ウェブブラウザのJavaScript(ジャバスクリプト)の設定が無効になっています。Javascriptが無効になっていると、サイト内の一部機能がご利用いただけません。 素顔を見せて 前編2013年11月4日 16:59*注意*・黒子君がマスクに依存しています。マスク依存については、私の観点で自由に書いておりますので、ご了承下さい。そしてマスクがゲシュタルト崩壊。・キセキ達がキャラ崩壊キセキ達がスレていません。青峰君もちゃんと部活に来てるよ!全員もれなく黒子君大好き、じゃあ同盟組もうぜ!的なノリ。黒子っち泣かす奴?オヤコロ!(そして赤司君が僕口調+名前呼び)・黒子君の過去捏造*上記の点により、原作とは全く違った仕上がりになっております。それでも大丈夫!と言っていただける方は、次のページへとお進み下さい。[newpage]けたたましい音の響きで、深い眠りから意識が浮上する。布団に包まりながら、もぞもぞと身をよじる少年ーー黒子テツヤは、そのままゆっくりとした動作で、音の根源である枕元の携帯電話を掴んだ。閉じそうになる目を必死にこじ開けて、どうにか携帯電話のアラームを止める。朝が弱い黒子には、携帯のアラーム(スヌーズモードでないと起きれない)はとても大事なもので、部活の朝練に行く際にとても重宝しているのだ。無事アラームを止めた彼は、目を擦りつつ、ベッド脇のテーブルに置かれた箱の中から"それ"を一枚取り出す。起きてすぐ、それを忘れないようにきちんと制服の胸ポケットに折り畳んで入れておくことが、彼の日課でもある。「よし、今日の分もきちんと入れましたね。では、着替えてからご飯を食べましょうか」独り言を呟きつつ、胸ポケットに入れたことを改めて確認する。声に出して確認する程、それは学校で黒子になくてはならない大事なものであった。(正直、ケータイのアラームセットよりも大事だと本人は思っていたりする。)ーーそう、帝光中学校の白ブレザーにも負けない白さを放つ、お得用パック・使い捨てのマスクである。黒子は、家以外で常にマスクを着けており、家族の前以外では外すことが出来ないーーいわゆるマスク依存症なのだ。*黒子がマスクを離さなくなったのは、小学校中学年頃からである。原因は、幼い頃から黒子が人一倍影が薄い上に、無表情で無口な子供だった事によるものだ。「黒子くんって、何考えてるのかわからなくて恐い。いつも怒ってるみたいで、喋りたくない…」「黒子、お前本当気味わりぃな。その笑いもしねー顔、なんとかなんねーの?お前みたいな顔のこと、むひょーじょーっていうんだぜ?」子供というものは残酷で、思った事や感じた事をすぐ言葉に出してしまい、直感で行動してしまう。黒子はその無表情さが原因で、常に周りのクラスメイトから疎まれていた。毎年クラスが変わる度に、陰湿な悪口を言われる事も多く、クラスにいつまでも馴染めない日々を送っていたのだ。自分だって笑いたい。でも、表情を作ろうと思っても、どうしても顔に出てくれない。努力しても口は引きつるし、目を細めてみても、口元が引きつる為に笑顔にまでいかない。ーー上手く笑えないのだ。笑いもしなければ、どんな悪口を言おうが泣きもしない黒子をクラスメイトは更に気味悪がり、影の薄さも手伝ってか、黒子はいつも独りだった。クラスメイトがグラウンドでドッヂボールをしているのを、教室の隅から独り見下ろすような学校生活。人しれず涙を零す黒子に、気付いた者はいなかった。黒子にだって、泣くことぐらいはできる。しかし、負けず嫌いな面が決して彼をそうさせない。クラスメイトの前で泣くのは絶対に嫌で、どんな酷い事を言われても、泣くことだけはしなかった。そんな彼に、ある転機が訪れる。小学校中学年頃の冬のある日、風邪をひいた。見た目に反して体が丈夫だった黒子にとって、風邪をひくのは珍しい事だった。