大物俳優 松方弘樹さんが脳リンパ腫で亡くなりました。男らしい彼の命を奪ったのがこの血液のがんと発表されています。8割以上の罹患者が50代以上なので、好発年齢だったと言えます。
私達の身体の中には常に血液が流れていて、栄養や酸素を各細胞に運んでいます。血液が流れなくなってしまうと、細胞はエネルギーを生産することができなくなり死滅することになります。
血液のがんとは骨髄でがん細胞が増殖することで発症するもので、「白血病」「悪性リンパ腫」などがあります。白血球ががんになってしまうのが白血病、リンパ球ががんになってしまうのが悪性リンパ腫です。
中でも悪性リンパ腫は増加傾向にあり最近注目されている病気の一つと言えます。
これは血液中にあるリンパ球ががん化したもので、白血球の一つであるリンパ球は、身体の中に入り込んだ異物(細菌、ウイルス)を死滅させる働きを持っています。
これは人間が持つ免疫システムの働きであり、病気に感染しないために重要なものです。このリンパ球ががん化することで、免疫力が低下してしまったり、身体の機能を低下させてしまったりします。
そしてリンパ管を通して全身へ広がる可能性も高いのです。
リンパ節を集約したリンパ管による広がり
皆さんは「リンパ管」や「リンパ節」と言う言葉をご存知でしょうか?一般的に人間の身体の中に流れている液体と言えば「血液」ですが、実はそれ以外にも「リンパ液」と呼ばれる液体が流れています。
そのリンパ液を流す管がリンパ管であり、リンパ管を集約しているのがリンパ節なのです。
▼主要なリンパ節とリンパ組織
リンパ液は毛細血管から染み出した血しょう成分であり、それがリンパ管に入リ込むことでリンパ液となります。リンパ管は身体全体に張り巡らされており、血液と同じように循環しています。
しかし、血液が心臓のポンプ機能で循環するのに対して、リンパ液は筋肉の伸縮によってゆっくりと流れるのが特徴です。その作用は血液中に溜まった老廃物の除去や、細菌、ウイルスを死滅させる免疫作用など重要な働きをしているのです。
血液中のリンパ球ががん化した場合、このリンパ液にもがん化されたリンパ球が入り込むことになり、身体全体に広がってしまうのです。
悪性リンパ腫の種類
悪性リンパ腫には大きく分けて「ホジキンリンパ腫」「非ホジキンリンパ腫」の2種類がありますが、日本の発症の約90%が「非ホジキンリンパ腫」となっています。
またリンパ球には「T細胞」や「B細胞」があり、がん化した細胞毎に「T細胞性」と「B細胞性」に分類されます。
ホジキンリンパ腫はリンパ節に発症することが多く、特に首にある頸部リンパ節が腫れることで気が付くことが一般的です。
これに対して日本人に多い非ホジキンリンパ腫では、リンパ節以外にも臓器にて発症することが多く、特に胃には発症しやすい特徴があるようです。
非ホジキンリンパ腫の発症する可能性が高い部位を紹介します。
- リンパ節
- 胃
- 肺
- 小腸、大腸
- 肝臓
- 乳腺
- 脳
- 甲状腺
- その他、身体全身
こんな症状があれば病院へ!悪性リンパ腫の症状
なかなか自分では自覚できない悪性リンパ腫ですが、早期に発見されると大事には至らない病気です。そのためには発症サインを逃がさないように注意しなくてはいけません。
悪性リンパ腫の症状:リンパ節がある部分に起こる腫れに注意する
悪性リンパ腫の症状で最も多いのが、身体の腫れです。特にリンパ節がある部分に腫れやしこりがある場合は、良く観察して病院で診察を受けた方が良いでしょう。
悪性リンパ腫による腫れが多いのは以下の部分です。
- 耳の後ろ側
- 首の両側
- 顎の下側
- 鎖骨の上部
- 両脇の下部
- 鼠けい部(足の付け根)
悪性リンパ腫の腫れやしこりには痛みがないことが多く、深刻に考えないで放置することが多いようです。この部分にしこりのような腫れがある場合は、悪性リンパ腫を疑うようにしましょう。