高熱から二日間学校を休み、その後も咳を繰り返す黒子に、母はしばらく小学生用の使い捨てマスクを付けさせる事にした。初めてのマスクは息苦しく窮屈で、最初は黒子が嫌がった。しかし母は「風邪を他の子に移さない為だからね」と宥め、黒子は渋々といった形でマスク姿のまま登校した。本音は、学校になんて行きたくない。二日休んだ間の家での安らぎは思った以上に大きく、苦しいだけの学校になど来たくなかった。情もないクラスメイトに風邪を移そうが正直何とも思わないし、こんな苦しいマスクなんてしていたくない。気分は最悪のまま、黒子は教室のドアを開けた。ドアを開けた瞬間、既に登校して来ていたクラスメイト達と目が合った。影の薄さが売りのボクなのに、正直とても居た堪れない。そのまま、無言で自分の席に真っ直ぐ向かうと、なぜか隣にいた男子が黒子に話掛けてきた。「黒子、お前今日ふんいき?違うな。なんか、違う人みてぇ」「ーーーえ?」「たしかに。マスクしてて目しか見えないからかな?黒子くん、あんまり恐くない。黒子くんって、こんなに目がおっきかったんだね。」「そう…ですか?」予想外なクラスメイト達の反応に驚いたが、それが少し嬉しく感じて、大きいと言われた目を細めてみた。すると皆揃って、何故か目を真ん丸にしている。どうしたんですかと聞こうとした瞬間、前の男子が興奮したように話し掛けてきた。「お前って笑うことできたんだな!いつも笑わねえ奴だと思ってたから、びっくりした!」「黒子くん、笑ったほうが絶対いいよ!それに、マスクしてたほうが優しく見える!」近くにいた女子まで声を大きくして話し掛けてくる。クラスメイトとこんなに喋った事がない黒子は驚きを隠せなかった。「え、え?…ボク、笑えてましたか?」「うん、目がにこって笑ってたよ!マスクするだけで、黒子くん本当に変わるね」何故か少し赤い顔で、女子にそう微笑まれた。ーー顔が赤いし、風邪を移してしまったのでしょうか?じゃないと、こんな事をボクに言う筈がありません。嬉しい反面信じられない気持ちでいると、目の前の男子が黒子の肩に手を置いた。「今まで気味悪りぃとか言ってごめんな、黒子。お前マスクしてたほうが絶対いいよ、全然違うから」そう真っ直ぐに言われた言葉は、黒子にマスクの効果を信じ込ませるのに十分だった。その後、黒子は改めてトイレの鏡で自分の顔を見てみた。なるほど、顔はマスクにより半分以上隠れており、目と鼻の半分までしか見えない。一番無表情さを強調していた口元が隠れているので、自然と見える目元に視線が向かう。黒子の目つきは悪くない為、逆にぱっちりとした大きな目が強調され、いつもより穏やかな印象になっていた。まるで自分ではないかのような雰囲気に、黒子は知らず心躍らせる。そして試しに、笑うように意識して目を細めてみた。いつもなら引きつる筈の口元が、マスクで隠れて見えない。確かに、笑う事ができている。黒子は感動でいっぱいだった。「マスクって、こんなにいいものだったんですね…!」それから、黒子は学校では片時もマスクを外さなくなった。唯一、給食を食べる時に顎の辺りにずらすのみ。黒子の雰囲気が変わった事で、今まで気味悪がっていただけのクラスメイトも、徐々に黒子に喋りかけるようになっていった。そこで、黒子の優しく芯のある性格を知り、皆が今までの態度を反省する事となる。高学年になる頃には、変わっていくクラスでも馴染む事ができ、学年を通しての友達もできるようになった。男子には「とにかくいい奴」と認識され、その紳士的な態度から女子には密かに人気になっていた。黒子本人は全く知らなかったのだが。そんな頃、中学年の頃からクラスが一緒の男子がある日ふと尋ねてきた。「そういや黒子、お前って花粉症なの?」「……え?」「いや、もうだいぶ前からずっとマスクしてるだろ?花粉症かアレルギーなのかな、って思って」「…いえ、そういうわけではないんですけど。着けているだけで、落ち着くというか…とにかく、なるべく外したくないんです」「…そうか?……もし、顔の事とか気にしてるんだったら、多分もう皆は全然気にしないぞ?俺、前は何にも考えてなくて、黒子に酷い事ばっか言ったよな。でも、黒子と話す内に、黒子がこんなにいい奴だって分かって、あの時から笑えない事とか本気で悩んでたんだって分かったから…今更だけど、本当にごめんな。だから、今なら皆一緒だと思うんだ。マスクが無くても黒子は黒子だし、皆も俺も変わらないよ」その言葉は、嬉しいものの筈なのに。黒子はいつものように上手く、笑えなかった。ーーー嫌だ。恐い。恐い。マスクを外す事が、皆に顔を、表情を見られる事が、恐くてたまらない。また気味悪がられて、拒絶されたら。皆が、また離れていったら。感じるのは圧倒的な恐怖だけで。考えるだけで、手が震えた。そこで黒子は、初めて自分にとってマスクがこんなにも大切だったのだと気付いた。同時に、異常だとも思った。しかしもう既に、マスクを手放す生活など考えられない程にーー黒子はマスクに依存してしまっていたのである。そのまま黒子のマスク生活は毎日続き、卒業アルバムにまでマスク姿のまま小学校を卒業した。その頃には、家でも極力外さなくなった。家族はそんな黒子を心配したが、今まで学校に暗い顔で通っていた黒子が笑顔を見せるようになった事や、何より人前ではマスクがないと怯えてパニックに陥る姿に、何も言えなかった。物欲がほぼない黒子が欲しがるのは、バスケに関する用品と、本と、バニラシェイクと、マスクぐらいで。母は心配しながらも、日用品の様に買い与える事しかできなかった。小学校のクラスメイトが進学しなかった帝光中学校に入学してからも、バスケ部に入部してからも、マスクが手放せなかった。その結果…現在中学二年生の初夏、黒子はクラスで「常にマスクで影が薄いけど、超いい子」というイメージが定着している。*そして今日も、学校への支度を済ませ家を出る際、忘れずに玄関でマスクを着ける事で黒子テツヤの一日が始まる。[newpage]-「テツお前、それ何だよ…」いつも通りの朝練を終えてすぐ、制服に着替えている途中で、隣の青峰が訝しげに声を上げた。ちなみに黒子は、部活はもちろん着替えの最中にもマスクは外さない。「…?それ、とは?」「だ・か・ら!お前の鞄から今はみ出てるの、それ、女物のヤツじゃねぇの?!」「え?あぁ、あぶら取り紙ですか?男性用のですよ、黄瀬君だって持ってる筈です。あ、鞄の底から毛穴パックも出てきました、これ失くしたと思ってたのに」「…お前、いつも髪の毛ボッサボッサでズボラなのに、なんでそんなトコだけ気ィ使ってんだよ……もしかして、彼女とかいるんじゃねぇだろうな?」「まさか。ボクには彼女なんていませんよ。ちなみに、これ全部ボクのですからね」そう言いながら、そのまま黒子は鞄の中身を整理し始める。あぶら取り紙、毛穴パック、更にはトラベル用の化粧水と乳液のミニパックまで出てくるという、スポーツ男子としては驚きの女子力である。隣の黄瀬を始め、珍しく赤司までもが驚いている様子で、周りのキセキ達は開いた口がふさがらない。「…黒子っち、どうしてそんなに肌に気を遣ってるんスか?あ、通りでいつも、黒子っちのおでことか、肌もちもちなんだ。俺より美肌っスよ!いいなぁ……あ、まさかこれ彼女の物だったり?ねぇ、どこの誰と付き合ってるんスか?教えてよ、ねぇ、」「黄瀬君怖いです。そして近いです、おでこを撫でないで下さい。だからボクに彼女はいません。こんなボクにできる筈もないですし、肌に気を遣ってるのは母が煩いからです」黒子が溜息交じりに言った言葉に、今度は横を通った緑間が反応した。「…?