悪性リンパ腫の症状:38度前後の発熱に注意する
悪性リンパ腫の腫れには痛みは無いのが特徴ですが、発熱を伴う場合があります。38度前後の発熱が多く、原因不明の風邪と勘違いしてしまうケースもあります。
また、発熱に伴って寝汗をかくことがあり、寝巻きや布団が濡れるほどの大量の汗が見られます。急に汗っかきになったら注意しましょう。
悪性リンパ腫の症状:全身の疲れを感じたら注意する
特に激しいスポーツや運動を行っていないにも関わらず、身体全体の疲れを感じる場合はどこかに異常があるかも知れません。
身体全体にがん化したリンパ球が広がった場合、免疫力が低下して疲れやすい身体になってしまいます。睡眠や休息を取ってもなかなか回復しない全身疲労がある場合には注意が必要だと思います。
また、免疫力の低下は感染症にかかりやすくなるため、喉の炎症や風邪などを引きやすくなる特徴があります。急に風邪を引きやすい身体になったと感じたら免疫力の低下を疑いましょう。
悪性リンパ腫の症状:半年で5%以上の体重の減少に注意する
特にダイエットを行っていないにも関わらず体重が減少している場合は注意が必要です。特に半年で5%以上の体重が減少している場合は、栄養が吸収できていないことが考えられます。
これはがん細胞が増殖することで、栄養が不足するようになるためと考えられています。思い当たらない急激な体重の減少には注意しましょう。
悪性リンパ腫の症状:かゆみや湿疹、皮膚の異常に注意する
全身に広がった悪性のリンパ球は皮膚上に影響を及ぼすこともあります。皮膚上に赤みを帯びた湿疹ができ、痒みが発生してしまいます。特に夜、眠れないくらいの痒みに悩まされることも多いのが特徴です。
アトピーや乾燥肌と勘違いすることも多く、皮膚科で診察しても本当の原因は見つからないことが多いようです。
特にリンパ節が集まる部分(リンパ腫の腫れが多い部分)に湿疹や痒みが出た場合には、悪性リンパ腫の可能性がありますので十分注意しましょう。
悪性リンパ腫の病期を把握して治療する!化学療法と放射線治療がメイン
悪性リンパ腫は早い時点で治療を開始することが重要で、転移が進むとその効果も薄くなってしまいます。
しかし悪性リンパ腫の進行具合を正確に判断しておかないと、正しい処置や治療を受けることが出来ません。病期分類は多岐にわたり「Ann Arbor 分類」「Lugano 分類」と存在しますが、これらは病歴と
- 視診、触診、聴診などによる理学所見
- 血液検査
- X線検査
- CT検査
によって判断されます。必要に応じて消化管内視鏡や骨髄から血液を採取して検査する骨髄穿刺なども行われます。
どちらの分類方法もⅠ期~Ⅳ期まで存在し、Ⅳ期まで及ぶとリンパ系組織外への病変につながっている状態になり非常に危険な段階です。
悪性リンパ腫は血液のがんなので、外科手術によって切り取ることはできません。
そのために治療法は化学療法と放射線療法が一般的となっています。
悪性リンパ腫の治療:抗がん剤による治療
悪性リンパ腫はがんの中でも抗がん剤の効果が高いとされており、数種類の抗がん剤を併用する化学療法が使われています。
- (1)ABVD療法
ホジキンリンパ腫で標準的に使用されている化学療法で、4種類の抗がん剤
- アドリアマイシン
- ブレオマイシン
- ビンブラスチン
- ダカルバジン
を組み合わせて治療を行います。
- (2)C-MOPP療法
ホジキンリンパ腫でABVD療法と共に日本で標準的な化学療法とされているのがC-MOPP療法です。
この療法も4種類の抗がん剤- シクロホスファミド
- ビンクリスチン
- プロカルバジン
- プレドニゾロン
を組み合わせて治療を行います。
- (3)CHOP療法
日本人に多い非ホジキンリンパ腫での治療ではCHOP療法が標準的な化学療法となっています。これも4種類の抗がん剤