どうして母が出てくるのだよ?もしかして肌が弱いとか、特別な事情があるのか?」「………まぁ、そんな所です。夏は特に汗をかいたりして必要になるので持って来ていますが、深くは考えないで下さいね」キセキ達の更に知りたそうな生暖かい視線に、黒子は居心地が悪くなり、慌ててロッカーに向き直り着替えを再開させる。このスキンケアセットは、マスクをし続ける黒子の肌が荒れないよう、黒子の母が心配した末のものであった。マスクをする日々を続けると、鼻や頬の皮脂が溜まりやすくなり、ニキビや毛穴の黒ずみなどの肌トラブルが発生しやすい。幼い頃から真っ白なもち肌を持っている黒子の肌だけはどうか守りたいと、過去に黒子の母はマスクを与える交換条件として肌のお手入れをする事を命令した。黒子は渋々承諾し、それから肌の手入れだけは毎日欠かさないようにしており、今日に至る。「でもさ、黒ちん夏は大変だね。汗かいて肌にも悪いし、埃アレルギーなんでしょ?マスク、暑くない?」既に着替えた紫原が、まいう棒を食べながら言った言葉に、思わず黒子は固まった。ーーそう、キセキ達チームメイトには、マスクをする理由を「重度の埃アレルギー」と誤魔化しているのだ。バスケ部に入った当初は、練習の際のマスクの暑さと息苦しさに死にそうになったものの、日々を重ねた今では何とか慣れた。そして部活に入ってから今まで、練習中でもマスクを決して外さない日々を送っている。常にマスクを着け続け、倒れる程苦しくても頑なに外そうとしない姿を、キセキが不思議に思うのは当たり前の事で。一軍に上がって暫くして、当然全員に説明する事となった。(ちなみに青峰には出会って二日目で聞かれたものの、適当にはぐらかす日々を続けていた)その際、考えた挙句に重度の埃アレルギーと通年の花粉症だと誤魔化す事にした。「体育館の埃やグラウンドの砂埃などが本当に辛いんです。そして通年の花粉症もありますから、ずっとマスクが手放せません」と。「顔を隠す為です」と馬鹿正直に答えようものなら、赤司がニッコリと「剥げ」と言うに決まっているからである。スキンケアにしても同じだろう。正直、赤司がいる時点で成功するかどうか分からない賭けだったが、皆意外にあっさりと信じてくれた。普段から冗談をあまり言わない性格でよかったと、心から思ったのは初めてだった。その為、黒子はキセキに出会ってから今まで、一度も彼らの前で素顔を晒した事はない。しかし、そんな生活を続けていると当然、今のように無理が出てくる訳で。「そうだね。夏にマスクはさすがに暑いよ、テツヤ。今みたいに、涼む時ぐらいは取ったっていいんじゃないか?」赤司がそう言って目を細めた。何かを考えているようなその仕草に、黒子の背筋が凍る。「いっ、いえ、慣れてますし、クシャミが止まらなくなると嫌なので、」「そういえば、テツヤは目に症状はこないの?アレルギーでも花粉症でも、何かしら目に影響があると思うんだけど」「ボクの場合は完全に鼻にくるんです、目は大丈夫なんです!あ、でもたまに目が痒い時もありますよ!おかしい花粉症ですよね本当!そして青峰君すみませんボク急用を思い出したので先に教室に行きます、皆さんではまた放課後、」「は?!おい、テツ!」きっちりとブレザーのボタンを留め終わった黒子は、そう言って鞄を素早く持ち、走って部室を後にした。一方、残されたキセキ達の間には微妙な空気が流れている。「何だぁ、テツ。担任にでも呼ばれてんのか?」「…お前は本当単純だな、青峰。あれはどう見ても何かを隠しているのだよ」「はぁ?隠すって何を」緑間が確信を持って言ったような言葉に、青峰が呆れたように聞き返した。「さぁな。でも、あんなに頑なにマスクを外さないのは、少し変じゃないか?」どこか納得のいかない顔で緑間がそう言うと、向かいの赤司と目が合った。どうやら赤司も同じ事を考えていたらしい。「…なぁ、お前らはテツヤの素顔を見た事があるか?」顎に手を当てた赤司は、何やら考えている様子でキセキに聞いた。「……そういやねぇな。テツはいっつもマスクしてるし、それで定着してっから考えなかったけど」「やっぱ皆そうっスよね……俺も見た事ないんス。黒子っち、ドリンクもストローでマスクの隙間から飲んでるし」「そうだよねぇ、黒ちんお菓子あげても食べずに家へ持ち帰ってるし。お昼だって、誰か友達と食べてるんでしょ?俺も見た事ない」「俺も同じなのだよ。そういえば青峰、黒子は誰と一緒に昼食を食べているのだよ?誘ってはいるのだろう?」「さぁ?クラスの奴じゃね?テツがあんまりはっきり言わねぇからわかんねぇけど。これでも、今も週に3回は誘ってんだよ」青峰はそう溜息をついた。キセキ達は毎日、揃って屋上で昼食を摂っている。しかし、黒子はいつも別の誰かと食べているらしく、青峰の誘いを断り続けており、キセキは未だ一度も昼食を共にした事がなかった。「はぁ?!青峰っち、黒子っちと同じクラスなのに、どうして知らないんスか‼ご飯一緒に食べてるのが、もし彼女とか女の子とか彼氏(?)だったらどうするんスか!彼女はいないって言ってるけど、それすら怪しいぐらいに黒子っちモテてるからね?!影薄くていつもマスクしてるけど、紳士な所とぱっちりお目目が綺麗って女子に密かに人気なんスよ…‼俺、そう聞く度に気が気じゃないのに…っ‼本当、誰とご飯食べてんの…?!知らない所で、彼女の手作りのお弁当とか食べてたらどうしよう…黒子っちは俺のものなのに………そうだ、黒子っちは俺だけのものなんだ……だから誰にも渡す必要なんてないんだ。黒子っち大丈夫、そんな近づくような奴らからは俺が守ってあげる……ふふ、」「黄瀬ちん帰っておいで、ヤンデレフラグはダメだよ。それから俺も皆も今、さりげに引いてるよ。ーーそれに黒ちんは皆のものでしょ?抜け駆けは許さないからね」部室のベンチに突っ伏してブツブツ呟き始めた黄瀬に、隣りに座る紫原が冷静に諭す。相変わらずまいう棒を穏やかに食べ続けている彼だが、反して言葉の後半は酷く冷たい声になっていた。「わかってるっスよぉお…黒子っちはキセキ皆のものっスから……で、赤司っちは見た事あるんスか?」「テツヤの素顔を、かい?僕も見た事がないよ。テツヤは何があってもマスクは外さないからね。だからふと思ったんだ。ーーーこれじゃあまるで、テツヤが素顔を隠したがっているみたいだ、って」赤司はそう言って、キセキ達を見回す。見ると、皆一様に微妙な表情をしており、何故か重い空気が部室を支配していた。(実は、朝のホームルームの開始を知らせる予鈴が既に鳴っているのだが、自分達にとって愛おしくてたまらない黒子の事を考えている彼らには取るに足らない事である。そして赤司の権限で後でどうとでもなるので、ここでは割愛する。)「……そう言われると、納得なのだよ。そうか、確かにそんな感じだな…」どこか引っ掛かりが取れたような緑間とは対象的に、青峰は腑に落ちないというように顔をしかめている。「はぁ?テツの顔なんて可愛いに決まってんだろうが、目だけでもあんなに可愛いんだぞ、ぜってぇ可愛いって。そんな可愛いテツが、何で顔隠す必要があんだよ?」「峰ちん本当馬鹿だね。そもそも、誰も素顔は見たことないんだし、理由も黒ちんにしかわかんない事じゃん。…俺も黒ちんの顔、見てみたいなぁー…実は前から見てみたかったんだよね。どんな顔してるんだろうって思ってた」「俺も見たいっスよ!絶対、素顔も超絶可愛いと思うっス‼前から見たかったんスけど、黒子っち、倒れても絶対外そうとしなかったから…」「僕も皆と同感だな。でも、どれだけ見たいと言ってもテツヤ本人が嫌がっているようなものだ。ーー決して無理矢理マスクを取る様な真似はするなよ?