- シクロホスファミド
- ドキソルビシン
- ビンクリスチン
- プレドニゾロン
を組み合わせて治療を行います。
- (4)R-CHOP療法
最近ではCHOP療法に分子標的薬であるリツキシマブを加えることで劇的に治療効果が高まっています。このリツキシマブを加えた化学療法がR-CHOP療法であり、これからの標準治療となっています。
悪性リンパ腫の治療:放射線療法
悪性リンパ腫は他のがん細胞と比較して、放射線に弱い特徴を持っています。それは一般の正常細胞と違い、悪性細胞は放射線による傷を修復する能力が低いことが要因です。
放射線を浴びることで正常細胞も傷ついてしまいますが、これらは数時間後には修復できます。しかし、悪性細胞は修復できないために徐々に数が減少するのです。よって放射線治療が有効なのです。
しかし、正常細胞にもダメージがあり副作用の原因にもなりますので、治療の回数や放射線の線量を調節する必要があります。
悪性リンパ腫における放射線治療はリンパ系の分布に沿って行う事が多く、リンパ節をブロックとしてその周りを放射します。
放射線治療は抗がん剤による化学療法の結果によって行うことが多く、初期の悪性リンパ腫では行わないこともあります。
悪性リンパ腫の治療:自分の造血幹細胞を移植する治療法
化学療法や放射線療法で効果が見られない場合や、一度は効果が見られても再発した場合には造血幹細胞移植による治療が選択できます。
身体から悪性細胞が無くなるのは良いのですが、強い治療は血を作るための造血幹細胞さえも破壊してしまうのです。
このままでは血液を作る機能が失われてしまします。そこで保存してある正常な造血幹細胞を移植することで、その機能を復活させるのですね。
造血幹細胞移植には「自分の造血幹細胞を移植する方法」と「家族などのドナーから提供されて移植する方法」がありますが、副作用の点から考えると自己移植の方が安全と言えます。
早期発見で完全寛解へ!がん情報サービスセンターのサポートも受けよう
悪性リンパ腫は早期に発見することで、効果的な治療が可能ながんです。しかし、他の臓器のがんと違い完治の判定が難しい病気です。
例えば胃がんであれば胃の中にがん細胞が無い状態が一定期間続くことで完治と言えますが、血液のがんでは全ての血液を完全に調べることはできません。
そこで悪性リンパ腫などの血液のがんでは完治ではなく「寛解(かんかい)」と言う言葉を使用します。
寛解は症状の出ない安定状態が続いていることを意味しており、がん細胞が完全にいなくなった状態ではありません。しかし、症状を抑えていることで病気による健康被害も起こらないので、実質的には完治に近いものかも知れませんね。
そして、寛解の状態が5年以上続くことで「完全寛解」となり、完治と言ってもよい状態になるのです。
がん情報サービスセンターのサポートも受けていいよ
国立がん研究センターが公開しているサポート施設で、「がん情報サービスサポートセンター」というものがあります。
ここでは電話でどなたでもがんについて相談することができ、適宜情報を案内してくれます。原則20分以内、という制約はありますが、20分無料で話せるというのはメリットが大きいですよね。
※通話料金は相談者もちです。
0570−02−3410
営業時間:
平日10時~15時(土日祝日、年末年始を除く)
また、地域ごとにがんの相談窓口「がん相談支援センター」が設置されており、厚生労働大臣により決められたしっかりとした施設で相談をうけてもらうことができます。
「近くにはどこにあるんだろう?」というときには、国立がん研究センターのがん情報サービスサイトで検索するか、先ほどご紹介したサポートセンターへお電話しましょう。
悪性リンパ腫は早期発見することで、寛解が可能な病気です。今回紹介した注意項目を理解して、心当たりがあれば支援施設に相談してみたり、病院で検査してもらいましょう。