テツヤの素顔を見たいのは皆一緒であって、抜け駆けなど許さない…そう決めただろう?それに何より一人がテツヤに嫌われたら他にも影響が出かねない。まさか無いとは思うが、もしテツヤを悲しませるような事があれば……分かっているな?」「「「「イエッサー‼‼」」」」赤司様の言うことは絶対。キセキ達は寸分の狂いもなく、ピッタリと承知の声を上げた。実は、黒子を密かに愛して見守るこの同盟(?)の結成を発案したのも赤司だ。『キセキ全員を無自覚に落とすような天使を、このまま部活でも外でも無防備にしておく訳にはいかない。ーー僕達の手で守り、愛そう』ある日突然、赤司が真顔でそう言い放った時の衝撃を皆、忘れはしない。全員が黒子を恋愛感情として好きなのを互いに自覚していたが、これも元は赤司がカミングアウトした事がきっかけでズルズルと分かった事である。そして実は桃井も含まれていたりする。ちなみにこの同盟での条約は、・天使(黒子)に対しての行動は、キセキ皆が平等な立場になる事を前提とする。その為、天使(黒k)については、何事においても抜け駆けをしない事。もしこれを守れなかったら、条約違反として敵と見なす。・無防備な天使(黒)を守るのを第一とする。近づく不穏な影は片っ端から抹殺する事。恋の噂もしかり。・この同盟は天使(くr)に知られてはならない。あくまでも内密に、しかし大切に天使()を愛おしむように。・天使はキセキ(桃井も含めた)皆のものである。・…など突っ込み所が満載なのだが、皆黒子一直線で、誰も咎める者がいないのが現状である。そして今日も、黒子が知らない所で同盟の活動は続く。「ーー確かに、テツヤが誰と昼食を一緒に食べているか気になるな…大輝、今日も聞いてみてくれ。涼太も、いつも通りテツヤに関する噂のチェック、頼んだぞ」「わかったよ」「了解っス!」赤司の言葉に素直に返す二人を見て、赤司はにっこりと満足気な笑みを浮かべた。「ーーさて、授業に行こうか」現在、既に朝のホームルームをすっ飛ばし、一限目の時刻である事はこの際置いておく。-[newpage]-「…こ、ここまで来れば、大丈夫です、かね…」時は過ぎて昼休み。黒子は何故か息を切らしてーーいつも昼食を摂っている、裏庭のベンチにぐったりと腰を下ろした。黒子が疲れている理由は、約三十分前に遡る。………「テツ!飯、一緒に食わねぇ?」四限目終了と同時に、いつものように青峰にそう誘われた。毎回断り続けているのに、めげずに笑顔で聞いてくる青峰は、ただのいいヤツなのか、黒子を疑っているからなのか。恐らく前者だろうな、と思いつつ、またいつものように断りを入れた。ーーのだが。「…そっか。まぁそうだろうと思ったからいいけどな。そういやテツさぁ…いつも誰と飯食ってんの?」そう…何故か今日の青峰は、いつもより厄介だった。まさかその質問がくるとは思っていなかった黒子は狼狽える。実は、黒子がキセキに秘密にしている事がもう一つあった。それは…クラスメイトと昼食を食べているというのは真っ赤な嘘で、本当は毎日こっそりと、"一人"で昼食を食べている事である。既に黒子は、中学校でマスクを外す事が完全に出来なくなってしまっている。そのため、どうしてもマスクを外さなければならない昼食は、極力影を薄めて一人でこそこそと摂るのが日課だったのだ。ーーこれもバレたら大変な事になる…‼黒子は咄嗟に、前と同じように誤魔化した。「…おっ、同じ委員会の人達です。今から待ち合わせしてるんで、」「は?お前、前に同じクラスの奴って言ってなかったか?」「…‼、さっ、最近また変わりまして、今は委員会の人です!そ、そろそろ待ち合わせが、」「ふーん?何処で食ってんの?」「えっ?!あっ、日によって違うんですよ、待ち合わ」「…なぁ、やっぱ今日は俺も一緒に食っていいか?テツと飯食った事ねぇし。あ、何なら黄瀬達も呼んでさぁ。ーーお前らの所に混ぜてくんね?」「」ーーーあ、これ、詰んだ。青峰の言葉に、黒子の脳内が真っ白にフリーズした。更に、そんな黒子の様子に、目の前の青峰が訝しげな顔をし始める。(ちなみに先程、青峰が黄瀬達も〜と付けたしたのは、抜け駆け行為の存在を思い出した為である。)「…何だよ?もしかして、委員会のダチだってのは嘘か?」「いっ、いえ!でも皆さん静かな方ばかりですし、君達は結構有名人なんですから、一緒にご飯とか驚かれますって!」「そうか?でも五人もいるんだし、俺らの中の誰かとは話合うだろ?ってか、今から仲良くなりゃいい話じゃん。いつもテツが飯食ってるぐらい仲良い奴、俺も知りてぇし」ーーー‼‼何でこの人こう言う時だけ頭回るんですか!二カッと笑う青峰を見て、黒子は再度フリーズする。…駄目だこの人、何て言っても着いてくる気だ…ーーーこうなりゃ実力行使です…‼「あぁ、もうこんな時間!!ボク、本当待ち合わせしてるので!また今度でいいですか、いいですよね青峰君ごめんなさいさようなら‼」「おいテツ?!なんかそれデジャヴ‼ってか待てよ、俺はまだ何にも言ってな…ってオイ!ミスディレってんじゃねぇええ‼」黒子は瞬時にミスディレクションを使い、青峰の隣を抜いて廊下を猛ダッシュした。ーーー青峰君が気を抜いてたのもありますが、何でバスケ以外の方がミスディレの精度が高いんですか、泣きますよ。息切れで苦しい中、黒子はぼんやりとそんな事を考えていた。そこからは大変な逃走劇である。何故か黄瀬にも連絡が行ったようで、黄瀬と青峰に追いかけられるハメになった黒子は、階段の隅や校舎の柱に隠れてどうにかやり過ごした。黄瀬は何故かいつものワンコから狂犬モードになっていたが、知った事ではない。黒子はそのまま隠れながらの全力疾走を終えて、校舎をなんとか脱出した。弁当は当たり前にシャッフルしているので、今現在の中身の状態は考えないようにしている。そしてひっそりとした裏庭にある隠れ処のベンチにやっと辿り着き、今に至る。………「つ、疲れました………」体力が無い上、マスクを着けている黒子にとって、校舎からの全力疾走は体に堪えた。初夏なのもあり、汗が止まらない上にすごく暑い。そして弁当も食べられないまま、あと十分程で五限目が始まってしまう時刻になっていた。確か五限目の授業は、担当教師の出張により自習だった筈だ。黒子はこれ幸いとばかりに、五限目はここで過ごす事を決めた。この場所は校舎の日陰になっており、風通しが良く、追いかけっこで火照った体を冷やしてくれる。だから今は、とにかくこの体を休めたい。弁当も食べなければ。青峰君達への言い訳はゆっくり休みながらでも考えよう。息を整えるように、すぅ、と大きく吸い込んだ。本音は、黒子だって寂しいのだ。本当はキセキ達と一緒にわいわいとご飯を食べたい。こんな寂しい所で、滅多にない人目すら気にして昼食など摂りたくない。けれど食べるとなると、否応無しにマスクを外す、もしくはずらさなければいけない。そうすれば、必然的に皆に顔を見られてしまう。それだけはどうしても嫌だった。「怖い」「気味が悪い」などとキセキ達に拒絶されたら。「こんな気味悪ィ奴、相棒じゃねぇよ」と青峰に言われてしまったら。皆はきっとこんなにひどい事は言わないだろう。けれど、幼少期の辛い思い出ばかり甦ってきて、どうしても悪い方向にばかり考えてしまう。考えるだけで今度は震え出した体を、黒子はベンチの上で膝を抱え込むようにして丸める。「皆、皆大事なんです…もう、誰にも嫌われたく、ないんです」そう小さく呟いた声は、泣きそうな程に震えていた。目をぎゅうと瞑っている黒子は気付かない。少し離れた校舎に隠れるようにして。運良く影の薄い黒子を見つけた複数の人影が、笑っている事に。‐